Palliative Care Research
Online ISSN : 1880-5302
ISSN-L : 1880-5302
Original Research
A Prospective Study of the Effects of “Instruction for Near Death” in the End-of-life Period at Acute General Wards
Maki MurakamiMiwa MakiuchiYoshiko KuboMiyuki KinugasaMiho Yamazoe
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2020 Volume 15 Issue 4 Pages 285-292

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Abstract

【目的】急性期病棟で医師が「臨死期の指示」を出すことが,看取りケアのコミュニケーション(以下,意思疎通)と医療者の困難感を改善させるか検討した.【方法】臨死期指示実施前群,実施群,未実施群の意思疎通をSupport Team Assessment Schedule日本語版(STAS-J)で評価した.また医師と看護師の困難感を研究時期の前後で比較した.【結果】STAS-J第8項「職種間の意思疎通」は実施前群(n=71)0.46±0.53,実施群(n=34)0.18±0.39,未実施群(n=44)0.66±0.48であった(p<0.001).STAS-J第4,6,7,9項の群間に有意差はなかった.困難感意識調査は医師(n=20),看護師(n=77)共に変化を認めなかった.【結語】臨死期指示実施例では職種間の意思疎通が良好であった.医師・看護師の困難感と,家族の不安や意思疎通は寄与しなかった.

緒言

わが国の年間死亡者の72%にあたる98万人は病院が死亡場所であり1),このうち緩和ケア病棟の約5万人2),療養病棟の推計約16万人3,4)などを除いた大多数は一般急性期病棟で最期を迎えている.

急性期病棟で終末期を過ごす患者に対して,緩和ケア病棟と同じように終末期・看取り期の診療とケア(以下,看取りケア)を提供できることは理想である.しかし,現実には本来の業務である急性期医療の質を落とさずに看取りケアをしなければならず,知識・技術の不足,急性期患者と混在していることのストレスや疲労,家族ケアの不足など,さまざまな問題や困難感を抱えている58).急性期病棟のみで構成されている当院においても,看取りケアには多くの困難があり,その理由の一つとして医師と看護師のコミュニケーションが不十分であるという声が多く寄せられた.

われわれは,急性期病棟の看取りケアにおいて,効率的かつ簡便に医師・看護師間の情報を共有する手段として,医師が共通フォーマットを活用して「看取り・臨死期の診療・ケアの指示(以下,臨死期指示)」を出すことにより,看取りケアの質を少しでも改善できればよいと着想した.そして同様の先行研究報告がみられないことより,臨死期指示を出すことによって医療チーム内で同じ目標へ向かった看取りケアを行い,医師・看護師の困難感を軽減するという効果が得られると仮定して,前向き研究を実施した.

本研究の主たる目的は,多忙な急性期病棟において,「臨死期指示」が看取りケアにおける医師・看護師間のコミュニケーションを改善する効果をもたらすか確かめることである.また第二の目的は,この臨死期指示によって医師と看護師の看取りケアに対する困難感を軽減するか,患者家族のコミュニケーションによい効果をもたらすか調査することである.

方法

対象期間

当院における死亡患者数統計を参考にして必要症例数を見積もり,2019年6月〜2020年4月を研究期間と設定した.2019年10月までの前半5カ月は,特別な指示を行わない観察期間(実施前群)とし,同年11月からの後半6カ月は臨死期指示を行う期間とした.

対象症例

当院へ入院した患者のうち,疾患名は問わず,病状の進行・悪化により臨死期を迎えたと主治医チームが判断した患者と,その臨死期の診療・ケアを研究対象とした.臨死期の定義は,身体的な不可逆的機能低下をきたし,生命予後が数日以下〜1週間程度の時期とした.救急病棟(集中治療室ICUと高度治療室HCU)入院患者,20歳未満,病状悪化をきたしていても回復の可能性があると判断されたとき,急変(予期していない死)は除外した.

