Palliative Care Research
Online ISSN : 1880-5302
ISSN-L : 1880-5302
Original Research
Factors Related to Nurses’ Perception of End-of-Life Care in Intensive Care Units
Kayoko NagaokaKumiko Ichimura
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2021 Volume 16 Issue 4 Pages 289-299

Details
Abstract

【目的】ICU看護師の終末期ケアの認識と終末期ケアの認識の関連要因を明らかにすることである.【方法】救命救急センターのICU経験3年目以上の看護師650名に,基本属性,終末期ケアへの認識について無記名自記式質問紙を郵送した.終末期ケアへの認識の構成概念を従属変数としたロジスティック回帰分析を行った.【結果】有効回答277名を得た.終末期ケアへの認識は三つの構成概念が抽出された.終末期ケアへの認識との関連要因は,「家族ケアへの困難感」は「ICU経験10年以上」「PNS」,「終末期ケアへの否定感」は「30-39歳」「40歳以上」「終末期に関するマニュアル・ガイドライン」,「終末期ケアへの肯定感」は「終末期ケアへの関心」に有意な関連があった.【結論】終末期ケアへの認識を高めるためには,看護師個人の終末期ケアの経験,関心,終末期に関するマニュアルやガイドラインの活用といった要因に働きかける必要がある.

緒言

集中治療室(Intensive care unit: ICU)とは,患者に対し,集中的治療を行い,回復を期待する部門である1)が,亡くなる患者の割合は8.1%2)や29.5%3)と報告されており,少なくない.ICUにおいて看護師は,患者の生命の危機的状況の回復を目指し,看護1)を実践しているため,患者が終末期を迎える場合,ICUの従来の目的とは異なる終末期ケアに取り組んでいると考える.

近年,患者・家族が望む「good death」と,それを支えるケアとしてend-of-life careという概念4)が検討されている.一般・緩和ケア病棟では,終末期ケアを行う看護師は患者の最期の理想を実現できたとき,やりがいを感じている5)

一方,ICUでは,患者の意思確認の困難さ,患者のさまざまな死の様相,家族の事態の受容の困難さ,家族との希薄な関係性6)があり,看護師は,患者や家族の最期における希望を反映させたケアを実施できていないと認識し7),看護師が終末期にある患者や家族に関わるとき,ケアへの戸惑いや,患者の死に直面する苦痛8),看護師自身の無力感や不全感9),知識や経験不足10)を感じている.

ICUの看護師における終末期の認識には,時間の制約,積極的治療の継続11),医療チーム内の終末期への意見の相違12)が影響を与えており,終末期ケアに対しては,看護師の75%が困難を感じ13),87.5%が倫理的ジレンマを抱えていた14).これらの状況から,ICUにおける終末期ケアを促すために,「集中治療領域における終末期患者家族のこころのケア指針」15)や「救急・集中治療における終末期医療に関するガイドライン~3学会からの提言~」16)が公表されている.終末期ケアの提供を促進する要因として,看護師の年齢や経験年数17,18),患者や家族を含めた医療チームの連携19),よりよいケアを提供しようとする信念20),終末期ケアの経験数21,22)や体験の意味づけ23)が報告されている.

これらの研究から,看護師の終末期ケアへの認識を高めることは,看護師のやりがいにつながると期待される.また,看護師の終末期ケアへの認識を把握し,その認識の関連要因の検討は,終末期ケアを提供する看護師の支援方法の検討につながると考える.

そこで本研究では,ICUにおける看護師の終末期ケアへの認識および終末期ケアへの認識の関連要因を明らかにすることを目的とした.

方法

用語の定義

終末期ケア:集中治療を行っても救命の見込みがないことが患者・家族へ医師から説明されたとき,または死が避けられないと看護師が意識したときから,患者・家族へ行うケア.

