Palliative Care Research
Online ISSN : 1880-5302
ISSN-L : 1880-5302
Original Research
QOL Change of Caregivers during First Line Palliative Chemotherapy for Patients with Incurable Cancer
Nobumichi Takeuchi Saiko KurosawaKumiko KoikeSonomi Yoshida
Author information
JOURNAL OPEN ACCESS FULL-TEXT HTML

2025 Volume 20 Issue 1 Pages 49-55

Details
Abstract

背景:がん患者の家族は,患者の介護,通院の支援,社会的活動の補助など身体的,精神的,経済的負担がかかっているにもかかわらず,その生活の質(quality of life: QOL)に関する研究は進んでいない.目的:がん化学療法を受ける患者の家族のQOLを測定し患者の治療経過との関連性について検討する.方法:2016–2024年に当科で化学療法を施行した切除不能・再発固形がん症例の1次治療前と2次治療前のEORTC-QLQ-C30を用いて測定した患者と家族のQOLを治療の期間および治療効果を後方視的に比較検討した.結果:45例が抽出され,家族は治療前後とも倦怠感,疼痛,睡眠障害,経済的困難感を多くが訴えており,情緒機能と認知機能が患者と同等に低下していて,その後も回復がなく治療早期では社会機能が低下していた.治療効果は家族のQOLに影響がなかった.考察:自己記入式調査票によるがん患者の家族のQOL調査により,一貫した家族の精神的支援と,治療早期の社会的支援の必要性が判明した.

Translated Abstract

Background: Despite the significant physical, emotional, and financial burdens faced by the families of cancer patients, such as caregiving, assisting with hospital visits, and supporting social activities, research on their quality of life (QOL) remains insufficient. Objective: To evaluate the QOL of the families of patients undergoing chemotherapy for cancer and to investigate its relationship with the patients' treatment courses. Methods: A prospective analysis was conducted using EORTC-QLQ-C30 to measure the QOL of patients with unresectable or recurrent solid tumors and their families. Assessments were performed before first-line treatment and before second-line treatment in patients treated at our department between 2016 and 2024. Changes in QOL over the treatment periods and the impact of treatment efficacies were examined. Results: A total of 45 patients were included. Family members frequently reported fatigue, pain, insomnia, and financial difficulties both before and after treatment. Emotional and cognitive functioning declined to the same extent as in patients and did not recover over time. Social functioning notably reduced during the early treatment phase. Treatment efficacy had no impact on the QOL of family members. Discussion: The survey using self-administered questionnaires revealed the consistent need for emotional support for families and highlighted the importance of early social support during the treatment phases.

緒言

固形腫瘍におけるがん薬物療法のほとんどが外来治療に移行した現在においては,治療の遂行にあたり,家族の支援は大変重要である13.家族は在宅療養中の患者の身体的,精神的な支援を行い,さらに社会的支援の調整や治療の副作用の早期発見,緊急時の病院への搬送などを行うことを医療者側から期待されており,また社会慣習からも期待されていると感じているとされる2.新規薬剤の開発・導入などにより治療成績が改善され,結果として治療期間が以前と比べて長期化している.また,家族のquality of life(QOL)の変化やその維持に関しては,支援が必要であることは認識されてきている35

これまでに家族の支援にはさまざまな試みがされているが,化学療法中の患者の家族のQOLと治療経過との関連についての知見は少ない69

今回われわれは家族自身による身体的・精神的・社会的な症状を自己記入シートに記入するcaregiver-reported outcome(CRO)により,家族のQOLを測定して治癒不能固形がんに対するがん化学療法の経過時間や治療の有効性の影響を検討した.

方法

研究デザイン

単一施設における前向き研究.

対象者

当科において切除不能・再発固形がんに対して化学療法を行った患者と主に介助する家族で,1次治療前と2次治療前に両者のQOL測定ができた症例.

データ収集

2016年8月から2024年3月まで前向きにデータ収集を行った.1次治療開始前と2次治療開始前の外来受診時に,患者と家族に病状と薬物療法の説明を行い,治療に関する同意を得た時点で自己記入シートを渡して,自宅や待合室など医師・看護師のいないところで患者,家族それぞれに記入してもらい,治療開始時に回収した.