臨死期指示

患者が臨死期を迎えたと医療チームで判断し,家族の納得・同意(患者の推定意思を含む)が得られたら,主治医が電子カルテの指示欄を用いて臨死期指示を出した(実施群).主な指示内容は,「この患者は看取りが近い=看取り期である」ことの明記,延命治療・心肺蘇生の有無を必須とし,検査・処置の見直しなどで,家族との合意のもとに患者ごとに適切となるよう主治医が作成した.指示に不慣れな医師のために,共通フォーマットの臨死期指示も作成して,指示内容を選択できるようにした.病状の変化に応じて,経過中の変更や中止も適宜行えるようにした.研究担当者から主治医へ臨死期指示の実施は提案せず,指示内容の介入も行わなかった.看護師は,通常の指示(検査,投薬,処置など)と同様に「指示受け」をして,指示に従ってケアを行った.

なお,主治医が不要と判断したときや家族の同意が得られていないときは,臨死期指示は実施しなかった(未実施群).カルテ上に「看取り期である」ことの明示,心肺蘇生に関する指示のないものは未実施群として扱った.

診療・ケアの評価

患者の死亡退院後に,死亡状況(本研究の対象患者か否か)を確認した.対象患者について,基礎情報(年齢,性別,主病名)をカルテより調査し,死亡前(24〜48時間程度)の状態をSupport Team Assessment Schedule日本語版(STAS-J)9)第4,6〜9項により評価した.

本研究での主要評価項目はSTAS-J第8項「職種間のコミュニケーション:患者と家族の困難な問題についてのスタッフ間での情報交換の早さ,正確さ,充実度」とした.副次評価項目としてSTAS-Jの第4項「家族の不安:不安が家族に及ぼす影響」,第6項「家族の病状認識:家族の予後に対する理解」,第7項「患者と家族とのコミュニケーション:患者と家族とのコミュニケーションの深さと率直さ」,第9項「患者・家族に対する医療スタッフのコミュニケーション:患者や家族が求めた時に医療スタッフが提供する情報の充実度」を加え,それぞれ0〜4の5段階で評価した.患者の意識障害や家族不在により評価困難なときは,STAS-Jスコアリング法に基づいて7〜9とし,解析対象からは除外した.

評価日は患者死亡後の速やかな時(数日以内)とし,評価者は研究担当者と病棟スタッフ(プライマリ看護師,看護師リーダー,主治医など)の複数名とした.臨死期指示の実施の有無・内容とその実施期間は,STAS-J評価者とは別の研究担当者がカルテから調査した.対象患者でありながら主治医の判断で臨死期指示のなかった症例(未実施群)と実施前群についても同様のSTAS-J評価を行った.

医師別の臨死期指示実施・未実施状況

臨死期指示を行った期間中(後半6カ月)における臨死期指示の実施・未実施を主治医別に集計した.主治医ごとの対象患者数,すなわち看取り患者数を調べ,このうち臨死期指示を実施した患者が1名以上いるか,未実施の患者が1名以上いるかを後ろ向きに調査した.

医師・看護師の終末期ケアに対する困難感の評価

もう一つの副次的評価として,病棟勤務を行っている医師・看護師(卒後1年目を除く)を対象に,終末期の緩和ケア・看取りケアに対する困難感について意識調査を行い,臨死期指示を導入する前後で困難感の低減を認めるかどうか比較した.

2019年9月(導入前)と2020年3月(導入後)に,医師と看護師へ同じ質問で無記名連結可能自記式質問紙調査を実施した.質問内容は,小野寺ら10),井上ら11)により信頼性・妥当性の検証された,がん看護の困難感を評価する尺度から抜粋し,コミュニケーションに関連するものを主体にした18項目で,回答方法は「1:まったくない・思わない」「2:ほとんどない・思わない」「3:少しある・思う」「4:非常にある・思う」の4段階リッカート尺度とし,点数が高いほど困難感が高いことを示すように設定した(表1).本研究では質問18項目の合計点数(18〜72点)を評価対象とした.

2回目の意識調査では,臨死期指示の有用性を問う「医師からの臨死期指示は看取りの診療・ケアに役立っていると思いますか」という質問を加え,「1:まったく思わない」「2:ほとんど思わない」「3:少し思う」「4:非常に思う」の4段階での回答とした.

