Journal of Japanese Society of Pediatric Radiology
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Special Feature: The 61st Annual Meeting of the Japanese Society of Pediatric Radiology: Collaboration and Progress
Molecular mechanisms of neuronal migration disorders
Mitsuhiro Kato
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2026 Volume 42 Issue 1 Pages 46-52

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要旨

神経細胞移動異常症は,大脳皮質層構造の乱れと異所性灰白質の出現を特徴とする.LIS1PAFAH1B1),DCXの同定は,無脳回・厚脳回・帯状異所性灰白質が連続体であることを明らかにした.介在ニューロンの発生に関与するARXは,機能喪失では滑脳症/脳梁欠損症を,機能獲得のポリアラニン配列伸長変異では,伸長数に比例し,てんかん発作や知的障害,運動障害の発症早期化・重篤化をきたし,介在ニューロン病と呼称される.微小管の異常をきたすチューブリン病は,内包前脚不明瞭化を特徴とする.チャネル異常が多小脳回で同定され,構造異常と機能異常の関連性が分子レベルで明らかにされつつある.mTOR活性化が限局性皮質異形成や巨脳症関連疾患をきたす一方,mTOR活性低下は滑脳症(厚脳回)をきたす.神経細胞移動異常症のような脳形成異常にも,てんかん発作や知的障害などの機能異常については,分子標的治療の糸口が見えてきている.

Abstract

Neuronal migration disorders are characterized by disruption of cortical layer architecture and the appearance of ectopic gray matter or heterotopia. Identification of LIS1 (PAFAH1B1) and DCX revealed that agyria, pachygyria, and band heterotopia form a continuum. ARX, which is involved in interneuron development, causes lissencephaly/agenesis of the corpus callosum due to loss-of-function mutations. In contrast, gain-of-function mutations involving polyalanine tract expansion cause functional disorders, such as epilepsy, intellectual disability, and motor impairment. Onset age and severity increase proportionally to the expansion length of polyalanine residues, which is referred to as interneuronopathy. Tubulinopathies are caused by microtubule abnormalities, and characterized by an indistinct anterior crus of the internal capsule. Channel abnormalities identified in polymicrogyria, as well as in epileptic disorders, have revealed the relationship between structural and functional abnormalities at the molecular level. Thus, mTOR activation causes focal cortical dysplasia and megalencephaly-related disorders, whereas reduced mTOR activity leads to lissencephaly (pachygyria). Molecularly targeted therapies are emerging as potential treatments for functional abnormalities like seizures and intellectual disability in neurodevelopmental disorders such as neuronal migration disorders.

 はじめに

神経細胞の移動は,脳室帯で増殖した神経細胞が,限られた空間内で目的地に正しく到達・整列し,効率よい神経ネットワークを形成するために必須の過程である.脳の各部位で神経細胞の移動は行われるが,移動距離が長く,移動障害が顕著に表れるのは大脳新皮質である.ヒトの大脳新皮質では胎生6–20週にかけて神経細胞が移動し,6層構造が作られる.よって神経細胞移動異常症は,大脳皮質層構造の乱れ(無脳回・厚脳回:古典型滑脳症)もしくは移動過程で止まった細胞集団(異所性灰白質)の出現を特徴とする1)

1988年にMiller-Dieker症候群で17番染色体短腕領域の欠失が報告され,5年後にLIS1PAFAH1B1)が責任遺伝子として同定された.皮質下帯状異所性灰白質およびX連鎖性滑脳症の原因遺伝子としてDCXが同定され,無脳回・厚脳回・帯状異所性灰白質は連続体であると理解されるようになった.外性器異常を伴うX連鎖性滑脳症と脳梁欠損症で同定されたARXは,介在ニューロンの発生に関与し,機能獲得変異では脳形成異常を呈さず,ポリアラニン配列の伸長変異数に比例して発症早期化・症状重篤化をきたし,介在ニューロン病の疾患概念と,大田原症候群とWest症候群(乳児てんかん性スパズム症候群)を含む年齢依存性てんかん性脳症の分子病態を明らかにした.さらにTUBA1Aなど微小管構成分子tubulinの異常が複数同定され,チューブリン病と呼ばれている.最近では,多小脳回の原因遺伝子同定が急速に進んでいる.驚くことに,てんかんの原因遺伝子であるチャネル関連分子の異常が多小脳回では多く,先述したARX同様に,構造異常と機能異常の関連性が分子レベルで明らかにされつつある.結節性硬化症や片側巨脳症,限局性皮質異形成,巨脳症関連疾患はmTOR活性化を共通病態とするが,2025年初頭に,mTOR活性低下が滑脳症(厚脳回)をきたすことが報告された2)