使用した尺度

がん患者の家族のQOL測定にはCaregiver Quality of Life Index-Cancer(CQOLC)10やZarit Burden Interview11なども報告されているが今回は家族と患者両者に用いることができるEORTC-QLQ-C30を使用した12

EORTC-QLQ-C30日本語版version 312を自己記入シートに印刷して,返却されたシートに記載された症状スコアをscoring manualに沿って,身体的機能スケール(physical function scale,以下PFS),役割機能スケール(role function scale,以下RFS),情緒機能スケール(emotional function scale,以下EFS),認知機能スケール(cognitive function scale,以下CFS),社会機能スケール(social function scale,以下SFS),全般的健康感スケール(global health scale,以下GHS)を算出し,これらのスケールを回答質問数で重みをつけて総合的に計算する包括的QOLスコア(summary score,以下SS)を算出した13

EORTC-QLQ-C30質問票の症状スコアは,症状ごとに割り当てられた選択肢の中の「まったくない」を1点,「少しある」を2点,「多い」を3点,「とても多い」を4点としての回答点数の総計である.症状ごとの質問数(倦怠感は3問,悪心・嘔吐は2問,疼痛は2問,呼吸困難,睡眠障害,食欲不振,便秘,下痢,経済的負担感に関してはそれぞれ1問)より症状スコアが多ければ症状の訴えがあると判断できるため,倦怠感は4点以上,悪心・嘔吐と疼痛は3点以上,呼吸困難,睡眠障害,食欲不振,便秘,下痢,経済的負担感は2点以上であれば症状があるとした.

倫理的配慮

データの収集と分析および公開と保存に関して2016年7月の院内倫理委員会の審査により承認を受けた.病状説明と化学療法の説明をして治療の同意を得る際に,研究内容の説明とデータ収集と研究に関わる同意取得を口頭および文書で行った.

治療と効果判定

化学療法は当院通院治療室もしくは病棟で行い,治療効果は画像診断を当院放射線科専門医とともに行い,RECIST基準によって最良効果を決定した14

統計解析

各スケールの家族—患者間の差,家族における治療前後の差に関して対応のあるt検定をMicrosoft Excel for Mac(バージョン16.89.1)にて行い,p<0.05を有意差とした.

結果

症例

同時期に1次治療を開始した症例のうち患者と家族両者から回答を得られたのは232例あり,2次治療前では85例であった.そのうち標準治療の1次治療前と2次治療前の両方で回答が得られた45例に関して解析を行った.

患者は男性33名,女性12名,平均年齢(±標準偏差)は69.8(±10.6)歳.患者の家族は男性12名,女性33名,平均年齢は64.2(±11.3)歳.原疾患は消化器がんが37例と最多を占めた.いずれも1次治療の標準治療を施行した.原疾患,治療およびその効果は,表1に記載した.患者と家族の関係性は戸籍上の夫婦38例患者の子供5例,患者の親1例,息子の妻1例であった.全員が患者と同居していた.1次治療期間の期間は平均196日(±137日)で最長594日,最短で45日であった.治療期間を3カ月ごとに分けて,QOLの変化と比較した.

表1 患者と家族の内訳

項目 項目
患者年齢(平均±標準偏差) 69.8±10.6 家族年齢(平均±標準偏差) 64.2±11.3
患者性別,名(%) 家族性別,名(%)
33 (73%) 12 (27%)
12 (27%) 33 (73%)
患者から見た家族との関係性,名(%) 治療期間日数(平均±標準偏差) 196±137
夫婦 38 (84%) 最良治療効果,名(%)
息子 4 (9%) CR 2 (4%)
1 (2%) PR 16 (36%)
息子の妻 1 (2%) SD 14 (31%)
母親 1 (2%) PD 13 (29%)
がん種,名(%)
胃癌 12 (27%)
膵癌 10 (22%)
大腸癌 7 (16%)
食道癌 5 (11%)
胆道癌 3 (7%)
肺癌 3 (7%)
頭頸部癌 2 (4%)
軟部組織肉腫 2 (4%)
原発不明癌 1 (2%)

年齢は治療開始時のもの.

CR: complete response, PR: partial response, SD: stable disease, PD: progressive disease

1次治療中の最良効果は,complete response(CR)2例,partial response(PR)14例,stable disease(SD)14例,progress disease(PD)13例であった.CR 2例とPR 14例を合わせた16例をresponder群,ほかをそれぞれSD群,PD群として,治療効果と家族のQOLの変化を比較した.

