Journal of Japanese Society of Pediatric Radiology
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Special Feature: The 61st Annual Meeting of the Japanese Society of Pediatric Radiology: Collaboration and Progress
Imaging of pediatric lower respiratory tract infections: A pathophysiological perspective
Takafumi Ono
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2026 Volume 42 Issue 1 Pages 13-19

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要旨

小児下気道感染症は小児診療において頻繁に遭遇する疾患であり,診療上は肺炎の有無や原因微生物の推定,抗菌薬投与の適否が問題となる.各国のガイドラインでは,小児下気道感染症に対するルーチンの胸部単純X線撮影は推奨されていないが,実臨床では画像から得られる病態生理学的情報が診療の助けとなる場面も多い.本稿では,小児市中下気道感染症をウイルス感染症と細菌感染症に大別し,それぞれに特徴的な病態と胸部単純X線写真所見との対応関係を整理した.細気管支炎,間質性肺炎,肺胞性肺炎,気管支肺炎,円形肺炎,壊死性肺炎,マイコプラズマ肺炎について,病態生理学的背景を踏まえて概説する.画像診断は病原体を同定するための手段ではなく,肺内で生じている病態を理解するための検査手段として位置づけ,年齢,流行状況,臨床経過と統合して解釈することが重要である.

Abstract

Pediatric lower respiratory tract infections are among the most common conditions encountered in pediatric practice. Clinical decision-making often focuses on the presence of pneumonia, evaluation of the causative pathogen, and the appropriateness of antibiotic therapy. Routine chest radiography for pediatric lower respiratory tract infections is not recommended by the World Health Organization or other international guidelines, but imaging findings can provide valuable pathophysiological information in selected clinical settings. In this review, pediatric community-acquired lower respiratory tract infections are broadly categorized into viral and bacterial infections, and the relationships between characteristic disease processes and chest radiographic findings are summarized. Typical imaging features of bronchiolitis, viral interstitial pneumonia, alveolar (lobar) pneumonia, bronchopneumonia, round pneumonia, necrotizing pneumonia, and Mycoplasma pneumonia are described with reference to their pathological backgrounds. Chest imaging should not be regarded as a tool for identifying specific causative pathogens, but rather as a modality for understanding the underlying disease processes occurring in the lungs. Appropriate interpretation of imaging findings requires integration with patient age, epidemiological trends, and clinical course.

 はじめに

呼吸器感染症,とりわけ下気道感染症は小児診療で頻繁に遭遇する疾患群の一つである.診療上の問いとしては,「肺炎か否か」,「ウイルス性か細菌性か」,ひいては「抗菌薬を投与すべきか否か」に集約されることが多い.これらの問いへの判断材料の一つとして画像検査があるが,現状では胸部単純X線写真のみから確実に肺炎か否かを判断したり,肺炎がウイルスか細菌によるものかを区別できるという根拠には乏しく1,2),画像検査自体が感染症の治療期間を短縮させるという根拠にも乏しい3).一方,ときに「肺炎」というひとことに集約されがちな下気道感染症の中には実に様々な病態が包含されており,細菌とウイルスとで生じる病態のパターンもある程度異なっている.これらの多様な病態を理解し,さらに各病態に由来する画像所見を理解しておくことは,実臨床において下気道感染症の画像解釈や病原体の類推の助けとなることは疑いない.本稿では,下気道感染症が呈する典型的な病態生理を掘り下げ,胸部単純X線写真を中心とした画像所見との対応関係を整理しながら概説する.あわせて,必要に応じて超音波やCTの位置づけにも触れる.

 小児下気道感染症の基本的な診断アプローチ

前提として,小児下気道感染症の診療では年齢別の好発病原体と診断時点における感染症の流行状況の把握が極めて重要であり,いずれも診断時の検査前確率に大きく影響する.

1. 年齢別の好発病原体

入院を要した小児市中肺炎に対する原因病原体の頻度や年齢分布を調査した大規模な研究はいくつかある.本邦では直近のデータとして2008年から2009年にかけての調査研究があり,小児市中肺炎の34.4%がウイルス感染,21.8%が細菌感染,17.5%がウイルスと細菌の混合感染,5.9%がマイコプラズマ感染であることが示され,マイコプラズマ肺炎は主に6歳以上の年長児で発生していることが示されている4).また,米国で2010年から2012年まで調査された研究では,小児市中肺炎の80%弱はウイルス性であること,乳幼児ではRSウイルスやライノウイルス,ヒトメタニューモウイルスが大半を占めること,5歳以降の年長児ではマイコプラズマ肺炎の比率が上がっていくことが示されている5).実際には国や地域,施設,時期ごとに原因病原体の頻度や分布は異なってくるが,乳幼児はウイルス感染の頻度が高く年長児ではマイコプラズマ肺炎の頻度が高まるという大まかな傾向は共通していると思われる.

