Palliative Care Research
Online ISSN : 1880-5302
ISSN-L : 1880-5302
Original Research
Relationship between Cancer Pain Self-management and Pain in Outpatients with Advanced Cancer Taking Opioid Analgesics
Shiori ChibaFumiko SatoNaoko Sato
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2019 Volume 14 Issue 2 Pages 113-126

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Abstract

【目的】医療用麻薬服薬中の外来進行がん患者のがん疼痛セルフマネジメントと痛みの関連を明らかにする.【方法】56人に先行研究より演繹的に抽出したがん疼痛セルフマネジメントとthe Japanese version of the Brief Pain Inventoryによる質問紙調査を実施した.【結果】がん疼痛セルフマネジメントのうち医療用麻薬の定時服薬者は「痛みの及ぼす生活への支障」が有意に低かった.切れ目の痛みを我慢する者は「最も強い痛み」,「平均の痛み」および「痛みの及ぼす生活への支障」が有意に高かった.痛みが出たときにレスキュー薬を服薬する者は「睡眠」への支障が有意に高かった.服薬以外に痛み緩和方法を行う者は「気分情緒」への支障が有意に高かった.【結論】痛みの緩和には医療用麻薬服薬を基本とし,良質な睡眠を確保できる疼痛治療,全人的なケアを含めたセルフマネジメント獲得支援の重要性が示唆された.

緒言

がん疼痛は,進行がん患者の約70~80%に出現し,進行と共に複雑化し,Quality of Life(QOL)低下の要因である1,2).約90%の患者は,WHO三段階徐痛ラダーに沿った医療用麻薬の服薬により痛みが緩和されるため3),医療用麻薬の適切な服薬が重要である.患者が服薬を拒む要因には,精神疾患の既往や医療用麻薬の副作用,医療用麻薬に対する誤解,症状に耐えることに価値がある等の実存的価値や,疾患の進行に対する不安などがある4).このような患者は,適切な服薬が行えないために,痛みの緩和が難しくQOLが低いと報告されている57).痛みの緩和には,がん疼痛や医療用麻薬に対する誤解の軽減などに焦点をあてた患者教育,継続的な疼痛マネジメント獲得支援およびコーチングが有効である8,9).また,患者や家族のどちらかが服薬に対して誤解があると,互いにその影響を受け,不安が強くなる10)ことから,家族を含めた患者家族へのがん疼痛教育の重要性が高まっている.

わが国では2000年よりがん疼痛治療に関するガイドラインが出版され,2005年に医療者を対象にした緩和ケア教育が開始された11).2007年にがん対策推進基本計画が策定され,国際的な水準と比較して医療用麻薬の消費量が少ない12,13),医師の緩和ケアに対する認識が不十分である等から,専門的な知識や技能を有する医療者の育成が課題となった14).翌年,わが国の実情に即したPEACE(Palliative care Emphasis program on symptom management and Assessment for Continuous medical Education)が開発され11),受講した医師は年々増加し15,16),医療用麻薬や疼痛に関する知識が向上している17).また,同年よりエンド・オブ・ライフ・ケアを提供する看護師に必要な知識の獲得を目的にしたELNEC-J(The End-of-Life Nursing Education Consortium-Japan)指導者である看護師が年々増加し16),全国各地で研修が開催されている.以上より,患者は2007年以前に比較し,知識や技能を備えた医療者による緩和ケアが受けられるようになってきた.

しかし,医療者から離れて在宅で生活する患者がどのように痛みをアセスメントし,医療用麻薬を服薬し,副作用に対処しているのか,それらの対処について医療者とどのようにコミュニケーションをとっているのか,それらのがん疼痛セルフマネジメントに関する実態は明らかでない.わが国は医療用麻薬の消費量が少ない一方で,強い痛みをもつ患者の割合や痛みの頻度がより大きい事実はなく,疼痛緩和には消費量の増加を目指すより,患者が行う有効な疼痛セルフマネジメント方略を明らかにすることが課題である18).これまで疼痛緩和を目的にした介入研究は,疼痛強度,QOL,自己効力感などに焦点をあててきた19).また,症状マネジメントモデルを用いた症例報告が多数報告されている2024).しかし,がん疼痛治療が均てん化されてきた現在において,外来通院中の進行がん患者のがん疼痛セルフマネジメントの実態は明らかにされていない.

