Palliative Care Research
Online ISSN : 1880-5302
ISSN-L : 1880-5302
Clinical Practice Report
Initiatives for the Establishment of the Network of Regional Medical Institutions regarding Palliative Care at the National Cancer Center in Japan
Ayako SatoMadoka YamazakiTomomi SanoEmi TakeuchiYutaka MatsuokaSaho Wada
Author information
JOURNAL OPEN ACCESS FULL-TEXT HTML
Supplementary material

2025 Volume 20 Issue 1 Pages 81-87

Details
Abstract

背景:国立がん研究センターで実施している,がん治療病院と地域の連携を促す人材を育成する「地域緩和ケア連携調整員研修(以下,研修)」の効果を検討する.方法:2016年から2021年に研修会に参加した施設にアンケート調査を行った.結果:116施設から回答を得て,回答率は50.2%であった.研修の成果については,「ポジティブな変化があった」に分類される回答が78%であった.一方,「ネガティブな変化」については報告されなかった.「終末期がん患者の病院から在宅への円滑な移行を阻む要因」に関して,上位は「患者の社会的背景(独居や高齢等)により在宅療養へ移行できない(88%)」,「患者の在宅療養に対する不安(83%)」であった.結論:本研修は,ポジティブな変化が78%であったことから,一定の効果が得られているといえる.今後は,地域の特性を活かした課題に取り組めるよう,研修の在り方を検討する予定である.

Translated Abstract

Background: The National Cancer Center Institute for Cancer Control has trained regional palliative care coordinators to disseminate personnel promoting collaboration between cancer hospitals and regional institutions. We examined the effectiveness of the training. Methods: A questionnaire survey was conducted in February 2022 among facilities participating in the training sessions from 2016 to 2021. Results: One-hundred sixteen facilities responded. The results were classified as ‘positive change (78%)’ and ‘negative change (0%)’. Regarding ‘factors inhibiting the smooth transition of terminal cancer patients from hospital to home,’ ‘patients’ social background (e.g., living alone, old age, etc.) interferes with the transition to home care (88%)’ and ‘patients’ anxiety about home care (83%)’ were the most common factors. Conclusion: Nearly 80% of participants reported positive changes, indicating that the training has had a certain effect. With regard to inhibiting factors, we plan to consider how training should be conducted so that it can address the individual issues in each region.

背景・目的

65歳以上の人口がピークとなる2040年に向けて,がん医療においても高齢化への対応は喫緊の課題となっている.このような変化に伴い,がん治療病院(がん診療連携拠点病院等)と,地域の医療機関との役割分担や,地域社会との連携の重要性が増してきている.対応として,国のがん対策では,地域連携体制の構築が強調されている1,2

国立がん研究センターがん対策研究所がん医療支援部では,厚生労働省委託事業「地域緩和ケア等ネットワーク構築事業」の一環として,2016年より地域緩和ケア連携調整員研修(以下,研修)を実施している.本研修は,厚生労働科学研究費「緩和ケア普及のための地域プロジェクト(outreach palliative care trial of integrated regional model)」(以下,OPTIM)3をもとに開始された.この研修は,OPTIMで得られた知見3である,「第一段階:顔の見える関係づくり」,「第二段階:体制づくり」,「第三段階:地域づくり」を軸に二次医療圏での取組として実施されている.

研修の対象者は,がん診療連携拠点病院等で,地域連携業務に従事している医療職,事務職,管理者等複数名からなる3名以上のチームである.研修内容は,①事前課題,②講義・グループワーク,③行動計画の立案・ポスターセッション,④地域で計画・実行,フォローアップの構成となっている(付録1).

2016年から2023年の参加者は,1413名で内訳を付録2に示した.

本報告では,研修実施が参加施設の二次医療圏の「地域緩和ケア等ネットワーク構築」のための行動変容に貢献しているかを調べるため,研修受講者に実施しているフォローアップアンケート(付録3)を用いて検討した.

方法

2016年から2021年に実施した研修のいずれかに参加したがん診療連携拠点病院207施設,非拠点病院24施設に2022年2月に電子媒体を通じて,アンケート調査を実施した.各施設の参加者に送付し,各施設代表者一人から回答を依頼した.

