Journal of Japanese Society of Pediatric Radiology
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A case of a one-year-old girl with Fibrodysplasia Ossificans Progressiva
Natsuki Yagi, Atsushi Matsui, Shinitsu Hatakeyama, Manabu Sotomatsu, Junichi Koinuma, Ryo Sugitate, Azusa Shiba, Mariko Shimizu, Fumitake Mizoguchi, Hirokazu Arakawa
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2018 Volume 34 Issue 1 Pages 49-53

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はじめに

進行性骨化性線維異形成症(Fibrodysplasia Ossificans Progressiva; FOP)は,乳幼児期から全身の骨格筋や腱,靭帯などの線維性組織が進行性に骨化し,このために四肢関節の可動域低下や強直,体幹の可動性低下や変形を生じる疾患である.発症頻度は200万人に1人の希少難病で,日本国内の患者は推定65人と考えられている1).打撲や感染などの刺激を契機に皮下腫瘤を形成するが,その腫瘤は画像上特異的な所見を示さないため診断が難しく,数年後に同部位が骨化することで初めて診断につながることが多い.今回,我々は発症から4か月で診断に至ったFOPの女児を経験した.骨化を認める前の腫瘤発生初期の画像が早期診断につながったので,その画像的特徴について報告する.

症例

症例:1歳2か月,女児.

主訴:前頸部腫瘤.

既往歴:生下時より両側外反母趾を認めた(Fig. 1).1か月健康診査で股関節開排制限,臀部の皮膚小陥凹,殿裂異常を指摘された.生後2か月時に頭蓋変形より頭蓋骨縫合早期癒合症を疑われたが,数か月観察し頭蓋骨の変形は消失した.

Fig. 1 

単純X線写真(生後10か月時)

a:左足 b:右足

両側母趾の基節骨は三角形または扇状の変形と短縮がみられ(→),母趾と第1中足骨はそれぞれ外反位と内反位をとり,全体像として外反母趾様の変形となっている(▲).

現病歴:前日より前頸部の腫脹に気付かれ,硬い腫瘤を触れたために当院に受診した.腫瘤は誘因なく生じ,そのほかに特記すべき症状なし.

身体所見:前頸部正中に横5 cm × 縦2cm,弾性硬で可動性のない左右対称性の皮下腫瘤を認め,皮膚発赤・熱感なし,圧痛なし.その他,身体所見に特記すべき事項なし.

血液検査所見:血算,血液生化学検査に異常なし.

頸部超音波検査所見:前頸部の皮下軟部組織に左右対称性の腫瘤を認めた.腫瘤の境界は不明瞭で,不均一で不整な高エコーが既存構造の間隙に複雑に入り込んでいた.

頸部MRI所見(Fig. 2):前頸部皮下腫瘤は,筋膜や腱,筋,血管などの既存構造の間隙やその周囲を取り囲むように増生していた.T1強調像で筋とほぼ等信号,T2強調像で著明な高信号を示し,ガドリニウム造影後脂肪抑制T1強調像では不均一な造影効果を認めた.

Fig. 2 

頸部MRI(初発時)

a:T1強調矢状断像

b:T2強調矢状断像

c:ガドリニウム造影後脂肪抑制T1強調矢状断像

d:ガドリニウム造影後脂肪抑制T1強調横断像

腫瘤は筋膜や腱,筋,血管などの既存構造の間隙やその周囲を取り囲むように増生している(→).T1強調像で筋とほぼ等信号,T2強調像で著明な高信号を示し,ガドリニウム造影後脂肪抑制T1強調像ではやや不均一ではあるが強い造影増強効果を認める.

頸部CT所見:前頸部の腫瘤は筋よりやや低いX線吸収値を示し,造影により斑状の造影増強を認めた.腫瘤は既存の構造を圧排またはその間隙に侵入するように進展していた.石灰化は認めなかった.

経過:腫瘤が急速に増大したため,悪性腫瘍の可能性を考え全身CT,骨髄検査,頸部腫瘤の開放生検を行った.全身CTでは頸部の他に腫瘤性病変はなく,骨髄検査で異常所見を認めなかった.頸部腫瘤の病理所見では横紋筋組織や脂肪組織の増生を認めたが悪性所見はなく,Lipofibromatosisの診断であった.頸部腫瘤は発生から約2か月後に自然に縮小傾向となったため,無治療で経過観察としたところほぼ消失した.しかし,その2か月後に再度,誘因なく右肩甲骨周囲に新たな皮下腫瘤が生じた.腫瘤以外に症状はなく,超音波検査で皮下組織の肥厚を認めたが由来組織は不明で,血液検査でも異常所見を認めなかった.初発時と同様に腫瘤は急速に増大し,発症から1週間後のMRIでは右肩から連続して体幹全周性に皮下組織に腫瘤性病変を認めた(Fig. 3).これまでの経過から,複数個所に皮下腫瘤が発生していること,初発の腫瘤は自然に縮小していること,先天性外反母趾があることからFOPを‍疑い,遺伝子検索を行った.その結果,FOP原因遺伝子のホットスポットに変異(ACVR1遺伝子,c.‍617G>A p.R206H変異)が確認され,確定診断となった.