終末期ケアへの認識:淺見17)は終末期ケアへの看護師の認識を「ICUという特殊な環境のもと,看護師がICUでの終末期ケアをどのように捉えるか」としている.また広辞苑24)より,認識は「知る作用及び成果の両者を指す」としている.このことから,本研究において,終末期ケアへの認識は「終末期ケアおよびケアの対象である患者・家族への捉え方であり,終末期ケアを行う看護師自身の感情や思い」とした.

研究協力施設および対象者

研究協力施設は,3次救急医療機関である全国の救命救急センター289施設(2017年8月1日現在)25)から無作為抽出した143施設のICUを対象とした.対象者は,①ICUに勤務する看護師(周産期・小児専門領域は除く),②現在勤務するICU経験が3年目以上であること,③患者のケアに直接関わっていること,④管理職でないこと,⑤認定や専門看護師の資格を有さないこと,の条件を満たす看護師とした.

調査方法

データ収集期間は,2018年8月から10月である.研究協力施設の代表者宛に研究概要と協力依頼書を郵送し,承諾を得られた43施設の対象者650名を対象とした.対象者には,研究協力施設の代表者を通して無記名自記式調査票を配布した.対象者には,調査票に研究協力依頼書を添付し,研究協力を依頼した.回収方法は個人からの郵送とし,調査票の返送をもって同意とみなすことを倫理委員会に承諾され行った.

調査内容

1.基本属性

基本属性は,年齢,性別,看護師としての臨床経験年数,現在勤務するICUの臨床経験年数,過去2年以内の終末期にある患者の受け持ち経験の有無,終末期ケアに対する困難や悩みの有無,終末期ケアへの関心の程度とした.関心の程度の回答は,「まったく関心がない」~「とても関心がある」の5件法とした.

2.仕事関連項目

仕事関連項目は,看護体制,ICUにおける終末期ケアの機会,終末期に関するマニュアルやガイドラインの有無,終末期に関するカンファレンスの有無とした.

3.終末期ケアへの認識

終末期ケアへの認識は,看護師の終末期ケアの思いや認識,終末期ケアを行う看護師にとっての支援に関する14文献59,1214,17,19,20,2628)を参考にした.終末期ケアの捉え方,患者・家族への捉え方や思い,終末期ケアを行う看護師自身の感情や思いに焦点を当て,「終末期ケアの認識」を抽出し,21項目を得た.21項目の回答は,「そうは思わない」~「そう思う」の5件法とした.

調査内容は,ICUやそれに準ずる病棟経験のある,大学教員5名と,1施設の看護師10名に協力を得て,プレテストを実施した.項目の回答のしやすさを検討してもらい,本調査の質問紙の文言を,回答者が共通理解できるよう整えた.

分析方法

1.基本属性(7項目),仕事関連項目(4項目),終末期ケアへの認識(21項目)について,基本集計を行った.

2.終末期ケアへの認識21項目について,類似性を確認するため探索的因子分析を行った.欠損値のあるデータは除外した.因子数は固有値1以上を基準とし,最尤法,プロマックス回転による因子分析を行った.その結果,抽出されたのは7因子であったが,スクリープロット,解釈の可能性を考慮し,3因子構造とした.因子負荷量が0.40未満の8項目を除外し,残った13項目について再度因子分析を行った.全13項目3因子について,構成概念の各項における回答は,1~5点で配点し,各項目の合計点,中央値を算出するため,記述統計を行った.得点が高ければ終末期ケアの認識が高いことを示す.Cronbachのα係数から内的整合性を確認した.

