Palliative Care Research
Online ISSN : 1880-5302
ISSN-L : 1880-5302
Original Research
Extraction of Factors for Home-visiting Nurses to Determine Family Caregivers Who Need Support after Bereavement
Tomoko KudoMidori Furuse
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2018 Volume 13 Issue 3 Pages 287-294

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Abstract

【目的】死別後支援が必要な家族介護者を訪問看護師が予測する要因を抽出する.【方法】訪問看護師が,終末期利用者の家族介護者105人に,自作の質問紙を基に死別後支援を予測する要因の調査(死別前),死別後支援の必要性を判断する調査(死別後)を行った.そのうち同意を得た死別後の家族介護者30人に,研究者が聞き取り調査(うつ病自己評価尺度CES-D,健康関連QOL尺度SF-8TM)を行い.数量化2類により分析した.【結果】治療中の疾患あり,医療への不満あり,経済的負担あり,後期高齢夫婦世帯,同居家族は介護を任せがち,頼れる別居家族・親戚がいない,周囲の助けを遠慮する傾向,が抽出された(判別的中率76.7%,相関比0.42,P=0.001).訪問看護師による判断は,基準関連妥当性が検証された.【結論】これら7項目は,死別後支援が必要な家族介護者を見極めるための重要な要因である可能性が示された.

緒言

在宅で看取りをした家族介護者の多くは,自身の適応力や身近な人からの支えにより,その苦境を乗り越えるといわれている.しかし,死別後,家族介護者は経済的変化,家族内や社会的役割の変化,利用者を通して得ていたサポート源の減少を経験するため1,2),周囲から孤立し通常の生活が困難になる場合もある3).また,介護役割に意味や価値を見出していた人ほど,死別後の抑うつ等の発症割合が高いとされている4).2016年9月中の訪問看護ステーション利用者の状況5)は,80歳代が35.8%と最も多く,老老介護の末に死別後独居となる高齢家族介護者の増加が見込まれる.そのため,今後充実した死別後の家族ケアを展開するためには,利用者や家族の身近で支援できる訪問看護師が,死別後支援が必要な家族介護者を予測し,適切な関係機関につなぐことが大切である.

諸外国では,専門職とボランティアからなる専門チームが体系的にBereavement Care,すなわち大切な人との死別を経験した方への支援を展開している.また,死別後に起こり得るリスクを患者の生存時からアセスメントするリスク評価は,最も必要とする人に的を絞ったサービスを提供するための重要な第一段階とみなし6),いくつかのリスクアセスメントツールを開発し,臨床の場で活用している79).カナダで開発されたBereavement Risk Assessment Tool(以下,BRAT)10)は,リスク要因36項目,リスクを軽減する保護的要因4項目,計40項目で評価するリストで,各指標には重みづけがされている.BRATの日本版については検討段階にあるが11),スピリチュアルな信念など,そのままでは日本人には回答しにくい項目が含まれている.

研究者らの全国調査12,13)では,日本の訪問看護事業所における遺族ケアの状況は制度としての位置づけがないため,各事業所の裁量で行われていた.また,訪問看護師は遺族ケアの必要性は認識しているが,アセスメントツールを用いるなどシステマティックには行われていなかった.さらに,たとえ自宅死が少ない事業所でも,利用者が亡くなる前から死別後支援が必要な家族介護者を予測し,死別後優先的に接点をもつ家族介護者を見極めることで,適切な関係機関につなげられる可能性が示された.

以上より,訪問看護事業所における遺族ケアの課題として,死別後支援が必要な家族介護者を見極めることが大切だが,死別後支援の必要性を訪問看護師が予測する要因は明らかにされていない.また,海外のリスクアセスメントツールは,日本の実情に合わせる必要がある.そこで本研究は,死別後支援が必要な家族介護者を訪問看護師が予測する要因を抽出することを目的とした.本研究において「家族介護者」とは,訪問看護利用者の主家族介護者と定義する.研究の意義として,死別後支援が必要な家族介護者を訪問看護師が予測する要因を抽出することは,家族介護者の継続的な支援に活用することができると考えた.

方法

研究全体の枠組み

全体として,死別前調査,死別後調査,家族介護者健康調査と,3時点で縦断的に調査を行った.解析対象は,上記すべての調査に参加した対象者30名であった.

