Journal of Japanese Society of Pediatric Radiology
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Original Article
Cecal volvulus with Cornelia de Lange syndrome: Clinical and radiological findings
Mayuko EguchiShunsuke Nosaka Satoko UematsuAkihiro FujinoYutaka KanamoriReiko OkamotoMitsuru KubotaAkira Ishiguro
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2019 Volume 35 Issue 2 Pages 107-115

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要旨

小児の盲腸捻転は稀であるが,重症心身障害児,特にCornelia de Lange症候群(以下CdLS)での報告が多い.症状は非特異的で,画像診断の役割は大きい.早期診断は腸管壊死を回避する上で重要で,診断や治療の遅れは死亡に繋がる可能性がある.当院で経過観察中のCdLS 13例中4例に盲腸捻転を認めた.いずれも盲腸捻転に特異的な腹部単純撮影所見,もしくは過去と比較して変化を認め,引き続き行った造影CT所見から全例で術前に盲腸捻転を疑うことができた.盲腸捻転併発4例と捻転非併発9例を比較すると,併発例全例が胃瘻造設術・噴門形成術後で,これらの手術が捻転の誘因になると考えられた.また,既報告と比較して死亡率と術後合併症率は,より低率であった.CdLSで,胃瘻造設術・噴門形成術後の児が腹部症状を示す場合,盲腸捻転の併発を念頭に,腹部単純撮影に続く造影CTが早期診断と治療に有用である.

Abstract

Cecal volvulus is very rare in pediatric patients but is often reported among those with multiple, severe disabilities, especially Cornelia de Lange syndrome. Early diagnosis prevents intestinal necrosis and is therefore paramount. Delayed diagnosis and treatment may lead to increased mortality in these patients.

In our department, 13 patients with Cornelia de Lange syndrome are currently being followed. Of these patients, four had cecal volvulus and presented either typical findings or dramatic changes on plain abdominal radiographs. Subsequent, preoperative contrast-enhanced CT suggested cecal volvulus in all the patients. A comparison of patients with and without cecal volvulus showed that all patients with cecal volvulus had a history of fundoplication, which is suggested to be a contributing factor for volvulus. Compared with past reports, the mortality and complication rates were lower in the present cases. Whenever children with Cornelia de Lange syndrome and a history of a fundoplication present intestinal symptoms, cecal volvulus should be suspected, and plain abdominal radiography followed by prompt contrast-enhanced CT should be performed for early diagnosis and treatment.

はじめに

盲腸捻転(以下本疾患)とは先天的な回盲部固定不全のために回腸末端・上行結腸,腸間膜が軸捻転を起こすことで腸閉塞をきたす病態である.1837年にRokitanskyによって初めて報告された1).健常人でも10~15%に盲腸固定不全を有している2).成人の消化管閉塞のうち大腸捻転は3~5%に過ぎず,その中で盲腸捻転は最も頻度が少ない3).小児の盲腸捻転となると極めて稀で,その正確な頻度は不明である3).一方で,診断の遅れは腸管壊死に繋がり,死亡率も成人では9.5~60%2,4),小児では40%に至ることから3),迅速な診断を要する疾患である.本疾患は重症心身障害児などの基礎疾患を有する児で罹患率が高く,特にCornelia de Lange症候群(以下CdLS)に伴うことが多い.また,来院時の症状は非特異的で,特に基礎疾患を有する児では訴えも乏しいため,画像診断の果たす役割は大きい.

2018年6月の時点で経過を追うことができている小児例を含むCdLS 13例のうち4例に本疾患を経験したので,捻転併発例と非併発例の臨床所見の比較ならびに捻転併発例の臨床所見と画像所見を検討した.

対象と方法

当院の画像レポーティングシステムを用いて,総合診療部から画像診断検査依頼があったCdLS症例を検索した.検索し得た症例のうち,2002年3月1日から2018年6月30日の16年間で,当院総合診療部で経過を追うことができているCdLS児13例を検討の対象とした.この期間に盲腸捻転を併発したのは4例である.以下に示す,2項目についてそれぞれ後方視的に検討した.

