Palliative Care Research
Online ISSN : 1880-5302
ISSN-L : 1880-5302
Original Research
Association between Catastrophizing, Subjective Symptoms, Upper Extremity Function, and Disability in Cancer Patients with Chemotherapy-induced Peripheral Neuropathy
Yuta IkioAkira SagariJiro NakanoYasutaka KondoFutoshi OdaSatoshi OgaTakashi HasegawaToshio Higashi
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2020 Volume 15 Issue 4 Pages 331-338

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Abstract

【目的】化学療法誘発性末梢神経障害(CIPN)を呈したがん患者の痺れおよび疼痛に対する破局的思考と,自覚症状,上肢機能,生活障害との関連を調べること.【方法】上肢にCIPNを認めた造血器腫瘍および消化器がん患者の破局的思考(PCS:合計得点,反芻,無力感,拡大視),痺れおよび疼痛に対する自覚症状,上肢機能,生活障害を評価し,Spearmanの順位相関係数を求めた.【結果】破局的思考と生活障害との間に有意な相関関係を認め,上肢機能との間には有意な相関関係は認めなかった.PCSの下位項目別では,反芻のみ自覚症状と有意な相関関係を認めた.【結論】上肢にCIPNを認めたがん患者の生活改善のためには,機能面に対する評価やアプローチだけでは不十分な場合があり,破局的思考などの認知的側面に対する評価やアプローチも考慮する必要がある.

緒言

がん化学療法による有害事象の一つに化学療法誘発性末梢神経障害(chemotherapy-induced peripheral neuropathy: CIPN)があり,タキサン系抗がん剤,ビンカアルカロイド系抗がん剤,白金製剤など固形がんから造血器腫瘍までさまざまながん腫で使用される主要な抗がん剤の有害事象である.主な症状としては,四肢末梢の痺れや疼痛などの感覚神経障害であり,時に筋力低下や筋萎縮等の運動神経障害も引き起こす1).上肢に関しては,手指の症状のために,更衣動作や書字動作などの日常生活動作や仕事,余暇活動など,日常生活におけるさまざまな場面で巧緻性や筋力を必要とする動作が困難となり24),Quality of Life(QOL)を低下させる57).現在,CIPNに対するさまざまな治療法や予防法の有効性が検証されているが,限定的であり十分にエビデンスの確立された治療法や予防法はなく8,9),通常は抗がん剤の減量や投与中止,治療レジメンの変更で対応することが多く,治療を継続するうえでも大きな問題となっている.また,Seretnyらによるメタアナリシスでは,化学療法終了後の1カ月以内で68.1%,3カ月後で60%,6カ月以降であっても30%に症状が残存している10)と報告されており,卵巣がん患者を対象とした調査では,治療終了後2年までは症状の軽減を認めたが,それ以降は一定の症状が残存したままであった6)との報告もあるように,慢性的に症状を認めるケースも少なくなく,難治性の症状であり,CIPNに対する介入戦略を検討していくことは非常に重要である.

一方,国際疼痛学会(International Association for Study of Pain: IASP)は,痛みは「実際の組織損傷や潜在的な組織損傷に伴う,あるいはそのような損傷の際の言葉として表現される,不快な感覚かつ情動体験」11)と定義しており,痛みは主観的体験であり,感覚的側面だけでなく,情動や認知としての側面を有している.痛みの代表的な認知的要因として,痛みに対する悲観的・否定的な感情である破局的思考(catastrophizing)が挙げられる.破局的思考は痛みの慢性化に関与するとされており,Vlaeyenによるfear-avoidance model12)によって説明される.これは,破局的思考に陥ると,痛みに対する恐怖が増え,痛みを伴う行動を過剰に回避・制限するようになり,その結果,不活動や抑うつ,機能障害などさまざまな問題を引き起こし,さらに痛みを増悪,持続させる悪循環となる.また,破局的思考は痛みの強さや痛みに関連する障害,心理的ストレスとの関係性も報告されており13,14),痛みを呈している患者に対して破局的思考を評価することは,痛みに関連する障害や痛みの慢性化を予測するうえで重要である.