したがって,本研究の目的は,医療用麻薬服薬中の進行がん患者のがん疼痛セルフマネジメントと痛みの関連を明らかにすることである.本研究は,超高齢社会を背景にした医療改革による在宅療養が推進されている現在25,26),外来通院治療を継続しながら医療者不在の在宅で療養している進行がん患者の疼痛緩和に有効な疼痛セルフマネジメントを高める支援構築の基礎資料になる.

本研究における「がん疼痛セルフマネジメント」とは,痛みのアセスメントおよび医療用麻薬の定時服薬の遵守,定時医療用麻薬の切れ目の痛みへの方略,レスキュー薬を使用する痛みへの方略,医療用麻薬に対する不安や気がかりへの方略,とり切れない痛みへの方略,医療用麻薬の副作用である便秘・眠気・吐き気に対する患者が用いている方略と定義する6,2731).また,本研究における「がん疼痛セルフマネジメント」の位置づけは,症状マネジメントモデル32,33)における患者の「症状の体験」に基づく「症状への方略」であり,痛みはその「症状の結果」を示す.「がん疼痛」とは,日本緩和医療学会の定義に従い,がん自体が原因となって生じる痛みと定義する27)

方法

研究対象者

対象者は,がん診療連携拠点病院1施設の腫瘍内科外来に通院している進行がん患者である.適格基準は,①進行がんである,②がん疼痛緩和を目的に医療用麻薬を定期的に服薬している,③20歳以上である,④病名の告知を受けている者とした.除外基準は,①進行がんではない,②がん疼痛を和らげる目的以外に医療用麻薬を定期的に服薬している,③身体的・精神的・認知的に質問紙の回答が困難である者とした.

調査期間および方法

2016年7~12月に腫瘍内科外来を受診し,適格基準および除外基準を満たす対象者を医師から紹介を受け,同意が得られた対象者に自己記入式質問紙および診療録調査を実施した.

調査内容

1.対象者の背景

年齢,性別,婚姻の有無,PS(performance status),就労状況,痛みの性質34),WHO疼痛治療目標,医療用麻薬使用期間,対象者が受けたがん疼痛治療教育27,28)は質問紙で,がん罹患部位および処方歴は診療録から収集した.

2.がん疼痛セルフマネジメント

がん疼痛セルフマネジメントは,前回受診から現在までについて質問紙で収集した.質問項目は先行文献6,2731)に基づき演繹的に24項目を抽出し,がん看護研究を行っている教員3名,ELNEC-Jを受講し臨床で痛みをもつがん患者へ看護を実践している看護師2名と洗練させた.24項目は,対象全員が回答する9項目と当てはまる項目に回答する15項目で構成した.全員が回答する9項目は,【痛みのアセスメントおよび医療用麻薬の定時服薬の遵守】に関する項目である.当てはまる項目に回答する15項目は,【定時医療用麻薬の切れ目の痛みへの方略】1項目,【レスキュー薬を使用する痛みへの方略】2項目,【医療用麻薬に対する不安や気がかりへの方略】2項目,【とり切れない痛みへの方略】1項目,【便秘に対する方略】3項目,【眠気に対する方略】2項目,【吐き気に対する方略】4項目である.分析は,「いいえ」「どちらかというといいえ」を「いいえ」,「どちらかというとはい」「はい」を「はい」とした.当てはまる項目のうち【定時医療用麻薬の切れ目の痛みへの方略】1項目は,行っている4つの行動を複数選択とし,選択した行動を「はい」,選択しなかった行動を「いいえ」とした.

3.痛み

Cleelandらが開発し35),卯木らが翻訳し信頼性および妥当性を検証したThe Japanese version of the Brief Pain Inventory(BPI-J)を用い36),質問紙で収集した.本研究では,BPI-Jのうち「最も強い痛み」,「平均の痛み」,「痛みが及ぼす生活への支障」の各1項目,痛みが及ぼす生活への支障に関する「日常生活全般」,「気分情緒」,「歩行能力」,「通常の仕事」,「対人関係」,「睡眠」,「生活を楽しむこと」の7項目を用いた.