1. 盲腸捻転併発4例と捻転非併発9例の比較検討

年齢,性別,胃瘻造設・噴門形成術歴の有無,その他の腹部手術歴の有無と内容,胃瘻造設から盲腸捻転までまたは最終経過観察時までの期間,大島分類を比較した.

なお,大島分類5)とは重度の知的障害と重度の肢体不自由が合併した状態を定義し,IQ(知能指数)とADL(日常生活動作)を元にした分類である.IQ 20以下で寝たきりは1,IQ 20~35で座位保持可能であれば3,寝たきりであれば4,歩行障害を有すれば6,自立歩行可能であれば11と分類される.1~4は重症心身障害児に当てはまる.

胃瘻造設・噴門形成術歴の有無,大島分類についてそれぞれFisher検定,マンホイットニー検定を用いて盲腸捻転のリスクを検討した.統計解析はStata software, Version 15.1(StataCorp LP, College Station, TX, USA)を用いて行い,p < 0.05 を統計学的に有意差ありと判定した.

2. 盲腸捻転併発4例の検討

年齢,性別,体重,胃瘻造設・噴門形成術歴,胃瘻造設・噴門形成術歴がある場合は手術から捻転併発までの期間,主訴,術前に行われた各種画像診断検査と所見(腹部単純撮影,注腸造影,腹部造影CT),術前診断,症状出現から手術までの時間,手術時所見,手術手技,術後合併症の有無,入院期間,退院後経過観察期間と経過を比較した.

なお,腹部単純撮影は,過去に無症状時の撮影があれば比較画像として参考にした.注腸造影は希釈水溶性造影剤を用いた充盈法で行った.腹部造影CTは,原則として上腹部から骨盤部にかけての撮影を行った.用いた装置は,64列MDCTで,非イオン性水溶性造影剤を2 ml/kg静脈内投与して撮影した.症例1~3は用手的に注入し注入終了直後に,症例4は,総量45 mlを0.8 ml/秒で自動注入器を用いて投与し,注入開始から80秒後に撮影した.横断像(スライス厚0.625~5 mm)に加え矢状断再構成画像(スライス厚1~5 mm)ならびに冠状断再構成画像(スライス厚1~5 mm)を用いて診断した.放射線を用いた検査を行う場合は,As Low As Reasonably Achievable(ALARA)の原則を遵守した.なお,今回の検討では,術前検査としての腹部超音波検査は行っていない.

結果

1. 盲腸捻転併発4例と捻転非併発9例の比較検討

当院で経過観察中のCdLS 13例の内訳をTable 1に示す.症例1~4の4例に盲腸捻転を併発し,症例5~13の9例では盲腸捻転の併発なく観察中である.最終経過観察時の年齢は,捻転併発例で7~21歳(平均14.8歳),非併発例で0~21歳(平均11.3歳)であった.性別は,捻転併発例では女児3例,男児1例,捻転非併発例では女児3例,男児6例であった.胃瘻造設・噴門形成術は,捻転併発例4例全例に,捻転非併発例5例に実施されていた.その他の腹部手術歴の有無と内容は,捻転併発例では2例に行われ,内容は膀胱皮膚瘻造設術(症例2および症例3)であった.捻転非併発例では4例に行われ,内容は横隔膜ヘルニア修復術(症例5),十二指腸閉鎖根治術(症例6),右精巣固定術および左精巣摘出術(症例8),Ladd手術および膀胱皮膚瘻造設術(症例11)であった.胃瘻造設・噴門形成術が施行されていないCdLS 4例では,5~19年の観察期間中に盲腸捻転の発症は認めなかった.CdLSにおける胃瘻造設・噴門形成術歴の有無について,手術歴のある群では捻転の発症が多い傾向にあったが,有意差は認めなかった(p = 0.228).盲腸捻転併発例における,胃瘻造設・噴門形成術から発症までの期間は3~17年で,捻転非併発例では,胃瘻造設・噴門形成術から最終経過観察までの期間は5~19年と両群とも同様な傾向であった.大島分類は,盲腸捻転併発例で1~4が2例,11が2例であったのに対して,捻転非併発例では1~4が5例,6が2例,11が2例であった.盲腸捻転併発例は大島分類で活動度の高い症例が多い傾向であったが,有意差は認めなかった(p = 0.6938).