これらの研究成果は,神経細胞移動異常症のような脳形成異常(構造異常)にも,てんかん発作や知的障害などの機能異常については,分子標的治療の糸口が見えたことを意味する.本稿では神経細胞移動異常症の分子病態と,画像所見を中心とした臨床所見について述べる.

 大脳の発生と進化:介在ニューロン病ARX

大脳はヒトで最も進化した臓器である.ヒトへの進化は主に大脳新皮質の進化によってなされてきた.大脳新皮質は錐体細胞と非錐体細胞の種類と配列の違いにより6層構造を示すが,神経細胞の産生部位は脳室近くであり,皮質を構築するためには細胞移動が欠かせない.ヒトでは神経細胞の産生と移動は胎生6–20週で行われる.錐体細胞と非錐体細胞は形態も機能も異なるが,細胞の産生部位と移動様式も大きく異なる.錐体細胞は皮質直下の脳室帯・脳室下帯で産生され,脳表に向かって垂直に,脳が球形になると放射状に移動し(radial migration),inside-outで先に移動した細胞層を越えて脳表側に次々と層が積み重なっていく.それに対し,非錐体細胞は皮質から離れた基底核原基で産生され,脳表に沿って接線方向に目的まで移動する(tangential migration).大脳皮質では,錐体細胞は長い軸索を有し,遠方のニューロンとシナプス接合し,グルタミン酸を神経伝達物質として放出し脱分極による興奮性のシグナルを送る(投射ニューロン).非錐体細胞は比較的短い軸索で近傍のニューロンと接合し,ガンマアミノ酪酸(GABA)を神経伝達物質として放出し過分極による抑制性のシグナルを送る(介在ニューロン).進化的にはヒドラなどの腔腸動物は神経環や神経網といった散在神経系のみであるが,プラナリアなどの扁形動物から介在ニューロンが出現し,興奮と抑制のバランスが制御された集中神経系としての脳を有するようになる.まさに介在ニューロンの出現が脳の始まりと言ってもよい.

それぞれの神経細胞は遺伝的に決められた分子機構で発生が制御されており,非錐体細胞の発生に欠かせないのがARX(aristaless-related homeobox)である.ARXは胎児脳の基底核原基の他,精巣,膵臓に発現し,下流遺伝子の転写を調整する.マウスでArxが欠損するとGABA作動性介在ニューロンの産生が減少し,大脳皮質内での分布が乱れる.ヒトでARXが欠損すると,男児(46,XY)の場合は大脳新皮質から非錐体細胞がみられなくなり,異常な3層構造に変化する.その結果,出生前もしくは出生直後(24時間以内)から治療抵抗性のけいれん発作をきたす.画像所見としては,患者によって後頭優位の水無脳症から無脳回・厚脳回まで重症度に差がある古典型滑脳症と脳梁欠損,基底核異常,白質髄鞘化障害を示し,診断は比較的容易である3)Fig. 1).外性器は低形成となり(X-linked lissencephaly with abnormal genitalia; XLAG),重症例では女性型を呈し女児とまちがわれることもあるので注意が必要である.他に,低体温,低血糖など生命予後は不良である.女性保因者の場合は,約半数に脳梁欠損を認め,脳梁欠損例の半数に軽度のてんかん発作を認める.

Fig. 1  ARX変異による外性器異常を伴うX連鎖性滑脳症(XLAG)

新生児 T1 FLAIR.前頭が厚脳回,後頭が無脳回の古典型滑脳症に加え,脳梁欠損と第三脳室の上方偏位,基底核の低形成と小嚢胞を認める.XLAGに特徴的な神経画像所見である.

