Palliative Care Research
Online ISSN : 1880-5302
ISSN-L : 1880-5302
Original Research
Family Members’ Behaviors toward Terminally Ill Cancer Patients with Communication Difficulties and the Related Support Provided by Medical Professionals
Motoko Hasegawa Saran Yoshida
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2022 Volume 17 Issue 3 Pages 77-85

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Abstract

【目的】意思疎通のとりづらい終末期がん患者に対する家族の関わり行動とその支援について,医療者と家族の視点から明らかにすることである.【方法】緩和ケアに従事する医療者15名と遺族5名に対して,患者に対して家族が行った関わり行動と医療者が提供した支援について,インタビュー調査を実施した.得られたデータをもとに内容分析を行った.【結果】患者に対する関わり行動は〈従来の患者に対する関わりの継続〉〈患者の安心・安楽への働きかけ〉など三つの大カテゴリーが抽出された.関わり行動に対する支援としては〈関わり方の提案〉〈関わりに対する家族へのフィードバック〉など九つの大カテゴリーが抽出された.【考察】家族に対する支援として,家族自身が関わり方を選択し実行できるよう医療者が働きかける内容が示された.具体的には,関わり方をわかりやすく提案する,家族にフィードバックをする等が挙げられた.

Translated Abstract

Objective: To clarify family members’ behaviors toward terminally ill cancer patients with communication difficulties and the related support provided by medical professionals. Method: Participants included 15 medical professionals engaged in palliative care (physicians, nurses, and psychologists) and 5 bereaved family members who had cared for terminally ill cancer patients at a hospital. Semi-structured interviews were conducted on the following: (1) family members’ behaviors toward the patient and (2) related support provided by medical professionals to family members. The interviews were qualitatively analyzed using category analysis. Results: We identified three categories of family members’ behaviors toward the patient such as behaviors that continue to communicate with the patient as usual, behaviors that assist patients to feel secure and relaxed, We also identified nine categories of the related support provided by medical professionals such as advising family members on how to behave with the patient and providing encouraging feedback to family members on their behaviors toward the patient. Discussion: Our results suggest that medical professionals encouraged family members to continue their behaviors to patients confidently. Support to family members included suggesting behaviors to make it easier for them to put into practice, encouraging the patient and family interaction, and giving feedback on the family member’s behaviors.

緒言

看取り期に近づくにつれ,家族はせん妄状態や意識レベルの低下した患者と過ごすことになる.患者との有意味な相互作用ができなくなることは苦痛が伴い1,2,患者の状態に関する誤った認識1や不十分な情報提供2により家族の苦痛が高くなることが報告されている.終末期せん妄の患者に対する関わり方に困難感を経験する家族もいるため3,意識レベルの低下した患者とどのように関わればよいか判断に迷う家族が少なからずいると考えられる.これまでに看取り期の患者と家族に対する望ましいケアとして,患者に対する関わり方を医療者が家族に助言をすること4が挙げられている.

意思疎通のとりづらい終末期がん患者に対する関わり方について,パンフレットを用いた家族への助言の効果を検証した先行研究では,知識の提供が有効であること5が示されたが,家族の苦痛や満足度には変化がみられなかった6.これまでの先行研究では,意思疎通のとりづらい終末期がん患者に対する家族の関わり行動について,実際の行動や提供される支援の内容も含めた包括的な検討が十分にされていない.

そこで本研究は,意思疎通のとりづらい終末期がん患者に関わる家族に提供される支援について再検討をするため,患者に対する「家族の関わり行動内容」と患者の関わり方を模索する家族に対する「医療者の支援内容」について明らかにすることを目的とした.がん領域以外の先行研究では,集中治療を受ける患者の家族と支援を提供する医療者の大半は家族のケア参加について好意的な認識を持つが,自発的にケア参加をした家族の割合が低い7ことから,医療者と家族には関わり行動やその支援についての認識の違いがあると考えられる.家族の意向にあった支援を検討するにあたり,まずは医療者と家族の双方を対象とし,幅広く家族の関わり行動とそれに対する支援の内容を収集し,基礎的資料を得ることが必要であると考えた.そのために,がん患者の家族に加え,終末期医療に携わり多くの家族を支援してきた医療者も対象として調査を行うこととした.なお,家族のケア参加への意欲とうつ症状の程度の関連が示唆されている8ため,家族の支援に携わる機会の多い職種として医師および看護師に加え,心理的支援に携わる心理職を調査対象に含め,検討を行うこととした.

