The Journal of the Japan Society for Respiratory Care and Rehabilitation
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Review Article
The six-minute walk test
Masahiro SatakeTakanobu ShioyaHitomi TakahashiKeiyu Sugawara
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2019 Volume 28 Issue 2 Pages 286-290

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要旨

6分間歩行試験(6MWT)は,運動耐容能を評価するフィールド歩行テストのひとつであり,呼吸運動療法には必須の評価項目である.6MWTは2002年ATSからガイドラインが発表され方法の統一が提案された.2014年にはERS/ATSからシステマティック・レビューとテクニカル・スタンダードが発表された.

6MWTの一次評価項目は6分間歩行距離(6MWD)である.6MWDの予測式はEnrightらによって報告されている.日本人の予測式は間もなく本学会から報告される予定である.

6MWTは,「6分間にできるだけ長い距離を歩くこと」と定義されている.我々は6MWTの運動負荷は定常負荷であること,また携帯型呼気ガス分析装置等を用いて,6MWTの負荷強度は嫌気性代謝閾値以上であることを示唆した.

近年,6MWTは多くの呼吸器および循環器疾患の運動耐容能の評価に必要な検査となってきている.6MWTについて,その生理学意義や特性を理解し,さらにどの施設においても標準的な方法で実施できることが大切である.

6分間歩行試験(6-min walk test; 6MWT)は運動耐容能を評価するフィールド歩行テスト(field walking test)のひとつであり,他には漸増シャトル歩行試験(incremental shuttle walking test; ISWT)があげられる.運動耐容能を全身的に様々な機器を用いて評価するには,トレッドミルや自転車エルゴメータによる心肺運動負荷試験(cardiopulmonary exercise testing; CPX)が行われるが,このフィールド歩行テストは,簡便に行える運動負荷試験として,「呼吸リハビリテーションマニュアル―運動療法―第2版」1では必須の評価項目となっている.

6分間歩行試験の歴史

フィールドテストは,1963年にBalke2が一定時間内の歩行距離を測定することで運動耐容能を評価する方法を発表したことが始まりとされる.その後12分間走(Cooper KH. 1968年)3や12分間歩行(McGavin CR et al. 1976年)4が発表され,1982年に6MWT(Butland RJ et al.)5が報告された.最近では2分間歩行試験(Leung AS et al. 2006年)6の報告もある.

6分間歩行試験の方法

2002年,米国胸部医学会(American Thoracic Society; ATS)がステートメントとして6MWTのガイドライン7を発表した.このガイドラインでは,今まで曖昧であった6MWT方法を統一することが提案された.さらに2014年には,ATSと欧州呼吸器学会(European Respiratory Society; ERS)の合同で,フィールド歩行テストのシステマティック・レビュー8とテクニカル・スタンダード9が示されている.

2002年のガイドラインでは,歩行路は 30 mの平坦な直線コースを折り返して使用すること,対象者には「6分間にできるだけ長い距離を歩く」ように説明し,テスト中は6分間に何度休憩してもよいことを伝えること,検査者は付き添って歩かないこと,声掛けは1分ごとに決まった内容を伝えること,などが提案されている.

6MWTでは,酸素療法や歩行補助具は普段通り使用しても構わない.またテストの前後には心拍数(heart rate; HR),呼吸困難,疲労感および経皮的動脈血酸素飽和度(saturation of percutaneous oxygen; SpO2)を測定することなどが提案されている.

6分間歩行試験の評価項目

6MWTの一次評価項目は歩行距離(6分間歩行距離:6-min walk distance; 6MWD)である.さらに,6MWDの予測値に対する割合も用いることができる.

その他,HR,呼吸困難,疲労感,SpO2の評価や,最近では6MWDに体重をかけた6分間歩行の仕事量(6-minute walk work,6MWD×体重)10も評価項目にあげられている.

6MWDの予測式は数多く発表されている.中でもEnrightら11やTroostersら12の式は著名であり,いずれも性別,身長,体重,年齢を用いて,予測値を求めている.しかし,これらは海外の研究報告である.日本人を対象とした予測値は,文部科学省が65~79歳を対象に毎年,全国で行っている体力・運動能力調査報告13で知ることができる(表1).この全国調査は対象年齢が限られていることと,“普段の歩く速さ”で6分間を歩いていることに注意しなければいけない.日本人を対象とした予測式については,日本呼吸ケア・リハビリテーション学会が平成24年から取り組んでおり,近日中に報告される予定である.