先ず死別前調査として,訪問看護師が,死別後支援の必要性を予測するための要因の調査を実施した.その調査項目を本研究では説明変数とした.次に死別後調査として,利用者の死亡後に,訪問看護師が,死別後支援の必要性の有無を判断する調査を実施した.それを本研究では目的変数とし,それに関連する要因を数量化2類により分析した.死別後調査の妥当性,すなわち訪問看護師の判断がその後の家族介護者の健康状態を予測しているかは,研究者が家族介護者健康調査を実施し,うつ病(抑うつ状態)自己評価尺度CES-D: The Center for Epidemiologic Studies Depression Scale,健康関連QOL尺度SF-8TMスタンダード版(1カ月)により基準関連妥当性を検証した.なお,死別前調査の妥当性は,経験10年以上の訪問看護師3名により,調査項目(要因)の内容妥当性を確認した(付録図1).

死別後支援を予測する要因の調査(死別前調査)

1.調査対象

主治医より終末期と説明があった訪問看護利用者の家族介護者170人であった.「終末期」とは,以下のいずれかの基準をめやすに訪問看護師が判断した.①主治医から「病状から回復の見込みがなく,近い将来,死が避けられない」等の説明を受けている.②主治医または訪問看護師が,家族介護者に対し死の準備教育(訪問時のさりげない会話,パンフレット等による説明)を行っている.③ターミナルケア加算を算定予定である.④利用者または家族の同意のもと,主治医からターミナルケアのため特別訪問看護指示書が出ている.

2.調査期間

2015年9月~2017年3月であった.

3.調査方法

「24時間対応体制加算」を算定しているA県内15事業所の訪問看護師が,質問紙を基に訪問時に調査を実施した(事業所の背景,付録図2).

4.調査内容

研究者ら12)の全国調査,BRAT10),鈴木(2006)1),東京都福祉保健局(2016)の高齢者見守りガイドブック14)より選定し,22項目とした.具体的には,①介護者の健康状態,専門職とのつながり(6項目:治療中の疾患・認知機能の低下・精神疾患の既往・要介護認定・介護保険サービス利用・過去1年の健康診断受診の有無),②介護者のストレス累積状況(2項目:他の役割・過去1年の死別経験の有無),③介護者の医療に対する思い(1項目:医療に対する不満の有無),④経済状況(2項目:経済的負担・介護による離職の有無),⑤家族の状況(4項目:後期高齢夫婦世帯,介護者が死別後独居になる可能性・介護者が死別後日中独居になる可能性・同居家族の協力の有無),⑥介護者を取り巻くサポート状況(6項目:頼れる友人・頼れる別居家族親戚・近所付き合い・民生委員の関与・外出傾向・周囲の助けを遠慮する傾向の有無),⑦利用者の意向(1項目:利用者の(自分の死後),家族支援の希望の有無)である.

死別後支援の必要性の調査(死別後調査)

1.調査対象

死別後支援を予測する要因の調査(死別前調査)を実施した死別後の家族介護者105人であった.

2.調査期間

2015年9月~2017年 3月であった.

3.調査方法・内容

死別前調査を実施した看護師が,自宅を訪問した際(会計時など)に,先行研究1517)を参考に作成した調査用紙を基に,家族介護者の身体状況,精神状況,死別に対する思い,生活状況,同居家族の状況,社会・経済状況,死亡に伴う手続き状況,喪失に対する反応を確認し,死別後支援の必要性の有無を総合的に判断した.すなわち,判断基準は設けず,各看護師が経験や勘により判断した.実施済みの死別前・死別後調査用紙は,研究者が訪問看護事業所に出向き回収した.

家族介護者健康調査

1.調査対象

死別前調査・死別後調査を実施した家族介護者105人のうち,調査協力の同意が得られた死別後の家族介護者30人であった.

2.調査期間

2015年9月~2017年 3月であった.

3.調査方法

訪問看護師から家族介護者の意向を確認してもらい,研究者の訪問について内諾が得られた場合,訪問日時を調整した.研究者が聞き取りによる質問紙調査を実施した.調査時期は原則死別後8週前後とし,対象者の意向を尊重しながら死別後6カ月以内とした.その理由は,「死別から6カ月後に家族介護者あるいは他の家族のフォローアップアセスメントを行うこと」18)に基づいた.聞き取りの場所は,対象者の意向により自宅または訪問看護事業所内(プライバシーが確保できる個室等)であった.