方法

調査協力者

調査対象者は(1)緩和ケアに従事している医療者,(2)がんで家族を亡くした経験のある遺族とした.医療者の適格基準は,医師は日本緩和医療学会の認定する専門医,認定医,暫定指導医,看護師はがん看護の経験年数が5年以上の者でがん専門看護師であることが望ましく,心理職は緩和ケア領域の経験年数3年以上の臨床心理士とした.適格基準を満たす医療者を地域の緩和医療に精通した緩和ケアの研究者に個別に推薦を依頼する,あるいは縁故法を用いて対象を選定した.適格基準を満たす医療者の協力を得ることが難しい場合,医師と看護師は適格基準と同等の技術と経験を有すると緩和ケアの研究者が判断した者,心理職は心理学の研究者2名が相談したうえで判断した者とした.なお,本研究では,個別の事例について遺族の視点と医療者の視点の共通点や相違点を比較することを目的とはせず,患者に対する家族の関わりの内容および,それに対する医療者の支援の内容について,幅広い視点から広く抽出することを目的とした.そのため,遺族と医療者は独立にリクルートしており,両者の間に対応関係はない.選定した医療者に対し,郵送あるいはメールにて研究協力依頼文書と研究説明文書を送付した後,承諾の返信があり,同意の得られた者に調査を実施した.

遺族の適格基準は遺族の死別体験のストレス負荷を配慮し,死別後1年半以上で,かつ5年未満であること,本人が調査の実施に伴う影響について説明を受けた後,参加が可能であると判断した者とした.がん総合支援センターに対して紹介を依頼するとともに,遺族会で,研究協力は自由意志であることを説明したうえで研究協力依頼文書と研究説明文書を配布した.後日,承諾の返信あるいは返送があり,同意の得られた遺族に調査を実施した.なお,未成年の場合には,対象者の保護者からも研究参加に対する同意を得ることとした.

データ収集方法

インタビューガイドに基づき,半構造化面接を行った.面接時間は,医療者は78±13分,家族は63±10分であった.医療者調査は2016年10月から2017年3月,遺族調査は2017年3月から11月に実施した.なお,本調査における「意思疎通のとりづらい終末期がん患者」の状態として,「せん妄や傾眠,倦怠感や疼痛等により患者の意思を家族が読み取りづらい状態」と定義した.また,家族の関わり行動を「患者に対して家族が実際に働きかける行動だけではなく,態度や認知といった心的活動を含めた行動」と定義した.

医療者を対象としたインタビューの主な調査内容は,(1)意思疎通のとりづらい状態の患者の特徴,(2)患者の特徴ごとに家族が行った関わり行動(支援が必要と考えられた行動を含む),(3)提供した支援あるいは提供したらよかったと考える支援(他の医療者の支援内容も含む)とした.加えて,医療者に個別の事例を取り上げるのではなく,これまでに経験した多くの事例を総合的に想起して回答するように求めた.遺族を対象としたインタビューの主な調査内容は,(1)意思疎通がとりづらいと感じた患者の特徴や出来事,(2)患者の特徴ごとに行った関わり行動と行えばよかったと思う行動,(3)医療者から受けた支援あるいは受けたかった支援とした.なお,「意思疎通のとりづらい患者」の認識を共有するため,インタビューに先立ち,医療者のインタビューで得られた意思疎通のとりづらい患者の特徴のリストを提示した.インタビュー内容は,対象者の同意を得てICレコーダーに録音した.

