Palliative Care Research
Online ISSN : 1880-5302
ISSN-L : 1880-5302
Review
A Review of the National Literature on Support for Children and Their Families after Bereavement from a Terminally Ill Parent's Struggle with Illness
Rurie Namiki Rie Wakimizu
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2023 Volume 18 Issue 4 Pages 225-234

Details
Abstract

本研究は,終末期の親の闘病から死別後の子どもとその家族のニーズや体験,看護師や多職種連携による支援について,国内文献から把握し今後の臨床現場で取り組む看護ケアに関する課題を明らかにすることを目的とした.医学中央雑誌Web版を用いて2022年11月の時点で可能な文献を検索した.結果は対象文献18件であり,配偶者と子どもの死別前のニーズ,配偶者と子どもの死別後の生活体験,終末期の親の病や死について子どもへの伝え方/説明,終末期の親をもつ子どもに対する看護師の関わり,終末期の親を看取る子どもへの看護介入,多職種との連携の六つのカテゴリーに分類された.結果,子どもを家族の一員として認識し,年齢や発達段階に応じた病状説明の必要性が示唆された.また子どもへの継続支援に,学校や外部機関との連携が重要であった.さらに看護師は経験や学習を積み,子どもとその家族への具体的な体制整備が課題となる.

Translated Abstract

The purpose of this study was to understand the needs and experiences of children and their families after the illness and bereavement of a terminally ill parent, and the support provided by nurses and multidisciplinary cooperation, from the domestic literature, and to clarify issues related to nursing care to be addressed in clinical practice in the future. We searched the available literature as of November 2022 using Igaku Chuo Zasshi web version. The results were classified into six categories: needs before bereavement of spouse and children, life experiences after bereavement of spouse and children, how to inform/explain to children about the illness and death of terminally ill parents, involvement of nurses for children with terminally ill parents, nursing intervention for children caring for terminally ill parents, and collaboration with multiple professions. The results were categorized into the following six categories. The results suggest the need to recognize children as members of the family and to explain their medical conditions according to their age and developmental stage. In addition, collaboration with schools and other outside organizations was important for continued support of the children. In addition, nurses need to gain experience and learning, and develop a specific system for children and their families.

緒言

終末期の親が子育て世代である場合,親を亡くす子どもを含めた家族全体の支援について重要視されている.2015年の国立がん研究センターがん対策情報センターのデータによると,18歳未満の子どもをもつがん患者の全国推定値は年間56,143人で,その子どもたちは87,017人,患者の平均年齢は,男性は46.6歳,女性は43.7歳,親ががんと診断された子どもの平均年齢は11.2歳であった1.このことから,子育て世代の終末期の親とその子どもを含めた家族への支援の需要は高まっているといえる.近年,子育て世代の終末期の親を亡くした子どもに関する研究は増えてきているが,子どもを含めた残された家族への支援についての先行研究は未だ少ない.わが国の遺族ケアサービスの実態状況として,「手紙送付」や「追悼会」は70%以上のホスピス・緩和ケア病棟で行われているが,「手紙送付」「電話相談」「葬儀参列」「家庭訪問」は10年間で10%以上減り,「知識や情報の提供」においては10%増えていた2ことがわかっている.また「個別カウンセリング」や「家族カウンセリング」についても減少傾向にあり,組織として遺族ケアを行う体制の整備については70%以上の施設が今後の課題としており,その状況は10年間変わっていない状況が明らかになっている2ことから,終末期の親の闘病から死別後の子どもとその家族への支援について,取り組むべき看護ケアに関する整備体制について明らかにする必要がある.

終末期患者の家族は,患者の病状を子どもに伝えられない,もしくは伝えたくないと考えているケースも少なくない.未成年の子どもをもつがん患者およびその家族が子どものことで抱えている気がかりとして,親が子どもに不安を与える自責の念や子供の成長を妨げたくない思いが30%程度あり,病状の伝え方では病名・病状・死をどのように伝えるか,伝えないか30%近くが悩んでいた3.一方で,病状を曖昧にしておくことは子どもにとって不安を助長させることになり,また家族の大事な一員である子どもを蚊帳の外においてしまうことで,家庭内での子どもの居場所を失くしてしまうことにもなりかねない.終末期の親の子どもの支援で基本となることは,①子どもの力を信じること,②子どもの問いかけに誠実に対応すること,③子どもの感じていることを表現する場や機会をつくること4といわれている.これらのことから,国内における終末期の親の闘病から死別後の子どもとその家族への支援を把握し,今後の臨床現場において取り組むべき看護ケアに関する課題を明らかにすることを目的とした.