表1 終末期診療・ケアに関する意識調査の質問内容

解析

特別な指示を行わない観察期間の症例(実施前群),実施期間における臨死期指示を行った症例(実施群),臨死期指示を行わなかった症例(未実施群)のSTAS-J点数について,Kruskal-Wallis検定,Mann-Whitney U検定を用いて各群の比較をした.また,がんと非がんに分けた比較も行った.各群の年齢・性別・疾患種別(がん/非がん)の比較は一元配置分散分析法,カイ二乗検定を用いた.臨死期のケアに対する困難感については前後比較とし,対応のあるt検定を用いて,医師と看護師は別々に行った.数値表記は平均値±標準偏差とし,p<0.05を統計学的有意差ありと判定した.統計解析ソフトにはEZRを用いた12)

倫理的配慮

本研究はヘルシンキ宣言,人を対象とする医学系研究に関する倫理指針,症例報告を含む医学論文および学会研究会発表における患者プライバシー保護に関する指針に沿って計画し,当院倫理委員会の承認を受けて実施した(受付番号:31-3).

本研究の開始前に,対象入院患者を受け持つ医師・看護師に対して,研究責任者と分担者より文書・口頭で研究の主旨,臨死期指示の実施方法等を説明し同意を得た.臨死期指示を実施する患者においては,その病状を鑑みて家族へ説明と同意の取得を行った.また,医師・看護師への意識調査については,個人が特定されないよう配慮し,その内容を学術的に発表すること,調査票への回答をもって学術発表に同意取得とする旨を記して調査を行った.

結果

研究期間中に対象となった患者は149名で,実施前群71名,実施群34名,未実施群44名であった.各群の背景を表2へ示す.実施群と未実施群間の性別,年齢主病名種別に有意差は認めなかった.実施群における臨死期指示開始から死亡までの期間(暦日)は4.7±3.5日,中央値4.5日,最短1日〜最長15日であった.実施群のうち「看取り期である」ことの明示と心肺蘇生の指示(全例でDo Not Attempt Resuscitationであった)以外に,検査や処置・ケアの詳細な指示が出されたのは19名で,血糖チェック,昇圧剤投与,定時検温,褥瘡処置などへの指示であった.

表2 患者背景

実施前群,実施群,未実施群のSTAS-J点数と解析対象となった患者数を図12に示す.主評価項目であるSTAS-J第8項は実施前群0.46±0.53,実施群0.18±0.39,未実施群0.66±0.48で,実施群は有意に良好であった(p=0.000150,Kruskal-Wallis検定による3群比較)(図1).副次評価項目では,STAS-J第4項が実施前群1.38±0.76と実施群1.19±0.60と未実施群1.37±0.58(p=0.434),第6項が0.56±0.87と0.35±0.66と0.36±0.72(p=0.340),第7項が0.93±0.90と0.82±0.60と1.00±0.37(p=0.642),第9項は0.23±0.50と0.21±0.41と0.14±0.35(p=0.626)であり,いずれも有意差を認めなかった(図2).

図1 臨死期における医師・看護師間のコミュニケーションSupport Team Assessment Schedule日本語版(STAS-J)の第8項「職種間のコミュニケーション:患者と家族の困難な問題についてのスタッフ間での情報交換の早さ,正確さ,充実度」を用いた評価.数値表記は平均±標準偏差,nは解析対象となった患者数,およびMann-Whitney U検定によるp値.
図2 臨死期における患者家族の状態

Support Team Assessment Schedule日本語版(STAS-J)の第4項「家族の不安:不安が家族に及ぼす影響」,第6項「家族の病状認識:家族の予後に対する理解」,第7項「患者と家族とのコミュニケーション:患者と家族とのコミュニケーションの深さと率直さ」,第9項「患者・家族に対する医療スタッフのコミュニケーション:患者や家族が求めた時に医療スタッフが提供する情報の充実度」による評価.数値表記は平均±標準偏差,nは解析対象となった患者数,およびMann-Whitney U検定によるp値.

がん患者と非がん患者に分けた検討結果を付録表1へ示す.主評価項目のSTAS-J第8項は,実施群においてがん患者では有意に良好であり(p=0.000667),非がん患者では有意ではないものの,よい傾向であった(p=0.185).実施前群,実施群,未実施群ごとの比較では,がん患者と非がん患者のSTAS-J第8項に差は認めなかった.