分析方法

本研究では,目的とする内容についてカテゴリーを抽出することに加え,質的な分析の客観性を担保すること,また,得られたカテゴリーが多くの人に共通するものなのか,個別性の高いものなのかという観点から考察を深めることを目的とし,内容分析を用いて分析を行った.なお,分析の手順は有馬による方法9に準じて行った.まず,録音した内容から逐語録を作成し,意思疎通のとりづらい患者に対する家族の関わり行動,家族の関わり行動に対する医療者の支援に関連する内容や表現を意味単位として抽出した.医療者,遺族それぞれにおいて,抽出された意味単位に名称を付与し,グループ化してサブカテゴリーを作成し,類似するサブカテゴリーをグループ化して,カテゴリーを作成した.カテゴリーの作成作業は,心理学の研究者2名で行った.さらに,各インタビュー内容の意味単位と作成された小カテゴリーの一致判定を行い,判定一致率を算出した[一致率(%)=一致した小カテゴリー数÷(一致した小カテゴリー数+一致しない小カテゴリー数)×100].また,インタビュー内で小カテゴリーに該当する発言がある調査協力者数を算出した.判定作業は評価者4名(看護師2名,心理職2名)が行った.一つのインタビューに対して2名が独立して行い,評価者間で判定が分かれた小カテゴリーは,合意が得られるまで協議を行ったうえで,最終的に判定を確定させた.なお,医療者の生データに基づく小カテゴリーの判定は看護師2名,遺族の生データに基づく小カテゴリーの判定は心理職2名で実施した.以下,生データは「 」,小カテゴリーは[ ],大カテゴリーは〈 〉と示す.

倫理的配慮

本研究は,医療者調査は東北大学大学院教育学研究科の倫理審査委員会に,遺族調査は東北大学川内南地区「人を対象とする医学系研究」倫理審査委員会に,それぞれ計画書および研究協力依頼文書,質問紙,インタビューガイドを提出し,承認を得て実施した.[審査番号:16-1-009(医療者),2016-004(遺族)].なお,看取りの過程を想起することにより不快感情を惹起するリスクがあることを協力依頼時と調査前に説明したうえで,参加協力の意思を確認した.

結果

調査対象者として選定された医療者15名全員から同意が得られ,調査を実施した.また,承諾の得られた遺族6名のうち,実施前に体調不良にて1名が辞退し,同意が得られた5名に調査を実施した.医療者の背景を表1,遺族の背景を表2に示す.インタビューにおける小カテゴリーの判定の一致率は医療者が76.7%,遺族が72.7%であった.

表1 医療者の背景
表2 遺族の背景

意思疎通のとりづらい終末期がん患者に対して家族が行う関わり行動

家族が行う関わり行動は三つの大カテゴリーに分けられた.なお,各大カテゴリーに患者あるいは家族への影響を医療者が懸念する家族の関わり行動の内容も含めた.各カテゴリー内容,具体例,小カテゴリーについて言及した対象者の人数を表3に示した.

表3 意思疎通のとりづらい終末期がん患者に対して家族が行う関わり行動

〈従来の患者に対する関わりの継続〉は[声をかける]といった意思疎通が可能であったときの患者に接するように関わり方を継続する内容やその工夫を指す.〈患者の安心・安楽への働きかけ〉は[触れる]といった患者が安心や安楽に過ごせるように家族が患者や病室環境に働きかける内容やその工夫を指す.〈患者の思いを推測する行動〉は[患者の反応を理解する]といった患者の表情や体動といった反応から,患者の望みや家族の働きかけに対する患者の返事や効果をくみ取る内容やその工夫を指す.

意思疎通のとりづらい終末期がん患者に対応する家族に対して医療者が提供する支援

医療者が提供する支援は,九つの大カテゴリーに分けられた.各カテゴリー名,具体例,各小カテゴリーについて言及した対象者の人数を表4に示した.

表4 意思疎通のとりづらい終末期がん患者に対応する家族に対して医療者が提供する支援

〈家族からの情報収集〉は[家族の理解や受け止めを聞く]といった医療者が家族あるいは患者をより理解するために情報収集を行う内容を指す.〈家族への説明〉は[患者の状態を説明する]といった医療者が家族に対して,家族の理解を得る,負担を軽減するために行われる説明の内容を指す.〈家族への感情的なサポート〉は[家族の気持ちを理解する]といった医療者が家族の思いを傾聴し,共感や支持する内容を指す.〈関わり方の提案〉は[家族にとって行いやすいケアを提案する]といった患者への関わり方について医療者から家族に提案をする内容を指す.〈関わり方の提案を伝える工夫〉は[患者への関わりのモデルを示す]といった家族が提案を受けて実行できるように説明の仕方を工夫する内容を指す.〈関わりにおける家族に必要な情報の補足〉は[患者の気持ちを家族に伝える]といった患者への関わりにおいて,家族に肯定的な影響があると医療者が判断して伝える患者に関する内容を指す.例えば,患者の反応から推測される思いや医療者が知る患者の家族に対する思いである.〈関わりに対する家族へのフィードバック〉は[家族の関わりに支持的に接する]といった家族の関わり行動の経験を家族と共有し,関わり行動を維持あるいは促進できるように働きかける内容を指す.〈患者と家族に対する医療者の態度の見直し〉は[家族の意向を尊重した態度を取る]といった家族や患者に敬意をもって接するために医療者自身あるいは医療者間で行われる内容を指す.〈多職種連携〉は[家族について把握をする]といった患者と家族に必要な支援を提供できるように医療者間で連携する内容を指す.

