Journal of Japanese Society of Pediatric Radiology
Online ISSN : 2432-4388
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Case Report
A case of horseshoe lung simulating intralobar sequestration
Tatsuki Miwa Yoshitomo NakaiMasashi YasuikeKeisuke TsuboiMaki KibaShigehisa FuminoShigeru OnoKei Yamada
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2024 Volume 40 Issue 2 Pages 103-110

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要旨

馬蹄肺は,両側肺底部が中縦隔を跨いで結合した非常に稀な先天性の呼吸器血管奇形である.Scimitar症候群などの心血管奇形を伴いやすく,小児で繰り返す肺炎や肺高血圧症の原因となり時に致死的である一方で,他の合併奇形がなく臨床症状に問題がなければ経過観察も考慮される.我々は当初肺葉内肺分画症が疑われていたが,術前精査のCT検査で馬蹄肺と診断し,手術侵襲を回避できた1例を経験した.馬蹄肺は未だ症例数が少ないものの,報告される症例は多彩である.先天性の呼吸器奇形を疑った際には肺の所見だけでなく,動静脈や気管支などの走行にも注意して診断していくことが重要である.

Abstract

Horseshoe lung is a very rare congenital respiratory and vascular malformation characterized by fusion of the bases of the bilateral lungs across the middle mediastinum. It is commonly associated with cardiovascular malformations, such as Scimitar syndrome. Young patients with horseshoe lung may develop recurrent pneumonia and pulmonary hypertension, which can sometimes be fatal. However, if symptoms are not clinically severe, follow-up alone may be appropriate. We report a case of horseshoe lung with suspected intralobar sequestration revealed by preoperative computed tomography. There are only a few reported cases of horseshoe lung and they present with a wide variety of findings. Diagnosis of this congenital malformation requires attention to arteriovenous and bronchial findings, as well as to the lungs.

 はじめに

馬蹄肺(horseshoe lung)は,両側肺底部が中縦隔を跨いで結合した非常に稀な先天性の呼吸器血管奇形である1).Scimitar症候群などの心血管奇形を伴いやすく,小児で繰り返す肺炎や肺高血圧症の原因となり時に致死的である一方で,臨床症状に問題がなければ積極的な手術の適応にはならず経過観察も考慮される2).今回我々は肺葉内肺分画症が疑われ切除術を予定して撮像された術前CT検査で,馬蹄肺と診断し不要な手術侵襲を回避できた1例を経験した.馬蹄肺は未だ症例数が少ないものの,報告される症例は非常に多彩である.馬蹄肺の症状やその画像所見について自検例と共に若干の文献的考察を交えて紹介する.

 症例

患者:1歳9か月女児

主訴:なし

出生歴:在胎38週4日.1,850 g

家族歴:特記事項なし

既往歴:臍ヘルニア

現病歴:胎児超音波検査で心臓の右方偏位を指摘されていた.出生時のApgar scoreは8/9であり,呼吸状態は安定していた.また出生後の超音波検査では明らかな心血管奇形は指摘されず,経過観察の方針となった.1歳0か月時に心臓大血管の走行確認目的に撮像された造影CTで,右肺上葉もしくは中葉の低形成による心臓の右方偏位と診断されたが,同時に左肺下葉に透過性の亢進した肺構造を認め左肺葉内肺分画症が疑われたため,手術目的に当院小児外科に紹介受診となった.

発達歴:特記事項なし

身体所見:特記事項なし

血液検査所見:特記事項なし

 画像所見

1歳7か月時に撮像された胸部単純X線所見では,縦隔陰影の右方偏位があり,左下肺野縦隔側に透過性の亢進した領域を認めた(Fig. 1).

Fig. 1  胸部単純写真(1歳7か月)

縦隔陰影は右に偏位している.左下肺野縦隔側(図中◯)に周囲より透過性の亢進した領域を認める.

1歳9か月時に胸部造影CTが撮像された.胸部造影CTでは,左肺S10の縦隔側に周囲正常肺より透過性の亢進した異常な肺構造を認めた.同病変に対して右下葉気管支の一部が,椎体との交差部で一部不明瞭であったが,心臓及び食道の背側を走行し分布していた(Fig. 2a).また動脈についても右肺動脈下葉枝の一部が前述の気管支に沿って中縦隔を跨いで分布していたが,静脈は左下肺静脈へ還流していた(Fig. 2b–d).異常な肺と正常な肺の間に明瞭な胸膜は指摘できなかった.