Table 1  当院で経過観察中のCdLS 13例の内訳
症例番号 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13
年齢(年)/性別 17/F 14/F 7/M 21/F 0/F 5/M 6/M 9/M 12/F 14/M 15/F 20/M 21/M
盲腸捻転 + + + +
胃瘻造設・噴門形成術歴 + + + + + + + + +
その他の腹部手術歴 + + + + + +
発症年齢(歳) 11 9 4 21 NA NA NA NA NA NA NA NA NA
胃瘻造設・噴門形成術~発症まで(年) 10 7 3 17 NA NA NA NA NA NA NA NA NA
胃瘻造設・噴門形成術~現在まで(年) 16 12 7 17 NA NA 5 9 5 NA 12 NA 19
大島分類 11 11 1 4 1 4 4 3 6 11 3 11 6

CdLS:Cornelia de Lange症候群,NA:該当なし

2. 盲腸捻転併発4例の検討

盲腸捻転症例の検討結果をTable 2に示す.来院時の主訴は,腹部膨満が2例,食欲不振,嘔吐ならびに活気不良がそれぞれ1例であった.なお.症例3では活気不良および腹部膨満を認めた.盲腸捻転併発例には成人例が含まれているが,4例の発症時体重は11.7~22.9 kgで,中央値は13.65 kgであった.腹部単純撮影では3例で右上腹部に強い拡張腸管像(Fig. 1a, 3a)を認めた.症例3では左側腹部に強い拡張腸管像(Fig. 2a)を認めたが,手術所見にて腸回転異常を有することが確認された.4例とも,無症状であった過去の撮影(Fig. 1b, 2b, 3b)と比較すると,新たに出現した強い拡張腸管像であることが確認できた.腹部造影CTでは3例にwhirl signと隣接する腸管の拡張(Fig. 1c, 3c, d)を認め,whirl signを認めなかった症例3では腸管の屈曲と口側腸管の拡張(Fig. 2ce)を認めた.全例でwhirl signあるいは腸管の屈曲より肛側の腸管は虚脱(Fig. 1d, 2c)していた.CTでは,腹腔内遊離ガス像を認めた症例は無かった.追加検査として症例1で注腸造影検査を行い,捻転部に一致したbeak signを認めた.

Table 2  盲腸捻転併発4例の検討
症例 1 2 3 4
年齢(歳)/性別 17/F 14/F 7/M 21/F
胃瘻造設・噴門形成術歴 + + + +
発症年齢(歳)/体重(kg) 11/13.4 9/13.9 4/11.7 21/22.9
胃瘻造設~発症まで(年) 10 7 3 17
胃瘻造設~現在まで(年) 16 12 7 17
大島分類 11 11 1 4
主訴 食欲不振 嘔吐 活気不良,腹部膨満 腹部膨満
術前に行われた各種画像診断検査と所見 未提示 Fig. 1 Fig. 2 Fig. 3
腹部単純撮影 新たに出現した強い
拡張腸管像
右上腹部 右上腹部 左側腹部 右上腹部
注腸造影 beak sign 横行結腸に+ 実施せず 実施せず 実施せず
腹部造影CT whirl sign + + +
限局拡張腸管像 + + + +
肛門側腸管虚脱 + + + +
術前診断 盲腸捻転 盲腸捻転 盲腸捻転 盲腸捻転
症状出現~手術(時間) 36 36 20 11
手術時所見 捻転の回転数(度) 360 360 180 360
穿孔 +
壊死
手術手技 捻転解除・回盲部固定術 捻転解除・回盲部固定術 捻転解除・Ladd手術 捻転解除・回盲部固定術
術後合併症
入院期間(日) 12 36 20 12
退院後経過観察期間(年) 6 5 3 0
Fig. 1 

症例2

a:腹部単純撮影臥位正面像

右上腹部から中腹部にかけて強い拡張腸管像を認める.その近傍の腸管内腔もやや目立っている.

b:約1年前の腹部単純撮影臥位正面像

腸管ガス像は全体に目立つが,比較的均等に分布し,緊満感に乏しい.

c:腹部造影CT矢状断像

腹壁直下に認める拡張腸管背側にはwhirl signを認める(矢印).

d:腹部造影CT冠状断像

腹部単純撮影同様,右上腹部から中腹部にかけて強い拡張腸管像を認める.左側腹部には内腔が虚脱した下行結腸を認める(矢印).