ARX分子にはアラニン残基が複数連続するポリアラニン配列が4か所存在する(Fig. 2).1番目(16残基)と2番目(12残基)のアラニン配列が伸長すると,知的障害やてんかん発作を主とする中枢神経症状を呈するが,脳形成障害は少なくともMRIではみられない.トリプレットリピート病のように,ポリアラニン配列の伸長変異数に比例して,中枢神経症状の発現の早期化と重度化を示す4).具体的には,第1ポリアラニン配列が18–19残基になる伸長変異では非症候性の知的障害を,23残基ではジストニアを伴う乳児てんかん性スパズム症候群やアテトーゼ型脳性麻痺を,27残基では大田原症候群(現在の国際抗てんかん連盟は早期乳児発達性てんかん脳症と改称)をきたす.ARXの遺伝型と表現型は密接に関連し,水無脳症から軽度の知的障害まで症状は幅広いが,いずれも介在ニューロンの異常に起因しており,介在ニューロン病と呼ばれる5)

Fig. 2  ARXの遺伝子構造

ARXはDNAに結合するホメオドメインを有し,多数の下流遺伝子の転写を制御する.GCN(NはA,T,G,Cのいずれか)でコードされるアラニン残基が連続するポリアラニン配列が4か所存在し,GC含有量が多い.第1,第2ポリアラニン配列が伸長変異の好発部位であり,伸長数に比例し表現促進現象を示す.

 微小管制御による細胞移動:滑脳症とチューブリン病

微小管は,αチューブリンとβチューブリンがヘテロ二量体を作って縦に規則的に鎖状に連結したプロトフィラメントが,通常13本管状に共重合して構成される.γチューブリンは微小管形成中心で他の分子とともにタンパク質複合体を形成し,微小管の重合開始を担っている.微小管はアクチンとともに細胞内の主要な骨格タンパク質であり,有糸分裂,細胞運動,細胞内物質輸送に関わる.古典型滑脳症の主要な原因遺伝子であるLIS1PAFH1B1)は,微小管状のモーター分子(ダイニン)を制御し,細胞運動やシナプスの配置に関与している6)LIS1変異では後頭優位に形成異常をきたし,もう一つの微小管関連蛋白質であるDCXの異常は,前頭優位に形成異常をきたし,神経画像的に両者の鑑別が可能である7)

チューブリン遺伝子の変異でもさまざまな疾患をきたし,チューブリン病と呼ばれる(Table 18,9).脳形成異常をきたすチューブリン病でもっとも頻度が高いのはTUBA1A異常症である10)TUBA1Aはヒト染色体12q13.12に位置し,αチューブリンをコードする.TUBA1A変異により多彩な脳形成異常をきたし,重症度もさまざまである.TUBA1Aに限らないが,チューブリン病の神経画像所見の最大の特徴は内包前脚の不明瞭化である(Fig. 3).その他,小頭症,無脳回,脳梁欠損,橋小脳低形成を特徴とする小滑脳症やDandy-Walker症候群でTUBA1A変異が認められる.TUBB4Aは捻転ジストニー(DYT4),基底核と小脳萎縮を伴う髄鞘低形成白質変性症(HABC)の原因遺伝子であるが,TUBB3変異では大脳深部白質の容量減少を呈し,一見,脳室周囲白質軟化症periventricular leukomalacia(PVL)と類似の画像所見を示す.TUBB3変異では,橋底部の非対称性を示し,内包前脚の不明瞭化とともに,低酸素性虚血性脳症によるPVLとの鑑別に役立つ11)

Table 1 チューブリン病の原因遺伝子と表現型

遺伝子 表現型
TUBA1A 古典型滑脳症,多小脳回,水頭症
TUBA8 多小脳回+視神経低形成
TUBB2A 単純脳回+乳児期発症てんかん性脳症
TUBB2B 多小脳回+外眼筋麻痺
TUBB3 多小脳回+基底核・小脳・脳幹形成異常
TUBB3 外眼筋麻痺単独
TUBB4A 捻転ジストニー(DYT4),基底核と小脳萎縮を伴う髄鞘低形成白質変性症(HABC)
TUBB 小頭症 ± 多小脳回or異所性灰白質
TUBG1 古典型滑脳症
TUBGCP4 網脈絡膜症を伴う小頭症
TUBGCP6 網脈絡膜症を伴う小頭症
KIF2A 小頭症+厚脳回
KIF5C 小頭症+多小脳回+脳梁菲薄化
PLK4 小頭症+網膜症+低身長
Fig. 3  TUBA1A変異による脳形成異常

7歳 T1強調画像.右内包前脚の不明瞭化を認める.皮質の厚さは正常だが,脳溝が浅く皮質形成異常を伴う.