Fig. 2  胸部造影CT(1歳9か月時,CTDIvol:39.10 mGy,DLP:153.90 mGy.cm)

a:造影CT肺野条件

b:造影CT縦隔条件 動脈相

c:造影CT縦隔条件 動脈相

d:3D

(a)左肺下葉縦隔側に透過性の亢進した異常な肺構造を認める.同部位に向かって右下葉気管支の一部が縦隔を跨いで分布している(→).(b–d)同部位へは右肺動脈下葉枝が中縦隔を跨いで分布しているが(⇨),左肺静脈に環流する(▷).

その他右肺は葉間胸膜が指摘できず,全体のvolumeは正常より小さく,低形成が疑われた.左肺には明らかな異常は認められなかった.また心臓は右方偏位していたが左右心房や心室の構造に錯位や異常は認めなかった.

以上画像所見から馬蹄肺に合致すると考えた.

 経過

画像所見から,肺葉内肺分画症ではなく,馬蹄肺と診断した.また感染の反復や呼吸器症状などの臨床症状も認めないことから積極的な外科治療の適応ではないと判断され,経過観察の方針となった.今後肺炎を繰り返すなどの症状が生じれば外科的な介入も考慮されているが,退院後一年の経過で有害事象は生じていない.

 考察

馬蹄肺は1962年に初めて報告された稀な先天性奇形の一つであり,左右の肺底部が中縦隔を横断する肺によって結合した「馬蹄」型を呈するのが特徴である.主に右肺の一部が縦隔を跨ぐ形で左肺に連結し,肺動脈や気管支も同様に縦隔を跨いで結合部の肺に分布する1).また結合部肺の由来となる側の肺の低形成を伴うことが多いため,右肺の低形成により心臓が偏位し右胸心を呈することが多い2).肺の原基となる内臓中胚葉塊の分離不全により発生するという説が有力だが3),発生学的な原因については明らかになっていない.

馬蹄肺の患者の症状として呼吸困難や肺高血圧症,繰り返す肺炎などが報告されているが,いずれも非特異的である.また合併する心血管奇形の影響もあり,臨床所見からの診断は困難である.CT等で画像的に異常な肺構造が中縦隔を跨いで結合し,肺動脈や気管支が同様の経路を辿って分布していることが確認できた場合に確定診断に至る.

80–85%の症例で肺静脈環流異常を合併するとされ,三日月刀状の異常静脈が下大静脈に流入するScimitar症候群が代表的である4).その他25%の症例で心房中隔欠損症やFallot四徴症などの心奇形との合併するほか,VACTERL連合やLACHT症候群等の先天奇形症候群との合併例も報告されている5,6)

合併する心血管奇形により進行性の肺高血圧症や重度の左右シャントが存在する場合や肺炎を繰り返す場合は,血行動態改善術や心内修復術,または肺切除術などが適応となるが,臨床的な問題がなければ予後は比較的良好で経過観察が考慮される2,7)

自検例では,①Scimitar症候群を始めとした合併奇形が一切なかったこと,②結合部の肺構造が非常に狭細化していたことから肺葉内肺分画症との鑑別が問題となった.肺葉内肺分画症は肺の発生過程において過剰な肺芽が生じる先天奇形であり,繰り返す肺炎や喀血の原因になることが知られているため,待機的に手術することが一般的である.解剖学的には正常肺と同一胸膜内に肺葉構造を有し,大動脈など体循環系から分岐した異常動脈により栄養され,かつ正常な気管枝と交通がない分画肺をもつ1).自検例は左肺下葉底部の異常な肺構造への供血動脈が右肺動脈より分岐していたこと,分布する気管支が右下葉気管支と交通していたことから術前に鑑別可能であった.また馬蹄肺はしばしば縦隔肺ヘルニアとの鑑別が問題となる.肺ヘルニアは胸膜に包まれた肺構造の一部が正常な胸郭を超えて突出する疾患であると定義され,左右の胸腔は連絡しない.ヘルニア肺のサイズが小さかったり無症状であったりした場合は経過観察されるが,疼痛が継続したりヘルニアが増大したりする場合は外科的介入が推奨される8).画像的な特徴としては,ヘルニア肺と正常肺の間に明瞭な胸膜が存在することや動脈や気管支だけでなく静脈も縦隔を跨いで走行し患側肺に戻ること等があげられるが,自験例では異常肺と正常肺の間に明らかな胸膜は指摘できない点や,還流静脈が縦隔を跨がず左肺静脈に還流していた点が肺ヘルニアとは異なっていた9)Fig. 3).