方法

用語の操作的定義

1. 終末期

本研究による終末期とは,医師が客観的な情報を基に,治療により病気の回復が期待できないと判断し,患者・家族・医師・看護師等の関係者が納得し,死を予測した対応が必要とされたもの5.また,医師により生命予後がおよそ数日から長くとも2~3カ月と予測されているもの6と定義した.

2. 看取り

本研究による看取りとは,終末期にある患者を臨終のときまで見守ったり付き添ったりしながら心身ともに支えることと定義した.

3. 子ども

子どもの成長発達の状況で差はみられると考えられるが,本研究においてはピアジェの認知発達理論より,前操作期の2~7歳から18歳未満の小児とした.

文献収集方法

医学中央雑誌Web版を用いて2022年11月の時点で検索可能な文献を検索した.検索対象の年度は2012年から2022年の10年間に絞り込むと極端に対象文献の件数が減少してしまうため,2000年から2022年と幅をもたせることとした.キーワードは「親を亡くした子ども」「親の看取り/子ども」「終末期の親/子ども」「親の死/子ども」を掛け合わせ,原著のみを検索し,37件の文献が検索された.得た文献の中から,対象とする文献の選択を行った.包含基準は,1)全文が入手可能,2)終末期における看取りであること,3)看取りの際の支援対象に子どもが含まれていること,4)看取りにおける看護ケア(多職種連携に関することも含む)に関すること,とした.まず,検索された文献から重複文献6件を除外し31件となった.その31件の文献の表題と抄録を読み,看取りや看護ケアに関係のない文献10件を除外し,21件の文献となった.この21件の文献を精読し,包含基準を満たしていない論文3件を除外した結果,本研究で対象となる文献は18件となった( 図1).

図1 本研究の文献検索過程

分析方法

対象文献18件の著者名,文献タイトル,発行年,研究方法,対象,目的,結論,課題についてまとめたシートを作成し,テーマを生成した.テーマを抽出した過程は,筆頭著者が対象となる全18件の文献の目的から考察までを精読し,主に目的および結果・結論から得た内容をラベリングし,ラベリングが類似する文献ごとにそれらを標榜するテーマを共著者と検討し,テーマを生成した.文献のタイトルのみならず,内容(目的や結果)からテーマを抽出する作業を行ったが,複数のテーマにまたがることなく文献を振り分けることができた.その後,テーマごとにそれぞれの文献を精読し,終末期患者の看取りに関する子どもを含めた家族への支援実態や今後の臨床現場において取り組むべき看護ケアに関する課題について示すこととした.上述したラベリングやテーマ分類についての信頼性と明解性については,小児・家族看護を専門とする看護研究者とそれぞれ独立して分析したデータの突合を行い,解釈が一致していることを確認した.

結果

対象文献18件をまとめたシートから,終末期の親の闘病から死別後の子どもとその家族のニーズや体験,看護師や多職種連携による支援に関する六つのテーマが 表1のように生成された.六つのテーマとして,配偶者と子どもの死別前のニーズ,配偶者と子どもの死別後の生活体験,終末期の親の病や死について子どもへの伝え方/説明,終末期の親をもつ子どもに対する看護師の関わり,終末期の親を看取る子どもへの看護介入,多職種との連携,が抽出され,対象となる18件の文献が六つのいずれかに分類された( 表1).18件の文献の年代別の件数は2000年から2010年までが11件,2011年から2022年までが7件であった.また18件の文献を分類すると,事例検討・事例報告10件,質的研究6件,量的研究2件であった.