 発達性チャネル病:多小脳回

多小脳回は,皮質表層の過剰な折りたたみを特徴とする12).丸石様皮質異形成cobblestone cortical dysplasiaでは,グリア限界を越えた細胞移動により皮質内に軟膜を伴うが13),多小脳回では神経細胞は軟膜を超えず,軟膜は皮質の表層に明瞭に区別されて存在する.新生児期には皮質と白質の境界(皮髄境界)がMRIで鮮明に描出され,文字通りたくさんの小さい脳回が典型的に示される(Fig. 4A).乳児期後半から髄鞘化の完成前までは,MRIでは皮髄境界が不鮮明になり,多小脳回は厚脳回や丸石様異形成と画像所見が類似する14)Fig. 4B).鑑別点としては,多小脳回は中心溝とシルビウス裂の周辺に主に分布すること,脳回の幅や皮質の厚さが不均等なこと,左右非対称性が認められやすいことが挙げられる.

Fig. 4  多小脳回の年齢による脳MRI所見の変化

A:T2強調軸状断,B:T1強調軸状断.新生児期(A)には皮髄境界が鮮明なため,小さい脳回と浅い脳溝が不規則に多数入り組んでいる様子が明瞭に認められる.生後10か月(B)になると皮髄境界が不鮮明で,厚脳回のようにみえる.しかし厚脳回と異なり,脳回の幅が不規則で,中心溝の陥凹が目立つ.

原因として胎内でのサイトメガロウイルス感染症や低酸素性虚血性脳症,1p36.3欠失症候群,22q11.2欠失症候群などの染色体異常,Aicardi症候群や中隔視神経異形成症,先天代謝異常症など多彩な基礎疾患に併発してみられる.遺伝的な背景も多様で遺伝子座異質性locus heterogeneityを示す.当初,ADGRG1(旧称GPR56)やWDR62など細胞増殖に関わる遺伝子変異が報告され,その後巨脳症に伴う多小脳回の原因遺伝子としてmTOR信号伝達経路のPIK3R2PIK3CAAKT3PTENが報告された.小頭症の場合はWDR62の他に,TUBA1ATUBB2Bなどのチューブリン病が多い.くも膜下腔と脳室が交通する孔脳症の移行部皮質が多小脳回を示す裂脳症では,4型コラーゲンをコードし基底膜を構成するCOL4A1変異が多い15)COL4A1COL4A2変異では,血管の脆弱性を生じ胎内で脳出血をきたし裂脳症・孔脳症を示すため,病変は非対称性のことが多い16).また,COL4A1は丸石様皮質異形成に加えて脳幹の屈曲異常をきたし,Walker-Warburg症候群の原因遺伝子でもある.

多小脳回の遺伝要因に関する最近のトピックスはチャネル異常症である17).従来,シルビウス裂近傍の構造異常を伴わない機能異常として,非定型良性小児部分てんかん,Landau-Kleffner症候群,先天性核上性球麻痺が挙げられ,総称して傍シルビウス裂症候群とよばれている.多小脳回をきたすチャネル異常症として,GRIN1AGRIN2BSCN3AATP1A3が報告されており,いずれもてんかん症候群の原因遺伝子である.ATP1A3は,Na/K-ATPaseポンプの触媒サブユニットをコードする膜タンパク質である.ATP1A3変異による多小脳回の重症例では,進行性の脳萎縮と発作性の心不全,甲状腺機能低下をきたすことが特徴的である18)ATP1A3変異は,多小脳回以外に,小児では小児交互性片麻痺(AHC),発達性てんかん脳症,凹足・視神経萎縮・感音性難聴を伴う小脳失調(CAPOS)を,成人では急速発症ジストニア・パーキンソニズム(RDP)をきたす.