アンケート調査の内容

研修終了後,地域緩和ケア連携においてどのような取り組みを行ったか,「I.研修で設定した課題(以下,課題)」,「II.地域での取り組み実施内容(以下,取組)」,「III.成果と課題の解決状況(以下,成果と課題)」,および「IV.今後の課題と,その解決に向けた取り組みの方向性(以下,今後の課題と解決)」についてそれぞれ自由記載で回答を求めた.また,「V.自施設がある地域において,終末期がん患者の病院から在宅医療への円滑な移行を阻む要因として該当する阻害要因(以下,阻害要因)」に関して,OPTIMの報告書4の地域緩和ケア推進のための課題を参考に28項目(付録3)作成し,複数選択可で回答を求めた.

分析方法

記述された内容を,佐藤,山崎(心理,福祉を専門とする質的研究の経験をもつ研究者)で分類した.

「I.課題」,「II.取組」,「IV.今後の課題と解決」については,回答の内容を「1. 自施設内での取組」,「2. 地域での取組」,「3. できていない,または忘れた」に分類した.さらに,2に関して,「特定の施設間」,「広域にまたがる施設間」,「医師会・行政」に分け,IIとIVに関しては,さらに内容を「顔の見える関係づくり」,「体制づくり」にそれぞれ分類した.なお,「特定の施設間」は2施設間の連携,「広域にまたがる施設間」は3施設以上の連携と定義し,「地域緩和ケア連携協議会で研修会を開催した」等の場合が含まれた.記述内容が複数の内容にまたがる場合には,それぞれの分類に1ずつカウントをした.また,課題が実施取り組み内容に沿ったものであるか確認した.

「III.成果と課題の解決」について,実際に何らかの行動がなされた「1. ポジティブな変化」,今まで行っていた取り組みが阻害された「2. ネガティブな変化」,「3. 継続している」,「4. 検討が必要」,「5. 取り組めていない」に分類した.

阻害要因に関して,それぞれの項目の合計数,選択された割合を記載した.分類,阻害要因をそれぞれ単純集計した.全体を把握し,阻害要因は回答割合が高い順に示した.

倫理的事項

本調査は,「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」の適応外である.調査実施に際しては,国立研究開発法人国立がん研究センター倫理審査委員会の承認を得た(研究課題番号2021-343/2021年12月22日).

結果

得られた回答のうち,受講した人がすべて異動してしまった1施設の回答は除外した.二つの回答があった施設は,1施設は,施設代表者の回答を,もう1施設は回答者と登録があった回答を採用した.その結果,41都道府県,116施設数の回答を分析対象とした.施設の内訳は,都道府県がん診療連携拠点病院26施設,その他のがん診療連携拠点病院79施設非拠点病院11施設であり,回答率は50.2%であった.回答者の職種の内訳は,看護師66名,メディカルソーシャルワーカー31名,医師13名,保健師1名,事務・その他5名であった(付録4).

1)課題と地域での取り組み実施内容

「I.課題」に関して,広域にまたがる施設間での取組が多かった(付録5).「設定した課題に対して実施内容が記載有(102施設,88%)」,「忘れたなどの記載(2施設,2%)」,「できていない(12施設,10%)」であった.

「II.取組」に関して,「1. 自施設内での取組(23%)」,「2. 地域での取組(72%)」,「3. できていない(5%)」であった.回答が多かった記述は,2のうち広域にまたがる施設間の活動で,「地域で開催される在宅緩和ケア連絡会に参加した」などであった(表1).また,1に関しても,「Information and communication technologyを導入した」,「地域の医療スタッフと連携体制を作った」など,他施設や地域に関連する回答も含まれた.広域にまたがる施設間での「体制づくり」には,「二次医療圏における医療資源を把握した」などであった.3に関して,コロナ禍であったことの記載がみられた.