表1 対象文献一覧
表1 続き

配偶者と子どもの死別前のニーズ

2000年から2015年までの3件の文献が抽出され,研究方法は事例検討2件,質的研究1件であった.研究対象は5歳の幼児から10代の思春期の子どもや母親が含まれていた.それぞれの研究の目的としては,「子どもの個性に合わせた介入方法と母親の役割強化につながった介入について検討する」「患者の病状変化に伴う妻の苦悩とニーズを明らかにして,看護援助を振り返り終末期家族ケアの一助とする」「親の死を仮定したとき,どのような思いを抱くのか調査する」であった.これらの目的の文献から,終末期の親をもつ配偶者と子どもの死別前のニーズとして,患者の状況を医療者から子どもに伝えることは,子どもが事実と異なる解釈を回避し精神的安定に影響する,患者の喪失と子どもとの関係性への不安を抱える配偶者の支援や親子関係の強化7が示されていた.また,患者の病状変化に伴う思春期の子どもをもつ配偶者のニーズとして,子どもが患者の最期に寄り添えることを希望し,子どもが看取りに参加できるような医療者の支援8が必要とされていたことが明らかとなった.さらに,学童期の子どもが親の死を仮定したとき,上学年になるほど親の死に対する不安を強く抱いている9ことが明らかとなり,子どもの発達段階を理解した精神的な支援が必要であった.配偶者と子どもの死別前のニーズとして,精神面での不安の理解と,そのときの医療者に求められる支援として,精神的安定を保つための看護支援の必要性について示されていた.

配偶者と子どもの死別後の生活体験

2004年から2017年までの3件の文献が抽出され,研究方法は3件とも質的研究であった.研究対象は,学童期から思春期後期の子どもと母親である.ここでの3件の研究目的は「思春期の子どもが親との死別体験をどのように乗り越えたのかを遡及的インタビューで明らかにする」「親との死別によるグリーフケアおよびサポート体制の現状を捉え,悲嘆プロセス上の問題を明らかにする」「子育て中に配偶者を亡くした母親が死別後に子どもと生きていく生活体験を明らかにする」であった.これらの目的をもった3件の文献から,子どもは親との死別後,どんなに時間が経過しても,きっかけがなければ自発的に援助を求めることはなく,悲嘆を長引かせる傾向がある.また同じ境遇にある児の語りを聞くことで,語るきっかけを得ることができ,カウンセリングの効果をもたらした10ことが明らかとなった.一方で,悲嘆のプロセス上の問題として,子どもへの死の告知や情緒的サポートの少なさや,学童期の突然の死別,残された親の悲嘆が強い場合11が示され,親の死に関する子どもへのサポートや悲嘆の表出・反応に対する看護介入が必要であった.さらに,子どもたちは表現している大事なメッセージに気づき受け止めてほしいと思っていたにもかかわらず,希望に沿うようなサポートを受けられず感情表出を抑圧していたこと11や,子どもはつらい気持ちを抱えながらも周囲への援助要請が困難な状況にある11ことも明らかになった.配偶者の死別後の生活体験においては1人で子育てをする孤独感,子どもの前で悲しむ姿を見せられない,子どもとの関係に戸惑う,子どもがいることで助けられる,周りの人に支えられる,思い出とともに子どもと前向きに生きる12といった,残された配偶者が子どもと生活していくうえで抱えるさまざまな思いも明らかとなった.

