Journal of Japanese Society of Pediatric Radiology
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Special Feature: The 61st Annual Meeting of the Japanese Society of Pediatric Radiology: Collaboration and Progress
Evaluation of tissue blood flow using a non-contact blood flow imaging system
Chikako NakataTakashi FumitaKeita KagayaKatsunori Kouchi
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2026 Volume 42 Issue 1 Pages 61-67

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要旨

血流を評価する装置として非接触性に微小循環血流動態をリアルタイムに画像化することが可能であるレーザースペックルを応用した医療機器が開発され,様々な臨床応用がなされている.今回我々は,処置や手術操作が組織血流に与える影響をレーザースペックル血流画像化装置を用いて評価した.①移動性精巣および挙上性精巣の精巣固定術における精索周囲組織の剥離操作前後での精巣血流は,剥離操作がより多く必要な挙上性精巣で血流低下率が高かった.②巨大臍帯ヘルニアの脱出肝臓を腹腔内へ還納する際,肝臓表面の肉眼的色調不良があっても血流は保たれていることがわかり,血流変化を評価しながら還納を進めることができた.処置や手術後の組織血流の低下は,その後の経過を左右する要因の一つである.レーザースペックル血流画像化装置は,非接触性に微小循環血流動態をリアルタイムで画像化することが可能であるため処置や手術介入の程度の指標となりえる.

Abstract

A medical device utilizing laser speckle imaging has been developed to evaluate blood flow. This non-contact method enables real-time visualization of microcirculatory blood flow dynamics and has many clinical applications. We evaluated the effects of procedures and surgical manipulation on tissue blood flow using a laser speckle blood flow imaging system. (1) In orchidopexy procedures on mobile and retractile testicles, testicular blood flow decreased more significantly after dissection of perivascular tissues in retractile testicles, which required more extensive dissection. (2) During reduction of a prolapsed liver back into the abdominal cavity in a giant umbilical hernia, blood flow was maintained even when grossly abnormal coloration was observed on the liver surface, allowing the reduction to proceed while monitoring blood flow changes. Decreased tissue blood flow during procedures or after surgery can influence outcomes. A laser speckle blood flow imaging device can visualize microcirculatory blood flow dynamics non-invasively in real time, as a potential indicator for the required extent of procedural or surgical intervention.

 はじめに

近年,血流を評価する装置としてレーザースペックルを応用した医療機器が開発され,様々な臨床応用がなされている.レーザースペックル血流画像化装置は,非接触性に微小循環血流動態をリアルタイムに画像化することが可能であるため,組織の血流動態の傾向を捉えるのに適している.

 目的

処置や手術操作が組織血流に与える影響を,レーザースペックル血流画像化装置を用いて評価した.

 測定方法

ゼロシーセブン株式会社のレーザースペックル血流画像化装置MoorFLPI-2,O2 Flo-2®を用いた(Fig. 1).血流を測定したい組織の直上約30 cmのところにカメラをセットすると,パソコン上にリアルタイムに血流をみることができる(Fig. 2).

Fig. 1  ゼロシーセブン株式会社のレーザースペックル血流画像化装置MoorFLPI-2,O2 Flo-2®
Fig. 2  実際の測定風景

以下2つの手術や処置における組織血流変化を評価した.

1.移動性精巣および挙上精巣に対する精巣固定術における精索周囲組織の剥離操作前後の精巣の血流変化

2.巨大臍帯ヘルニアの脱出肝還納の際の肝臓表面の血流変化

 症例

1. 精巣位置異常

精巣は腹腔内の性腺隆起に発生し,胎生7か月以降に陰嚢底部まで下降する1).精巣の位置により停留性精巣,挙上性精巣,移動性精巣に分類される.精索の緊張は移動性精巣,挙上性精巣,停留性精巣の順に強くなる.精巣固定術では,精巣固定後の精索の緊張を解除するために精索周囲組織の剥離操作を行う必要があり2),剥離操作は停留性精巣が最も多く,移動性精巣は少ない.手術による精巣血流の変化をみるため,精巣固定術における精索周囲組織の剥離操作前後での精巣の血流を評価した.

【症例1】

3歳,男児.右移動性精巣に対して精巣固定術を施行した.精索周囲組織の剥離操作前後で精巣表面のROIを計測すると,血流は10%減少していた(Fig. 3, Movie 1).

