Palliative Care Research
Online ISSN : 1880-5302
ISSN-L : 1880-5302
Original Research
Analysis of Factors Related to the Terminal Care Attitudes of Nurses in Palliative Care Units
Junko TakanoReiko YamahanaNoriko Yamamoto-Mitani
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2018 Volume 13 Issue 4 Pages 357-366

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Abstract

【目的】全国の緩和ケア病棟における看護師のターミナルケア態度の関連要因を明らかにする.【方法】病棟看護管理者103名,看護師1,671名への自記式質問紙調査.【結果】看護管理者93名,看護師1,112名(有効回答率90.3, 66.5%)を分析.ターミナルケア態度の下位尺度の死にゆく患者へのケアの前向きさ,患者・家族中心のケアの認識の高さは緩和ケア病棟への配属希望(β=0.159, β=0.131, p<0.01)が関連した.ケアの前向きさは,緩和ケア病棟経験年数(β=0.125, p<0.01), 基本的緩和ケアの研修の修了(β=0.065, p<0.05)等10因子,認識の高さは,患者・家族の創作活動支援(β=0.114, p<0.01)等4つが関連した.【結論】前向きなターミナルケア態度を涵養するための,基本を礎にした経験の蓄積と支持的教育,充実した緩和ケア病棟体制の重要性が示唆された.

緒言

わが国のがん罹患数および死亡数が増加する中1),がん患者の3~4割は苦痛緩和が十分でないという報告もあり2),さらなるがん対策推進基本計画が進行中である3).対策の一つである緩和ケアは一般病棟等で提供される基本的緩和ケアと,一般病棟では対応が困難ながん終末期の複雑な症状や問題をもつ患者・家族の生活の質を高める専門的緩和ケアがあり,緩和ケアチームや緩和ケア病棟,在宅緩和ケアで提供される4).近年,緩和ケア病棟は,在院期間の短縮化や,在宅療養支援のためのバックベッド機能など,その役割は変化し5),従来の看取り型と,看取りも行うが症状緩和後は早期退院を促す急性期型に分かれ始めている.また,2017年現在,緩和ケア病棟入院料届出受理施設数は386施設まで増加した6)が,施設により専門的緩和ケアの質が異なり,施設評価の仕組み作りが始まっている7)

緩和ケア病棟の看護師は,短期化する在院期間で患者・家族の意思決定支援や退院支援,ターミナルケアを実践するなど多様な役割を担う.一方で,多くの患者が死亡する緩和ケア病棟では,看護師は心身に影響を受け8),看護師自身がセルフケアを行い,患者の死に真摯に向き合う必要がある.また,わが国のがん患者の遺族調査で,緩和ケア病棟の医療従事者との関わりが遺族にとり心に深く残る体験だったことが示されており9),患者・家族に直接関わる看護師の態度は専門的緩和ケアの質を左右するといえる.

このような看護師の前向きなターミナルケア態度は,がん診療連携拠点病院,訪問看護師や高齢者ケア施設等で年齢,臨床経験年数,身近な人の看取り経験,看取りケアへの満足感等との関連について報告があるが1013),年齢や臨床経験等は関連がなかった報告もある14).また,看取りの多い緩和ケア病棟で調査することで影響要因がより明確になると考えるが,こうした調査は見当たらない.

そこで本研究の目的は,全国の緩和ケア病棟の看護師を対象に,患者・家族に直接関わる看護師のターミナルケア態度を調査し,前向きなターミナルケア態度に影響する個人因子や施設因子を明らかにすることにある.緩和ケア病棟は,多職種チームが基盤であり,職場環境や専門的緩和ケアの内容は看護師の態度に影響し,これまでにない全国の多様な地域にある緩和ケア病棟の看護師の調査によって組織因子を明らかにできると考える.これらの要因から,緩和ケア病棟において患者・家族への質の高いケアにつながる看護師の前向きなターミナルケア態度を身につけるための教育や職場環境である病棟組織でも専門的緩和ケアの実践上で有用な示唆を得ると考える.

方法

研究デザイン

無記名自記式質問紙による横断研究である.

対象者

国立がん研究センターがん情報サービス15),日本ホスピス緩和ケア協会6)による公開情報から全国の緩和ケア病棟入院料届出受理施設386施設(2017年10月現在)のリストを作成し,調査協力に応じた103施設,看護師1,671名を対象とした.