表1 地域での取り組み実施内容

1. 自施設での取組(54施設,23%)
1.1 顔の見える関係づくり(研修会・カンファレンス開催など)(21施設) 退院支援カンファレンスを実施した.
在宅との連携についてディスカッションした.
院内スタッフ向け勉強会・研修会をした.
緩和ケアチームカンファレンスを実施した.
病棟カンファレンスを実施した.
1.2 体制づくり(33施設) **ICTを導入した.
医療資源が乏しいと思われる地域の医療スタッフとの連携体制を作った.
在宅訪問診療体制構築に向けての準備をした.
在宅医療,介護に係る人が相談できる窓口を作った.
二人主治医制を構築した.
2. 地域での取組(168施設,72%)
特定の施設間(36施設,15%) 2.1 顔の見える関係づくり(研修会・カンファレンス開催・懇親会に参加・企画など)(26施設) (特定の)医療機関とのカンファレンスを実施した.
介護施設を見学した.
ケースカンファレンスをした.
がん末期を受け入れの有料老人ホームを訪問した.
(特定の)遠方の地域とのカンファレンスをした.
2.2 体制づくり(10施設) 連携できる医療機関が増えた.
在宅で連携できるようすすめた.
(特定の)周囲のケアマネの現状・研修会のニーズの確認をした.
訪問看護ステーションとの情報交換連絡票を作成した.
連携に関するアンケート調査を実施した.
広域にまたがる施設間(114施設,49%) 2.3 顔の見える関係づくり(研修会・カンファレンス開催・懇親会に参加・企画など)(76施設) 地域で開催される在宅ケア連絡会に参加した.
緩和ケア地域懇話会に参加した/を企画した.
緩和ケア地域連携カンファレンスに参加した/を企画した.
緩和医療研究会に参加した/を企画した.
多職種連携ネットワークを通じて事例検討を実施した.
2.4 体制づくり(38施設) 二次医療圏における医療資源を把握をした.
地域で偏っていたサービスの把握をした.
二次医療圏内の病院の看護師,訪問看護ステーション等が集まり,リソースマップづくりをした.
二次医療圏内の病院のケアマネージャー,ソーシャルワーカー等が集まり,リソースマップづくりをした.
地域のハブ機関と連携を取りながら緩和ケアの啓蒙をした.
医師会・行政(18施設,8%) 2.5 顔の見える関係づくり(医師会・行政との連携)(8施設) 医師会との情報収集を行った.
各自治体との情報収集をった.
医師会の会議に参加した.
行政と病院とが共催のイベントを開催した.
2.6 体制づくり(10施設) 医師会対象にニーズ調査を行った.
マップを作成した.
3. できていない(12施設,5%)
(コロナ禍で)案の段階で中断している.
具体的に実施できていない.
メンバーの異動等により具体的な取り組みにいたっていない.

*( )各分類の合計施設数,分類合計施設数の割合

**ICT: Information and communication technology

2)成果と課題の解決状況

「1. ポジティブな変化(78%)」,「2. ネガティブな変化(0%)」,「3. 継続している(9%)」,「4. 検討が必要(8%)」,「5. 取り組めていない(5%)」に分類した(表2).課題を設定し取り組むことで多くの施設でポジティブな結果を得ていた.例えば,「チームの組織化により県民が望まれる場で看取られることが実現できた」など広域にまたがる施設間との関係で改善されたとされたものが多かった.課題解決に取り組んだ結果,かえって混乱したなど,ネガティブな施設はなかった.ただし,活動して改善ができておらず,やり方を検討する必要があるといった回答や継続して検証する必要があると感じている施設もあった.