4.調査内容

利用者の概要(年齢,性別,主疾患,死亡日,訪問看護利用期間),家族介護者の属性(続柄,年齢),CES-D,SF-8 TMである.

(1)CES-D

適用年齢は15歳以上,妥当性や臨床的有用性が確認されている.質問項目は20問,過去1週間における症状の頻度を「ない」「1~2日」「3~4日」「5日以上」の4件法で回答,各回答に0~3点を与え総得点0~60点,16点以上をうつ傾向があると評定する.

(2)SF-8 TM

身体機能,日常役割機能(身体),体の痛み,全体的健康感,活力,社会生活機能,日常役割機能(精神),心の健康,の8下位尺度8項目から構成されている.過去1カ月の状態を5~6件法で回答,2007年国民標準値(50点)に基づくスコアリングにより算出した各領域の得点および「身体的サマリースコア(身体的健康PCS)」「精神的サマリースコア(精神的健康MCS)」を用いて,日本国民一般の平均との比較が可能である.配点は0~100点で,得点が高いほどよい健康状態(QOLが高い)を表す.

分析方法

死別後支援の必要性の有無と関連要因との検討はχ2検定,Fisherの直接確率検定,t検定を用いた.外的基準CES-D,SF-8 TMとの関連はt検定を用いた.有意水準は5%未満とし,統計ソフトSPSS Statistics 21.0を用いた.死別後支援を必要とする家族介護者を訪問看護師が予測する要因の抽出は,目的変数,説明変数がすべてカテゴリーデータの場合に適用できる数量化2類を用いた.分析の精度は,判別的中率,相関比で確認した(Excelアドインソフト:マルチ多変量).

倫理的配慮

本研究は山形大学医学部倫理審査委員会の承認(第138号)後,対象者に研究の趣旨,方法,研究参加は自由意思であり断った場合も不利益を受けないこと,答えたくない質問に対しては答えなくてもよいこと,情報の守秘義務と匿名性を厳守すること,得られたデータは研究以外の目的に使用しないこと,調査結果の公表範囲,研究参加の撤回方法について文書と口頭で説明し,「同意書」により同意を得て実施した.とくに,家族介護者健康調査については,死別後6カ月以内に初めて出会う研究者による聞き取りのため,対象者の意向を尊重し,可能な場合は看護師が同席し,緊張を和らげながら実施した.

結果

調査の応諾率/有効回答率

終末期利用者の家族介護者は合計170人で,そのうち65人は訪問看護師の忙しさ,訪問看護開始1週間以内の死亡や再入院で調査の実施は難しいなど訪問看護師の判断により,調査は行われなかった(応諾率61.8%).そして,死別前調査(付録表1,2)・死別後調査が行われた105人のうち,同意が得られた死別後の家族介護者30人を対象に,研究者が家族介護者健康調査を実施し,全員解析対象とした(有効回答率17.6%,付録図2).

家族介護者健康調査 : 家族介護者の背景

30人のうち6人は,利用者1人に対し2人で介護を担っていたため,利用者実数は27人だった.平均年齢は70.5歳(SD 11.8),続柄は妻が12人(40.0%)と最も多かった.調査時点の死別後日数は,平均73.6日(SD 34.0)であった(表1).

表1 家族介護者健康調査:家族介護者の背景(n=30)

家族介護者健康調査 : 利用者の背景

利用者27人の性別は男性が15人(55.6%),平均年齢は83.9歳(SD 9.2)であった.主な疾患は悪性新生物が14人(51.9%)と最も多かった(表2).

表2 家族介護者健康調査:利用者の背景(n=27)

死別前調査 : 死別後支援の必要性を予測する要因の有無

「治療中の疾患あり」は23人(76.7%),「死別後独居になる可能性あり」は14人(46.7%)であった.「精神疾患の既往あり」「頼れる友人なし」「近所付き合いなし」「民生委員の関与なし」「利用者の(自分の死後)家族支援の希望あり」の5項目は,該当者はいなかった(表3).