データ収集

施設看護管理者の協力の意思表示が得られた施設に,研究説明書,事前に尋ねた人数分の看護師用質問紙,緩和ケア病棟看護管理者用(以後,看護管理者)質問紙,質問紙用封筒,および一括返送用封筒を郵送し,2週間を目途に郵送法にて回収した.調査期間は2017年10月から11月だった.

調査項目

1.個人因子

性別,年齢,看護系の最終教育機関,看護系教育機関での緩和ケアの授業経験,看護師経験年数,緩和ケア病棟経験年数,過去の専門的緩和ケアの経験,職位,緩和ケア病棟への配属希望,The End-of-Life Nursing Education Consortium Japan version(ELNEC-Jコアカリキュラム看護師教育プログラム: 以下,ELNEC-J)16)修了の有無,ELNEC-J指導者資格(ELNEC-Jを指導する資格)の有無,6カ月間で専門書・雑誌を閲読した冊数,がん・緩和ケア分野の専門資格等を尋ねた.管理者でない専門資格者は直接ケアを実践している場合が多いため,対象に含めた.

ELNECは,米国のアメリカ看護大学協会とCity of Hope 国立医療センターによる組織で,系統的なEnd-of-Life careの基本的緩和ケアの教育プログラムを開発し17),日本版修了者は29,000人以上となった(2018年現在)18)

2.組織因子

緩和ケア病棟で患者・家族に直接関わる看護師の態度を分析するため,看護管理者へは組織背景を尋ね,その回答を看護師の個人属性の組織因子とした.調査項目は,施設病床数.緩和ケア病棟設立からの年数.通算看護経験1年目の看護師の緩和ケア病棟への配置.病棟におけるがん・緩和ケア分野の資格者の存在,他職種.デスケースカンファレンス開催頻度.提供している専門的緩和ケアの内容.緩和ケア病棟で取り入れている教育方法だった.

3.ターミナルケア態度

Frommelt attitudes toward care of the dying scaleのFATCOD-Form B-J(Frommelt のターミナルケア態度尺度日本語版)19)を使用した(付録図参照).この尺度は,米国のFrommeltが開発した死にゆく患者に対する医療者のケア態度の測定の20)の日本語版であり,信頼性と妥当性が確認されている.30項目について,「非常にそう思う」「そう思う」「どちらともいえない」「そう思わない」「全くそうは思わない」の5件法で評価する.3つの下位尺度があり,《死にゆく患者へのケアの前向きさ》16~80点,《患者・家族を中心とするケアの認識》13~65点で,ターミナルケア態度の得点が高いほど,より前向きな態度,患者・家族中心のケアの認識が高いことを示す.なお,三つ目の《死の考え方》は項目数が一つと限定され,独立した下位尺度として活用しないことが推奨されているため除外し,29項目の二つの下位尺度を分析した.

4.分析

個人属性について記述統計量を算出し回答分布を確認した.単変量解析として,看護師の個人属性とターミナルケア態度の二つの下位尺度間で,2値変数はt検定を実施し,連続変数はSpearmanの順位相関係数を算出した.その後,ターミナルケア態度のうち《死にゆく患者へのケアの前向きさ》《患者・家族を中心とするケアの認識》に関連する個人属性を検討するために,従属変数をターミナルケア態度尺度の二つの下位尺度とし,下位尺度ごとに単変量解析でp<0.20だった個人因子の変数を説明変数として投入し,Stepwise法にて重回帰分析を行った.有意水準は,p<0.05(両側検定)とし,統計処理には統計解析ソフトSAS University Edition Version 3.6, Basic Editionを使用した.

5.倫理的配慮

本研究に先立ち,東京大学医学部倫理審査委員会の承認を得た.対象者の調査説明書に,参加の任意性,個人情報保護等を明記し,質問紙の返送をもって調査への同意が得られたとみなした.

結果

38都道府県99施設,看護管理者93名(回収率90.3%),看護師1,223名(回収率73.2%)から回収した.そのうち,回答の20%以上の欠損,尺度の下位項目で半数以上の欠損等があった111名を除外し,分析対象は看護管理者93名,看護師1,112名(有効回答率90.3%,66.5%)だった.