破局的思考と痛みの程度や生活障害等との関連を調べた先行研究1318)は近年増えてきているが,慢性腰痛や軟部組織損傷などの筋骨格系疼痛に関する内容1317)が多くを占め,がん患者における神経障害性疼痛に関する内容18)のものは少なく,CIPNのようながん化学療法による神経障害性疼痛を呈した患者の自覚症状の程度や上肢機能および生活障害に対する影響は明らかとなっていない.そこで本研究では,上肢にCIPNを呈した患者の痺れおよび疼痛に対する破局的思考と,痺れや疼痛などの自覚症状,上肢機能および生活障害との関連について検討した.

方法

対象

2017年4月から2019年11月の間に,当院で化学療法実施中の造血器腫瘍患者と消化器がん患者を後方視的にリクルートした.選択基準は,神経障害を誘発する薬剤(ビンカアルカロイド系抗がん剤,タキサン系抗がん剤,白金製剤,ボルテゾミブ)を使用している患者でCIPNを認め2クール以上症状が続いている者とした.また,CIPNの診断は主治医が症状の病歴,神経毒性を有する化学療法後に始まる四肢末端の痺れまたは知覚異常の存在に基づいて行い19),有害事象共通用語基準(Common Terminology Criteria for Adverse Events: CTCAE)を用いて評価した.なお,他の神経疾患との鑑別においては,より慎重を期して神経内科医による診察を依頼した.除外基準は,20歳未満の者,重篤な臓器障害(肝不全,急性心不全等)を呈している者,上肢に疼痛や神経症状を呈する疾患およびその可能性のある疾患を有している者(骨折等の外傷,脳梗塞等の中枢神経疾患,糖尿病やリウマチ,頸髄症等の神経症状や疼痛を及ぼす可能性がある疾患),認知機能が低下している者(Mini Mental State Examination: MMSEが23点以下),既往にうつ病や統合失調症などの精神疾患を有している者,骨病変のある者,CIPNに対してすでに薬物療法を実施している者,上肢以外の身体部位においてCIPN以外の神経障害性疼痛やがん性疼痛およびがんに関連しない疼痛を訴えている者,oxaliplatin(L-OHP)を使用している消化器がん患者で,急性障害のみの者.

評価

評価は,治療日の前日または治療実施日の治療開始前に実施した.評価の実施は,研究代表者以外の2名が担当し,対象者と1対1で集中できる個室で実施した.なお,質問紙に関しては,対象者に渡して回答してもらい,わからない部分等は評価者が質問に応じた.

1.破局的思考

Pain Catastrophizing Scale日本語版(PCS)20,21)を用いた.PCSは13項目からなる自己記入式の質問紙で,各項目0~4点で測定する評価法であり,高値になるほど破局的思考が強いことを表しており,信頼性および妥当性が確認されている20).PCSは「反芻;痛みのことが頭から離れられない」,「無力感;痛みに対して自分は何もできない」,「拡大視;痛みを必要以上に大きな存在としてとらえてしまう」の三つの下位項目について評価し,反芻では,「痛みが消えているかどうか,ずっと気にしている」「痛みが消えることを強く望んでいる」など,無力感では,「もう何もできないと感じる」「痛みはひどく,決してよくならないと思う」など,拡大視では「痛みがひどくなるのではないかと怖くなる」などの項目がある.本研究においては,痺れも痛みに含まれるものとして,対象者に回答してもらった.

2.自覚症状

痺れや疼痛症状の程度をVisual Analog Scale(VAS)を用いて評価し,手の症状が,「全くない」を0 mm,「これ以上耐えられないくらい強い」を100 mmと規定した.

3.上肢機能

筋力,触覚閾値,手指巧緻性とした.筋力の評価は利き手の握力とピンチ力とし,計測には,握力計(グリップD,竹井機器工業)とピンチ力計(Digital Pinch Gauge, JAMAR)を用いて2回測定したうちの最大値を採用した.触覚閾値の評価は,Semmes-Weinstein Monofilaments Test(SWT)を用いて示指指腹の触覚閾値を測定した.巧緻性の評価は,Perdue Pegboard Test(PPT)を実施し,30秒間でペグを指定の穴に押し込む課題を用い,その押し込んだペグの本数で評価した.

