Palliative Care Research
Online ISSN : 1880-5302
ISSN-L : 1880-5302
Original Research
Difficulties and Related Factors Experienced by Nurses in Caring for Patients with Recurrent and Metastatic Malignant Musculoskeletal Tumor
Kiyomi MisawaEiko MasutaniHarue Arao
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2020 Volume 15 Issue 4 Pages 309-319

Details
Abstract

【目的】再発・転移をきたした悪性骨軟部腫瘍患者のケアに携わる看護師が抱く困難感の実態とその関連要因を明らかにする.【方法】骨軟部腫瘍治療を行う12施設の看護師315名を対象に,看護師のがん看護に関する困難感および本疾患患者のケアへの困難感を調査した.また重回帰分析により関連要因を検討した.【結果】回答者は165人(有効回答率52.4%)であった.〈看護師のがん看護に関する困難感〉では,コミュニケーションの困難が最も高く,自らの知識・技術や,システム・地域連携の困難も高かった.〈悪性骨軟部腫瘍患者への看護に関する困難感〉では,ケアの対象特性に関することが高かった.関連要因は,施設特性,看護師経験や骨軟部腫瘍看護経験,骨軟部腫瘍看護の学習方法,多職種カンファレンスを認めた.【結論】骨軟部腫瘍に携わる看護師は,全人的苦痛,発症年齢,希少性に基づく困難があり,背景要因を踏まえた支援が必要である.

緒言

原発性骨軟部腫瘍は,日本全体で年間新規で40例から50例の発生1),悪性骨軟部腫瘍の発生率は10万人に3.6人と推定される2)希少がんであり,幅広い年齢層に生じる特徴を持つ.

骨腫瘍のなかで最も発生頻度の高い骨肉腫は,外科切除,また術前後の化学療法に加え,手術にて健常な組織で腫瘍を包むように切除することが推奨されている3).軟部腫瘍に関しても,手術単独で適切な切除縁の確保が困難な場合には,化学療法や放射線治療が併用される.4)

このことから,悪性骨軟部腫瘍の治療は身体侵襲が大きいといえる.また骨軟部腫瘍の治療は身体機能障害や活動制限等,患者の日常生活に影響を及ぼし,患者のQOLの低下につながることが述べられている5,6)

悪性骨軟部腫瘍の治療成績では,転移・再発をきたした場合,予後が不良のケースも多く,再発や転移をしないために取り組んだ治療への努力が報われなかった無力感と同時に自分の人生の終わりが近づいた感じを否応なしに突きつけられるとされる7).よって看護師には十分な知識・技術を身につけ,他職種と連携し質の高いケアの提供が求められる.

がん看護に携わる看護師は,さまざまな場面で困難感を抱えているとされるが,再発・転移をきたした悪性骨軟部腫瘍患者のケアに携わる看護師も例外ではない.先に述べた疾患の特性を踏まえると多様な困難が存在していると考えられる.

看護実践上の困難に関して,先行研究では看護師の抱える困難感の背景要因として,病院分類や臨床経験年数等の環境特性や個人属性が挙げられている8,9).一方,これまで悪性骨軟部腫瘍患者に携わる看護師を対象とした研究は未着手の状態にある.

第3期がん対策推進基本計画でも希少がんおよびAdolescent and Young Adult(AYA)世代のがん医療の充実が掲げられており,早急に質の高いケアが求められるなか,悪性骨軟部腫瘍患者の看護を検討するうえで,基礎資料となる研究が求められている.そこで本研究は,再発・転移をきたした骨軟部腫瘍患者のケアに携わる看護師が抱く困難感の実態とその要因を明らかにすることを目的とする.

方法

研究デザイン

量的記述的研究

用語の操作的定義

看護の困難感:看護師が患者とその家族へケアを提供する過程で難しさを自覚すること.

対象者

2014年7月1日時点で日本整形外科学会ホームページ10)に記載された骨軟部腫瘍の治療を行う全国89の医療施設より無作為化抽出した12施設において,骨軟部腫瘍の治療を行う整形外科病棟看護師を対象とした.ただし,後述する全国がんセンター協議会加盟病院(以下,加盟病院)・非加盟病院数が6施設ずつとなるよう層別無作為抽出した.管理者である病棟看護師長は対象者から除外した.

調査手順

無記名自記式質問紙を施設の病棟看護師長より2014年7~12月に配布し,郵送にて回収した.