対象者の属性(表1

女性が96.1%を占め,看護経験年数は16.1±8.2年だった.緩和ケア病棟勤務平均年数3.7±3.0年,緩和ケア病棟での1,2年目は45.2%,3〜5年目は35.0%だった.過去の専門的緩和ケアの経験ありは46%だった.役職者(主任以上管理者未満)は12.5%(役職者のみでは,看護経験平均年数21.5±6.3年,緩和ケア病棟経験5.2±4.1年,専門資格あり20.4%)で,専門資格者は6.3%だった.緩和ケア病棟は設立から平均8.8±5.8年だった.

ターミナルケア態度の両下位尺度の得点は,《死にゆく患者へのケアの前向きさ》は平均62.8±7.4,《患者・家族を中心とするケアの認識》は平均50.1±4.9だった(n=1,112).

表1 対象者の属性(n=1112)

ターミナルケア態度の下位尺度に関連する要因

1.単変量解析の結果(表2

ターミナルケア態度の両下位尺度《死にゆく患者へのケアの前向きさ》(以下,前向きな態度),《患者・家族を中心とするケアの認識》(以下,ケアの認識の高さ)に関連した要因は,看護系教育機関での緩和ケアの授業経験(前向きな態度; p<0.01,ケアの認識の高さ; p<0.05),職位(主任以上)(p<0.01),緩和ケア病棟への配属希望者(p<0.01),ELNEC-Jの修了(前向きな態度; p<0.01,ケアの認識の高さ; p<0.05),6カ月間で専門書・雑誌を閲覧した冊数の多さ(前向きな態度; ρ=0.256 p<0.01,ケアの認識の高さ; ρ=0.104 p<0.01),専門誌からの知見の臨床への活用頻度の高さ(p<0.01),がん・緩和ケア分野の専門資格者(前向きな態度; p<0.01,ケアの認識の高さ; p<0.05),患者・家族の創作活動支援(p<0.05)だった.

《前向きな態度》にのみ関連した要因は,女性(p<0.01),年齢(ρ=0.109 p<0.01),学歴(短大以上)(p<0.05),看護経験年数(ρ=0.102 p<0.01),緩和ケア病棟勤務年数(ρ=0.208 p<0.01),他の緩和ケア病棟の経験あり(p<0.01),ELNEC-J指導者資格(p<0.01),病棟に宗教者あり(p<0.01),病棟に理学療法士あり(p<0.05),病棟にボランティアコーディネーターあり(p<0.05)だった.また,緩和ケア病棟で提供するケアとしてベッドごとの散歩あり(p<0.01),ボランティアによる花の水替えあり(p<0.01),ボランティアによるお茶のサービスあり(p<0.05),緩和ケア病棟で取り入れている教育方法では,緩和ケア病棟独自の教育プログラムあり(p<0.01),事例検討会あり(p<0.05),院内外の講義・講演への参加あり(p<0.01)も関連した.

《ケアの認識の高さ》のみに関連したのは,緩和ケア病棟設立からの年数が3年未満(p<0.01),病棟に緩和ケア認定看護師あり(p<0.01),通算看護経験1年目の看護師の配置あり(p<0.05)だった.

表2 単変量解析: ターミナルケア態度の2つの下位尺度に関連する要因(n=1112)

2.多変量解析の結果(表3

ターミナルケア態度の両下位尺度に関連した看護師の要因は,緩和ケア病棟への配属希望あり(前向きな態度; β=0.159, p<0.01,ケアの認識の高さ; β=0.131, p<0.01)だった.

《前向きな態度》のみに関連した要因は,女性(β=−0.096, p<0.01),学歴(短大以上)(β=0.061, p<0.05),現在の緩和ケア病棟での勤務年数(β=0.125, p<0.01),他の緩和ケア病棟経験あり(β=0.070, p<0.05),ELNEC-Jの修了あり(β=0.065, p<0.05),6カ月間で専門書・雑誌を閲読した冊数の多さ(β=0.150, p<0.01),がん・緩和ケア分野の専門資格者(β=0.110, p<0.01),病棟に宗教家あり(β=0.065, p<0.05),デスケースカンファレンスの不定期開催(β=−0.072, p<0.05),緩和ケア病棟独自の教育プログラムあり(β=0.069, p<0.05)だった.

《ケアの認識の高さ》のみに関連したのは,職位(主任以上)(β=0.129, p<0.01),緩和ケア病棟の設立年数が3年未満(β=−0.124, p<0.01),病棟に緩和ケア認定看護師がいる(β=0.077, p<0.05),患者・家族の創作活動支援(β=0.114, p<0.01)だった.