4.生活障害

Michigan Hand Outcomes Questionnaireの日本語版(MHQ)22,23)を用いた.MHQは,「手の全般的機能」,「日常生活動作(ADL)」,「仕事」,「疼痛」,「外見」,「手の機能に対する患者の満足度(満足度)」の6つの下位項目からなる自己記入式の質問紙である.各項目5件法で回答し,0~100点の範囲に標準化され,「疼痛」の項目では,より高い点がより強い痛みを示し,他の5つの項目では,より高い点がよりよい状態を表しており,信頼性および妥当性が確認されている23).「全般的機能」の項目では,手がうまく使えたか,力や感覚はどうだったか等を尋ねている.「ADL」の項目では,小銭を拾う,びんを開ける,シャツ・ブラウスのボタンをかける等の手を用いる項目に関して難しさの程度を尋ねている.「仕事」の項目では,家や学校における普段の仕事が,手が原因でどの程度妨げられたかを尋ねている.「疼痛」の項目では,疼痛の程度や頻度,疼痛が原因で睡眠や日常の動作に差し支えたか等を尋ねている.「外見」の項目は,手の外見に満足しているか,外見のために嫌な思いをすることがあったか等を尋ねている.「満足度」の項目は,手の動き,力や痛みおよび感覚等にどの程度満足しているかを尋ねている.

5.その他

その他の医学的情報として,年齢,性別,診断名,血液データ(白血球数,ヘモグロビン値,血小板数),罹患期間,治療歴,現行レジメンの治療開始日から評価日までの期間(治療期間)をカルテより調べた.

データ解析

データ解析は,PCSの合計得点および下位項目(反芻,無力感,拡大視)と自覚症状,上肢機能,生活障害との相関関係を検討するためにSpearmanの順位相関係数を求めた.統計処理にはSPSS Statistics ver.25を使用し,有意水準は5%とした.なお,本研究は,日本赤十字社長崎原爆病院の倫理委員会(第614号)において承認を得て実施し,対象者に口頭と文章で説明し同意を得ている.

結果

対象者の基本特性を表1に示す.対象者の年齢は中央値で67.5歳(50-87歳,男性14名,女性18名)であった.診断は,悪性リンパ腫17名,大腸がん8名,胃がん5名,膵臓がん2名であった.使用した神経毒性のある薬剤はvincristine(VCR)が17名,L-OHPが13名,nab-paclitaxel(nab-PTX)が2名であった.各評価項目の結果を表2に示す.PCSの合計得点は中央値で16.5(0-43)であり,下位項目においては,反芻8.5(0-19),無力感5(0-15),拡大視3(0-10)であった.

Spearmanの順位相関分析の結果を表3および表4に示す.PCSの合計得点は,MHQの「ADL」(ρ=−0.412, p<0.05),「仕事」(ρ=−0.581, p<0.01),「外見」(ρ=−0.374, p<0.05),「満足度」(ρ=−0.547, p<0.01)との間に有意な中等度の負の相関関係を認め,「疼痛」(ρ=0.672, p<0.01)との間に有意な中等度の正の相関関係を認めた.自覚症状,上肢機能との間には有意な相関関係を認めなかった.下位項目に関しては,反芻は,自覚症状(ρ=0.365, p<0.05)との間に有意な弱い正の相関関係,MHQの「ADL」(ρ=−0.395, p<0.05),「仕事」(ρ=−0.580, p<0.01),「満足度」(ρ=−0.479, p<0.01)との間に有意な中等度の負の相関関係,「疼痛」(ρ=0.690, p<0.01)との間に有意な中等度の正の相関関係を認め,上肢機能との間には有意な相関関係を認めなかった.無力感は,MHQの「全般的機能」(ρ=−0.459, p<0.01),「ADL」(ρ=−0.447, p<0.05),「仕事」(ρ=−0.653, p<0.01),「外見」(ρ=−0.540, p<0.01),「満足度」(ρ=−0.608, p<0.01)との間に有意な中等度の負の相関関係,「疼痛」(ρ=0.489, p<0.01)との間に有意な中等度の正の相関関係を認めた.拡大視は,MHQの「仕事」(ρ=−0.408, p<0.05),「満足感」(ρ=−0.479, p<0.01)との間に有意な中等度の負の相関関係,「疼痛」(ρ=0.517, p<0.01)との間に有意な中等度の正の相関関係を認めた.無力感と拡大視においては,自覚症状,上肢機能ともに有意な相関関係を認めなかった.