臨死期指示実施期間において,主治医として1名以上の看取り患者を担当した医師数は29名であった.このうち臨死期指示を実施した医師は12名,1回も実施しなかった医師は17名であった.また,実施しなかった医師のうち12名は看取り患者数が1〜2名であり,看取り患者数3〜5名であった医師9名中の5名は臨死期指示を1回も実施していなかった(付録表2).

意識調査票は医師52名,看護師147名へ配布し,医師は導入前33名,導入後25名から回答があり,看護師は各々109名,114名から回答を得た.2回の調査のすべての項目に回答があり前後比較の解析対象となったのは,医師20名(38%),看護師77名(52%)であった.導入前後の合計点数は,医師が導入前49.0±5.0,導入後47.2±5.1,p=0.0749,看護師は導入前50.1±6.9,導入後49.6±6.8,p=0.563であった.

2回目の意識調査における「医師からの臨死期指示は看取りの診療・ケアに役立っていると思うか」に対する回答の分布は図3に示す通りで,点数平均では医師(有効回答数23)が2.8±0.6,看護師(同113)は2.8±0.7であった.

図3 意識調査結果:医師からの臨死期指示は看取りの診療・ケアに役立っていると思うか回答数の分布を示す.

考察

終末期患者の診療・ケアにおける困難感を解決するためには,カンファレンスを行う,研修へ行く,経験を積み重ねる,文献を調べる,などの対処が大切であるとされているが13),いずれも時間と労力を要し,急性期病棟での急性期医療との両立はハードルが高い.英国で開発された看取りのクリニカルパスLiverpool Care Pathway(LCP)を用いると,一般急性期病棟でも看取りの緩和ケアを提供できることが報告された14,15).しかし,LCPの有用性を認めた報告15)でも医療者間のコミュニケーションは悪化傾向を示し,看取りケアに習熟していない医療者への導入前の教育は新たな負担を生じることが指摘されていた16).そして,訓練されていない医療者による不適切運用の問題により,今日ではLCPは使用されなくなった17)

今回,われわれが用いた臨死期指示は「看取り期である」ことの明示と基本的医療行為をセットにしたものであり,LCPのような新たな教育や準備が不要で,多忙を極める急性期病棟において比較的簡便に実施できて,医師・看護師ともに「役に立つ」という意見が多数を占めた.また,医療チーム内で同じ目標へ向かった診療・ケアを行うことを通して,終末期ケアの困難感の一つである「医師と看護師の連携がうまくいかない」13)ことを軽減する可能性が示唆された.これまで心肺蘇生に関する指示の有用性を検討した報告1820)はあるものの,著者が調べた範囲では,看取りが近くなった時期における簡素で訓練不要の臨死期指示が医療者間コミュニケーションへもたらす効果を検証した先行研究は認められず,本研究が最初の報告であると思われる.

なお,臨死期指示を出したこと自体,すなわち患者の看取りケアをするという共通認識が職種間のコミュニケーションをよくしたのか,指示の具体的内容が効果的であったのかは,本研究では明らかではない.柳澤ら13)の文献レビューによると,治癒を目指す医師と「その人らしさ」を願ってケアする看護師の方向性の違いが葛藤となり,医師と看護師の連携がうまくいかない状況を作っているとしている.また,「医師や看護師が患者に対する治療のゴールを共有できていない」ことが困難感の一因とされ,緩和ケア病棟でのがん看護困難感が少ない理由の一つは「医師の治療方針や考え方が,延命よりも生活の質を重視したものとなっている」ことと指摘されている21,22).一般病棟でのLCP導入は「医療者の負担を大きくする」と指摘した菅野ら16)も,「LCPは医療者間で看取りケアの方針を再確認できた」という利点を挙げている.これらの報告から,本研究では「看取りケアをする」というゴール設定を医師が看護師と共有する姿勢が,コミュニケーションへのよい効果をもたらしたと推察した.