調査内容

1.再発・転移をきたした骨軟部腫瘍患者に携わる看護師の困難感

〈A.看護師のがん看護に関する困難感(以下,がん看護困難感)〉

看護師のがん看護に関する困難感尺度11,12)を使用した.本尺度は,「コミュニケーション」「自らの知識・技術」「医師の治療や対応」「告知・病状説明」「システム・地域連携」「看取り」に関することの6領域49項目からなる.各項目は,「6:非常にそう思う」~「1:全くそう思わない」の6段階評定で,高得点ほど困難感が高いことを示す.

がん患者のケアに携わる病棟で働く看護師を対象とした本尺度の信頼性や妥当性は確認されている.

なお,尺度開発者の許可を得て,教示文を「再発・転移をきたした悪性骨軟部腫瘍患者・家族のケアをする時にどのように感じているか」とし,骨軟部腫瘍に関する困難感とした. 

〈B.悪性骨軟部腫瘍患者への看護に関する困難感(以下,骨軟部腫看護の困難感)〉

先行文献を参考に研究者内で検討し,「身体機能」「ボディイメージの変化」「未確立の治療」「ケアの対象特性」「希少がん」に関することの5領域11項目を独自に作成した.得点は困難感尺度と同様に設定した.なお,本尺度で用いている「若年患者」は,成人患者と対比する用語として使用し,20歳以下を指す.

2.関連要因

がん患者と接する機会が少ないと看護師のケア経験の蓄積が難しいことから,がん専門病院と非がん専門病院では知識量に差が生じるとされる13).施設の環境要因として骨軟部腫瘍の治療を行う医療施設のうち,全国がんセンター協議会ホームページ14)の加盟施設に記載された病院を加盟病院,それ以外を非加盟病院に分けた.また,病棟カンファレンスの参加職種も尋ねた.看護師の背景要因では,看護師経験年数や骨軟部腫瘍看護経験年数,資格認定の有無,悪性骨軟部腫瘍患者と関わる機会,がん看護および悪性骨軟部腫瘍看護の学習方法を尋ねた.

分析方法

1.困難感は,基礎分析後,〈B.骨軟部腫瘍看護の困難感〉について主因子法・プロマックス斜交回転による因子分析を行い,各因子と全体のCronbachのα係数を確認した.その後,〈A.がん看護困難感〉とともに各領域と項目の平均値とSDを算出した.また分布では,4点「ややそう思う」〜6点「非常にそう思う」の合計割合を「そう思う(合計)」として求めた.

2.困難感の関連要因は,困難感と背景要因の関係をt検定や順位相関で分析し,p値が0.2以下の変数および看護経験年数,骨軟部腫瘍看護経験年数を用いて重回帰分析(Stepwise法)を行った.多重共線性は相関(〈0.8),VIFにより確認した.有意水準は5%とし,SPSS Statistics Ver.26(日本IBM,東京)を用いた.

倫理的配慮

大阪大学医学部保健学倫理委員会の承認後に実施した(受付番号:291).対象施設の看護部長に,研究参加が任意であることを説明し協力を依頼した.研究の主旨や個人情報保護などは文書にて説明した.

結果

対象者背景

対象施設12施設の整形外科病棟看護師315人に質問紙を配布し,168人から回収した(回収率53.0%).そのうち,病棟看護師長の回答を除く165人を分析対象とした(有効回答率52.4%).対象者の背景を表1に示す.

表1 対象者の背景

悪性骨軟部腫瘍患者への看護に関する困難感の因子分析

〈B.骨軟部腫瘍看護の困難感〉11項目の因子分析では,2因子を抽出した(表2).第一因子は8項目で,[悪性骨軟部腫瘍患者へのケアに関すること]と解釈した.第二因子は3項目あり,[ケアの対象特性に関すること]と解釈した.Cronbachのα係数は,全体で0.93,[悪性骨軟部腫瘍患者へのケアに関すること] 0.93,[ケアの対象特性に関すること]0.90であった.これら二因子を〈B.骨軟部腫瘍看護の困難感〉の下位領域とし,〈A.がん看護困難感〉6領域とともに分析した.