表1 患者特性
表2 各評価項目の結果
表3 PCSと各評価項目の相関関係(自覚症状,上肢機能)
表4 PCSと各評価項目の相関関係(MHQ)

考察

本研究では,上肢にCIPNを呈した造血器腫瘍および消化器がん患者の破局的思考と自覚症状,上肢機能および生活障害を調査し,その関連性について検討した.その結果,破局的思考が強い患者ほど,痛みの程度や頻度が高く,生活に支障をきたしていた.これは,CIPNを呈したがん患者において,破局的思考の強さが生活障害に影響を及ぼしている可能性を示唆している.本研究の対象集団におけるPCSの合計得点の中央値は16.5(0-43)点であり,Sullivanらによるカットオフ値の30点20)を上回っている者は5名であったことからデータ全体としては破局的思考がそれほど強くはない集団であると考えられる.しかしながら,Riddleらによる研究では,TKA術後患者においてPCS総得点が16点以上で破局的思考が強く,それらの対象者は半年後のフォローアップ時においても疼痛スコアの改善を認めなかった24)と報告している.破局的思考と痛みの強さや生活障害との関連を調べた先行研究では,慢性疼痛患者において,筋機能などの身体機能障害と破局的思考との間に関連を認めず,身体機能障害よりも破局的思考の方が痛みの強さや生活障害と関連していた13)との報告や,疼痛を伴う糖尿病性神経障害患者の破局的思考は生活障害の増加と関連していた25)との報告がある.また,がん患者を対象とした研究では,化学療法後1年以上経過した乳がんおよび消化器がんサバイバーで,慢性神経障害性疼痛を呈している者の破局的思考は疼痛の程度と関連していた18).一方で,手部の骨・関節疾患患者において,破局的思考と握力との間に相関関係は認められない26)との報告があり,これらは,本研究の結果を支持している.

本研究の結果より,破局的思考がCIPNを呈したがん患者の生活障害に影響するのであれば,破局的思考のような認知的側面の評価を行ったうえで,行動変容を促す認知行動療法などのアプローチや患者教育が奏功する可能性がある.我々の知りうる限り,現在,CIPNを呈した患者に対するそのような介入のエビデンスは見当たらないが,近年,慢性疼痛患者に対しては,痛みそのものへのアプローチではなく痛みに対する行動や認知に焦点を当てたアプローチの必要性が高まっている27).慢性腰痛患者に対して認知行動療法およびオペラント行動療法を実施した研究では,破局的思考の減少が痛みの強さの減少ならびに身体的および心理社会的障害の減少と有意に関連していた28).患者教育に関しては,パンフレットやビデオを用いた患者教育によって,術後患者や慢性痛患者の疼痛や破局的思考の軽減を認めた29,30)との報告がある.したがって,CIPNによって生活障害が生じている対象者に対して,薬物療法による症状軽減や機能改善を目的としたアプローチが不十分な場合には,認知的側面や心理的側面に対する評価やアプローチも考慮する必要がある.破局的思考に対して効果を認めた他疾患の結果を概観すると,反芻の軽減は,患者教育によって痛みや能力の経過に対する適切な予測情報が与えられたことで,痛みへの過剰な注意が軽減したことによるもの30)だと考えられており,無力感の軽減には,目標設定を明確にした介入が有効であった31)とされている.したがって,CIPNに関しても今後このような介入方法の効果検証をしていく必要がある.