3.ロジスティック回帰分析を用いて終末期ケアへの認識の関連要因を検討した.従属変数は,終末期ケアへの認識の三つの構成概念の合計点における中央値未満を「低群」,中央値以上を「高群」とした.独立変数は,基本属性および仕事関連項目の11項目である.「年齢」は,「29歳以下」,「30~39歳」,「40歳以上」とした.「看護師臨床経験年数」は,「9年以下」,「10~19年」,「20年以上」とした.「ICU臨床経験年数」は「3~5年」,「6~9年」,「10年以上」とした.「終末期ケアへの関心の程度」は「関心がある」,「どちらともいえない」,「関心がない」とした.「ICUにおける終末期ケアの機会」は「1カ月に1回程度」,「3カ月に1回程度」,「半年に1回以下」とした.まず,単変量分析にて,基本属性および仕事関連項目の各項目と終末期ケアへの認識の三つの構成概念との関連をそれぞれ解析した.次に,独立変数のうち,基本的な交絡因子である性別,年齢を除き,単変量分析にてp<0.2の項目を選択し,多変量分析の強制投入法として,終末期ケアへの認識の関連因子を解析した.

なお,すべての統計処理にはIBM SPSS 26.0 J for Windowsを使用し,有意水準はp<0.05とした.

倫理的配慮

対象者に,調査票に研究依頼文書を添付し,研究の趣旨,研究参加における自由意思,匿名性の保証,プライバシーの保護,データ管理保護について文書にて説明し,返送をもって研究参加に同意を得たと判断することを説明した.また,職務上の強制力に配慮し,調査票の無記名回答,個別投函による回収とした.なお,本研究は茨城県立医療大学倫理委員会の承認を得て実施した.

結果

対象者650名のうち296名(回収率45.5%)から回答を得た.そのうち有効回答277部(有効回答率42.6%)を分析対象とした.

基本属性および仕事関連項目(表1

基本属性は,「女性」84.8%,「男性」15.2%であった.回答者の平均年齢±標準偏差(SD)は34.4±7.0歳,看護師臨床経験平均年数12.4±6.6年,ICU臨床経験平均年数は6.0±2.6年であった.

過去2年以内の終末期にある患者の受け持ち経験が「ある」回答者は87.7%,終末期ケアに対し,困り,悩んだ経験が「ある」回答者は94.2%であった.終末期ケアへの関心の程度は,「やや関心がある」が47.7%と最も多かった.

仕事関連項目について,看護体制は,「チームナーシング」55.2%,ICUにおける終末期ケアの機会は,「3カ月に1回程度」38.6%が最も多かった.終末期ケアに関するマニュアルやガイドラインの有無は,「わからない」が半数を占めた.終末期ケアに関するカンファレンスは,66.8%が行っていた.

表1 基本属性および仕事関連項目

終末期ケアへの認識(表2

終末期ケアへの認識は,「ICUでは積極的治療の甲斐なく死を迎えることがある」と「ICUではさまざまな死のケースがある」は,「そう思う」,「ややそう思う」の回答が9割を占めた.「ICUにおいて死は敗北である」は「そう思う」0.7%と少数であった.

「ICUにおいて終末期ケアは必要である」は,「そう思う」と「ややそう思う」にて約9割であった.「ICUにおいて終末期ケアは提供できている」は「そう思う」0.7%と少なく,「どちらともいえない」が最も多かった.

「患者は意思の疎通が困難であることが多い」,「家族は心理的動揺が強い」は「そう思う」,「ややそう思う」の回答が約9割であった.

「家族とのかかわりは大切である」は「そう思う」と「ややそう思う」の回答が99.3%を占めた.

表2 終末期ケアへの認識

終末期ケアへの認識の構成概念(表3

終末期ケアへの認識は三つの構成概念が抽出された.

第1因子(5項目)は家族の患者の死に対する困難感と,その家族への対応の難しさを示していると解釈し,「家族ケアへの困難感」と命名した.第1因子は,合計点が高いほど,終末期にある患者の家族ケアへの困難感が高いことを示す.合計点の平均±SDは17.9±3.2,中央値18であった.第1因子はα=0.75であった.