治療前のPFSは家族91.6±11.8,患者83.0±18.9,p=0.0113,(数値は平均値±標準偏差),RFSは家族91.5±15.7,患者80.0±24.3,p=0.0091,GHSは家族63.1±20.5,患者51.5±24.2,p=0.0156,SSは家族86.8±9.2,患者78.5±17.0,p=0.0050であり,家族のスケールは患者と比べて有意に高値を示した.対照的にEFSは家族68.9±21.2,患者71.1±21.7,p=0.6246,CFSは家族79.3±18.2,患者78.9±18.6,p=0.9241,SFSは家族83.0±18.6,患者75.2±25.0,p=0.0980と両者に有意差は認められなかった.

治療終了時においては,EFS(家族75.7±18.0,患者79.6±16.5,p=0.2889),CFS(家族80.0±21.8,患者80.7±18.8,p=0.8632)で患者と家族の間に有意差は認められなかった.それ以外のスケールではPFS(家族90.1±12.2,患者75.9±22.1,p=0.0002),RFS(家族94.4±11.2,患者70.7±25.7,p<0.0001),SFS(家族84.1±20.4,患者74.8±22.1,p=0.0417),GHS(家族67.8±20.6,患者58.3±19.4,p=0.0246),SS(家族87.4±10.4,患者75.9±15.4,p<0.0001)と家族が有意に高値であった( 図1).

図1 治療前後の患者と家族のQOL

*: P>0.05  PFS: physical function scale, RFS: role function scale, EFS: emotion function scale, CFS: cognitive function scale, SFS: social function scale, GHS: global health scale, SS: summary score.

治療前後の家族の各QOLスケールを比較すると有意差を持って変化がみられたものはなかった.患者においてはEFSが治療前とくらべて治療終了時に有意に上昇していたが,それ以外のスケールに有意差を持って変化しているものはなかった.

1次治療の治療効果をresponder群,SD群,PD群の3群にわけて家族のQOLスケールを比較すると,治療後に低下したスケールは少なく(表2中の下線),統計学的に有意な変化は最良効果がSDであった家族のEFSの上昇のみであった.また治療後のQOLスケールを各群間で比較しても有意差は認めなかった(表2).

表2 治療効果別の家族の治療前後QOL

全症例(n=45) PFS RFS EFS CFS SFS GHS SS
治療前平均 91.56±11.76 91.48±15.74 68.89±21.20 79.26±18.17 82.96±18.63 63.15±20.45 86.76±9.19
治療後平均 90.07±12.20 94.44±11.24 75.74±18.02 80.00±21.79 84.07±20.40 67.96±20.56 87.45±10.35
p値 0.5589 0.3069 0.1021 0.8614 0.7879 0.2684 0.7394
Responder(n=18)
治療前平均 91.11±11.43 91.67±16.42 67.59±23.20 78.70±20.46 77.78±24.92 58.33±23.74 84.86±11.57
治療後平均 87.78±13.96 94.44±11.43 76.39±19.85 76.85±27.50 86.9±13.36 68.98±22.47 85.02±13.36
p値 0.2687 0.5636 0.1613 0.7557 1.0000 0.1174 0.9515
SD(n=14)
治療前平均 94.76±5.95 96.43±9.65 61.9±27.73 75.00±16.98 86.90±13.36 67.26±18.62 87.63±8.01
治療後平均 92.38±7.78 97.62±6.05 72.62±19.46 79.76±19.81 89.29±15.48 67.86±22.13 89.62±8.73
p値 0.1739 0.6714 0.0115 0.1039 0.5830 0.9080 0.0600
PD(n=13)
治療前平均 88.72±16.19 85.90±19.06 78.21±11.04 84.62±15.90 85.90±11.48 65.38±17.30 88.45±6.41
治療後平均 90.77±13.75 91.03±14.62 78.21±14.25 84.62±14.37 87.18±13.87 66.67±17.35 88.47±6.46
p値 0.2188 0.3665 1.0000 1.0000 0.7533 0.8506 0.9877
効果群間比較(p値)
Responder/SD 0.2779 0.3551 0.5949 0.7408 0.1561 0.8886 0.2742
Responder/PD 0.5581 0.4706 0.7806 0.3613 0.4759 0.7587 0.3967
SD/PD 0.7083 0.1332 0.4059 0.4759 0.2311 0.8783 0.7046

下線は治療後に低下した数値.