Fig. 3  自験例(馬蹄肺)(A),肺葉内肺分画症(B),肺ヘルニア(C)のシェーマ

自験例では左下葉肺底部の異常な肺構造への供血動脈は右肺動脈,気管支は右下葉気管支より分岐していたが,異常肺と正常肺の間に胸膜は認めず,還流静脈は左肺静脈であった点から馬蹄肺であると診断した.

以上のように自検例では気管支や脈管の走行が診断において重要であったが,過去の報告によると馬蹄肺は非常に稀な奇形ながら様々なvariationが報告されている.Pubmedにて“horseshoe lung”をkey word に検索して本文にアクセス可能であった論文のうち,CT画像があり結合部肺に関連する気管支や動脈についての記載が確認できた21編22症例に自検例を加えた23症例について,低形成肺の左右,結合肺に分岐する気管支,供血動脈,還流静脈や,Scimitar症候群を含めた肺静脈環異常の有無,合併奇形,臨床症状,治療内容,転帰といった項目について比較した(Table 1).

Table 1 馬蹄肺症例の比較

報告者 診断時年齢 性別 低形成肺 結合部肺の気管支の由来 結合部肺の供血動脈 結合部肺の還流静脈 肺静脈還流異常の有無と形態 合併奇形 主な臨床症状 治療方針 転帰
Gonen KA 4) 3か月 右下葉気管支 右肺動脈 下大静脈 有:Scimitar症候群 ASD 心雑音 経過観察 不変
4か月 右下葉気管支 右肺動脈 N/A 有:Scimitar症候群 ASD,腹腔動脈から右肺への供血 三尖弁逆流,肺高血圧症 肺高血圧症に対して大動脈肺側副動脈閉鎖術 軽快
Bharati A10) 1か月 右気管支 右肺動脈 N/A 有:Scimitar症候群 腹部大動脈と腹腔動脈から右下葉への供血動脈 不機嫌,肺炎 N/A N/A
Gaikwad V11) 56歳 右中葉気管支 右中葉肺動脈 N/A 有:Scimitar症候群 N/A 呼吸器症状なし 経過観察 不変
Wong K12) 6日 右気管支 N/A 左下肺静脈 有:Scimitar症候群 VSD,右肺葉内肺分画症 多呼吸 N/A N/A
Koska OI13) N/A N/A 右下葉気管支 右肺動脈 下大静脈 有:Scimitar症候群 副横隔膜 咳嗽 N/A N/A
Mfingwana L14) 2歳 右下葉気管支 右下葉肺動脈 右心房 有:右肺静脈が上大静脈に還流 気管支狭窄症 繰り返す肺炎,喘鳴 N/A N/A
Le TV15) 2か月 右気管支 右肺動脈 N/A 有:右肺静脈が右心房に還流 ASD 多呼吸,体重増加不良,肺高血圧症,心雑音 ASD閉鎖術 軽快
Rana P16) 2歳 N/A 右主気管支 右肺動脈 N/A 有:右肺静脈が右心房に還流 N/A 肺高血圧症,結合部動脈の圧排による嚥下障害 肺静脈形成術 軽快
Akay HO17) 5歳 右気管支 右肺動脈 左下肺静脈 有:右肺静脈が右心房に還流,左上葉静脈が左腕頭静脈に還流 脾動脈の単独分岐,大動脈から右肺中葉への供血動脈 繰り返す肺炎,動悸,発達遅滞,心雑音 N/A N/A
Amuthabharathi M18) 31歳 右気管支 右肺動脈 N/A 有:右肺静脈が上大静脈と下大静脈に還流 両側上大静脈,Th11蝶形椎 労作時胸痛,食思不振,嘔吐,息切れ,三尖弁逆流,肺高血圧症 N/A N/A
Vela CC5) 0日 右下葉気管支 右肺動脈 左下肺静脈 VACTERL連合(食道閉鎖/鎖肛/PFO),両側上大静脈,右鎖骨下動脈起始異常 酸素化不良,肺高血圧症 馬蹄肺は無治療,食道形成術,肛門形成術 軽快
Ramegowda R6) 1日 左主気管支 N/A N/A LACHT症候群(骨格奇形/ASD/VSD/PDA/右肺低形成),pulmonary sling,大動脈縮窄症 呼吸困難 N/A N/A
Goldberg S19) 胎生32週 N/A 右下葉気管支 N/A N/A 食道閉鎖,気管食道瘻 羊水過多,チアノーゼ 食道形成術 軽快
Bando Y3) 1日 左主気管支 左肺動脈 N/A ASD,VSD 肺高血圧症 経過観察 不変
Neves JR7) 3か月 N/A 右肺動脈 動脈に平行し左心房に還流 ASD チアノーゼ,肺炎,重度の肺高血圧症 薬物療法 肺高血圧症により死亡
Oguz B20) 8か月 N/A 左肺動脈 右肺静脈 pulmonary sling,左椎骨動脈と左総頸動脈の起始異常,両側上葉気管支の無形性,第7頸椎の半椎 繰り返す肺炎 N/A N/A
Jeewa A21) 6日 右下葉気管支 右下葉肺動脈 右下葉静脈 HLHS,左肺静脈が右下葉肺静脈に還流 心原性ショック 手術困難 生後9日で死亡
Yildiz AE22) 2歳 左主気管支 左肺動脈 N/A 左肺静脈が結合部を通過して右側より左心房に還流 繰り返す肺炎,喘鳴,チアノーゼ,発育遅延,肺高血圧症 N/A N/A
Na BS23) 30歳 N/A N/A 胸部大動脈 N/A 両肺に跨る馬蹄肺 CA19-9およびCEAの上昇 分画肺部分切除術 腫瘍マーカー低下
Dagorno C24) 20歳 N/A N/A 大動脈 右肺静脈 両肺に跨る馬蹄肺 重度の肺炎 分画肺部分切除術 軽快
Ren G25) 36歳 N/A N/A 胸部大動脈 N/A 両肺に跨る馬蹄肺 左胸痛,繰り返す肺炎 N/A N/A
自検例 1歳9か月 右下葉気管支 右下葉肺動脈 左下肺静脈 なし 無症状 経過観察 不変