Fig. 3 

胸部MRI(右肩背面の腫瘤発生から1週間後)

a–c:STIR横断像

d:T1強調横断像

腫瘤の内部は,T1強調像で筋とほぼ等信号,STIRでは著明な高信号を呈している(→).既存構造の間隙やその周囲を取り囲むような浸潤性増殖は本症に特徴的な所見と考えられた.

考察

今回,明らかな誘因のない皮下腫瘤形成,腫瘤の自然消失,先天性外反母趾から疑われ,遺伝子検査でFOPを確定した症例を経験した.

FOPは,打撲や手術,感染などを契機として皮下腫瘤を生じる(flare-up).初発のflare-upは乳幼児期に生じることが多く,その後数か月から数年の経過で同部位に異所性骨化が起こる1–3).FOPに伴う足部の病変として,先天性外反母趾や足趾の低形成,踵骨棘や二重踵骨骨化などの報告がある4).先天性外反母趾は一般的には稀な疾患だが,FOP症例の90%以上でみられるため5),診断の大きな手掛かりとなる.本症例では,2回のflare-upの際に打撲や手術,感染等の明らかな誘因は不明であった.ただし,年齢からは訴えがないために本当に打撲などの誘因がなかったかは明らかでない.一方,過去の報告においても誘因不明の症例報告もある6).本症例では腫瘤の生検を実施したが,その部位に生検を誘因とした明らかなflare-upは生じなかった.

FOPにおける骨化は不可逆性のため,胸郭硬直による呼吸器感染や,肺性心,開口障害による栄養障害などが死亡原因となり平均寿命は40歳代である7).骨化を防ぐためには,flare-upの誘因となる外傷や筋肉注射を含む外科的処置を極力回避しなければならない.また,呼吸障害や栄養障害の進行を遅らせるためには,出来る限り早期に診断し,骨化を最小限とするための適切なケアを行うことが重要とされる.しかし,骨化の起こる前の皮下腫瘤は画像上特異的な所見を示さず,本症例のように,しばしば骨化の誘因となる開放生検がなされてしまう.

FOPの腫瘤発生初期の画像所見について詳述している論文は極めて少ない8).本症例でみられた画像所見からFOPを鑑別に挙げる際の特徴を列挙する.FOPの皮下腫瘤は発生初期に急速に増大するため悪性腫瘍が鑑別に挙げられるが,本症例では周囲の筋膜や腱,靭帯,血管や甲状腺などの臓器の間隙や,その周囲を取り囲むように腫瘤組織の増生を認めたが,既存構造との境界は明瞭で,臓器内部への直接浸潤や偏位,変形を来たす圧迫所見はみられなかった.一方,悪性腫瘍ではMRIや超音波検査により腫瘤の起源となる臓器や組織が判別できる場合もあるが,本症例では明らかな皮下組織の増生があっても起源となる組織は不明であった.MRIでこのような皮下軟部組織の増生を示す病態として,炎症性変化や乳児脂肪壊死,皮下環状肉芽腫などを鑑別に挙げる9)が,発症経過から否定的だった.初発の皮下腫瘤は無治療で消退し,消退後には周辺臓器に構造変化を残さないこともFOPに特徴的な経過と考えられる.これらは急性増大する他の多くの腫瘤性疾患とは明らかに異なる経過である.画像所見を注意深く観察することが肝要であり,乳幼児においてこのような所見および経過を示す場合には,外反母趾の有無に注目し,生検を避けるためにも,FOPを鑑別に挙げ遺伝子検査を検討すべきである.

2006年に責任遺伝子(BMP type Iの受容体をコードするACVR1遺伝子)が同定され,遺伝子検査による確定診断が可能となった1,10,11).現在のところ有効な治療法は確立されていないが,iPS細胞を用いた研究が開始されており,病態の解明がすすむとともに骨化を抑制する様々な作用機序の治療薬の開発や遺伝子修復などが想定されてきている12).

結語

FOPの1歳女児を経験した.骨化する前に出現する皮下腫瘤は,悪性腫瘤と異なり周囲の正常構造を保ったまま増大することが特徴である.このような画像所見が見られ,かつ生下時より外反母趾のある患者では,FOPを鑑別に挙げる必要がある.

 

日本小児放射線学会の定める利益相反に関する開示事項はありません.

謝辞

遺伝子診断にご協力いただきました埼玉医科大学ゲノム研究センター病態生理部門 片桐岳信教授および同研究室の先生方に深謝いたします.

文献
 
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