2. 感染症の流行状況

感染症の流行状況は,国や各都道府県が発表している週報を確認するとよい.地域によってはよりローカルな流行情報を報告している施設もある.特にRSウイルスやマイコプラズマ肺炎など,新型コロナウイルスの流行を境に従来の流行時期の季節性や年周期が乱れた感染症もあるので6),それらの流行状況は継続的に追跡し把握しておくことが望ましい.

 ウイルス感染症の病態と画像所見

1. 細気管支炎

小児のウイルス性下気道感染症で最も典型的な病態が細気管支炎である.頻度の高い原因ウイルスとして,RSウイルス,ヒトメタニューモウイルス,アデノウイルス,ライノウイルス,パラインフルエンザウイルスなどが挙がるが,特にRSウイルスは乳幼児において重症化しやすく臨床的にも画像診断上も重要である.

ウイルス性細気管支炎は細気管支上皮を感染の一次標的とする一方で,炎症細胞浸潤や浮腫といった病理学的な炎症反応の主たる場としては平滑筋層外の間質や血管周囲に認められることが報告されている7).さらにRSウイルス感染など炎症反応が強い症例では,炎症細胞浸潤が平滑筋層を越えて上皮側へ波及し,上皮の壊死や脱落を来すことが示されている8)

胸部単純X線写真では,これら二つの病態,すなわち「間質浮腫や血管のうっ血による気管支壁の肥厚」と「上皮の脱落や分泌物貯留による管腔内閉塞」を反映した所見が認められる.前者は気管支壁肥厚を直接的に表すperibronchial cuffing や tram-line sign として描出され(Fig. 1),後者は管腔内狭窄ないし閉塞の程度に応じて過膨張や無気肺として描出される(Fig. 2).小児ではKohn孔やLambert管といった末梢気道間の側副換気路が未発達であるため,細気管支が狭窄ないし部分的に閉塞した場合は呼気時にチェックバルブ機構が成立して末梢肺に空気がトラップされ過膨張が生じる.閉塞が高度な場合には末梢肺への換気が著しく低下し無気肺が生じる.細気管支炎を反映するこれらの所見は混在して見られることが多いが,症例によっては過膨張のみが認められることも少なくない.

Fig. 1  Peribronchial cuffingとtram-line

9か月男児,RSウイルスによる細気管支炎.右上肺野の肺門側にリング状の陰影(peribronchial cuffing;矢頭)を,両下肺野に斜めに伸びる二重線状の陰影(tram-line;矢印)を認める.前者は前後方向,後者は冠状断面方向に走行する気管支の壁肥厚を示唆する.

Fig. 2  細気管支炎による無気肺と過膨張

1歳2か月男児,RSウイルスによる細気管支炎.両側肺野に肺門部から放射状に広がる線状陰影を認め,複数か所の下気道閉塞による無気肺を疑う.また,両側で横隔膜低位と肺野の透過性亢進が見られ,過膨張も伴っている.

2. ウイルス性間質性肺炎

一部のウイルス性下気道感染症では,炎症の主座が細気管支にとどまらず,肺胞道や肺胞へ波及し間質性肺炎の像を呈する.病理学的には,肺間質への炎症細胞浸潤や間質浮腫,毛細血管拡張が主体であり,重症例では肺胞腔内への浸出液や出血,硝子膜形成を伴う急性肺障害の像を呈する7)

胸部単純X線写真やCTでは,主に間質の浮腫を反映したびまん性あるいは区域性のすりガラス状陰影,微細な線状・網状影が見られうるが,単純X線写真では微細な間質変化の視認に限界がある(Fig. 3).また,ウイルス性肺炎では,明らかな肺胞性の浸潤影や胸水を伴うことは少なく,これらの所見を認めた場合には細菌性肺炎の合併や無気肺の混在を考慮する必要がある.

Fig. 3  間質性肺炎

12歳女児,COVID-19.右肺下葉背側に内部に微細線状網状構造を伴う限局的なすりガラス状病変を認める.胸部単純X線写真では異常は指摘できなかった.