考察

意思疎通のとりづらい終末期がん患者に関わる家族に対して,医療者が提供する支援の方向性を検討することを目的とし,インタビュー調査を実施した.その結果,患者に対する家族の関わり行動と医療者の支援について,カテゴリーが得られた.

意思疎通のとりづらい終末期がん患者に対して家族が行う関わり行動

意思疎通のとりづらい患者に対して〈従来の患者に対する関わりの継続〉〈患者の安心・安楽への働きかけ〉〈患者の思いを推測する行動〉といった患者に対して働きかける行動と患者を理解しようとする内容が示された.〈従来の患者に対する関わりの継続〉に含まれる[声をかける][患者とともにいる],〈患者の安心・安楽への働きかけ〉に含まれる[触れる][患者をケアする]については,多くの医療者と遺族が言及していた.これらの結果は,先行研究のパンフレットによる介入研究で提示された関わり行動の内容5の結果を支持するものであり,一般的にみられる関わり行動であると考えられる.

次に〈患者の思いを推測する行動〉に含まれる[患者の反応を想像して関わる]では,「適切な距離感といいますか,亡くなることを前提として心の中の患者さんと対話しているご家族もいました」という語りが得られた.実際の患者の反応やこれまでの患者に関する情報から患者について推測するだけではなく,家族の中の患者像と会話をする家族がいることも明らかになった.家族が自らの心の中の患者と会話する行動は,故人との絆の継続を反映した表現の一つとして検討が行われている.配偶者の死後13カ月の時点で34%の遺族が配偶者と定期的に会話すると回答する先行研究の結果10と本調査の結果から,心の中の患者と対話をすることを通して,患者の状態の変化に合わせた関係性を再構築している家族がいる可能性が考えられる.そのため,家族が自身に合った関わり方を実践している可能性があることを医療者は理解し,尊重することが大切であるといえる.

意思疎通のとりづらい終末期がん患者に対応する家族に対して医療者が提供する支援

医療者の提供する支援として,〈関わり方の提案〉〈関わり方の提案を伝える工夫〉〈関わりに対する家族へのフィードバック〉など,家族が患者に対する関わり方を選択し,継続して実行できるように働きかける内容が示された.この結果は,先行研究のパンフレットによる介入研究での情報提供型の支援方法と一致する結果5,6であるが,提案の方法の工夫についての語りには,「実際に見てもらうと,こういう風にやっていいのだなって,家族も声をかけやすくなるみたいです」とあり,選択肢の提示だけではなく実際の行動につながるように工夫されている点が新たに明らかになった.また,関わりに対する家族へのフィードバックについて,「新たな関わり方のアイデアが家族から出てきたら,それいいですねと伝えて.関わり方のバリエーションが増えていく感じです」という語りがあり,家族の自主性を尊重しながら,家族が行動を継続できるように働きかける点が新たに明らかになった.また,この語りから家族が患者に関わる経験の積み重ねを通して自信を持って関わり行動を行っていることがうかがわれる.一部の終末期がん患者の家族は,家族が担う役割への準備不足や経験不足を感じる11こと,がん患者の家族の患者の症状への対応に関する自己効力感は,家族自身の感情障害のレベルと関連する12という報告があることから,家族が自らの関わりに自信を持てるように医療者が働きかけることは,家族への精神的な支援として有効な可能性があると考えられる.