表2 成果と課題の解決状況

1. ポジティブな変化(151施設,78%)
1.1 自施設(42施設) 地域医療連携室との院内の連携が密になった.
看取りに近い患者の往診を開始した.
パンフレットを作成し,診療科へ配布を開始できた.
がん患者や家族が寄り添う緩和ケアの実践において医療スタッフの理解が深まった.
知識の習得ができた.
顔の見える関係づくりができた.
各段階で患者の思いを記録に残すことができた.
**ACPシートを作成することができた.
在宅療養を希望する患者・家族が増えた.
患者の急変時対応の院内ルールができた.
連携についての意見交換会に主治医に参加してもらえるようになった.
会議のスリム化と担当者の明確化,情報共有ができるようになった.
ITを活用し迅速な退院調整が可能となった.
患者の意向を把握し活用する職種が増えた.
早期に医療機関を探すことができるようになった.
1.2 特定の施設間(33施設) 訪問診療医,訪問看護師と情報共有がされるようになった.
ケースを通して連携が深まった.
近医の在宅医と情報交換実施できた.
近隣の医療機関,施設の関係強化できた.
遠方の医療機関ともWEBで連携できるようになった.
ケアマネージャーとの連携ができるようになった.
タイムリーな事例検討ができるようになった.
事例検討会での参加したメンバーの満足度が高かった.
自由に意見が言い合えるようになった.
終末期がん患者のかかわった医療同士で語り合うができたことで,医療者のグリーフケアにつながった.
電話相談がはじめてあった.
逆紹介の増加につながった.
1.3 広域にまたがる施設間(70施設) チームの組織化により県民が望まれる場で看取られることが実現できた.
チームの組織化により介護施設で看取りを支えるシステム作りができた.
施設見学や説明会の参加により顔の見える関係性の構築を進めることができた.
講義を通じて学びを深める機会ができた.
地域医療スタッフと定期的なミーティングができるようになった.
二次医療圏内の医療資源についての情報収集により把握が達成できた.
地域の医療福祉事業者との連携意識が高まった.
在宅の医療・介護に携わる人が相談しやすい環境づくりができた.
二次医療圏内の緩和ケアのリソースマップが継続して作成できている.
地域のニーズが把握できた.
課題の可視化をし,今後の方向性を見出すことができた.
緩和ケア連絡協議会を開催することができた.
地域医療機関がお互いの状況や課題を共有する機会が増えた.
会議の外部からの参加率がアップした.
顔が見える関係から相談・意見交換ができる関係へと変化しつつある.
オンラインを利用した教育の回数を増やすことができた.
訪問診療を行う医師が増えた.
がん末期に対応する訪問看護ステーションが増加した.
看取りを可能とする高齢者施設が増加した.
ACPについて質問を受ける機会が増えた.
地域で共有するために作成した手帳が地域に浸透している.
協議会をたちあげ,解決への検討する体制ができた.
1.4 医師会・行政(6施設) 医師会長のカンファレンスへの定期参加により,地域の医療スタッフの参加が広がった.
行政とのかかわりができた.
医師会と地域連携室の協議継続し,訪問診療を行う医師が増加している.
市役所の会議に定期的に参加するようになった.
2. ネガティブな変化(0施設,0%)
3. 継続している(17施設,9%)
研修のニーズを確認しているがまだ未達成である.
(設定した一部の課題が)現在進行で成果を確認できていない.
今後運用を行っていく.
4. 検討が必要(15施設,8%)
システム作りが必要だがまだ不十分である.
十分なネットワーク作りが行えていない.
地域全体の課題共有にはいたっていない.
5. 取り組めていない(10施設,5%)
在宅で緩和医療に対応してくれる医師が少なすぎて,連携がうまくいっていない.
コロナ禍で実施できていない.
人員配置不足により,成果や課題を明らかにすることができない.
取り組みができていない.

*( )各分類の合計施設数,分類合計数の割合

**ACP: Advance care planning

3)今後の課題と,その解決に向けた取り組みの方向性

研修で設定した課題を踏まえて,地域で取り組み,解決できてない点や新たな課題に対して「1. 自施設内での取組(26%)」,「2. 地域での取組(73%)」,「3. できていない(1%)」であった(付録6).2に関しては,とくに広域にまたがる施設間での「顔の見える関係づくり」,「体制づくり」に関する内容が多く挙げられていた.また,地域との連携を図るために,自施設の仕組み作りも合わせて行う予定としている施設がみられた.

4)自施設がある地域において,終末期がん患者の病院から在宅医療への円滑な移行を阻む要因

28の項目を回答が多かった順に表示した(表3).「患者の社会的背景(独居や高齢等)により在宅療養へ移行できない(88%)」,「患者の在宅療養に対する不安(83%)」が上位であった.一方で,「入院中の患者における在宅医療への移行に関する支援を行う余裕や体制がない(10%)」,「地域の医療・介護従事者が在宅緩和ケアについて理解していない(13%)」,「終末期がん患者の在宅医療に関する地域側の相談窓口が明確でない(13%)」が下位であった.