本研究では医師・看護師の看取りケアにおける全般的困難感は改善しなかった.その理由として,先行研究5)で示されている「急性期患者と終末期患者が混在しているため,十分な医療・ケアを行えない,家族への配慮ができない,医療者のストレスが増す」ことは構造的な問題であり,簡単には解決できない.その一方で,臨死期指示を実施できた患者が半数に満たなかったために全体的な困難感軽減効果には至らなかった可能性もあり,より多くの患者に臨死期指示を実施できていれば,困難感の改善も得られたかもしれない.本研究では,医師数が限られている当施設において研究参加医師の匿名性を担保するため,実施群と未実施群の担当医師の背景(科目,経験年数など)は調査しなかった.研究期間中の終末期看取り患者数と臨死期指示実施数からわかることとして,看取り機会(頻度)の少ない医師は臨死期指示を出さない傾向であり,終末期の判断や診療に不慣れであった可能性はある.一方で,半年間に3〜5名の看取り患者を受け持っても臨死期指示をまったく出さなかった医師は,終末期に無関心であった可能性もある.医療者と家族のコミュニケーション(STAS-J第9項),家族の病状・予後認識(STAS-J第6項)に各群間の差は認めなかった今回の結果から,われわれは未実施群において主治医が臨死期を認識できていなかったと考えるよりは,主治医が看取りケアに無関心であったと推察した.看取りケアに関心を持つことと臨死期指示は同一ではないが,急性期病棟という看取りケアに不慣れな場所であればこそ,医師がていねいな指示を出すことによって医師・看護師間のコミュニケーションを円滑にすることが期待できる.看取りケアの必要性を認識せず,臨死期指示は不要と考えている医師の意識を変えることは,職種間コミュニケーションと困難感を軽減する一つの手段になると考えるが,これは個々の医師の自助努力のみならず,緩和医療従事者に託された新たな課題である.

また,一般病棟におけるがん終末期看護の困難度が高いのは,患者・家族とのコミュニケーションであると報告されている11,21,22).本研究において,臨死期指示は家族に関連するSTAS-J項目での効果を認めず,家族とのコミュニケーションをよくするためには,さらなる工夫が必要であることが明らかとなった.

本研究にはいくつかの限界がある.(1)一施設での試験であり,サンプル数(症例数,医師・看護師数)が少ない,(2)無作為化試験ではないため,医師の個性や終末期への関心度がコミュニケーションへ影響していた可能性があり,これの検証を行えていない,(3)臨死期指示の内容は検証していない,(4)終末期ケアに対する困難感の調査は合計点数のみを評価対象としており,個別の困難感は評価していない,(5)STAS-Jは,現在存在している患者の問題を網羅的に把握するツールであり,事後評価に用いる妥当性は確立していない,などである.(1)(2)については,多施設での再試験,あるいは無作為化した試験により本研究の検証を行う余地がある.あるいは医師の看取りケアへの関心度と職種間コミュニケーションの関連性を評価する追加研究は有用と思われる.(3)に関しては,心肺蘇生の指示以外は主治医の裁量で指示されていたため,各々解析できる患者数は揃わなかった.(4)については,本研究で得られたデータを副次解析して報告することを検討している. 

本研究は時期や条件の異なる患者群の比較を行ったが,急変患者などを除外していわゆる終末期患者を対象とし,一つの施設の同じ医師群と看護師群のコミュニケーションを評価していることより,研究の妥当性はあると考える.その一方で,コミュニケーションは職場の環境,医師と看護師の関係性にも依存しており,本研究の限界である.

結論

本研究では,急性期病棟入院患者の看取り期に医師が臨死期指示を行った効果を検討し,その実施例では臨死期における医師・看護師間のコミュニケーションを改善することが明らかとなった.一方で,本研究で用いた臨死期指示だけでは,医師・看護師の終末期ケアに対する全般的困難感を低減するには至らず,家族の不安やコミュニケーションへ寄与しないことも示された.

利益相反

すべての著者に申告すべき利益相反なし

著者貢献

村上,牧内は研究の構想およびデザイン,データの収集・分析・解釈,原稿の起草に貢献;久保,衣笠,山添は研究データの解釈,原稿の重要な知的内容に関わる批判的な推敲に貢献した.すべての著者は投稿論文ならびに出版原稿の最終承認,および研究の説明責任に同意した.

References
 
© 2020 by Japanese Society for Palliative Medicine
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