 細菌感染症の病態と画像所見

1. 肺胞性肺炎(大葉性肺炎)

細菌性肺炎のうち肺胞内への滲出液貯留が主体となる病態が肺胞性肺炎(大葉性肺炎)である.起因菌としては肺炎球菌が代表的である.肺胞性肺炎では,肺炎によって生じる滲出液が側副換気路を介して隣接する肺胞へ容易に広がることができる.このため,滲出液により充満された肺胞の領域は区域を越え肺葉全体に波及しうる9)

胸部単純X線写真やCTでは,区域あるいは肺葉に一致した均一な濃度上昇として描出される.この濃度上昇域はしばしば葉間裂など隣接する膜構造を圧迫し外側へ凸となる形態をとる(bulging fissure)10)が,これは肺胞内に滲出した液体が一定程度の圧力を持ちながら充満している様子を反映した所見である(Fig. 4).一方,同様の濃度上昇でも容積減少が目立つ場合には肺炎ではなく無気肺をみている可能性が高い.また,発症から時間が経過している肺炎は炎症後の器質化の進行に伴い収縮しうる.

Fig. 4  肺胞性肺炎(大葉性肺炎)

4歳女児,肺炎球菌性肺炎.胸部単純X線写真で左下肺野に広範かつ均一な濃度上昇を認める(a).胸部CTでは左肺下葉全体にわたる濃度上昇を認め,病変を境界している葉間裂に対し凸の形態(bulging fissure;矢印)を示す(b).

2. 気管支肺炎

気管支肺炎は,細菌感染が主として気管支内腔や気管支周囲の肺胞を中心として広がる病態である.黄色ブドウ球菌などが代表的である.滲出液の粘稠度が高いため,肺胞内への液体滲出の程度は比較的軽度にとどまる一方,病変は気管支内腔を伝って区域性に進展する9)

胸部X線写真やCTでは,気管支走行に沿った粒状影や浸潤影,病変部に一致した気管支壁肥厚が特徴的である10)Fig. 5).肺胞性肺炎と気管支肺炎は必ずしも互いに排他的な病態ではなく,同一症例内で混在することも少なくない.

Fig. 5  気管支肺炎

8歳女児,黄色ブドウ球菌性肺炎.右肺上葉S2に区域性に広がる濃度上昇と気管支壁肥厚を認める.

3. 円形肺炎

側副換気路が未発達な小児(典型的には8歳未満)では,肺胞内の滲出液が肺葉全体に広がりきらず,限局した腫瘤様の形態を呈することがある.これが円形肺炎である.多くは単発性で,下葉S6に好発する11)

胸部X線写真では,内部均一な円形ないし類円形の腫瘤様陰影として描出される.鑑別としては,肺腫瘍のほか,後述する壊死性肺炎や肺化膿症といった壊死や膿瘍形成を伴った肺炎,真菌感染症,先天性肺気道奇形などが挙がる11).追加精査のモダリティとしては超音波が時に有用で,病変内部を走行する血管内の血流や気管支内の空気による点状高輝度構造の存在は肺炎とその他の病変との鑑別に役立ち,造影CTを回避する手段となり得る(Fig. 6).このほか,抗菌薬治療後の速やかな改善をはじめとした臨床経過も膿瘍や腫瘍性病変との鑑別において重要な手がかりとなる.

Fig. 6  円形肺炎

1歳1か月女児,肺炎球菌性肺炎.胸部単純X線写真で右下肺野に境界明瞭な腫瘤状陰影(矢印)を認める(a).超音波では境界明瞭な低輝度病変として描出され,病変内には気管支内の空気と思われる粒状の高輝度域(矢印)が散見する(b).カラードプラ像では正常な血流信号が描出される(c).

4. 壊死性肺炎・気腔形成性病変

細菌性肺炎が高度に進展すると,肺実質の融解壊死を伴う壊死性肺炎を来すことがある.病理学的には,中心部の壊死・融解領域,周辺部の好中球集簇,最外層の線維化という層構造を形成する12).さらに中心部の壊死巣において二次感染が生じることにより化膿性の滲出液貯留すなわち膿瘍が生じる9)

この壊死巣や膿瘍内容が気道内へ排出されると,病変の中心部は空気に置換され,最終的に線維化した厚く不整な外層により被包された気腔が残存することがある.これを空洞(cavity)と呼ぶ9,13).また,肺炎後には壁が薄く辺縁平滑な気腔を形成する場合もあり,これは気瘤(pneumatocele)と呼ばれる.気瘤の形成機序については諸説あり,空洞と同じく肺実質の壊死や化膿に続発する気腔の残存という説のほか,肺胞隔壁や細気管支壁の破綻による限局的な空気貯留という説,肺炎の治癒過程で細気管支レベルまで排出された滲出液などがチェックバルブ性の閉塞機転として働くことで末梢側の肺胞に空気が貯留することで気瘤が形成されるという説などがある14,15).必ずしも小児の肺炎後に気腔を形成する病変すべてが壊死や構造破壊を背景としている訳ではないという点に留意が必要である.実際,小児に生じた肺炎後の気瘤は瘢痕を残すことなく自然消退することが多い.