表1 平成27年度文部科学省新体力テスト13における6分間歩行の歩行距離
年齢男性女性
65-69歳620.19±91.73 m(n=829)590.32±72.00 m(n=833)
70-74歳605.11±86.74 m(n=846)565.59±75.21 m(n=818)
75-79歳579.19±86.06 m(n=840)530.97±81.83 m(n=807)

6分間歩行試験の説明方法

2002年のATSガイドライン7では,6MWTの歩き方として「as “far” as they could」という説明を推奨している.しかし,2013年のWeirら14は,間質性肺疾患患者ら24名に「as “fast” as they could」と説明したところ,平均 52.7 m延長したと報告している.日本語においても,「できるだけ長い距離を歩く」というよりも「できるだけ速く歩く」と説明した方が,対象者にとってはわかりやすく頑張れる可能性を示唆している.いずれにしても,6MWTの説明をする際には,被験者によって,または試験日によって言葉が変わると試験結果にも影響する恐れがあるため,常に同じ言葉を使って説明するべきである.

6分間歩行試験の臨床的な意義

ATS/ERSのシステマティック・レビュー8では,6MWDの臨床的に意義のある最小変化量(minimal clinically important difference; MCID)はCOPD患者において 25~33 m(中央値 30 m)としている.また,6MWDと身体活動とは中等度から強い相関係数(0.38~0.85)があり,低い6MWD(300~450 m)と高い死亡率とは強い相関関係があるとしている.また 300 m未満では予後が悪いといわれている.

6MWTでは,体格も疾患も異なる被験者の6MWDを比較し,意味づけすることは難しい.臨床的には,同一被験者において歩行距離の変化を検討することが一般的となっている.

6MWTに関係した合併症の報告は極めてまれ8である.6MWTでは多くの患者で酸素飽和度の低下が起きるが,重度な低酸素症状が起こる前にテストは終了するため,有害事象の発生はほとんどないといわれている.

6MWDを運動処方に用いる方法として,まず6MWDは6分間の最大歩行距離であると考えることができる.これをもとにすると30分間の最大歩行距離は,単純に(6MWD×5)となる.例えば,1日30分間歩くという運動課題が出された場合,60%高強度負荷での歩行距離は,“(6MWD×5)×60%”であり,40%低強度負荷での歩行距離は,“(6MWD×5)×40%”と計算することができる.

6分間歩行試験の運動強度について

ATS/ERSのシステマティック・レビュー8では,中等度から重度の肺疾患患者に対して,漸増自転車エルゴメータ試験(incremental cycle ergometer test; ICET)と6MWTの呼気ガス分析結果を比較した8つの研究のうち7つで,最高酸素摂取量(oxygen uptake; V ˙ O2)と最高HRに差がなかったと報告8している.そのうちのひとつに,我々の研究15が取り上げられている.

我々は,中等度のCOPD患者12名を対象に,携帯型呼気ガス分析装置(MetaMax3B,Cortex社,ドイツ)を用いて6MWT,ISWT,ICETをランダムに実施した.その結果,最高 V ˙ O2,最高二酸化炭素排出量(carbon dioxide output; V ˙ CO2),最高分時換気量(respiratory minute volume; V ˙ E),最高HR,呼吸困難の最大値で差を認めなかった.しかし,SpO2は,6MWTとISWTにおいてICETよりも有意に低値を示したことを報告した.

6分間歩行試験の運動負荷の方法と呼気ガスの変化

我々は,6MWTの運動負荷のかかり方を知るために,中等度のCOPD患者を対象に6MWTの歩行速度を1分ごとに調べた16.その結果,1分ごとの歩行速度には有意な違いがみられなかった.このことから6MWTでは一定の歩行速度で歩き続けていることが示唆された.つまり,6MWTに慣れた中等度のCOPD患者は,6分間,一定の速度で歩いていると考えられ,6MWTは定常負荷であることが示唆された.

我々は,中等度のCOPD患者を対象に6MWT中の呼気ガスの変化を,携帯型呼気ガス分析装置を用いて測定した17.その結果, V ˙ O2 V ˙ CO2 V ˙ Eともに,テスト開始から1分までは「速い増加」,2分までは「やや速い増加」,その後終了時まで「緩やかな増加」を続けた.6MWT終了後は,いずれの測定値も急激に減少し,終了後4分で,安静時の値と差がなくなった(図1).6MWTは一定の速度で歩行しているため定常負荷であることが考えられるが,Wassermanら18は定常負荷における V ˙ O2の変化について,低い負荷強度であれば数分で定常状態を示し,高い負荷強度であれば,緩やかな増加を続けていくことを示している.また,定常負荷の場合,3分目と6分目の V ˙ O2を比較して,6分目の V ˙ O2が高い場合,負荷強度は嫌気性代謝閾値(anaerobic threshold; AT)以上であろうと述べている18.したがって,6MWTの V ˙ O2は緩やかな増加を示していたためAT以上の高い負荷強度であることが示唆された.