Fig. 2 

症例3

a:腹部単純撮影臥位正面像

腹部正中から左側腹部に強い拡張消化管像を認める.右側腹部には腸管ガス像を認めるが,緊満感を伴っていない.

b:約2年前の無症状時の腹部単純撮影臥位正面像

腹部に拡張腸管像はなく,非特異的所見である.

c:腹部造影CT横断像

左側腹部には拡張腸管像を認める.その背側には,拡張腸管と比較して内腔が虚脱した肛側腸管(矢印)を認める.

d:腹部造影CT横断像(cの尾側)

拡張腸管内側にバウヒン弁と思われる内腔への突出像を認める(矢印)ことから,盲腸から上行結腸にかけての拡張であると判断できる.

e:腹部造影CT矢状断像

横断像(d)で認めた拡張腸管は上下に走行し,口側(下端)は盲端であることが判る.肛側(上方)では屈曲し内腔が虚脱気味である(矢印).

Fig. 3 

症例4

a:腹部単純撮影臥位正面像

腹部全体に消化管ガス像が目立つが,右上腹部の消化管拡張が高度である(矢印).

b:約4年半前の無症状時の腹部単純撮影臥位正面像

消化管ガス像は目立つものの,全体に緊満感に乏しい.

c:腹部造影CT横断像

右側腹部に認める拡張腸管は上行結腸から結腸肝彎曲部と思われる.正中には拡張腸管から連続する内腔の虚脱した横行結腸を認める(矢印).

d:腹部造影CT冠状断像

右側腹部から上腹部にかけて上行結腸から結腸肝彎曲部と思われる拡張腸管を認める.この拡張腸管に隣接してwhirl signを認める(矢印).このwhirl sign部分は,Fig. 3cの内腔の虚脱した横行結腸に一致している.

e:手術所見

上行結腸から横行結腸にかけて腸管は反時計回りに360度捻転(矢印)し,捻転腸管(*)は拡張していた.

全例で手術が行われたが,症状出現から手術までの時間は11~36時間であった.開腹時所見では,捻転の回転数は,症例3が180度,その他の3例はいずれも360度であった.術前画像診断検査所見である,whirl signに一致した腸間膜動静脈のねじれおよび口側腸管の拡張(症例1,2,4),腸管の屈曲と口側腸管の拡張(症例3),閉塞機転より肛門側腸管の虚脱,といった所見はいずれも,開腹時に確認された.症例3で捻転部にピンホール大の穿孔を認めたが,腸管切除は要さなかった.その他の症例では穿孔や壊死はなかった.いずれの症例も回盲部の後腹膜への固定は認められなかった.全例で捻転解除術を行い,症例1,2,3の3例で回盲部固定術を行い手術は終了した.症例4の術中写真を提示する(Fig. 3e).腸回転異常合併例(症例3)では同時にLadd手術が行われた.4例全例で術後合併症なく36日間以内に退院した.退院後経過観察期間として最長6年追跡しているが,合併症や再発はなく経過している.

考察

過去16年間に経験したCdLSに合併した盲腸捻転4例を含むCdLS 13例を対象として,盲腸捻転の迅速な診断と術後合併症率の低減を図るための手かがりについて後方視的に検討した.以下,検討項目順に考察する.

1. 盲腸捻転併発4例と捻転非併発9例の比較

今回,CdLSに合併した盲腸捻転4例を経験した.なお,症例1は過去に報告している6)

盲腸捻転(本疾患)は主に重症心身障害児に多く発症し,特にCdLSでの報告が多い6,7).CdLSでは消化管の機能的・構造的合併症を認める8).今回の検討ではCdLSでかつ胃瘻造設・噴門形成術を施行した児の9例中4例(44%)に本疾患の併発を認め,胃瘻造設・噴門形成術を施行していない児には本疾患の合併を認めなかった.噴門形成術の晩期合併症として腸管ガスの貯留がある6,9).本疾患は固定不全に加えて腸管内圧の上昇が加わることで捻転を起こしやすくなるため7,10),有意差は無いものの,噴門形成術は捻転の誘因になる可能性がある.しかしながら,胃瘻造設・噴門形成術から本疾患発症までの期間ならびに胃瘻造設・噴門形成術から最終経過観察期間について両群で大きな差はなかった.日常生活動作(ADL)については捻転併発例で半数,捻転非併発例で9例中2例が大島分類11であった.過去の報告では寝たきりの症例で捻転が多いとされていたが3,7,10),今回の検討では,有意差は無いものの自立歩行可能な症例の割合が高い傾向にあった.