表3 家族介護者健康調査対象者の死別後支援の必要性を予測する要因の有無(n=30)

死別後調査:死別後支援の必要性の有無

調査時点の死別後日数は,平均50.3日(SD 32.6)であった.看護師の判断は「支援不要」群が17人(56.7%),「支援必要(経過観察)」群が13人(43.3%)であった.

死別後支援の必要性の有無と属性との関連

家族介護者の性別,年齢,利用者の死亡時年齢,家族介護者の続柄(配偶者と配偶者以外)とは,いずれも有意差は認められなかった.

死別後支援の必要性の有無と要因(死別前調査)との関連

「治療中の疾患の有無」(P=0.09),「医療に対する不満の有無」(P=0.07)の2項目で有意傾向を認めた.

死別後支援の必要性の有無とCES-D・SF-8TMとの関連

CES-Dは,「支援必要(経過観察)」群は13.6点で,「支援不要」群8.1点より有意に高い得点だった(P=0.02).SF-8TMは,「支援必要(経過観察)」群の精神的健康MCS は40.78点で,「支援不要」群の47.90点より有意に低い得点だった(P=0.04)(表4).

表4 死別後支援の必要性の有無とCES-D, SF-8TMとの関連(n=30)

死別後支援の必要性を予測する要因の抽出

目的変数を死別後支援の必要性の有無(判断),説明変数を要因(死別前調査)22項目中,該当なしの5項目を除外した17項目とし,数量化2類を実施した結果,「治療中の疾患の有無」「医療への不満の有無」「経済的負担の有無」「後期高齢夫婦世帯」「同居家族の協力の有無」「頼れる別居家族・親戚の有無」「周囲の助けを遠慮する傾向の有無」の7項目が抽出された.棒グラフでプラスの方向にあるカテゴリー,すなわち「治療中の疾患あり」「医療への不満あり」「経済的負担あり」「後期高齢夫婦世帯である」「同居家族は介護を任せがちである」「頼れる別居家族・親戚がいない」「周囲の助けを遠慮する傾向がある」が,「支援必要(経過観察)」群として示された.判別的中率は76.7%で基準の75%を超えており,訪問看護師による判断は30人中23人が判別モデルによる推定と一致していた.相関比は0.42(P=0.001)であった(表5).

表5 死別後支援の必要性を予測する要因の抽出(n=30)

考察

死別前調査・死別後調査を実施した家族介護者の概要

死別前調査・死別後調査を実施した家族介護者105人の利用者は,平均年齢83.2歳,80歳代が35.3%であった.2016年9月中の訪問看護事業所利用者数5)は,「80~89歳」が35.7%と最も高く,ほぼ同じ割合であった.性別は男性57.8%,女性42.2%であり,同調査5)結果の男性42.4%,女性57.6%と比較すると,男女の割合がほぼ逆転していた.また,家族介護者の年代(死別前調査実施時点)は,70歳代が最も多く約半数を占めていた.同居の主介護者と要介護者等の年齢階級別の組み合わせ19)と比較すると,利用者が70歳以上の場合,主介護者はすべて70~79歳の割合が最も高くなっていた.すなわち,今回死別前調査・死別後調査を実施した家族介護者は,配偶者や子どもの立場で介護を行う,老老介護が約半数を占めていた.今後増加する,訪問看護を利用しながら老老介護を行う家族介護者の死別後支援の必要性を検討するうえで,参考資料となり得る調査であった.

死別後支援が必要な家族介護者を訪問看護師が予測する要因

訪問看護師による死別後支援の必要性の判断は,30人中23人が抽出された7項目による推定と一致することが明らかとなった.具体的には,「治療中の疾患あり」「医療への不満あり」「経済的負担あり」「後期高齢夫婦世帯」「同居家族は介護を任せがちである」「頼れる別居家族・親戚がいない」「周囲の助けを遠慮する傾向がある」の7要因が重複した場合に死別リスクが高まり,死別後支援が必要と判断される可能性が示された.抽出された7要因を(BRATの項目. 重みづけ)に照らし合わせてみると,「医療への不満あり(医療提供者に対する特定の怒りがある,16点)」「経済的負担あり(金銭面での問題がある,4点)」は,内容がほぼ一致する項目であった.「同居家族は介護を任せがちである」「頼れる別居家族・親戚がいない」は,BRATの(昔から,あるいは現在,家族の仲が悪い,4点)が類似項目であった.また,「周囲の助けを遠慮する傾向がある」は,BRATの(利用可能なサービスやサポートを拒否している,1点)(サポートを求める姿勢がある(逆転項目),−16点)が類似項目であった.「治療中の疾患あり」は,BRATでは疾患が限定されており(重度の精神疾患がある,16点)が内容的に含まれる項目であった.BRATにない項目としては,「後期高齢夫婦世帯」の「後期高齢」部分,すなわち家族介護者が「75歳以上」であった.以上のことから,今回抽出された7項目は,BRATの重みづけでは比較的リスクが低い項目も含まれていたが,日本の在宅看取り後における死別リスクアセスメントツールの開発に活用が可能であり,訪問看護師により死別後継続支援が必要な家族介護者を見極められる可能性があると考える.

