The Journal of the Japan Society for Respiratory Care and Rehabilitation
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International Symposium
Does pulmonary rehabilitation reduce the frequency of hospitalization with exacerbation? ―Effects of infrequent outpatient intervention―
Yuko SanoRokuro MatsuokaYoko SatoSinobu KimuraSyoji MiharaHajime Kurosawa
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2019 Volume 28 Issue 2 Pages 230-234

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要旨

COPDではくり返す増悪は生存率を低下させると報告されており,また身体活動性(daily physical activity; DPA)は生命予後との関係が強い.呼吸リハビリテーションによってCOPDの入院回数・日数を減少させることはエビデンスレベルAであり,DPAを維持・改善し,増悪をくり返さない生活を継続することはCOPD在宅患者の重要な目標である.筆者らはリハビリテーション施設を持たないクリニックにおいて呼吸リハビリテーション外来を実施している.歩行スペースや運動機器もなく,セルフマネジメント教育を重視した外来である.本シンポジウムでは我々が実践している低頻度介入の外来での取り組みについて,DPAとCAT(COPD Assessment Test)との関連も含めて報告する.

はじめに

病気の治療に加えて病気にかからない悪化させない予防が重要であり,近年,呼吸リハビリテーションは機能の回復・維持にとどまらず,予防としてのリハビリテーション医療,行動変容や健康増進への介入など,新たな概念が導入されている1.また,慢性閉塞性肺疾患(Chronic obstructive pulmonary disease; COPD)においては,入院回数・日数を減少させることや2,身体活動性(Daily physical activity; DPA)が重要な生命予後規定因子であることなどが報告されている3.DPAを維持・改善し,増悪入院をしない,くり返さない生活を継続することは,COPD在宅患者の生命予後にも影響を与える重要な目標と言える.しかしながら呼吸リハビリテーションが開始されるタイミングは,慢性呼吸不全患者が急性増悪入院時にベッドサイドより早期介入するケースや,在宅酸素療法導入時,または周術期などがきっかけになっている.呼吸リハビリテーションの開始は悪くなってからではなく,増悪をくり返さないように薬物療法と併せて速やかに開始するべきと考える.

今回,リハビリテーション施設を持たないクリニックにおける低頻度介入のリハビリテーション外来において,介入によるDPAの変化がCATの変化も伴うか,その関連について検証したので報告する.

低頻度介入の外来呼吸リハビリテーション

【対象と方法】

筆者らは入院施設を持たない呼吸器クリニックにおいて,呼吸リハビリテーション専門外来を2012年4月より開設し,週1回半日,完全予約制で実施している.今回の解析の対象は,2012年12月から2017年3月まで大きな治療変更なく1年以上,本外来に通院し,身体活動の記録が継続できた安定期COPD 28名(年齢73.5±6.6歳,男性,StagI;6名,II;17名,III;3名,IV;2名,身長165.8±5.9 cm,体重61.6±7.7 kg,BMI 22.4±2.8,%FEV1 66.6±20.8;平均±SD)である(表1).

表1 患者背景
対象数(男性/女性)28(28/0)
COPD Stage(I/II/III/IV)6/17/3/2
年齢(歳)73.5±6.6
身長(cm)165.8±5.9
体重(kg)61.6±7.7
BMI(Kg/m222.4±2.8
FEV1%(%)54.5±13.9
%FEV1(%)66.6±20.8
%VC(%)93.3±12.2

平均±SD

当呼吸器クリニックでは,広いリハビリテーション室やトレーニング機器はなく,歩行状態をみる廊下のスペースもない.ベッドひとつで行っている(図1).チームメンバーは,医師1名と看護師2名,非常勤臨床検査技師1名,非常勤理学療法士1名の少人数の編成である.

図1

呼吸リハビリテーション施設を持たないクリニックにおける外来呼吸リハビリテーション

医師の処方のもと初回の導入は1時間行い,2回目以降は30~40分間実施している.次回受診までのインターバルは,患者の病態,希望や予約状況などにより2週間から3ヶ月程度の間隔で行い,少しずつインターバルを延長し,最長で半年後である.最終ゴールは卒業とし,自分の病態を理解して増悪入院せず活動的に過ごし,我々の定期介入がなくてもセルフマネジメントが可能と判断され,患者自身および家族が納得した上で卒業となる(図2).

図2

外来呼吸リハビリテーションの流れ

主な対象疾患はCOPD(ACO(asthma and COPD overlap;喘息COPDオーバーラップ)を含む)であるが,その他にも気管支喘息,間質性肺炎,特発性肺線維症,CPFE(Combined pulmonary fibrosis and emphysema;気腫合併肺線維症),気管支拡張症など多岐に渡り,在宅酸素療法患者も含まれる.