N/A:Not Available,ASD:心房中隔欠損症,VSD:心室中隔欠損症,PFO:卵円孔開存,PDA:動脈管開存,HLHS:左心低形成症候群

低形成肺の左右について,23例中15例が右46,1019),5例が左3,7,2022)だった.3例はどちらとも記載がなかったが,これらはいずれも肺葉内肺分画症が両側肺底部に跨って存在することで馬蹄肺を生じるなど一般的な馬蹄肺とは大きく異なる形態をしていた2325)Fig. 4a).

Fig. 4  馬蹄肺の形態と合併奇形の比較

a:低形成肺の左右・動脈と気管支の由来・肺静脈還流異常の種類と有無についての比較

b:主な合併奇形の種類と数

気管支について,片側の肺低形成を伴う場合,結合部の肺に向かう気管支は,2例6,21)を除き全て低形成となっている側の肺の気管支から分岐していた.また結合部肺への供血動脈に関しても2例7,21)を除いて同様であった.坂東らは,肺の原基となる内臓中胚葉塊の分離不全により両側の肺が癒合していることで,低形成肺と肺動脈が正常肺側に逸脱するという仮説を立てている3).自検例でも右下葉に分岐する気管支血管束の一部が結合部を通過して左肺底部に分岐しており,これは坂東らの仮説に矛盾しないものと考える.一方で,RamegowdaらやNevesら,Jeewaらの症例では,健側肺に属する気管支や肺動脈から結合部を通過して低形成肺に気管支および供血動脈が分布していた6,7,21).またNaらやDagornoら,Renらの肺葉内肺分画症が両側肺底部に跨がって存在することで馬蹄肺が生じていた症例では,全例で結合部の肺への供血動脈は大動脈であったと報告されていた2325).これは肺葉内肺分画症に矛盾しない所見ではあるが,一般的に知られる馬蹄肺の血管走行とは大きく異なる.このように肺原基の分離不全のみでは説明のつかないvariationもあり,今後の症例の蓄積,研究が待たれる(Fig. 4a).