終末期の親の病や死について子どもへの伝え方/説明

ここでは2003年から2021年の幅広い年数の文献が3件抽出された.研究方法はすべて事例報告であり,対象は幼児期から学童期の子どもと父親・祖母であった.目的は「学童期の子どもに母親の死を認知させ,その後の死の受容が行われるように関わった看護援助の効果について報告」「終末期の病状説明を医療者が行った2事例の紹介」「真実を伝えることの困難さと重要性についての報告」となっている.ここの報告では,子どもが興味のある絵手紙などのツールを使用し医療者との関係づくりを行い,気持ちを表現しやすい場を提供すること13や,医療者が病状の変化を適宜伝え理解を進めていき,日常的な家族の習慣が実現されるように家族へ協力を促し,情緒的絆が確認できるようにすること13が示された.医療者は子どもの理解の促進のため,さまざまなツールを活用しながら気持ちを表現できる場を提供していくことや,家族の情緒的絆が確認できるような支援や,これまでと変わらない日常生活が送れるよう家族へ関わることが必要であった.幼児期や学童期の子どもに対し,終末期の病状説明を医療者が行った症例では,説明後に悲しみが表現され,大人が答えづらい質問を避けたり,周囲の人の気持ちを察しようと努力していたり,また今後自分はどうなるのか,なんで親が病気になったのか等多くの質問があった14と報告され,子どもの発達段階に応じた誠実な説明や対応が求められていることが確認された.医療者は子どもとコミュニケーションを取り,いつでも質問できるような関係を構築しておくことや,周囲の大人たちへ協力や理解を求める説明が必要となる.さらに,幼い子どもをもつ終末期患者を最期まで支えるためには,早期からの死の準備教育・予期悲嘆の心理過程への看護介入が重要である15と述べられ,残された時間を患者と家族が有意義に過ごすためにも双方への病状説明の重要性が示唆されている.

終末期の親をもつ子どもに対する看護師の関わり

2012年から2013年の3件の文献が抽出された.研究方法は,量的研究2件,質的研究1件であり,研究対象は,がん専門病院やがん拠点病院や緩和ケア病棟に勤務する看護師であった.研究目的は「がん患者を親にもつ子どもに対するグリーフケアの意識および関わりの実態調査」「がん終末期の親をもつ子どもへの看護師による関わりの実態およびその関連要因を明らかにする」「親を亡くす子どもに対する看護師の関わりついて」であった.がん専門病院の看護師は,がん患者の家族看護(子どもを含めるグリーフケア)は96%が必要であると回答したが,「実践している」は26%で,「必要だが実施するのは難しい」が70%であり,子どもの悲嘆に応じた予期悲嘆・看取りケアは,十分に実施されていない16ことが明らかとなり,対応する看護師の知識や技術の習得が必要であった.また,終末期の親をもつ子どもへのケア実施に影響する要因としては,カンファレンスの実施,緩和ケア病棟勤務経験,年齢,学習経験が挙げられた17.さらに,親を亡くした子どもへの関わりとして,子どもの様子を捉え,子どもに親の病状や行っていることを説明することや,他のスタッフと連携し,子どもが患者と一緒に過ごせるよう調整しながら子どもにケアを提供するための基盤をつくること18であった.看護師は臨床現場において,知識や技術の積み重ねなどの自己研鑽が必要になることや,カンファレンスなどを活用しながら情報共有を行い,ケアを提供するための基盤づくりが必要であることも明らかとなった.

終末期の親を看取る子どもへの看護介入

2004年と2008年の文献から4件が抽出された.研究方法は,事例検討3件,質的研究1件であり,研究対象は,幼児期・学童期・思春期の子どもと母親や親族であった.研究目的は「悲嘆のプロセスを振り返り,子どもへの看護援助について示唆を得る」「がんで親を亡くす子どもへの関わりを振り返り,今後求められる援助を検討」「子どもの精神的ケアとして心理面の影響を検討し,必要な看護介入を明らかにする」「親との死別を体験する子どものストレスと必要なケアの検討」であった.これらの目的の文献から,悲嘆のプロセスの促進には,可能な限り子どものニーズを満たすこと19,子どもへのケアの継続として学校を含めた外部機関との連携が重要である20.このことから,親を看取る子どものニーズを把握し,できる限りニーズに対応できるような看護の関わりが必要であった.子どもは学校という社会の中で生活している時間が長いことや,親が仕事をしていることで学童へ通っている子どもも少なくないことから,学校を含めた外部機関と連携し,継続したケアの提供が子どもの悲嘆回復の一助となっていた.また,子どもへ早期に告知を行うことで,死を迎えるまでの親との時間を有意義に過ごすことが可能である21.さらに,大人と同じように子どもに対しても個別に時間をかけて対話する21ことは,子どもに親の死を受容する段階で現実に向き合う心の準備ができ,死について学んでいく時間となる22ことが明らかとなり,子どもも家族の一員として尊重し関わることが精神的ケアにおいて重要であった.