死別後支援の必要性の有無と要因(死別前調査)との関連は,「治療中の疾患の有無」「医療に対する不満の有無」の2項目で有意傾向を認めた.家族介護者の平均年齢は70.5歳であったことから,治療中の疾患「あり」76.7%は,高齢家族介護者に多く該当した要因だったと考えられる.それに対し,医療に対する不満「あり」は10%と低い割合だったが,死別後支援が必要な家族介護者を予測するうえで,特徴的な要因と考えられる.訪問看護師は,利用者が在宅療養に至るまでの医療をどのように受けとめているのか,家族介護者の本音を聴ける立場にあるため,訪問看護師ならではの視点ともいえる.廣岡らは,BRAT日本語版の予備的検討において,死別前のアセスメント項目「ストレス反応が強く,怒り,自責の念,不安など高い感情的状態にある」は,死別リスクの高さと有意に関連していたと報告している11).調査対象は,緩和ケア病棟,在宅支援診療所で緩和ケアサービスを受ける終末期がん患者の家族介護者であり,一概に比較することはできないが,怒りの内容は医療や緩和ケアサービスに関することであり,「医療に対する不満の有無」は,死別後支援を予測する要因としての妥当性を部分的に支持する結果であった.

訪問看護師による判断の妥当性

死別後支援の必要性の有無と外的基準との関連は,「支援必要(経過観察)」群は,CES-DやSF-8TMの精神的健康MCSが不良だったことから,訪問看護師の判断は基準関連妥当性が支持されたと考える.

本研究の限界と今後の課題

本研究は,家族介護者健康調査の協力に同意が得られた30人のみを解析対象としているため,データに偏りがある可能性がある.これは,家族介護者健康調査が,利用者の死別後に,研究者が初めて対象者に会う流れになっており,関係性が構築されていない中で実施せざるを得ない,調査方法自体に難しさがあった.また,対象者の約半数が妻であったこと,死別後の経過日数が一定でなかったことから,結果の普遍性には制約がある.しかし,訪問看護師が,死別後支援が必要な家族介護者を見極めるための要因を明らかにした点で意義があったと考える.今後は抽出された要因の信頼性と妥当性を検証し,どのように訪問看護の現場で有用かつ簡便に活用していくかを検討することが課題である.

結論

死別後支援が必要な家族介護者を訪問看護師が予測する要因として,「治療中の疾患あり」「医療への不満あり」「経済的負担あり」「後期高齢夫婦世帯」「同居家族は介護を任せがちである」「頼れる別居家族・親戚がいない」「周囲の助けを遠慮する傾向がある」の7項目が抽出された.これらは,死別後支援が必要な家族介護者を見極めるための重要な要因である可能性が示された.

謝辞

研究者による聞き取り調査にご協力をいただきました家族介護者の皆様に,心から感謝いたします.また,死別前調査・死別後調査の実施にご協力をいただきました訪問看護事業所の皆様に厚く御礼を申し上げます.なお,本研究は,JSPS科研費 JP17K12531の助成を受けたものです.

利益相反

著者の申告すべき利益相反なし

著者貢献

工藤は研究の構想およびデザイン,研究データの収集・分析および解釈,原稿の起草に貢献 ; 古瀬は研究の構想およびデザイン,研究データの解釈,原稿の重要な知的内容に関わる批判的な推敲に貢献した.すべての著者は投稿論文ならびに出版原稿の最終承認,および研究の説明責任に同意した.

References
 
© 2018 by Japanese Society for Palliative Medicine
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