分析方法

調査項目の記述統計を算出した.がん疼痛セルフマネジメントの各項目と痛みの関連はMann-WhitneyのU検定を用いて解析した.分析には,統計解析ソフトIBM SPSS Statistics 24.0 J for Windows(日本IBM,東京)を用い,有意水準5%とした.

倫理的配慮

本研究は,東北大学大学院医学系研究科倫理委員会の承認(2016-1-207)を受け実施した.個室で対象者に,本研究の目的と意義,調査方法,研究参加への自由,調査を拒否することで不利益は生じないこと,データは研究IDを用い連結可能匿名化で管理すること,質問紙回答方法はその場の回答か郵送法かを選択できることなどに関する倫理的配慮を文書で説明した.同意書にて署名が得られた者に調査を実施した.

結果

対象者の背景

研究参加の同意が得られた58名に質問紙を配布した.うち2名は郵送法を希望したが返信が得られず,56名を対象とした.回収率は96.6%であった.

対象者の背景を表1に示した.年齢の中央値は62.5歳で,男性44名(78.6%),がん罹患部位は消化器がん39名(69.6%)が多く,内臓痛と推察される「ズーンと重い」痛みを認知している者が39名(69.6%)であった.非オピオイド鎮痛薬は46名(82.1%)に処方され,医療用麻薬の種類はオキシコドンの徐放性製剤41名(73.2%)および速放性製剤47名(84.0%)が多かった.医療用麻薬の使用期間中央値は3.0カ月,1日モルヒネ等価換算量の中央値は30.0 mgであった.対象者が受けたがん疼痛治療教育は,「医療用麻薬とレスキュー薬の使用方法」55名(98.2%)が最も多かった.

がん疼痛セルフマネジメントの記述統計を図1に示した.90%以上の対象者が行っていた項目は【痛みのアセスメントおよび医療用麻薬の定時服薬の遵守】のうち「医療用麻薬を自分の判断でやめていない」54名(96.4%)および「医療用麻薬を決められた時間に使用している」52名(92.9%),【とり切れない痛みへの方略】のうち「痛みがとり切れないとき,医療者に報告・相談している」42名(93.3%),【レスキュー薬を使用する痛みへの方略】のうち「レスキュー薬は痛みが出たとき使用している」35名(92.1%),【眠気に対する方略】のうち「眠気があるとき,無理な行動はしていない」46名(97.9%)の5項目であった.

痛み(BPI-J)の記述統計を表2に示した.「最も強い痛み」中央値(IQR)が4.0(3.0-6.0),「平均の痛み」が3.0(2.0-4.0),「痛みが及ぼす生活への支障」が3.3(1.1-5.6)であった.痛みが及ぼす生活への支障の下位7項目は,「対人関係」の中央値が1.0(0.0-4.0)と低かったものの,他6項目は3.0であった.

表1 対象者の背景(N=56)
図1 がん疼痛セルフマネジメントの記述統計
表2 痛み(BPI-J)の記述統計(N=56)

がん疼痛セルフマネジメントと痛みの関連

がん疼痛セルフマネジメントと「最も強い痛み」,「平均の痛み」,「痛みが及ぼす生活への支障」の関連を表3に示した.「医療用麻薬を決められた時間に使用している」者は,「痛みが及ぼす生活への支障」が有意に低かった(p<0.05).定時鎮痛薬の切れ目の痛みへの方略では,「我慢する」者は「最も強い痛み」,「平均の痛み」および「痛みが及ぼす生活への支障」が有意に高かった(p<0.05).切れ目の痛みに対して,「レスキュー薬を使用する」者および定時医療用麻薬の「使用時間を早める」者は,「平均の痛み」が有意に低かった(p<0.05).

がん疼痛セルフマネジメントと「痛みの及ぼす生活への支障の下位7項目」の関連を表4に示した.「医療用麻薬を決められた時間に使用している」者は,「日常生活全般」,「歩行能力」,「対人関係」および「睡眠」への支障が有意に低かった(p<0.05).「医療用麻薬を使用する以外に痛みをとる方法を行っている」者は,「気分情緒」への支障が有意に高かった(p<0.05).定時鎮痛薬の切れ目の痛みへの方略として,「我慢する」者は「日常生活全般」,「気分情緒」,「歩行能力」,「睡眠」への支障が有意に高かった(p<0.05).「レスキュー薬は,痛みが出たとき使用している」者は,「睡眠」への支障が有意に高かった(p<0.05).「下剤以外の方法を用いてお通じを調整している」者は,「生活を楽しむこと」への支障が有意に低かった(p<0.05).