SD: stable disease, PD: progressive disease, PFS: physical function scale, RFS: role function scale, EFS: emotion function scale, CFS: cognitive function scale, SFS: social function scale, GHS: global health scale, SS: summary score

1次治療経過期間の長さを3カ月ごとにわけて各スケールの変化を比較すると,治療期間が6~9カ月の家族においてCFS,SFS,GHS,SSが治療前と比べて有意に改善していた(表3網掛け部分).全体では9項目で治療前より治療後に低下がみられたが(表3下線部分)有意差はなかった.(表3).

表3 治療期間別家族の治療前後QOL

治療期間<3M (n=9) PFS RFS EFS CFS SFS GHS SS
治療前平均 93.33±11.56 90.74±18.84 76.85±11.62 88.89±11.79 90.74±12.11 77.78±12.50 90.87±5.15
治療後平均 92.59±11.28 92.59±14.70 85.19±12.34 90.74±12.11 92.59±12.11 68.52±23.85 90.93±6.38
p値 0.3466 0.7995 0.1720 0.3466 0.5943 0.1491 0.9788
治療期間3–6M (n=19) PFS RFS EFS CFS SFS GHS SS
治療前平均 90.53±11.18 92.11±15.08 66.23±22.13 72.81±20.94 84.21±16.17 64.91±19.76 84.91±10.34
治療後平均 88.07±11.88 94.74±11.18 69.74±11.18 70.18±24.58 81.58±20.71 65.35±15.53 83.62±11.70
p値 0.3500 0.5461 0.5076 0.5913 0.6669 0.9332 0.5159
治療期間6–9M(n=10) PFS RFS EFS CFS SFS GHS SS
治療前平均 92.67±14.56 90.00±17.92 62.50±22.65 75.00±16.20 66.67±22.22 48.33±15.61 83.99±8.87
治療後平均 92.67±12.75 95.00±11.25 76.67±11.65 86.67±15.32 86.67±15.32 75.83±19.82 90.33±7.45
p値 0.5000 0.3434 0.0523 0.0013 0.0051 0.0032 0.0029
治療期間9M以上(n=7) PFS RFS 1 CFS SFS GHS SS
治療前平均 90.48±11.45 92.86±13.11 75.00±25.46 90.48±8.91 92.86±13.11 60.71±24.87 90.45±8.95
治療後平均 88.57±14.76 95.24±8.13 78.57±20.89 83.33±23.57 76.19±30.21 63.10±29.60 89.23±12.47
p値 0.7152 0.6036 0.5729 0.4072 0.1775 0.7524 0.6924

下線は治療後に低下した数値.

PFS: physical function scale, RFS: role function scale, EFS: emotion function scale, CFS: cognitive function scale, SFS: social function scale, GHS: global health scale, SS: summary score

家族の80%以上において治療前後とも倦怠感を訴えていた.さらに疼痛,睡眠障害,経済的困難を治療前後ともに30%以上が訴えていた(表4).

表4 治療前後の家族の有症状率

症状 倦怠感 悪心・嘔吐 疼痛 呼吸困難 睡眠障害 食欲不振 便秘 下痢 経済的不安
治療前 82.2% 0.0% 36.0% 18.0% 44.0% 29.0% 22.0% 9.0% 33.0%
治療後 82.2% 4.4% 40.0% 16.0% 31.0% 16.0% 29.0% 11.0% 38.0%

考察

今回,われわれは化学療法を受ける患者とその介護をする家族のQOLをEORTC-QLQ-C30を用いた自己記入シートを用いて測定して,治療期間を経た家族のQOLの変化を中心に観察した.

1次治療開始の時点で家族のEFSとCFSは,患者と同程度に低下しており,平均197日の1次治療期間を経ても,その回復はみられないことが観察された.

治療効果として腫瘍の縮小もしくは増大の停止がみられた症例の家族においてはEFSの改善がみられたが,治療効果によってほとんどのQOLスケールの有意な変化がみられないことから,患者の治療効果の有無が家族のQOLには影響していないと思われた.このため患者に治療により状態が改善したとしても,医療者は家族のQOLへの注意を怠るわけにはいかないと考えられる.