プログラムの内容は,息切れなどの症状軽減や呼吸同調歩行,自宅で行うストレッチ,日常生活活動(Activities of Daily living; ADL)の工夫などを直接指導するものである.息切れや低酸素血症を予防し,安全に歩くためには呼吸法の習得は必須であり,特にCOPDでは口すぼめ呼吸を安静時に練習し,次に歩行時に行い,呼吸と歩行のリズムを合わせる呼吸同調歩行の習得を目指す.

身体活動性を高める最も身近で簡単な運動は歩行である.日常的な歩行は医療スタッフの非監視下で行われることが必然のため,教育的介入として出版した教材や療養日誌を用いながらセルフマネジメント教育を重視する内容としている.患者に歩数計を装着してもらい,療養日誌に運動内容や歩数,その日の息切れの状態などを記録するように指導している(図3).最初から何歩歩く,何分歩くなどの目標を設定せず,まずは患者が1日にどれぐらい歩いているのか現状を把握することから始め,その後,達成可能な具体的な目標を患者と一緒に設定する.

図3

身体活動の記録

CAT(COPD assessment Test)は外来受診時,患者自身が記録し,歩数計は患者が扱いやすいものを個人で調達してもらったものを使用し,起床時から就寝時まで入浴以外装着してもらうように指導した.使用する記録用紙は「肺の健康手帳」4「肺の健康ダイアイリー」5「歩数記録帳」6もしくは自己作成のものとし,開始時(1 W),3ヶ月後(3 M),1年後(1 Y)のDPA(steps/day)の1週間の平均,及び同時期のCATを後方視的に検討した.

【結果】

呼吸リハビリテーション外来開始時よりDPA(1 W; 4867±2467 steps/day,3 M; 6265±2928 steps/day(p<0.01)),CAT(1 W; 10.7±8.1,3 M; 8.7±7.7(p<0.05))ともに3ヶ月後は優位に改善を認めたが,1年後はDPA(1 Y; 5860±3397 steps/day(p<0.05))のみ優位に増加した(図4).

図4

DPAとCATの経過 DPA and CAT time course

また69歳以下(n=7),70代(n=16),80歳以上(n=5)の年代別にみると,すべての年代層でDPAは開始時より3ヶ月後,1年後は増加傾向であった.70代のみ,DPA(1 W; 4816±2493,3 M; 6333±3050 steps/day(p<0.05)),CAT(1 W; 11.5±8.3,3 M; 8.6±7.2(p<0.05))ともに優位に改善を認めた(図5).

図5

年代別DPAとCATの経過 DPA and CAT time course by age groups

考察とまとめ

歩数計を利用したリアルタイムなフィードバックの有用性が報告されているが7,セルフモニタリングを継続することは,モチベーションの向上やプログラムの継続に有効である.本研究においても,リハビリテーション施設を持たないクリニックにおける低頻度介入の呼吸リハビリテーション外来において,歩数を測定し記録をすることはDPAを維持,向上させることは示唆された.しかしながら,QOLは短期的には改善を認めたが,長期的には今後のさらなる検証が必要と思われる.

当呼吸リハビリテーション外来の特徴は,増悪してからの介入ではなく,増悪をしないように安定期から開始し,セルフマネジメント教育を中心に,StageIでも介入している点である.また,低頻度介入ではあるが長期にわたって継続していることである.さらに,患者の家族や,訪問看護,リハビリテーションサービスを受けている患者の場合は,できるだけ担当者の同伴をお願いしている.家族や介護者によるサポートの有無は患者のADL自立度やQOLに影響する8ことが報告されているが,患者の病態や身体活動,ADL能力,サポートや声かけの方法などをキーパーソンとなる家族に理解して頂くことは重要である.さらに,患者の生活環境を熟知している在宅医療スタッフと直接話をしながら具体策を検討することは,地域連携の第一歩と考える.

施設で可能な形態でのチームを編成し,できることから開始することが重要である.しかしながら,リハビリテーション施設基準に満たないクリニックにおいては理学療法の診療報酬は請求できない.筆者らの経験から小規模施設における増悪を防ぐ予防的介入は効果的かつ重要と考えるが,施設基準が大きなハードルとなっているのは否めない.コンディショニングやDPA,セルフマネジメント教育を実施するのに必ずしも広いスペースは必要ではない.

呼吸リハビリテーションは患者の生活スタイルを改善するプロセス(行動変容)である.予防的介入こそ重要であり,多様化した形態でのリハビリテーション医療の提供が望まれる.

著者のCOI(conflicts of interest)開示

本論文発表内容に関して特に申告すべきものはない.

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