表3 がん疼痛セルフマネジメントと「最も強い痛み」,「平均の痛み」,「痛みの及ぼす生活への支障」の関連(N=56)
表4 がん疼痛セルフマネジメントと「痛みの及ぼす生活への支障の下位7項目」の関連(N=56)

考察

本研究は,がん疼痛治療の均てん化が進み,在宅療養を推進しているわが国において,先行研究やガイドラインで疼痛緩和に有効であることが報告されたがん疼痛セルフマネジメントを,実際に患者が行っているのか,さらにそのセルフマネジメントと痛みの実態を明らかにした最初の研究報告である.

本研究で一番重要な点は,医療用麻薬を適切に服薬している者の痛みが低く,切れ目の痛みに対して我慢しない,レスキュー薬を使用する,定時服薬時間を早める者の痛みが低かったという結果より,痛みの緩和には医療用麻薬の服薬が重要であることを改めて裏付けたことである.一方で,現在においても7.1%と少数ではあるが適切に服薬できない患者の存在を示した.しかし,定時医療用麻薬服薬に関するアドヒアランスが国外において33.0%〜90.8%3739),本対象者が92.9%である結果より,比較的高いアドヒアランスをもつ集団であったと考えられる.本研究結果から服薬できない原因を特定することはできないが,平岡によって外来で痛み治療を受けるがん患者が抱える困難が報告されている.困難には,外来通院は生活者としてその人らしい人生を送ることを可能にする一方で,家庭や職場などさまざまな人との関わりによる複雑な困難さがあった40).沖﨑は,医療用麻薬の不適切な服薬の原因の約8割は患者自身にあり,背景には医療用麻薬使用に対する懸念や患者がこれまでの人生で築いてきた社会的な立場や周囲との関係性が「外出時にはオピオイドが飲めない」,「人前でオピオイドを飲みたくない」といった心理を引き起こすと報告している41).Shuらは,「痛みや鎮痛薬使用に関するコミュニケーション」,「投薬の調整」,「助けを求める」,「治療に関連した懸念をマネジメントする」からなる医療用麻薬服薬に関する自己効力感が高いほど,有意に痛みが緩和されていることを報告した30).これらの結果を踏まえると,患者は痛みを我慢せずに,生活において苦慮していることを医療者に相談し,周囲との関係性を調整しながら人の助けを得ることで,早期に患者に合った疼痛治療が検討され,痛みが緩和されることが考えられる.医療者には,患者に対し,患者の対人関係や活動環境を含めた日常生活や言語的あるいは非言語的な反応から潜在的ニーズを理解し,相談しやすい関係の構築が求められる.さらに,適切な服薬や痛みの緩和が困難な患者への在宅療養を継続するセルフマネジメント獲得支援は,外来受診時だけではなく,外来と在宅をつなぐシームレスな支援やさらなる在宅フォローアップ支援の必要性が示唆される.具体的には,電話を用いた支援や,服薬アドヒアランス不良患者には理解が得られるまで複数回にわたる服薬指導,キーパーソンとなる家族を含めた服薬指導,オピオイド以外の薬剤を一包化することによる自己管理簡便化の提案などである42)

また,レスキュー薬を痛みが出てから使用している患者は睡眠への支障が強く,睡眠状況についてアセスメントする必要性が改めて示された.本対象者の約8割に非オピオイド鎮痛薬が処方され,WHOの3段階除痛ラダーに沿った疼痛治療計画が実施されていたが,約4割は「痛みがなく夜眠れる」を目標にしていた.これは,夜間に予測できない突出痛が出現する可能性があった対象であったと考えられる.このような痛みをもつ患者の良質な睡眠確保には,夜間の疼痛パターンや睡眠への支障をアセスメントし,夜間の徐放性製剤の増量や鎮痛補助薬の検討が必要である.