 mTORと脳形成障害

細胞は,外からの物理的・化学的刺激を受けて,主にリン酸化により信号を伝え,遺伝子発現を変化させ,細胞の形態や機能を変化させる.mTORは一つの信号伝達経路の鍵となる分子であり,増殖因子やサイトカイン,ブドウ糖,アミノ酸,低酸素,高浸透圧などの刺激に反応して,RNAの翻訳やリボソーム合成,細胞代謝・増殖・成長,オートファジーに影響を与える.mTORの上流に存在する分子の順番からPI3K-AKT-mTOR経路もしくは単にmTOR経路と呼ばれる.結節性硬化症の原因遺伝子であるTSC2TSC1は,AKTの下流,mTORの上流に存在する.基本的にはいずれの遺伝子異常でもmTORの機能亢進が主要な病態である.結節性硬化症に代表されるように,過形成・腫瘍化を主症状とする形態異常症として,Proteus症候群,多小脳回・多指症・皮膚毛細血管奇形を伴う巨脳症,片側巨脳症,限局性皮質異形成と,てんかん発作を主症状とする機能異常症である常染色体顕性の家族性焦点性てんかんなどがあり,mTOR病と総称されている19)

mTOR病は,変異の時期により二分され,病変範囲・分布と遺伝性に違いが出る.精子/卵子の減数分裂時に生じた生殖細胞系列変異では,個体全ての細胞が変異を有し,遺伝子発現の部位に応じ全身各所に概ね左右対称な病変を生じる.受精後の細胞分裂過程で生じた体細胞系列変異では,変異を有する細胞と変異を有さない正常な細胞とが混在するモザイク状態となる.生殖細胞系列変異では,巨脳症関連疾患(多小脳回の項を参照),結節性硬化症,GATOR-1複合体(DEPDC5NPRL2NPRL3)の異常による多様な焦点を示す家族性焦点てんかん,MTOR変異によるSmith-Kingsmore症候群を示す.体細胞モザイク変異では,AKT1変異によるProteus症候群,片側巨脳症,限局性皮質異形成focal cortical dysplasia(FCD),肺のTSC2/TSC1変異によるリンパ脈管筋腫症を示す.片側巨脳症とFCDは,変異時期が早いか遅いかの違いであり,病変が半球全体に広がる片側巨脳症病変と,半球の一部に局在するFCDは一連の同じ疾患である20).FCDは,小児期にてんかん発作で発症し,病理所見によりI–III型に分類される.II型は結節性硬化症や片側巨脳症の組織所見と類似し,異型ニューロンやバルーン細胞といった異常な細胞が出現し,以前から共通の病態が示唆されていた.手術で切除したFCD患者の脳病変組織を用いて,mTOR経路の遺伝子を選択的にディープシンケンスすると,FCD IIB型の約半数でMTORのミスセンス変異が同定される20,21).変異体はリン酸化亢進を示し,直接的にmTORが活性化している.韓国のグループは,変異型MTORを導入したモデルマウスを作成し,ヒトのFCD II型に類似した巨大な神経細胞を認めた他,90%の変異型マウスに自発的な痙攣発作を認め,mTOR阻害剤のシロリムスで発作は減少した22).結節性硬化症でもシロリムスの誘導体エベロリムスによって腫瘍抑制効果と,てんかん発作の減少が得られ,国内でも保険適用されている.FCD II型のてんかん発作に対してもシロリムスを用いた分子標的治療の臨床試験が行われ,時間依存的にてんかん発作の減少傾向を認めたが,主要評価項目は惜しくも達成されなかった23)

mTOR病はmTOR機能亢進が基本的な病態であると上述した.しかし,それを覆すYale大学の論文が2025年の元日に公表された2)PIDD1CRADDは前頭優位の厚脳回の原因遺伝子である.著者らはPIDD1とMiller-Dieker症候群責任領域の17p13.3欠失の各脳オルガノイドが,滑脳症同様に厚い皮質を示し,mTOR経路の調節異常をきたし,脳選択的にmTOR複合体1を活性化させると,滑脳症オルガノイドでみられた異常が改善することを示した.すなわち,滑脳症にmTOR経路が関与していること,他のmTOR病と異なり活性亢進ではなく活性低下も皮質形成異常(厚脳回)の原因となることが示された.

 おわりに

今でも神経細胞移動異常症の新しい原因遺伝子が同定され,これまで想定されていなかった多様な分子病態が明らかにされてきている.分子病態に応じた臨床所見や画像所見の特徴を知ることで,効率よく遺伝学的な原因にたどり着くことが可能になる.今後は人工知能を用いた深層学習により,画像から原因遺伝子の推定が可能になることが予測される.

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