表2 〈B.悪性骨軟部腫瘍患者への看護に関する困難感〉の因子分析

再発・転移をきたした骨軟部腫瘍患者のケアに携わる看護師の困難感の様相(表3

〈A.がん看護困難感〉では,6領域のうち[コミュニケーションに関すること(4.5±0.7)]が最も高く,全項目平均4.0点以上を示した.「そう思う(合計)」の割合では,「患者と家族のコミュニケーションが上手くいっていない場合の対応」「十分に告知をされていない患者とのコミュニケーション」の2項目は95%以上を占めた.さらに,「転移や予後など〈悪い知らせ〉を伝えられた後の患者への対応」を加えた3項目は,6割以上の対象者が評価点5点以上の高い困難を示した.

次いで[自らの知識や技術に関すること(4.0±0.9)]が高かった.心理面や身体面のアセスメント,抗がん剤治療や放射線治療に関することなど5項目が平均4.0点以上を示し,「そう思う(合計)」とする者が7割以上であった.

[システム・地域連携に関すること(3.9±0.8)]も困難が高い傾向にあり,「身寄りがない者の在宅療養」「経済的な問題を抱えた患者への対応」など平均4.0点以上を示す項目が3項目あった.また,7項目で「そう思う(合計)」とする者が6割以上であった.

[医師の治療や対応に関すること(3.1±1.0)],[告知・病状説明に関すること(3.1±0.9)]の困難は比較的低かったが,「そう思う(合計)」とする者は2〜5割近くと幅があった.

〈B.骨軟部腫瘍看護の困難感〉では,[ケアの対象特性に関すること(4.2±1.0)]が高く,全項目平均4.0点以上を示した.「そう思う(合計)」とする者も全項目7割以上となった.また自由記載では,「若年層の患者が比較的多く家族や本人への対応がストレスとなることもある」との意見もあった.[悪性骨軟部腫瘍患者へのケアに関すること(3.7±0.9)] は,「四肢切断患者の心理的サポートに困難を感じる」,「ケアの知識や技術に関する情報収集が困難に感じる」の2項目は平均4.0点以上となり,「そう思う(合計)」とする者が7割以上であった.

表3 再発・転移をきたした骨軟部腫瘍患者に携わる看護師の困難感の領域および項目平均値と分布

再発・転移をきたした悪性骨軟部腫瘍患者のケアに携わる看護師の困難感の関連要因

単変量解析では,看護師・骨軟部腫瘍看護経験年数,施設特性,がん看護の学習方法,骨軟部腫瘍看護の学習方法,カンファレンスの参加職種が困難感に関連していた(表4).

多変量解析では,[コミュニケーションに関すること]は,非加盟病院の方が加盟病院より困難感が高かった(p<0.001).[自らの知識・技術に関すること]は看護師経験年数が長く(p<0.001),院内研修(P=0.001)で骨軟部腫瘍を学んだ者は困難感が低い傾向であった.[システム・地域連携に関すること]では,看護師経験年数が長いと困難感が高いが(p=0.001),骨軟部腫瘍看護経験(P=0.045)を重ね,院内研修で骨軟部腫瘍を学んだ者は(p=0.006)困難感が低かった.[医師の治療や対応に関すること]では,先輩や上司から骨軟部腫瘍の指導(p=0.005)を受けたり,CN/CNSのカンファレンス参加(p=0.023)により困難感が低くなった.[告知・病状説明に関すること]は理学療法士(p=0.005)のカンファレンス参加で困難感が低くなった.[悪性骨軟部腫瘍患者へのケアに関すること]では骨軟部腫瘍看護経験年数が長く,理学療法士がカンファレンスに参加していると困難感が低かった(p=0.001)(表5).

表4 再発・転移をきたした悪性骨軟部腫瘍患者のケアに携わる看護師の困難感と背景要因の単変量解析
表5 再発・転移をきたした悪性骨軟部腫瘍患者のケアに携わる看護師の困難感と背景要因の多変量解析

考察

再発・転移をきたした悪性骨軟部腫瘍患者のケアに携わる看護師の困難感の実態

今回,〈B.悪性骨軟部腫瘍患者への看護に関する困難感〉として,2領域が抽出され,[ケアの対象特性]に関する困難が高かった.若年患者・家族への対応や発達段階を踏まえたアセスメントについて,「そう思う(合計)」とする看護師が,7割以上を占めたことは注目される.