次に重要な点は,医療用麻薬以外の方法を行っている者は気分情緒への支障が高く,精神面への負担を抱えている可能性が示されたことである.ガイドラインではがん疼痛マネジメントに非薬物療法と生活の工夫が推奨されており27),本研究結果はとくにそのようなマネジメントを用いている患者に対して薬物療法に加えた精神面に対するケアが重要であることを示唆している.進行がん患者の痛みは,閾値を低下させるさまざまな苦痛症状43),死に対する不安や尊厳の喪失などの苦痛44)によって痛みを表現するため,医療者は全人的な苦痛の緩和ケアを基本とし,患者の用いているセルフマネジメントによる痛みへの影響をアセスメントし,医療用麻薬の服薬に加えた生活に取り入れやすいセルフマネジメントをともに見出す支援が重要である.

本研究で注意すべき点は,「痛み日記」やメモを活用することによって痛みの軽減に有意差がみられなかったことである.本対象者は,「痛み日記」やメモを活用している者が32.1〜41.1%であったが,受けた教育では記録方法が42.9%,記録を利用した伝え方が28.6%で少なかった(付録表1).その理由は「痛み日記」を知らなかった,説明を受け活用していたがセルフマネジメントが確立し不要になった,または教育背景の不均等によるβエラーの可能性が考えられ,一般化には限界がある.しかし,効果的ながん疼痛治療は,医療者が患者の痛みを理解することから始まる.患者に痛みを測定するスケールやさまざまな性状があることを示す「痛み日記」への記録を提案するなどの教育支援や相談しやすい関係構築が求められる.

最後に本研究の限界と課題について考察する.対象施設はがん診療連携拠点病院1施設であり,患者が受けた教育内容や治療は,緩和ケアに関する研修を受けた医療者による支援を受けていた可能性がある.また,対象者の多くは婚姻し,同居者および介護者ありが各8割を占め,他者からの支援が望める環境で療養している様相が伺えた.一方で,わが国のがん罹患率は60代を越えると女性に比べて男性の割合が高く45),本対象者も男性が多くを占め,セルフマネジメントを促進する要因として妻などの支援者に恵まれた対象者であった可能性があり,女性がん患者への一般化には限界がある.今後は多施設で対象者数を増やした調査を行い,わが国のがん疼痛治療が患者のがん疼痛セルフマネジメントを効果的に高めているのかに関するさらなる調査が必要である.また,本研究は横断調査であり,対象者に医療用麻薬のタイトレーション段階の患者が含まれていたことが考えられ,セルフマネジメントしている者でも強い痛みを持っていた可能性がある.しかし,適切に服薬できない背景は,医療用麻薬の量だけではなく,患者の認識や行動が関係するため,患者の認識や生活に応じた支援が必要であり,今後はがん疼痛セルフマネジメントと痛みの経時的変化を調査する必要がある.さらに本研究で用いたがん疼痛セルフマネジメントは信頼性および妥当性の検証がされていない.概念および概念を生成する項目を再構築し,信頼性および妥当性の検証が課題である.今後は,進行がん患者の疼痛セルフマネジメント能力獲得に向けた介入の開発と効果検証を課題にしている.

結論

本研究は,医療用麻薬服薬中の外来進行がん患者のがん疼痛セルフマネジメントと痛みの関連を横断的に分析し,適切に医療用麻薬を服薬できている者の痛みが低いことが示された.一方で,レスキュー薬は痛みが出たときに使用している者の睡眠および医療用麻薬以外の方法を用いている者の気分情緒への支障が強いことが示された.

痛みの緩和には,医療用麻薬服薬を基本とし,良質な睡眠を確保できる疼痛治療,全人的なケアを含めたセルフマネジメント獲得支援が必要である.

謝辞

本研究にご協力をいただきました対象者および対象施設の皆様に心より感謝致します.なお,本研究は平成28年度東北大学大学院修士論文の一部を加筆修正したものであり,第22回日本緩和医療学会学術大会で本研究の一部を発表した.

利益相反

著者の申告すべき利益相反なし

著者貢献

千葉は研究の構想,データの収集・分析・解釈,原稿の起草に貢献;佐藤(冨),佐藤(菜)は研究の構想,データの解釈,原稿の重要な知的内容に関わる批判的推敲に貢献した.すべての著者は投稿論文ならびに出版原稿の最終承認および研究の説明責任に同意した.

References
 
© 2019 by Japanese Society for Palliative Medicine
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