第2因子(4項目)は,ICUにおいて終末期ケアを行う看護師自身の不全感や技術不足など否定的な思いや感情を示していると解釈し,「終末期ケアへの否定感」と命名した.第2因子は,合計点が高いほど,終末期ケアへの否定感が高いことを示す.合計点の平均±SDは11.3±3.2,中央値11であった.第2因子はα=0.75であった.

第3因子(4項目)はICUにおける終末期ケアや患者の死を経験し学んだことを肯定的に捉えていることを示していると解釈し,「終末期ケアへの肯定感」と命名した.第3因子は,合計点が高いほど,ICUにおける死や,終末期ケアへの肯定感が高いことを示す.合計点の平均±SDは16.9±2.2,中央値17であった.第3因子はα=0.56であった.

全13項目はα=0.67であった.

表3 終末期ケアへの認識 因子分析の結果

終末期ケアへの認識と各関連因子(表4

1.「家族ケアへの困難感」と各関連因子

単変量分析にて「家族ケアへの困難感」は,「ICU臨床経験10年以上」(粗OR=2.41,p=0.049),「パートナーシップ・ナーシング・システム(partnership nursing system; 以下,PNS)」(粗OR=3.92,p=0.037)と関連があった.多変量分析では「ICU臨床経験10年以上」(調整OR=2.81,p=0.038),「PNS」(調整OR=5.13,p=0.018)に関連があった.

2.「終末期ケアへの否定感」と各関連因子

単変量分析にて「終末期ケアへの否定感」と関連を認めた要因は「30-39歳」(粗OR=0.42,p=0.009),「40歳以上」(粗OR=0.20,p=0.000),「看護師臨床経験年数10-19年」(粗OR=0.48,p=0.011),「看護師臨床経験年数10年以上」(粗OR=0.29,p=0.002),「終末期に関するカンファレンスが行われている」(粗OR=0.50,p=0.014)であった.多変量分析では「30-39歳」(調整OR=0.46,p=0.026),「40歳以上」(調整OR=0.24,p=0.000),「終末期に関するマニュアルやガイドラインがある」(調整OR=0.43,p=0.031)に関連があった.

3.「終末期ケアへの肯定感」と各関連因子

単変量分析にて「終末期ケアへの肯定感」は,「終末期にある患者の受け持ち経験がある」(粗OR=2.22,p=0.035),「終末期ケアに対する困難や悩みの経験がある」(粗OR=11.72,p=0.001),「終末期ケアへの関心はどちらともいえない」(粗OR=8.04,p=0.000),「プライマリーナーシング」(粗OR=2.12,p=0.014)と関連があった.多変量分析では「終末期ケアへの関心がある」(調整OR=9.15,p=0.000),「終末期ケアへの関心はどちらともいえない」(調整OR=2.98,p=0.048)に関連が認められた.

表4 ロジスティック回帰モデルによる終末期ケアへの認識と各関連因子

考察

終末期ケアへの認識

回答者は,ICUにおいて積極的治療の甲斐なく死を迎えることがあり,さまざまな死のケースがあると認識しており,死が敗北であるという認識は少なかった.このことは,治療が優先されるICUの場であるが,ICUにおける看護は,終末期ケアも含めてICUにおける看護と捉えていると推察される.

9割の回答者が終末期ケアは必要だと認識していたが,終末期ケアが提供できていると捉えている者は少なかった.一般・緩和ケア病棟では,患者の望む最期を検討し,その意向に沿えるよう家族とも協力し,看護が提供されているが5),死の間際まで高度治療が行われるなどの特徴もある29)ICUにおける終末期は,突然の発症や急激な病状の進行により患者は意思表示ができず,家族は患者の容体の受容や冷静な判断が困難であることから,看護師は患者や家族からの看護ケアに対するフィードバックが得難く,患者や家族の意向の把握が困難なため,終末期ケアに対する自己評価を低くしていると考える.その一方,終末期ケアの経験により,自己成長を感じていたことから,終末期ケアの経験の積み重ねが,終末期ケアへの気づきや,知識や技術の習得につながっていると推察される.