骨軟部腫瘍は幅広い年齢層に発症し,医療者は若年者のケアを経験することも多い.例えば骨肉腫は10歳代に発症しやすく15),成人患者のケアとは異なる配慮が必要となるため困難も高かったと考えられる.思春期患者のケアに生じやすい問題では,心身の苦痛,再発・将来・死の安,晩期障害の影響,病気・治療の知識や自己管理の不十分さ,意思決定の困難さ,親子の葛藤,社会への不適応等,さまざまである16).とくに骨軟部腫瘍では,治療による身体可動性低下や長期入院で思春期のライフスタイルにおける活動制限を引き起こし,思春期患者のケアで重視すべき友人関係にも影響する.よって再発・転移をきたした若年患者の場合,伴う苦痛は多岐にわたり,その支援体制が望まれる.

また[悪性骨軟部腫瘍患者へのケア]では,「四肢切断患者の心理的サポート」や「ケアの知識や技術に関する情報収集の困難」は,7割以上が困難と感じていた.これは,骨軟部腫瘍が希少がんであり経験的に学ぶことも難しく,また教育機会が限られることも要因と推測される.よって,今後は情報提供の機会について検討していく必要がある.

一方,〈A.看護師のがん看護に関する困難感〉では,[コミュニケーション][自らの知識・技術][システム・地域連携]の順に困難感が高く,大学病院の一般病棟看護師を対象とした先行文献17)と6領域の相対的順位は同様であった.しかし今回,最も困難の高かった[コミュニケーション]の領域では,患者と家族のコミュニケーションが上手くいかない場合や十分に告知をされていない家族との対応において,95%以上の看護師が困難を感じ,先行研究より高い傾向にあった.加えて,転移や予後など悪い知らせを伝えられた後の患者への対応も含めた3項目では,6割以上の看護師が5点以上の高い困難を示し特徴的であった.コミュニケーションの困難は他文献でも指摘されているが11,18),骨軟部腫瘍の場合,再発・転移により死と向き合わざるを得ない特徴と若年患者への対応という二重の背景が推察された.骨軟部腫瘍は広範切除や長期化学療法後にも再発リスクがあり,肺転移では予後不良のケースも多い.とくに骨肉腫では,治療後1年以内の再発では3年生存率は極めて低い19).再発・転移の告知は,長期治療を乗り越えてきた患者に衝撃を与え,厳しい追加治療を強いられる患者・家族の苦痛の大きさから看護師の困難も高くなると考えられる.また先述のように骨軟部腫瘍は若年患者も多い.成長過程の中で理解力もさまざまであり,説明には成人に対する以上の配慮が必要である20).さらに,長期療養のなかで同病者の友人を失う経験を持つ場合,再発・転移が死への恐怖となることもあり,病状告知には家族・医療者も慎重になる.未告知の場合,また告知後も家族が患者との対応に戸惑い,支援する医療者も対応に苦慮することが高い困難感につながりやすいと推察された.

[自らの知識・技術]に関しては,抑うつなどの心理的なサポート,抗がん剤治療や放射線治療や,呼吸困難などのアセスメントや治療・ケアに関する困難が高く,先行文献と同様であった.骨軟部腫瘍では苦痛を伴う長期治療の末,再発・転移となる場合も少なくないため,心理社会的苦痛は大きく,不安や抑うつ症状につながり得る.化学療法は集中的に長期入院において高用量で行われることも多く,有害事象の知識も必要となるため,骨軟部腫瘍の特徴を踏まえた学習支援の充実が望まれる.

[システム・地域連携]の困難も高く,先行文献と同様,家族や経済に問題がある場合の困難が上位となった.しかし今回,治療期と終末期の患者を同じ病棟で受け持つ困難が3位と高く特徴的であった.入退院を繰り返す若年患者もいるなか,再発転移で厳しい状況にある患者にも同時に対峙する困難が推察された.

その一方,[医師の治療や対応][告知・病状説明]では,困難感を感じる看護師が5割未満と先行文献より少なく,とくに医師の説明や医師・看護師の連携で困難が低い結果であった.これは若年患者との対応の困難さゆえに,患者の発達段階に配慮しつつ医師が説明を重ね,看護師や他職種と連携が図られている状況も推察された.しかしながら,困難感は個々の問題意識や関心にも影響を受け,実践の質と直接結びつかない場合もある17).この結果は,大学病院と一般病院の意識の違いを示している可能性もあり,慎重に吟味する必要がある.また困難感は比較的低いが,半数近くが困難感を示している項目もあり,実態を深く探り,困難感軽減に向けた支援が必要と考える.