多職種との連携

2009年と2017年の文献から2件が抽出された.研究方法はどちらも事例報告であり,研究対象は,学童期から思春期の子どもや父親であった.研究目的は「親を亡くした子どもに対するグリーフケアの有効性についての報告」「死別後の生活に機能的に適応し,グリーフワークの過程を検討する」であった.ここでは,医師の診療によるグリーフケアと,プレイセラピストや家族療法家による多職種での介入が有効であった症例が報告されている.故人のこと,死にまつわる状況,死別後の自分のことをくり返し話し,共感をもって聞いてもらうこと23が必要であった.またプレイセラピストと家族療法家は日常生活における家族のグリーフ・プロセスを重視しつつ,統合的にグリーフサポートすることの重要性を見出していた24ことから,多職種連携により,それぞれの専門の立場から家族の状況を判断し専門性を生かした関わり方やアプローチが行えることで,有効な支援につなげられていた.

考察

配偶者と子どもの死別前のニーズ

親の病状を知った子どもは〈自分のせいで病気になってしまった〉,〈自分がいい子でいなかったから〉といった思考の傾向にあり,自責の念に駆られることも多い25ことや,医療者からの適切な説明により子どもが事実と異なる解釈を回避し,精神的安定に影響したこと7から,子どもへ発達段階を見極めた適切な説明が課題と考える.また,学童期の子どもが上学年になるほど親の死に対する不安を強く抱いている9ことは,年齢が上がることで死の概念理解が深まり,身近でも起こる出来事として捉えることが可能と推察され,子どもの死の概念を理解した精神的ケアも課題と考えられる.さらに子どもは,親の状態を知りたい,そばにいたい,親の役に立ちたいというニーズがあるにもかかわらず,周りの大人の判断により,子どもを問題の蚊帳の外においてしまうケースもある4ことからも,死別前から子どもの意思を尊重した支援8や医療ケアチームに子どもを含めた問題解決の取り組みが求められると考えた.配偶者のニーズにおいては,患者を喪失する可能性の不安や悲しみの中,子どものつらさにも目を向けながら,親としての役割を遂行し,子どもとの関係性を保っていきたいニーズ8があったものの,ニーズに対応できていない現状もあり課題が残されていると考えられる.また残された時間が短い患者のそばに子どもが安心していられる支援が,医療者への課題となっていると考えられ,グリーフケアとして患者の死別前からの配偶者と子どもの相談を受ける場の確保が重要であると考えた.

配偶者と子どもの死別後の生活体験

親の死別を体験した子どもは,きっかけがないと自発的に援助を求めることはなく,悲嘆を長引かせる傾向10にあり,感情表出の場がないことが課題と考える.同じ境遇にある児の語りを聞くことで,逃げていた記憶と向き合い,語るきっかけを得ることができ,カウンセリングの効果をもたらした10ことからも,親との死別後のサポート体制の整備を行うことで,子ども自身が語りの中で気持ちを整理することができ,他者と気持ちを共有し自分だけがつらいわけではないことが確認できると推察される.また複雑化・長期化した子どもの悲嘆反応は,成長発達に影響を及ぼす可能性が極めて高い26ことからも,早期からのサポート介入の体制整備が必要になると考える.さらに悲嘆のプロセスの問題となる要因に,子どもへの告知や情緒的なサポートのなさ11が挙げられている.周囲の大人もつらい現実を受け止めながら日常生活を送らなければならない状況であり,子どもにも同じ思いをさせたくないといった親の配慮もあると考えられる.しかし前述にもあるように,子どもは親の状態を知りたいというニーズ4をもっていることからも,子どもへの病状説明とその後の誠実な対応が悲嘆の複雑化や長期化の回避につながるため,死別前からの早期介入による支援が重要と考えられる.患者と死別した配偶者においては,悲しみと向き合いながら,親としての役割と責任の狭間で苦悩を抱え,この先の子どもとの関係性について戸惑いながらも,周囲へのサポートにより前に進む力を得ていた12ことから,配偶者に対しても感情表出や気持ちを共有する場の提供が必要になる.また周囲からのソーシャル的なサポートを受けることで,ストレスが軽減され,家族の緊張が和らいだ27と報告されていることからも,元の日常生活へ戻るための適応過程において,残された配偶者と子どもへのソーシャルサポートは有効な支援であると推察される.よってサポート団体による遺族会や遺族外来における支援の取り組みが,悲嘆の回復に役立つと考えられる.看護介入のみならずソーシャルサポートを含めた医療者以外からの積極的な働きかけによる支援が今後の課題と考える.