表3 多変量解析: ターミナルケア態度の2つの下位尺度に関連する要因

考察

対象者の特徴

対象は,豊富な看護経験を有していたが,緩和ケア病棟配属1~5年目が約80%を占めた.がん・緩和ケアの専門資格者は限られていたが,ELNEC-J修了者は53.3%と半数以上であり,近年のELNEC-J修了者の増加を反映した.また,専門的緩和ケアの経験者は46.0%で,他の緩和ケア病棟や緩和ケア病棟以外の場等,多様化しつつあることが示された.

組織因子は,職種やケア内容は施設によるバラツキがみられた.教育面は,緩和ケア病棟独自の教育プログラムがある施設に所属する看護師は63.2%と半数以上で,事例検討会は80.5%が実施し,積極的な教育体制を示した.

ターミナルケア態度

ターミナルケア態度の両下位尺度の得点は先行研究のがん診療連携拠点病院の看護師21),訪問看護師等12)と比較すると,《前向きな態度》は本調査結果が高かったが,《ケアの認識の高さ》は本調査とほとんど変わらなかった.介護職員対象の調査22)との比較では,両下位尺度で,本調査結果が高かった.一概に他結果と比較できないが,緩和ケア病棟の看護師が,多くの死を経験する中でも前向きに患者へのケアに取り組んでいる態度が示唆された.

ターミナルケア態度に関連する要因

両下位尺度に関連した要因は,「緩和ケア病棟への配属希望あり」(1,088名中58.9%)だった.終末期看護の関心の高さは積極的な看取りケアに影響することが示され23),本研究でも関心の重要性が示された.一方,緩和ケア病棟配属後,無力感等を感じることが報告され24),積極的医療から終末期医療への看護観のギャップも考えられる.したがって関心の高低がある現状を理解し,エンパワメントし合えるチーム作りが重要と考えられる.

《前向きな態度》のみに関連したのは,女性,学歴が短大卒業以上,緩和ケア病棟での勤務年数の多さ,他の緩和ケア病棟経験あり,病棟に宗教家あり,デスケースカンファレンスの不定期開催,ELNEC-Jの修了,6カ月間で専門書・雑誌を閲読した冊数の多さ,がん・緩和ケア分野の資格者,緩和ケア病棟独自の教育プログラムの10因子だった.

「女性」は,先行研究のFATCOD尺度の合計得点において関連が報告されており21),本調査ではケアの前向きさのみに関連した.

「学歴が短大卒業以上」は,韓国の研究で修士課程以上の学歴が関連し25),一概に比較できないが看護教育が緩和ケアの理解を深め,ケアの前向きさに影響する可能性がある.

「緩和ケア病棟での勤務年数の多さ」は,これまでも経験年数の関連が報告され26),さらに「他の緩和ケア病棟経験あり」については,緩和ケア病棟を変えても継続的に専門的緩和ケアに携わることが前向きな態度に関連したと考えられた.しかし,緩和ケア病棟の平均経験年数は3.7年と短く,その原因の一つに,多くの患者の死から生じる看護師の悲嘆によるバーンアウトが報告され,看護師自身が死生観を深めセルフケアを行う重要性が示唆されており27),看護師自身のセルフケアや勤務継続を支援する仕組みが重要である.

「病棟に宗教家がいる」ことも前向きな態度に関連した.緩和ケア病棟での患者の望ましい死の達成度の高さに,宗教的背景のある施設の関連が報告されている28).また,宗教家はスピリチュアルケアだけでなく,ときにスタッフを支援し,看護師は協働し支持されることで,前向きな態度に影響したと考えられる.

「デスケースカンファレンスの不定期開催」がより前向きな態度に関連した.これは医療者間連携の大切さを実感する機会になる29)が,不定期開催は,倫理的に問題視した場合等で参加者の関心が高い状態での開催が考えられ,開催頻度よりも討論の意義が重要と考えられた.