単純X線写真やCTでは,内部に液体が充満した壊死性肺炎や肺化膿症の場合,円形肺炎に類似した腫瘤様陰影として描出される.超音波や造影CTによる病変内部における壊死物の有無の評価が診断に重要である(Fig. 7).気瘤は通常,肺炎によって生じた濃度上昇域を置換する形で出現する(Fig. 8).多くは数か月以内に自然消退するが,時に遷延や巨大化によって呼吸器症状を呈し治療を要することがある15)

Fig. 7  肺膿瘍

10歳男児,S. intermedius感染.胸部単純X線写真で右下肺野縦隔側に境界明瞭な腫瘤状陰影(矢印)を認める(a).超音波で右肺中葉の領域に境界明瞭な低輝度病変を認める.病変内には液体貯留腔と思われる無エコー域(矢印)を認め,気管支内の空気や正常血流は描出されない(b).造影CTでは右肺中葉にいびつな壁に被包された造影不良域を伴う病変を認める(c).

Fig. 8  肺炎後に生じた気瘤(pneumatocele)

1か月女児,黄色ブドウ球菌性肺炎.抗菌薬加療開始から1週間後の胸部単純X線写真で,両側下肺野~肺底部に嚢胞状の透過性亢進域(矢印)が出現した.

 マイコプラズマ肺炎の病態と画像所見

マイコプラズマ肺炎は学童期以降に多く,肺炎マイコプラズマが原因となる.生物学的には細菌に分類されるが,細胞壁を欠き宿主免疫応答を介して炎症を惹起する点で他の細菌性肺炎とは病態が異なる.

肺炎マイコプラズマは線毛を有する気管支や細気管支の気道上皮細胞を感染の一次標的とし,線毛運動障害や粘液クリアランス低下による気道感染症を引き起こす.一方で,細胞壁を持たず表面抗原が多彩なマイコプラズマは過剰かつ非特異的な免疫反応を誘発しやすく,肺胞や肺間質,胸膜にも炎症が波及しうる16).このため,臨床像としては細気管支炎や気管支肺炎のみならず,間質性肺炎,肺胞性肺炎,胸膜炎など多彩な病態を呈する17,18)Fig. 9).複数の病態が同一症例内で混在することも多い.

Fig. 9  マイコプラズマ肺炎

(a)8歳女児.胸部単純X線写真で両側肺門部にperibronchial cuffing(矢頭)やtram-line(矢印)を認める.細気管支炎を疑う.

(b)12歳女児.CTで右肺下葉に区域性に広がる粒状病変や気管支壁肥厚を認める.気管支肺炎を疑う.

(c)6歳男児.胸部単純X線写真で左肺上葉全体にわたる均一な濃度上昇を認める.肺胞性(大葉性)肺炎を疑う.

胸部X線写真では,気管支壁肥厚,区域性~肺葉全体に及ぶ浸潤影,びまん性すりガラス影,胸水貯留など,多彩な所見が認められる.画像上に描出される単一の病態や所見をもとにマイコプラズマ肺炎と診断することは難しいが,「学童期以降の肺炎」「乾性咳嗽で発症」「集団感染や濃厚接触歴」などの特徴的な臨床情報や,診療時点での感染流行状況などの疫学的な背景情報を確認することで,診断に至ることは可能である.

 まとめ

小児下気道感染症の画像診断は,あくまで病原体を同定するための検査ではなく,肺内で生じている病態を理解するための手段である.画像から得られる種々の所見から,炎症の首座や気道閉塞の有無,滲出液貯留の程度や広がり,合併症の有無といった病態生理学的な情報を抽出し,最終的に体内で生じている病態全体を解釈する姿勢が重要で,必要に応じて超音波やCTを適切に併用することで診療の質の向上に寄与する.また,画像所見は単独で判断せず,臨床像や経過に加え,年齢別の好発病原体や診療時点の流行状況といった背景知識と統合して解釈することも重要である.

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