治療期間の長さとPFS, RFS, EFSには統計学的に有意な関係は見出せなかった.Northhouseらは治療開始後の家族の適応の経過で,精神症状,とくに抑うつが1年後にも多くの場合残存すると報告している6,8.EFSが治療期間を経ても改善していないのはこれと同様のことを示していると思われる.今回の検討では治療期間6カ月から9カ月の患者の家族においては,CFS, SFS, GHS, SSが治療前より改善傾向がみられた.これらのスケールは短期間の治療期間後の測定では治療前より低下していた.これは認知機能,社会機能に関する家族への支援は治療早期に行う必要性を示唆しており,治療開始時から患者と同等に低下している情緒機能に関しては初期から継続的に一貫した支援が必要であることを示していると思われた.

治療初期から家族の支援を行うことの効果はDionne-Odomらの臨床試験により抑うつの重症度を軽減することが示され7,その方法として,治療初期からの家族に対する介護の教育,疾患に関する十分な情報の供与と共有,IT機器による定期的な家族とコミュニケーションなどが検討されている1517

症状スコアから算出した有症状率においては一貫して倦怠感,睡眠障害,疼痛および経済的な不安が高値を示した.患者の家族を高度のストレス下にある存在として,患者とは別に,さまざまな症状に対応していく必要があること,経済的な不安に関しても初期から情報を提供して,解決策を提示していく必要があると思われた.

家族の支援を早期から適切に行うために,今回行ったような家族のQOL測定と症状スクリーニングを行うCROが有効であると思われる.EORTC-QLQ-C30を用いた今回の検討では情報は十分得られたが,記入には時間がかかり計算などもやや煩雑で,解釈も容易ではない.スケールに簡便なものを利用してスクリーニングとして行うか,家族が愁訴を訴えやすいようながん診療相談体制を整備するなどをして,治療チームと緩和ケアチームが協働して初期から家族にも介入するシステムの設立が必要とされる.

本研究の限界

今回の検討は 表1にあるようにさまざまな種類のがん腫の治療経過における家族のQOLの検討であり,患者間の状態の違いは大きく,治療方法も侵襲性の高いものと低いものがあるため,それに伴い在宅における家族の介助負担も異なるため,結果にもそれらが影響している可能性はある.また,患者・家族とも平均年齢が高いので,家族においてもさまざまな肉体的なもしくは認知面など精神的な障害がもともとある可能性もあり,それらがQOLスケールや有症状率に影響している可能性が高い.

治療期間とQOLの比較に関しては,記入する患者・家族の負担を考え,治療方法変更時のみにQOL測定を行ったため,時間的な変化を正確に捉えているとは考えにくい.またさらに長期に渡った場合の経過に関しては不明である.

条件に差がある個々の症例や家族におけるそれぞれのQOLの変化に関してはさらに症例の蓄積と長期の観察が必要と考える.

結論

化学療法中の治癒不能固形がん患者の家族のQOLをEORTC-QLQ-C30による自己記入シートを用いて測定して,患者の治療経過との関連を検討した.

治療期間を経て家族の社会的機能は回復してくるが,患者と同程度の情緒機能低下や認知機能低下が治療開始時から終了時まで回復せず一貫して認められた.治療効果は家族のQOLにはほとんど影響がなかった.

がん化学療法には,患者とともに家族のQOLをモニタリングしながら,治療初期から家族へ継続的な支援を行うことが必要であろうと思われる.

謝辞

患者記録の入力にご協力いただいた当院事務スタッフと,研究にご協力いただいた患者さん,ご家族に感謝申し上げます.

研究資金提供

なし

利益相反

著者全員は当研究に関して開示すべき利益相反はない.

各著者の貢献内容

竹内信道:研究の構想・デザイン,データ収集・分析,研究データの解釈,原稿の起草,原稿の重要な知的内容に関わる批判的な推敲

黒澤彩子:データ収集・分析,研究データの解釈,原稿の重要な知的内容に関わる批判的な推敲

小池久美子:データ収集・分析,原稿の重要な知的内容に関わる批判的な推敲

吉田園美:研究の構想・デザイン,データ収集・分析,原稿の重要な知的内容に関わる批判的な推敲

すべての著者は投稿論文ならびに出版原稿の最終承認,および研究の説明責任に同意した.

References
 
© 2025 Japanese Society for Palliative Medicine

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/4.0/deed.ja
feedback
Top