終末期の親の病や死について子どもへの伝え方/説明

親の病状について子どもへ伝えることの心情として,患者やその配偶者が混乱しているため子どもに伝えるまで考えられないこと28や,子どもに病状を伝えた後の反応に対しての不安28が生じていることがわかっている.伝え方として,子どもとのコミュニケーションの中で,子どもに合ったツールを使いながら説明を行うこと13が示されている.また説明後は,子どもは気持ちをうまく表現できず,感情を抑圧していることが多い14,29ことから,医療者は子どもが気持ちを表現しやすいように環境調整を行うことが求められる.さらに親の病気により,これまでの日常が変化することへの恐れも生じる14ことから,日常的な習慣を継続し保証することが心の安定につながることを,医療者や家族は理解しておくことが重要であり,周知していくための方策を検討することが課題と考える.時に子どもは不安や罪悪感から疑問や質問を投げかけてくる場合もある14.子どもの疑問や心配に対しては子どもの理解に合わせて説明し,共に過ごす時間を設ける4ことが死の準備教育や予期悲嘆への看護として大切になる15ため,周囲の大人や医療者は子どもの心情を理解し,常に誠実な説明や対応を心掛け,患者との残された時間が家族の悲嘆回復につなげられるような積極的な看護支援が必要と考えた.

終末期の親をもつ子どもに対する看護師の関わり

カンファレンスの実施や緩和ケア病棟勤務経験,年齢,学習経験が,終末期の親をもつ子どもへのケア実施に影響される17ことが明らかとなっている.対象となる子どもとの関わりから得た学びを,部署内で共有をしていくことは,看護の知識の底上げにつながり看護実践に役立つと考える.また子どもを含めた家族へのグリーフケアにおいては9割以上が必要であると認識しているにもかかわらず,実践できている割合は3割にも満たなかった16ことから,子どもとの関わり方や接し方に不安や戸惑いが生じ,それが看護実践に影響していることが考えられる.看護師が研修や勉強会など学習経験を積むことは,子どもにケアを提供するための基盤をつくること18につながり,看護ケアの知識と実践が統合され,臨床実践における関わり方に自信がもてるようになると考えられる.ひいては看護実践に対する自信は,終末期の親をもつ子どもへの予期悲嘆や看取りのケアへの実施に反映されると考える.

終末期の親を看取る子どもへの看護介入

子どもへの看護介入として,可能な限りニーズを満たすことが子どもの安定性を保ち,悲嘆のプロセスを促すことにつながる19と述べられている.子どものニーズには,日常生活の保証があり,日常生活が保てるように家族が協力することは,家族同士の情緒的絆を確認することにもつながる.また子どもは家族の一員であると実感できることで,心の発達とともにレジリエンスを高められると推察される.看護介入を行ううえで,子どもやその家族とのコミュニケーションを取りながら双方の橋渡しを行うこと28も,看護師としての大切な役割の一つとなっていると考える.さらに,子どもへのケアを継続していくための連携として,施設内外での情報収集やつながりは重要になる20.とくに子どもは学校という子ども特有の社会があるため,学校との連携は必要不可欠であり,家とは違う子どもの様子を知り得る機会として学校を含めた外部機関との連携が重要と考える.

前述にもあるように,子どもへの病状説明においては子どもを家族の一員として尊重して関わることや,誠実な対応で子どもの発達段階に合わせた説明を必要時繰り返し丁寧に行っていくこと21で,子どもの死への理解が進みやすくなる22と考える.そして,多くのリソースから,適切なリソースを選択し連携していくことは,看護師に求められる必要な能力である.適切なリソースを活用した継続した支援の提供は,子どもを含めた家族の日常生活への適応や回復,悲嘆のサポートにつながると考える.このことから,看護師に求められる必要な能力を生かせるような看護師の育成は今後必要になると考える.