また,回答者は,家族との関わりが大切であると感じていた.患者と意思疎通が図れないなかで,治療を含めた方針の決定には家族との連携が必須である.看護師が患者と家族を包括的に捉え,家族が代理意思決定できるように,看護師の家族への関わりを支援する必要がある.看護師個人による家族支援は限界がある15)こともあるため,医療チームなどによる組織的に家族支援を行っていく必要もある.

終末期ケアへの認識の構成概念

終末期ケアへの認識21項目について因子分析を行い,21項目を13項目とした.「家族ケアへの困難感」,「終末期ケアへの否定感」,「終末期ケアへの肯定感」と命名した三つの構成概念が明らかになった.「家族ケアへの困難感」と「終末期ケアへの否定感」は十分な信頼性が確認された.「終末期ケアへの肯定感」の信頼性は低かった.全13項目はα=0.67であり,質問項目の信頼性を検証することは今後の課題である.

終末期ケアへの認識と各関連因子

終末期ケアへの認識と関連因子について,三つの構成概念ごとに考察する.

1.家族ケアへの困難感について

一般病棟やがん患者に関わる看護師を対象とした先行研究では,経験年数18),終末期ケアの経験19)により終末期ケアに対する積極的態度が高まることが報告されているが,本研究では「ICU経験10年以上」が,「家族ケアへの困難感」を高める要因であった.ICUに入室する患者は,重篤な生命の危機的状態1)にあり,常に死の転帰を迎える可能性がある.しかし,ICUではケアよりも治療が優先される状況が死の間際まで行われることが少なくない.ICU経験を重ねることで,ICUでは急な状態の変化により入室する患者が多いことや,治療が優先される状況などのICUの特殊性を理解し,終末期にある患者の家族に関心を持ち,ケアを行っているからこそ,ケアとICUの特殊性との間にジレンマを抱き,家族へのケアに対し困難感が強まることが考えられる.ICUでの看護の経験を積むことが終末期ケアの認識にどう影響するのか,さらに追究していくことが課題である.「PNS」も同様に「家族ケアへの困難感」を高めていた.パートナーがいることで,知識や技術の共有,相談のしやすさなどの特徴があるが,2:1看護体制が基本であるICUにおいて,PNSでは最大4人の患者を担当するため,担当患者が多い場合,患者や家族との時間を作る難しさがあると予想される.パートナー以外のスタッフにも協力要請し,ケアを行う体制作りの必要がある.

2.終末期ケアへの否定感について

「30-39歳」,「40歳以上」,「終末期に関するマニュアルやガイドラインがある」は,「終末期ケアへの否定感」を低める要因であった.看護師は,自らのケアの意味や価値を理解し実践することで,充足感や自己効力感を得る8)といわれている.年齢を重ねることは人生経験も重ねていくことである.看護師として終末期にある患者を受け持った際の不全感や敗北感,知識・技術不足を感じた経験を振り返り,実践を繰り返すなかで,終末期ケアへの否定感は薄れていくと推察される.また,マニュアルやガイドラインは,患者や家族へのケアのアプローチの視点や道筋が示される15,16).このため,臨床現場における終末期ケアの拠り所となり,終末期ケアへの否定感を軽減していると考える.

3.終末期ケアへの肯定感について

終末期ケアへの「関心がある」,「どちらともいえない」は,「終末期ケアへの肯定感」を高める要因であった.終末期ケアへの関心の高さは,終末期ケアに対する学習意欲や,よりよい終末期ケアを提供したいという思いにつながり,終末期ケアへの肯定感が高まる.関心を高めるためには,動機づけとなる終末期ケアの経験や情報の共有が求められる.

先行研究では,ケアの経験が,知識や実践への自己評価を高め,困難感を低める要因となっていた21,22)が,本研究において,終末期にある患者の受け持ち経験は,終末期ケアへの認識と関連はみられなかった.本調査では,終末期にある患者の受け持ち経験を2年以内と限定した.年数を限定しない受け持ち経験の有無と終末期ケアへの関連を調査することは今後の課題である.