次に,〈関わりにおける家族に必要な情報の補足〉のような,患者と家族の相互作用を促す支援の内容が示された.医療者は[患者の気持ちを家族に伝える][患者の視点で家族に考えてもらう]など,医療者の推察あるいは家族が患者の視点で想像するように伝えることにより患者の反応の解釈の情報を補足し,患者と家族の相互作用を促す.さらに,[患者の気持ちを家族に伝える]の中には医療者が把握している患者の家族に対する気持ちが含まれる.これらの結果は,終末期がん患者と家族間の思いを言語化する支援として,患者と家族の患者の思いを推察した家族への言葉かけや患者の思いを家族に教えるという先行研究の結果13と一致する.思いを言語化する支援は患者と家族の良好な関係性やケア満足度に関連するため13,意思疎通のとりづらい状況下においても,医療者が支援を提供することは家族にとって有効な支援となりうると考えられる.ただし,患者と家族間の思いの言語化は,家族が必ずしも期待する関わりではない可能性がある13.本調査の医療者の語りにも,「家族に喜んでもらいたいという気持ちから,お節介にならないように気をつけている」とあり,家族の支援ニーズを把握することが効果的な支援につながると考えられる.

研究の限界

本研究の限界点として,以下の点が挙げられる.まずは,遺族の対象者数が少なかった点である.終末期の体験は個別性が高いため,遺族の対象者をさらに増やす予定であったが,適格基準を満たす遺族から協力を得ることは難しかった.本研究で得られた結果は,協力が得られた遺族の個人的な経験の影響を強く受けていると考えられる.この点を補うために,本研究では医療者と遺族という二つの集団を対象として調査を行ったが,医療者と家族では支援の優先度の認識が異なる可能性がある14ため,十分に結果を補完することができていない可能性もあり,結果の解釈には注意が必要である.今後,同一の事例を医療者と家族の双方の視点から検討し,その相違を検討することが望まれる.2点目として,遺族の属性のばらつきがあったこと,遺族が看取りを経験した場所や医療者の所属が緩和ケア病棟に偏っていたことが挙げられる.基本的に主介護者の遺族を対象としているが,性別や患者との続柄の違いによる結果への影響があると考えられる.また,現在日本では,一般病棟での死亡が最も多い15,16が,本研究の対象には一般病棟で患者を看取った遺族は1名のみであり,在宅で看取った遺族は含まれていない.緩和ケア病棟と一般病棟,また病院と在宅では家族のケア関与の質や程度,さらに医療者のマンパワーや関わり方が異なるため,本研究の結果は,在宅や一般病棟の家族や医療者とは異なる可能性があると考えられ,一般化には注意が必要である.3点目は,リコールバイアスの影響があることである.当時の状況について具体的な想起を遺族に促すため,質問の順番を工夫したが,死別から1年半以上経過しており,リコールバイアスが生じたと考えられる.そのため,結果の解釈には注意が必要である.以上の限界点を改善するために,今後,より多くの遺族を対象とした質問紙調査を実施し,家族が実施した関わりや提供された支援の頻度,実施した関わりや提供された支援に対する家族の評価について明らかにする必要がある.

結論

意思疎通のとりづらい終末期がん患者に関わる家族に対して,医療者が提供する支援の方向性が示唆された.家族への関わり行動の提案の仕方を工夫しながら関わり方の選択肢を提示すること,家族の関わりについての経験を共有し,家族の自信や懸念解消につながるようにフィードバックすることが支援として有効であると考えられる.また,家族特有の関わり方が存在する可能性があるため,医療者は家族の関わり方を理解し尊重することが望まれる.今後,本研究の結果をもとに,家族に提供されている支援の頻度や家族による評価を量的調査が必要である.

謝辞

本研究の実施にあたり,インタビューにご協力いただきました対象者の皆様に感謝申し上げます.

利益相反

すべての著者の申告すべき利益相反はなし

著者貢献

長谷川は,研究の構想およびデザイン,研究データの収集,分析,データ解釈,原稿の起草,原稿の知的内容にかかわる批判的な推敲に貢献した.吉田は,研究の構想およびデザイン,分析,データ解釈,原稿の起草,原稿の知的内容にかかわる批判的な推敲に貢献した.すべての著者は投稿論文ならびに出版原稿の最終承認,および研究の説明責任に同意した.

References
 
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