盲腸捻転併発例と捻転非併発例の比較検討から,CdLSにおいてはADLの高低を問わず,盲腸捻転の発症を考慮した経過観察が望まれる.その際,有意差は無いものの,噴門形成術の既往があり,腸管ガスの貯留を認める場合は,特に慎重に経過観察すべきである.

2. 盲腸捻転併発4例の検討

過去の報告と同様に来院時の主訴は非特異的であり,症状から捻転を予測することは困難であった.4例の発症時体重の中央値は13.65 kgで4歳男児相当の体格であった.CdLSは成人でも自施設で経過を追っている症例が多いが体格は小児相当であった.画像診断は腹部単純撮影と造影CTで診断に至っている.腹部単純撮影では右上腹部~側腹部の強い拡張腸管像が本疾患に特徴的な所見で4,7,10),過去の報告でも造影CTに先行する単純撮影の有用性が報告されている3,1117).また,無症状時の単純撮影との比較および特徴的所見から盲腸捻転を早期より疑うことができた.造影CTでは盲腸捻転に伴う腸間膜動静脈のねじれを表す“whirl sign”と捻転部より肛門側の腸管内腔の虚脱が特徴的で6,14),自験例では,“whirl sign”を3例に,肛門側の腸管内腔の虚脱を4例全例に認めた.症例3で“whirl sign”を認めなかった理由として,捻転の回転数が180度と他の3例より少なかったこと,造影CTでは腸管の屈曲が主な所見であったことが考えられる.注腸造影検査は初期の1例(症例1)に行ったが,CdLSの合併症である肘関節拘縮のため,撮影の際の体位変換に難渋した.従って,腹部単純撮影ならびにCT所見から盲腸捻転の診断ができれば,注腸造影は必須の検査法ではないと思われる.

自験例では症状出現から手術まで11~36時間であったが,過去の報告では平均63.7時間4)と言われている.また,当院では同疾患による死亡例はなく,腸管穿孔をきたしたのは4例中1例のみであり,その1例でも腸管壊死は認めず,腸管切除を要した症例はなかった.一方,過去の報告では盲腸捻転の術後死亡率は9.5~60%と高く2,4),腸穿孔等の合併も61.5~66.7%と高頻度である7,18).単純撮影から本疾患を疑い,引き続き行った造影CTで診断に至ったことが,診断・治療までの時間を短縮させ,さらに術後合併症の頻度の低下に繋がったと推察される.

CdLSの致死的合併症としては,誤嚥性肺炎が最多であるが,消化管閉塞も致死的となり得る8).したがって,自験例を基にすると,CdLS経過観察中に消化管閉塞を示唆する症状を認めた場合は,たとえ軽微であっても,腹部単純撮影ならびに無症状時の撮影との比較とともに,単純撮影に続く造影CTを実施することで早期診断ならびに早期治療が行われ,死亡回避に繋がると思われる.

まとめ

過去16年間に当院で経過観察中の13例のCdLSのうち,盲腸捻転を4例経験した.噴門形成術が盲腸捻転の誘因となる可能性が示唆された.腹部単純撮影像と造影CT検査における典型的な画像所見から,早期診断および術後合併症の低減が可能であった.

謝辞

統計学的解析に協力いただいた東京大学大学院医学系研究科 道端 伸明先生に深謝致します.

 

本症例報告はヘルシンキ宣言に則り,患者のインフォームド・コンセントを取得して行い,当所属施設の倫理委員会の承認を得た.

 

本論文の内容の要旨は第54回日本小児放射線学会学術集会で発表した.

 

日本小児放射線学会の定める利益相反に関する開示事項はありません.

文献
 
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