回答者の概要

本研究の回答者は,男女比2:8の比率であった.平均年齢34.4±7.0歳,看護師臨床経験平均年数12.4±6.6年であり,中堅看護師の多い集団であった.ICU臨床経験平均年数6.0±2.6年であり,ICUにおける看護師を対象とした全国調査12,30)と同様の傾向であった.

終末期にある患者の受け持ち経験,終末期ケアに対する困難や悩みは,約9割が経験しており,宮崎ら13)が行った同様の調査より多く経験していた.

仕事関連項目として,ICUにおける終末期ケアの機会は,1~3カ月に1回程度ある回答者が約7割であり,高い頻度で終末期ケアが行われていた.終末期に関するマニュアルやガイドラインを活用していない者が多く,2011年,2014年に作成されたケア指針やガイドラインをいかに臨床現場で活用していくかが今後の課題である.

終末期に関するカンファレンスの実施は,約7割を占めた.高田ら12)の先行研究では,終末期に関するカンファレンスの実施は4割弱であり,終末期に関するカンファレンスの実施が多く行われていた.

本研究の限界と今後の課題

対象者の有効回答率は42.6%であり,一般化するには限界がある.また,看護師のICUにおける終末期ケアへの認識に関する関連要因は,先行研究の質的研究から得た項目を自作の質問紙に活用しており項目に不足があった.FATCOD-B-Jなど看護師の終末期ケアに関わる態度を評価する他尺度と比較検討し,質問紙の信頼性・妥当性の検証をすることが今後の課題である.本研究では,看護師の自己評価(認識)を調査したが,臨床実践とは相違があると考えられるため,今後は臨床実践を検討する必要がある.

結論

終末期ケアへの認識として,看護師は,ICUにおいて終末期を迎える患者がおり,終末期ケアの必要性を感じていた.なかでも家族へのかかわりの重要性を実感しているが,十分に終末期ケアが提供できていないと捉えていることが明らかとなった.

終末期ケアへの認識の類似性を検証した結果,合計13項目3因子が抽出された.終末期にある患者の家族ケアへの困難感を示す「家族ケアへの困難感(5項目)」,終末期ケアを行う看護師自身の不全感や技術不足など否定的な思いや感情を示す「終末期ケアへの否定感(4項目)」,終末期ケアや患者の死を経験し学んだことを肯定的に捉える「終末期ケアへの肯定感(4項目)」である.「ICU経験10年以上」と「PNS」は「家族ケアへの困難感」を高める要因であった.「年齢」や「終末期に関するマニュアル・ガイドライン」は「終末期ケアへの否定感」を低め,「終末期ケアへの関心」は「終末期ケアへの肯定感」を高める要因であった.

謝辞

本研究に快くご協力いただきました研究協力施設および研究協力者の皆様に深謝いたします.研究の構想やデータ収集,統計解析にご助言いただきました本村美和先生(茨城県立医療大学保健医療学部看護学科准教授)および統計解析にご助言をいただきました春山康夫先生(獨協医科大学先端医科学統合研究施設研究連携・支援センター教授)に深謝いたします.

付記

本研究は,平成30年度茨城県立大学大学院保健医療科学研究科看護学専攻修士論文の一部内容をもとに,加筆修正したものである.本研究の内容の一部は,第45回日本看護研究学会学術集会において発表した.

利益相反

すべての著者の申告すべき利益相反なし

著者貢献

長岡は研究の構想およびデザイン,研究データの収集・分析,原稿の起草に貢献;市村は研究の構想およびデザイン,研究データの収集・分析,原稿の重要な知的内容に関わる批判的な推敲に貢献した.すべての著者は,投稿論文ならびに出版原稿の最終承認,および研究の説明責任に同意した.

References
 
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