表3 自施設がある地域において,終末期がん患者の病院から在宅医療への円滑な移行を阻む要因

項目内容 総数※ Rate※※
患者の社会的背景(独居や高齢等)により在宅療養へ移行できない 102 88%
患者の在宅療養に対する不安 96 83%
家族からの反対 72 62%
病院医療者が在宅医療への移行に関する調整を開始するタイミングが遅い 68 59%
患者,家族の経済的な問題 67 58%
患者の療養場所の移行に関する意思決定支援を適切な時期に実施できていない 66 57%
病院,主治医からの見捨てられ感 59 51%
終末期がん患者の在宅医療に対応できる在宅医が不足 47 41%
病院・地域全体で地域緩和ケア連携のネットワークについて話し合う体制がない 43 37%
地域緩和ケア連携の課題を解決する具体的な取り組みが実施できていない 42 36%
病院・地域間で患者に関する情報を円滑に共有する仕組みが整備できていない 40 34%
病院の医療者が在宅緩和ケアの視点を持った医療の提供や退院支援ができていない 38 33%
麻薬の取り扱いや無菌調剤に対応できる薬局が不足 36 31%
療養先が遠方のため調整が困難 35 30%
地域緩和ケア連携に取り組む人材(地域緩和ケア連携調整員等)が確保できていない 34 29%
病院主治医が在宅医療について積極的ではない 32 28%
外来の患者における在宅医療への移行に関する支援を行う余裕や体制がない 30 26%
患者に関する情報や経過等について,病院と地域の医療者間で十分に共有できていない 27 23%
病院・地域の関係者が地域内の医療資源の現状を把握できていない 26 22%
病院・地域の多職種間で顔の見える関係づくりが進んでいない 25 22%
病院内の複数のチーム・部門間で地域緩和ケア連携に関する連携ができていない 24 21%
患者の急変時の対応について,病院・地域の医療者間で十分に共有できていない 24 21%
病院・地域の関係者による多職種連携の会が機能していない 20 17%
終末期がん患者の在宅医療に対応できるケアマネジャーが不足 20 17%
終末期がん患者の在宅医療に対応できる訪問看護ステーションが不足 18 16%
終末期がん患者の在宅医療に関する地域側の相談窓口が明確でない 15 13%
地域の医療・介護従事者が在宅緩和ケアについて理解していない 15 13%
入院中の患者における在宅医療への移行に関する支援を行う余裕や体制がない 12 10%

※:116施設が複数回答可能な質問に対して,それぞれの項目を選択した数

※※:Rate=116施設中回答した割合

考察

研修では,「顔の見える関係づくり」,「体制づくり」,「地域づくり」を軸とし,参加者が,それぞれの地域に応じた課題を設定し,解決策を議論している.アンケート調査の結果からは,参加者が研修で課題を設定するだけで終わってしまうことなく,自らの地域に戻り,研修で設定した課題,もしくは研修後に新しく設定した課題に取り組む行動をするポジティブな結果が得られていることがわかった.2040年を展望した,国の政策課題において,医療・福祉サービス改革プランの一つに,組織マネジメント改革がある5.この研修での取り組みは組織マネジメント改革の一翼を担っていることを期待したい.

「V.阻害要因」の上位は,患者の社会的背景や不安に関するものであった.病院・地域の体制,人材に関する阻害要因は各施設で回答に差がみられた.差がみられた要因に関して,今後精査する予定である.

本活動報告の限界として,回答率は50.2%であった.アンケート調査で返信のなかった施設に関しての活動状況が不明であり,「成果と課題の解決」において,ポジティブな変化があった施設が多く回答している場合が考えられる.また,医療者の意見であり,患者・家族からの意見が反映されていない.

結論

本研修は,「地域緩和ケア等ネットワーク構築」において,「成果と課題の解決」において,ポジティブな変化が78%であったことから,一定の効果が得られているといえるであろう.

一方,88%が選択した患者の社会的背景や不安に関する阻害要因に関して,その阻害要因を解消するために,「誰が」,「どのような対応することが可能か」を検討し,地域作りをする必要がある.また,回答で差がある阻害要因に関しては,内容を精査しそれぞれの課題の特性を活かせる研修の在り方を検討する予定である.

研究資金

国立がん研究センター研究開発費「都道府県における診療の質向上のための拠点病院間ネットワーク構築に関する研究」(研究課題番号:2023-A-24)

利益相反の有無

著者の申告すべき利益相反なし

著者貢献

佐藤は研究の構想およびデザイン,研究データの収集・分析,研究データの解釈,原稿の起草に貢献;山﨑は,研究データの収集・分析,研究データの解釈に貢献;佐野,竹内,松岡は,研究データの解釈,原稿の重要な知的内容に関わる批判的な推敲に貢献;和田は研究の構想およびデザイン,研究データの解釈,原稿の重要な知的内容に関わる批判的な推敲に貢献した.すべての著者は投稿論文ならびに出版原稿の最終承認,および研究の説明責任に同意した.

References
 
© 2025 Japanese Society for Palliative Medicine

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/4.0/deed.ja
feedback
Top