Fig. 3  症例1:右移動性精巣 精索周囲組織剥離前(上段)と剥離後(下段)の血流
Movie 1 症例1:右移動性精巣 精索周囲組織剥離前(上段)と剥離後(下段)の血流 Download Video

【症例2】

5歳,男児.左挙上精巣に対して精巣固定術を行った.精索周囲組織の剥離操作前後で,精巣表面のROIを計測すると,血流は20%減少していた(Fig. 4, Movie 2).

Fig. 4  症例2:左挙上精巣 精索周囲組織剥離前(上段)と剥離後(下段)の血流
Movie 2 症例2:左挙上精巣 精索周囲組織剥離前(上段)と剥離後(下段)の血流 Download Video

2. 巨大臍帯ヘルニア

臍帯ヘルニアは,胎生初期の腹壁形成障害により発生するとされ,腹膜,Wharton’s jelly,羊膜によりヘルニア嚢が形成される先天性疾患で,発生率は4000~5000人に1人である3).巨大臍帯ヘルニアは,ヘルニア門が5 cm以上の肝臓脱出を伴う臍帯ヘルニアとされる4).臍帯ヘルニアでは,脱出臓器の腹腔内還納と腹壁閉鎖が目標であり,一期的腹壁閉鎖が困難な巨大臍帯ヘルニアでは,人工布(ゴアテックスシート,サイラスティックシート,wound retractorなど)を用いてサイロを形成し,徐々に縫縮して脱出臓器を腹腔内に還納する.巨大臍帯ヘルニアでは,腹腔外脱出臓器の容積と腹腔内の容積との不均衡がしばしば問題となり,脱出肝還納時に肝臓の血流障害をきたすことがある4).本機器を用いて脱出肝の血流評価を行いながら,脱出肝を腹腔内へ還納した.

【症例3】

胎児期より臍帯ヘルニアの指摘あった女児.在胎36週1日,2400 gで出生した.

出生時身体所見:ヘルニア門は5 × 5 cm,脱出臓器は肝臓のみだが肝臓のほぼ全部が脱出していた(Fig. 5).

Fig. 5  症例3:巨大臍帯ヘルニア

合併症:C型食道閉鎖

経過(Fig. 6A, B):日齢0で2枚のサイラスティックシートによりサイロを形成した(Fig. 7).日齢1,2で脱出肝を腹腔内に押し込みサイロを縫縮した.日齢3の朝回診時に脱出肝の肉眼的色調不良と肝逸脱酵素上昇を認めたため,肝臓の還納は行わず肝逸脱酵素の正常化を待つと伴に,肝血流を評価しながら肝臓を還納する方針とした.還納中止後,肝逸脱酵素は速やかに低下した.日齢13で脱出肝の肉眼的色調不良は残存していたが表面に血流が認められたため(Fig. 8A),肝臓の血流をリアルタイムで評価しながら還納を再開した.しかし,還納後1分後には肝臓表面に血流低下を認め10分後にも一部血流低下が残存していたためこの日の処置はこれで終了した(Fig. 8B).還納8時間後の血液検査では肝逸脱酵素上昇は認めなかった.日齢14でも肉眼的な色調不良は変わらず,斑状の血流低下も認めたが(Fig. 9A),肝逸脱酵素の上昇は軽度であったため肝機能障害はないと考え,さらに還納を行った.還納後も肝表面の血流に変化はなかった(Fig. 9B).翌日の血液検査でも肝逸脱酵素上昇は認めなかった.日齢19では脱出肝の肉眼的色調不良は変わらず(Fig. 10),斑状の血流低下も残存していたため,血流に変化のない程度の還納を行った.この時点でサイロ周囲皮膚にダメージがあり,腹壁の縫合閉鎖は困難でありあると判断しパッチ閉鎖の方針とた.日齢21に,メッシュを用いた腹壁閉鎖術を行った(Fig. 11).術後,一過性に軽度の肝逸脱酵素軽度上昇を認めたが,その後低下して正常値となった.