看護師の困難感の背景要因

今回,非加盟病院の方が加盟病院より,[コミュニケーション]に関する困難が高かった.先行研究では,一般病院よりがん専門病院の方が告知を望む看護者が多いことや,一般病院で疼痛コントロールの知識やアセスメントレベルが低い傾向が報告されており13,21),施設特性で看護観や知識量も差異があることも推察される.さらに骨軟部腫瘍は希少がんであり,単施設ではケア経験が蓄積されにくいため,多施設とのネットワーク構築に加え,支援内容の検討が必要である.

また,看護師経験のみならず骨軟部腫瘍の看護経験,院内研修などの学習経験が[自らの知識・技術][悪性骨軟部腫瘍患者へのケア][システム・地域連携]に関することの複数領域で困難感低下につながっていた.治療やケア,全身状態のアセスメントなど一般的知識や技術は看護師経験を積むなかで習得できることもある.しかし,骨軟部腫瘍は希少がんであり,学習機会は少ない.ベナーは,「どんな看護師も経験のない科の患者を扱うとき,ケアの目標や手段に慣れていなければ,その実践は初心者レベルである」と述べている22).そのため骨軟部腫瘍看護経験が重要であり,困難感低下の一助として骨軟部腫瘍の院内研修の充実が求められる.さらに,多職種で行うカンファレンスは,[悪性骨軟部腫瘍患者へのケア][医師の治療や対応][告知・病状説明]などの困難を低下させる傾向にあり,とくに理学療法士の参加が困難低下に関連していた.身体侵襲の大きな手術がADLに影響を及ぼすことが多い骨軟部腫瘍では,カンファレンスにおける理学療法士の役割も大きい.医師や他職種との連携も含め多職種カンファレンスをいかに運営・活用するかも困難感の軽減に重要と考える.

看護への示唆

再発・転移をきたした悪性骨軟部腫瘍患者のケアに携わる看護師の困難感は,骨軟部腫瘍に特徴的な病態や治療による患者・家族の全人的苦痛が要因となって高まっており,困難感が高かった領域に対して優先的に支援を行う必要がある.背景要因によって困難感の程度に差があるため,支援内容として,多職種と連携し,これらの背景要因も踏まえる必要性が示唆された.

患者と最も多くのときを過ごす看護師は,患者・家族が安心して治療と向き合えるよう,医療チームの一員としての役割が果たすことが,より質の高いケアの提供につながる.疾患の特性と患者の苦痛を理解し,看護師の抱える困難感に寄り添えるリーダー的存在の育成も必要である.

研究の限界

本研究では,施設ごとに質問紙回収率に差を認め,回答に偏りが生じた可能性がある.また非加盟病院でも骨軟部腫瘍患者と接する機会など施設環境にばらつきがあるため,結果を一般化することは難しい.さらに困難感は,看護師の問題意識や関心の高さにより影響を受けるため,実践の質とは一致しない可能性もあり詳細に実態を探る必要がある.加えて,骨軟部腫瘍のケアにおける困難感の項目は,測定ツールとしての信頼性や妥当性は十分検討されていないこと,今回選択した背景要因以外にも困難感を高める要因が存在することが予測されるため,さらに研究を重ねる必要がある.

結論

再発・転移をきたした悪性骨軟部腫瘍患者のケアに携わる看護師の困難感は,〈看護師のがん看護に関する困難感〉では,コミュニケーションに関する困難が最も高く,次いで,自らの知識・技術や,システム・地域連携の困難も高かった.また〈悪性骨軟部腫瘍患者への看護に関する困難感〉ではケアの対象特性に関する困難感が高かった.困難感の関連要因では,施設特性,看護師経験や骨軟部腫瘍看護経験,骨軟部腫瘍看護の学習経験,多職種を含めたカンファレンスを認めた.骨軟部腫瘍に携わる看護師は,全人的苦痛,発症年齢,希少性に基づく困難があり,背景要因を踏まえた支援が必要である.

謝辞

本研究に御協力くださった看護師の皆様に深くお礼申し上げます.

研究資金

本研究は平成26年度大阪府対がん協会のがん研究奨励金を受けて実施した.

利益相反

著者の開示すべき利益相反なし

著者貢献

三澤,升谷,荒尾は研究の構想,デザイン,データ収集・分析,原稿の重要な知的内容に関わる批判的な推敲に貢献した.すべての著者は投稿論文ならびに出版原稿の最終承認,研究の説明責任に同意した.

References
 
© 2020 by Japanese Society for Palliative Medicine
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