多職種との連携

死別体験した子どもは,さまざまなグリーフを抱えながら日常生活を過ごしている.グリーフサポートには,医師やカウンセラーなどの治療的な介入による専門的支援や,ピアサポートの場におけるプログラムによる非日常のグリーフサポート,家庭内や町内,職場,学校,寺院などのコミュニティーによる日常でのグリーフサポート26がある.親との死別を体験した子どもやその家族は,それらの人々のサポートを受けられる情報を知らないことも多いと推察される.とくに非日常のグリーフサポートである医療者による専門的な支援については,医療者からの情報提供がなければたどり着くことが困難な情報であり,看護師は子どもやその家族がどのようなニーズを持っているのかを把握し,専門家につなげる役割も求められている.一方で,専門家の存在や専門家へつなげる方法が不明瞭であることが課題になっていると考える.専門家の介入は多角的な判断から,より的確な支援へと導くこと23が可能になると考えられるため,死別後に悲嘆の対処方法がなく,悲嘆が長期化する可能性が高い30ことが明らかになっている場合には,死別後の早期からの多職種連携による介入は有効である24と考える.

研究の限界

本研究は,終末期の親の闘病から死別後の子どもとその家族のニーズや体験,看護師や多職種連携による支援について,国内文献から把握し,今後の臨床現場において取り組むべき看護ケアに関する課題を明らかにすることを目的とした.しかし,使用した文献検索エンジンは医学中央雑誌Web版のみであり,例えば海外誌に英語で投稿された国内遂行研究等まで含めて把握した文献検討であるとはいえない.

また,医療ソーシャルワーカーや臨床心理士,スクールカウンセラーなど,他職種により執筆された論文も含めた子どもと家族へのケアの検討を継続する必要があると考える.

さらに今後は国外のデータベースを使用した文献検討により,諸外国の文化的・民族的な背景を踏まえた状況を把握し,日本との文化的・民族的な差異が,子どもを含めた家族の看取りのケアにどのように影響しているのかを理解しておく必要がある.そうすることで,わが国の文化に合った国内における終末期の親をもつ子どもとその家族への看護の支援について検討が行えると考える.

臨床への示唆

本研究では,残される家族を含め,学校や外部機関と連携した継続的な悲嘆の支援が求められる.また,終末期の親の病状説明に関して,周りの大人は子どものもっている力を信じ,子どもへの誠実な対応を行うことで,残された家族との絆を強め,結果として家族が高いレジリエンスを得ることが示唆された.

一方で,終末期の親をもつ子どものケアにおいて,看護師はカンファレンスや学習経験を積み,看護の質の向上を目指し,相談支援の支援体制について整備していくことが求められる.

結論

終末期の親をもつ子どもとその家族への支援として,看護師は患者の病状や理解度について把握し,そのうえで子どもも家族の一員として認識し,子どもの年齢や発達段階に応じた病状説明が必要であった.また,終末期の親を看取った子どもは自ら悲嘆反応を表出することが困難であったことから,医療者からの支援以外にも学校などの外部機関との情報共有により,多職種連携における広い視野での継続した支援が必要であった.さらに,看護師はカンファレンスや学習経験を積み,看護の質の向上を目指し,相談支援の支援体制を整えていくことが今後の課題である.

研究資金

本研究は,公益財団法人SGH財団 第4回SGHがん看護研究助成金の助成を受けて実施した.

利益相反

すべての著者の報告すべき利益相反なし

著者貢献

並木は研究の構想およびデザイン,研究データの収集・分析および解釈,原稿の起草および原稿の重要な知的内容に関わる批判的な推敲に貢献した.涌水は研究データの分析および解釈,原稿の重要な知的内容に関わる批判的な推敲に貢献した.すべての著者は投稿論文ならびに出版原稿の最終承認,および研究の説明責任に同意した.

References
 
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