Fig. 6  症例3:臨床経過

A)日齢0~13

B)日齢13~32

Fig. 7  症例3:サイラスティックシートによるサイロ形成
Fig. 8  症例3:日齢13

A)脱出肝還納再開前:肉眼的には色調不良だが,血流は保たれていた

B)脱出肝還納再開後:1分後に肝臓表面の血流は低下,10分後も一部血流の低下あり

Fig. 9  症例3:日齢14

A)還納前:肉眼的色調不良は残存し,血流も斑状に低下していた

B)還納後:血流に変化はなく,肝逸脱酵素上昇もなかった

Fig. 10  症例3:日齢19

脱出肝の肉眼的色調不良は残存していたため、血流に変化のない程度に還納を行った

Fig. 11  症例3:日齢21 メッシュを用いた腹壁閉鎖術

 考察

近年,血流を評価する装置としてレーザースペックルを応用した医療機器が開発され,眼科領域,脳外科領域,歯科領域など様々な臨床応用がなされている6).レーザースペックル血流画像化装置(以下,本機器)は,非接触性に微小循環血流動態をリアルタイムに画像化することが可能であるため,組織の血流動態の傾向を捉えるのに適している.組織表面にレーザーを照射すると,赤血球に反応して散乱し,散乱した光同士が干渉して斑点模様となる(スペックルパターン).スペックルは赤血球の動きにより刻々と変化し,その変化から組織血流をリアルタイムに画像化できる.今回,処置や手術操作が組織血流に与える影響を,レーザースペックル血流画像化装置を用いて評価した.

停留精巣診療ガイドライン7)には,①停留精巣:精巣の存在は確認されるが,陰嚢内に精巣が下降しておらず,胎生期からの精巣下降経路上に留まるもの②挙上性精巣:出生時には 陰嚢内に認められた精巣が,後天的に挙上してしまうもの③移動性精巣:陰嚢内に下降している精巣が刺激や環境によって,陰嚢内から鼠径部に移動するものと定義されている.精巣固定術では,精巣下降の妨げとなる精巣動静脈や精管の周囲に付着した組織を剥離する必要があり2),この操作が術後の精巣血流に影響を及ぼすと考えられる.術後の精巣発育を考慮すると,精巣血流を最大限温存することが重要である.自験例では,精巣固定術における精索周囲組織の剥離操作により,精巣表面の血流低下を認めた.挙上精巣では,移動性精巣に比べて精索の緊張が強く剥離操作が多いため,それに伴い術後の精巣血流はより減少したと考えられた.片側停留精巣患児において精巣固定術後に,レーザードップラーで精巣血流を検討したところ,患側精巣で有意な低下が認められたとの報告がある8).また,高位の腹腔内精巣に対する精巣血管を離断するFowler-Stephens手術において,術後の精巣萎縮率は一期的手術では14%,二期的手術では9%で,二期的手術が推奨されており7),未熟な精巣に対する血流遮断は術後の予後に影響を与える可能性を示唆する.さらに,精巣血管切断による精巣の影響を検討した動物実験では,切断側の精巣には精巣細胞の成熟障害がおこることが報告されている10).以上のことから,精巣血流は精巣の発育に重要であり,手術時の剥離操作は出来る限り最少にとどめることが必須であると考えられる.

臍帯ヘルニアは胎生初期の腹壁形成不全によって起こると考えられており,腹腔外への脱出臓器が大量になるほど腹腔の発育がすすまず腹腔内容積が小さくなる傾向にある4).治療は,脱出臓器を腹腔内に還納して腹壁閉鎖を行うことであり,手術法は,脱出臓器の量により一期的閉鎖術,多期的閉鎖術,遅延的閉鎖術の3つの戦略に分けられる5).肝臓が大きく脱出した巨大臍帯ヘルニアでは,一期的閉鎖が困難であることが多いため,人工布(ゴアテックスシート,サイラスティックシート,wound retractorなど)を用いてサイロを形成し,徐々に縫縮して脱出臓器を腹腔内に還納する.脱出した肝臓を還納する操作により,これが肝静脈や下大静脈の圧迫や屈曲の原因となり,肝機能障害をきたすことがあり4),巨大臍帯ヘルニアにおける脱出肝還納の際には肝臓の血流障害に注意する必要がある.症例3では脱出肝還納の際に,肝臓表面の著明な肉眼的色調不良を認めたが,本機器を用いて肝血流の評価を行うと,血流は保たれていることがわかった.肉眼的に色調不良であっても,血液検査と血流評価を併用することで,肝血流を客観的に評価しながら,還納をすすめることができた.本症例では,ほぼ全てが脱出していた肝臓の多くは肝機能障害をきたすことなく腹腔内へ還納され,メッシュによる腹壁閉鎖術を行うに至った.

処置や手術後の組織血流の低下は,その後の経過を左右する要因の一つである.レーザースペックル血流画像化装置は,非接触性に微小循環血流動態をリアルタイムで画像化することが可能であるため,処置や術中の臓器血流の評価の指標となり得る.

文献
 
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