静脈について,自検例と同様にScimitar症候群を含めた肺静脈還流異常症の合併が報告されなかった症例は自検例を加えた23例中12例だった.左肺低形成を伴った5例3,7,2022)と肺葉内肺分画症により結合した馬蹄肺の3例2325)はいずれも肺静脈還流異常症の合併が見られなかった.坂東らは左肺低形成を伴う馬蹄肺ではScimitar症候群と関連した症例は見られないと報告している3).ただしJeewaらやYildizらの症例では左肺静脈が縦隔を跨いで右下葉肺静脈や右肺側から左心房に還流する走行異常があった21,22).自検例と同様に右肺低形成を伴った馬蹄肺で肺静脈環流異常を合併しなかったのは,自験例を含め右肺低形成を認めた15例中4例であった5,6,19).一方肺静脈還流異常を認めた11例はいずれも右肺静脈の還流異常を有しており,下大静脈(Scimitar症候群)が6例4,1013),上大静脈が1例14),右心房が3例1517),上大静脈と下大静脈の双方に還流するものが1例18)と様々なvariationが見られた.なおAkeyらの症例では右肺静脈が右心房に還流するだけでなく,左上葉静脈も左腕頭静脈に還流するなどの異常があった17)Fig. 4a).結合部肺の還流静脈については明確な記載のある論文は少なかったが,自験例を含めた6例が健側の肺静脈に還流した5,12,17,20,21)

縦隔構造と結合部肺の位置関係については,結合部が確認できた19例のうち4例は食道背側での結合が疑われた5,14,23,24).一般的に結合部は心臓の背側かつ食道および大動脈の腹側を通過することが知られているが,少数ながら自検例のように食道背側を通過する報告もある.またGoldbergらの症例では食道が結合部肺の内部を走行していたと報告していた19)

合併奇形について,心奇形の合併は23例中9例に見られ,そのうちASDの合併が6例と最多で,他にVSD,PFO,HLHSなどがあった37,12,15,21).肺静脈以外の血管に血管奇形を伴った症例も23例中9例あり,pulmonary sling,両側上大静脈,大動脈縮窄などの主要な動静脈の奇形のほか,分画肺を伴わない大動脈から肺への異常血管分岐の報告も複数認めた46,10,17,18,2022).また気管支狭窄症など他の呼吸器奇形との合併を4例1214,20)に認めたほか,食道閉鎖症など肺や気管と同様に前腸から発生する食道の奇形を合併した報告を2例5,19)認めた.ほかに関連性は不明だが,蝶頸椎など骨格系の奇形を3例に認めた6,18,20)Fig. 4b).

重篤な合併奇形のある症例は生直後から肺高血圧症やチアノーゼなど重篤な症状を呈した報告が多く死亡例もあったが,一方で成人例では繰り返す肺炎や胸痛などで治療対象となる例が多かった.23例のうち,手術の施行が確認された症例は7例で,肺高血圧症に対する血行再建術が2例4,16),ASD閉鎖術が1例15),CA19-9高値または繰り返す肺炎に対する分画肺の部分切除術が2例23,24),食道閉鎖や鎖肛など合併奇形に対する手術が2例5,19)だった.自検例においても左胸腔内の異常な肺構造はair trappingによると見られる透過性の亢進を認めることから気管支のクリアランスは不良である可能性があり,今後は肺炎の出現などに注意した定期的なフォローアップが必要と考える.

 結語

肺葉内肺分画症と鑑別を要した馬蹄肺の一例を経験した.馬蹄肺は非常に稀な疾患であるが,手術適応となることが多い肺葉内肺分画症と異なって原則として経過観察が可能であり,診断的価値が高い.縦隔を跨いで両肺を結合する肺構造を指摘できれば診断可能だが,非常に様々なvariationがあり,自検例では縦隔を跨いで両側胸腔に分布する動脈や気管支を指摘できたことが診断に繋がった.先天性肺疾患の読影では肺動静脈や気管支などの所見も丹念に観察し診断していくことが重要であると考える.

日本小児放射線学会の定める利益相反に関する開示事項はありません.

文献
 
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