図1

6MWTにおける呼気ガス値の経時的変化(n=12の平均値)17

V ˙ E(respiratory minute volume:分時換気量), V ˙ O2(oxygen uptake:酸素摂取量), V ˙ CO2(carbon dioxide output:二酸化炭素排出量),P1~P5(6分間歩行試験終了後の時間経過を示す),min(minute:分)

また我々は,COPD患者の6MWTにおける換気効率を調べた19.その結果, V ˙ O2に対する換気効率( V ˙ E/ V ˙ O2)は6MWT開始約2分後に最小値を示し,その後やや増加傾向を示した.また V ˙ CO2に対する換気効率( V ˙ E/ V ˙ CO2)は約3分後まで減少した後,増加はせずにほぼ横ばい状態を示した(図2).漸増負荷試験における換気効率の変化について,COPD患者では呼吸の制限により代謝性アシドーシスに対する過換気ができないため, V ˙ E/ V ˙ CO2は増加しない20といわれている.6MWTは定常負荷であるため,この漸増負荷試験における換気効率の変化をそのまま当てはめることはできないが,結果をみると漸増負荷試験時の反応と同様に V ˙ E/ V ˙ CO2は低下した後,横ばいを示したことから,6MWTにおいても代謝性アシドーシスによる過換気(呼吸性代償点)には至っていないと思われた.

図2

6MWTにおける換気効率の経時的変化(n=23の平均値)

V ˙ E(respiratory minute volume:分時換気量), V ˙ O2(oxygen uptake:酸素摂取量), V ˙ CO2(carbon dioxide output:二酸化炭素排出量),min(minute:分)

6分間歩行試験における呼吸困難

COPD患者の労作時の呼吸困難の増加は,肺の動的過膨張が一因と考えられている.そこで我々は,COPD患者の6MWTで生じる呼吸困難について,呼気ガス測定に加えて6MWT中の最大吸気量(inspiratory capacity; IC)と呼吸困難を測定して検討した21.その結果,6MWTではICが有意に減少し,動的肺過膨張が示唆された.また,呼吸困難は有意に増加し,ICとは有意な負の相関関係を示した(図3)ことから,6MWTにおける呼吸困難の増加には,動的肺過膨張の関与が示唆された.

図3

6MWTにおける呼吸困難とICとの関係(p<0.01と有意な負の相関関係を示した)(n=23)

呼吸困難をBorg CR-10 scaleで表した.IC(inspiratory capacity:最大吸気量)(文献21より引用)

更に我々は,ICと一回換気量(tidal volume; VT)から予備吸気量(inspiratory reserve volume; IRV)を計算することで,6MWTにおける呼吸困難の質の変化について検討した21.O’Donnellら22はCOPD患者に漸増負荷試験を行い,IRVと呼吸困難との関係を調べ,IRVの減少は小さいにも関わらず呼吸困難は大きな値を示す屈曲点を見出し,その点を最小IRV(minimal IRV)と名付けた.そして,漸増負荷試験において,この最小IRVを境に,呼吸困難の質は「呼吸性努力感」から「呼吸運動出力と呼吸器系の動きのミスマッチ」へと変化したとした.我々も6MWTにおいて同様の分析をした結果,6MWT開始後2分目に屈曲点を見出し(図4),6MWT開始後早期は呼吸性努力感,2分以降は呼吸運動出力と呼吸器系の動きのミスマッチに起因すると考えた.

図4

6MWTにおける呼吸困難とIRVとの関係(矢印は屈曲点を示す.この屈曲点を境にして,呼吸困難の質が呼吸努力感から呼吸運動出力と呼吸器系の動きのミスマッチへと変化したと思われる.)(n=23の平均±SD)

呼吸困難をBorg CR-10 scaleで表した.IRV(inspiratory reserve volume:予備吸気量)(文献21より改変)

6MWTの前に短時間作用型β2刺激薬(short acting β2 agonist; SABA)を吸入することで,6MWT前の肺活量やICなどの肺機能が有意に増加し,6MWT中もその効果の継続が示され,6MWDも延長した.これらの結果からICの増加は動的肺過膨張を改善させ,呼吸困難を抑制することで6MWDが延長した可能性が示唆された23.このことからSABAの運動前の吸入は運動耐容能を改善させ,アシストユースとしての有用性が示唆された.

まとめ

近年,6MWTはCOPDのみならず,間質性肺疾患を始めとして多くの呼吸器および循環器疾患の運動耐容能の評価において必要な検査となってきている.こうした現状から,6MWTについて,その生理学意義や特性を理解し,さらにどの施設においても標準的な方法で実施できることが大切である.

著者のCOI(conflicts of interest)開示

本論文発表内容に関して特に申告すべきものはない.

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