PCSを下位項目別に解析した結果,各項目によって異なる結果を示した.自覚症状との関連では,反芻のみ有意な関連を認めた.先行研究において,下位項目のうち反芻は痛みの強さ21)や術後痛32)と関連があるとされている.反芻とは,痛みに関連した考えに過剰に注意を向けることであるため,本研究においても反芻のみ自覚症状の程度を示すVASとの関連が認められたと考えられる.一方で,無力感とは,痛みの強い状況への対処において無力なものへ目を向けることである.本研究で用いたMHQでは,生活動作がどの程度難しかったか,どの程度普段の生活や仕事に影響を及ぼしたか,動きや力などに満足しているか等を尋ねているものであるため,無力感が反芻および拡大視と比べMHQの多くの項目とより関連が認められたと考える.先行研究においても,反芻および拡大視と比べ無力感は痛みの強さよりも生活障害との関連が強い21,33)とされており,本研究の結果を支持するものである.拡大視に関しては,痛みの脅威を過大評価することであり,日常の生活や仕事への影響を質問している「仕事」および「疼痛」の項目に関連を認めたと思われる.このように,PCSは下位項目によっても影響を及ぼす内容や程度が異なるため,PCSを使用して対象者の破局的思考を評価に用いる際には,下位項目とその他の評価との関連を十分に吟味して評価する必要がある.

本研究の限界として,第一に,後方視的であり対象者が少ないことが挙げられる.そのため,単相関のみの解析しか実施しておらず,交絡因子の影響を考慮することや因果関係を検討することはできていない.不安や抑うつ,自己効力感など破局的思考以外の心理的・精神的な状態や社会的背景などが,症状の程度や身体機能および生活障害に少なからず影響を及ぼす可能性も考えられる.また,リハビリテーションなどの非薬物療法の介入の影響も考慮できていない.第二にPCSの用い方について,本研究においては,上肢の生活動作との関連を検討することが目的であることから,対象者が理解しやすいよう上肢のみの状態を回答してもらったため,PCSの得点結果に少なからず影響を及ぼした可能性は否定できない.第三に,対象者のサンプリングを限定しすぎたことが挙げられる.糖尿病や骨病変などの症状の出現する可能性がある者は症状の出現の有無にかかわらず除外したので,上肢機能に影響を及ぼしていない併存疾患を有する対象者まで除外した可能性は否めない.第四に,疾患が限定されていることが挙げられる.その結果,薬剤はVCRとL-OHPがほとんどを占めていた.CIPNをきたす薬剤は他にもあるため.がん種や薬剤によっては同様の結果とはならない可能性も考えられる.今後は,対象者を増やし,その他の心理・精神症状なども考慮した多変量解析を実施することによって,CIPNを呈した患者の生活障害に関連する因子の検討などを実施していく必要があり,薬剤,がん腫による影響の違いについても検討すべきと考える.また,CIPNの診断においては,2017年に「がん薬物療法に伴う末梢神経障害マネジメントの手引き」9)から診断アルゴリズムが出ており,本研究における診断の手順とは若干の違いがあるため,今後の研究では診断アルゴリズムに遵守した形で実施していく必要がある.本研究の強みは,対処法が確立されていないCIPNに対して,破局的思考と自覚症状,上肢機能および生活障害が関連している可能性が示唆されたことである.本研究結果を踏まえたうえで,新しいリハビリテーションの治療戦略に寄与できる可能性がある.

結論

上肢にCIPNを認めた造血器腫瘍患者および消化器がん患者の痺れおよび疼痛に対する破局的思考は,自覚症状および生活障害に有意な関連を認めたが,上肢機能との関連は認めなかった.したがって,上肢にCIPNを認めた対象者の生活改善のためには,機能面に対する評価やアプローチだけでは不十分な場合があり,破局的思考などの認知的側面を評価することで,より効果的なアプローチが手がかりとなる可能性がある.

利益相反

著者の申告すべき利益相反なし

著者貢献

壱岐尾は研究の構想およびデザイン,研究データの収集,分析,研究データの解釈,原稿の起草に貢献;佐賀里および東は研究の構想およびデザイン,研究データの解釈,原稿の起草,原稿の重要な知的内容に関わる批判的な推敲に貢献;中野は研究の構想およびデザイン,研究データの解釈,原稿の重要な知的内容に関わる批判的な推敲に貢献;近藤および小田は研究データの収集,分析,原稿の重要な知的内容に関わる批判的な推敲に貢献;大賀は研究データの解釈,原稿の起草,原稿の重要な知的内容に関わる批判的な推敲に貢献;長谷川は研究データの解釈,原稿の重要な知的内容に関わる批判的な推敲に貢献した.すべての著者は投稿論文ならびに出版原稿の最終承認,および研究の説明責任に同意した.

References
 
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