「ELNEC-Jの修了」による基本的緩和ケアの知識の獲得,「6カ月間で専門書・雑誌を閲覧した冊数の多さ」という積極的に学ぶ姿勢が関連した.また,「がん・緩和ケア分野の資格者」としてキャリアを積む看護師も前向きな態度に関連した.先行研究でもターミナルケアの臨床経験や専門資格者は,より前向きな考えが生じることが示され23),自発的な学びの姿勢やその継続性が前向きな態度につながったと考えられる.さらに,「緩和ケア病棟独自の教育プログラム」による学べる環境が前向きな態度への支援となったと考えられる.

《ケアの認識の高さ》にのみ関連したのは,職位が主任以上,病棟に緩和ケア認定看護師がいる,緩和ケア病棟設立年数が3年未満,患者・家族の創作活動支援の4因子だった.

「職位」は,介護職員の先行研究でも関連がみられており22),十分な看護経験や高い専門性でリーダーシップを発揮することが期待されることで,ケアの認識の高さに関連したと考えた.また,「病棟に緩和ケア認定看護師がいる」ことは,専門的緩和ケアのロールモデルとして,協働する他の看護師の考え方に影響した可能性がある.

「緩和ケア病棟設立年数が3年未満」が認識の高さに関連した.廣瀬らの調査では,緩和ケア病棟設立時の看護師が次第に自信を持つ過程が報告され30),病棟創成期の姿勢がケアの認識の高さに影響したと考えられる.

「患者・家族の創作活動支援」は,フランスや台湾の調査で,創作活動により,がん患者の症状緩和やターミナル期の身体的安楽を得たという報告がある31,32).終末期でも患者は創作による達成感を持ち,家族も気分転換でき,患者・家族中心のケアの認識の高さにつながったと考えられた.

このように,看護師の前向きなターミナルケア態度に影響する個人・組織因子から,緩和ケア基礎教育のもと,多職種協働の中で専門的緩和ケアに関心をもち主体的に学び看護観を育む職場環境作りや支持的な継続教育体制が必要と考えられた.患者・家族中心のケアの認識を高めて前向きに取り組むために,看護師の8割が所属する緩和ケア病棟勤務経験5年目以下の現状を踏まえ,専門的緩和ケアの経験者や資格者,役職者によるリーダーシップやロールモデルが機能することが必要である.さらに,病棟組織として,がん患者・家族側の視点でニーズを捉え,柔軟なターミナルケアを提供する体制作りの必要性が示唆された.

本調査の限界として,横断調査のため因果関係は特定できない.届出認可のない緩和ケア病棟はその実態把握が困難なため対象に含めていない.また,調査協力施設は積極的に取り組む姿勢が考えられ,調査結果に影響した可能性がある.さらに,重回帰分析の決定係数が低く,「過去の看取り件数」「身近な人の看取り経験」等の,これまでに関連の指摘された要因をいくつか盛り込めなかった影響があるものと考えられる.今後はそれらの要因や,職務満足感,看取りの個人的な経験等も含めて検討を重ねる必要がある.

結論

緩和ケア病棟の看護師のターミナルケア態度の両下位尺度に関連したのは,緩和ケア病棟への配属希望というターミナルケアへの関心だった.前向きな態度には,現在の緩和ケア病棟での経験年数,ELNEC-Jの修了,病棟に宗教家がいる,緩和ケア病棟独自の教育プログラム等10因子が関連した.基本的緩和ケアを基盤に,多職種協働の中,経験を積み専門的緩和ケアの知識・技術を高めて看護観を深める支持的な教育体制の必要性が示唆された.さらに,ケアの認識の高さに関連したのは,患者・家族の創作活動支援等4因子で,緩和ケア病棟内で専門的緩和ケアを充実させる体制の重要性が示唆された.

謝辞

本調査にご協力頂いた看護師の皆様に心より御礼申し上げます.また,本調査・論文作成にあたり,終始適切な助言を賜り,また丁寧にご指導頂いた東京大学大学院医学系研究科の御子柴直子助教に深く感謝いたします.なお,本調査は,公益財団法人政策医療政策財団の助成のもと実施致しました.

利益相反

著者の申告すべき利益相反なし

著者貢献

高野は,研究の構想,デザイン,グラントの申請,研究データの収集,分析,解釈,原稿の起草に貢献 ; 山花および山本は,研究の構想,デザイン,研究データの収集,分析,解釈,原稿の重要な知的内容に関わる批判的な推敲に貢献した.すべての著者は投稿論文,出版原稿の最終承認,および研究の説明責任に同意した.

References
 
© 2018 by Japanese Society for Palliative Medicine
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