The Journal of the Japan Society for Respiratory Care and Rehabilitation
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Utility of assessing the maximum and minimum physical activity per day in Chronic Obstructive Pulmonary Disease patients
Yasuhiro EndoSohei MakinoMakoto Fueki
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2020 Volume 28 Issue 3 Pages 434-439

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要旨

【目的】身体活動量の評価として用いられる歩数・歩行距離に関して,1日の最大値・最小値を評価することの有用性を明らかにするために,肺機能,運動耐容能,日常生活活動能力,Quality of life,うつ度との関連を検討した.

【方法】外来受診している慢性閉塞性肺疾患患者11名を対象とした.身体活動量と各項目間の相関をSpearmanの順位相関係数により分析した.

【結果】身体活動量の最大歩数を除く項目でSGRQのActivity scoreと有意な負の相関を認めた.また,歩数平均値・最大値ではFEV1.0と有意な正の相関を認めた.歩数最小値と歩行距離最小値ではSDSと有意な負の相関を認めた.歩行距離最大値では6MWDと有意な正の相関を認めた.

【考察】歩行距離最大値は運動耐容能と,歩数・歩行距離の最小値はQOL,うつ度と相関する点から,身体活動量の評価指標としては有用である可能性が考えられた.

緒言

慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease: COPD)は有害物質を長期に吸入暴露することによる気道閉塞により息切れ,呼吸困難感を訴える.また,呼吸障害の進行とともに日常生活活動(Activities of daily living: ADL)能力が低下する1とされ,呼吸不全に伴うADL制限には,単に自立度だけでなく,動作に伴う呼吸困難や疲労の程度,酸素吸入の必要性と量,動作の速度,呼吸数,酸素飽和度,心拍数などが影響を及ぼす.さらに活動性低下,廃用の進行,呼吸困難感増強という悪循環が形成されることも多く,この悪循環によりCOPD患者の多くは,抑うつ・不安感といった精神心理的症状を抱えている2.これらの問題を解消するために身体活動量を維持・改善することは大きな意味を持つ.身体活動量が高いほど再入院リスクが減少すること,予後に影響することが報告され3,益々その重要性の高さに注目が集まっている.しかし,患者の病院外での身体活動量を測定することにはいくつかの問題点がある.例を挙げると,活動レベルを考慮した測定ができているか,患者の測定継続に関するコンプライアンス,歩行以外の活動を測定しにくい,歩行測定時の評価項目の選定などが考えられる.

今回は,身体活動量の評価として用いられる歩数・歩行距離に関して,5日間のうちの最大値・最小値を評価することの有用性を明らかにすることを目的に,三軸加速度センサーを内蔵した活動量計を使用し,より正確に測定した日常生活内の歩数と歩行距離について,1週間の平均と1日の最大値・最小値を指標に,肺機能,運動耐容能,ADL能力,Quality of life(以下QOL),うつ度との関連を検討した.

対象と方法

対象は,医療法人一羊会上武呼吸器科内科病院に外来受診し,呼吸リハビリテーションを行っている軽症から重症COPD患者12名(男性10名,女性2名,平均年齢72.6±8.6歳)とした.GOLDの重症度分類4ではI期が4名,II期が5名,III期が3名であった.

評価項目は,年齢,身長,体重,身体活動量,呼吸機能検査,6分間歩行距離(以下6MWD),うつ度,ADL,QOLとした.研究プロトコールとしては,毎週火曜日に実施している外来リハビリテーションの際に,研究内容の説明と,身体活動量以外の項目を測定,調査し,身体活動量は,3軸加速度センサー活動量計(TANITA,カロリズムAM-120)を一週間装着してもらい,外来リハビリテーション実施とその前日を除く水曜日から日曜日までの5日間のデータを解析対象とした.装着は腰の高さで下衣のベルトまたは下衣へ直接とし,クリップにて固定した.入浴および就寝時以外は常時装着するよう指導した.測定したデータは,1日の歩数(歩),歩行距離(m)である.歩行距離は10m歩行テストを3回実施し,得られた歩幅の平均を活動量計に入力し歩数との積で算出した.3軸加速度センサー活動量計測定の実日数が5日間に満たない者は解析対象から除外した.呼吸機能検査は,American Thoracic Society and European Respiratory Society5,6のガイドラインに従って行った.6MWDは米国胸部学会の実施基準7に準じて6 minutes walking testを行い測定した.うつ度はSelf-rating Depression Scale(以下SDS)を用いて評価した.SDSはうつ度の評価であり,20項目の質問からなる自己記入式の質問紙である.各項目は1から4に段階付けされ,値が高いほどうつ度が高い8.ADLは呼吸器疾患特異的ADL評価とし,The Nagasaki University Respiratory ADL Questionnaire(以下NRADL)を用いた.QOLは呼吸器疾患の健康関連QOLを評価できるSt George’s Respiratory Questionnaire(以下SGRQ)を使用し評価した9.倫理的配慮として,ヘルシンキ宣言に沿って全対象者に研究内容を説明し同意書への署名をもって同意を得た.尚,本研究は医療法人一羊会上武呼吸器科内科病院の倫理委員会の承認を得ている(承認番号20140326).

統計学的検討では,身体活動量としての歩数,歩行距離に関して5日間のうちの最大値・最小値と5日間の平均値を採用し,歩数,歩行距離の各指標間および,その他の項目間との相関をSpearmanの順位相関係数により分析した.すべての統計解析にはEZR10を使用し,有意確率は5%とした.

結果

歩数・歩行距離の測定日数は呼吸リハビリテーション通院日を除くと,平均5.3±0.9日であった.5日間以上測定できなかった者が男性1名おり,残りの11名(男性9名,女性2名)を解析対象とした(表1).GOLDの重症度分類4ではI期が4名,II期が4名,III期が3名であった(表1).歩数,歩行距離およびその他の測定結果は表2に示した.尚,SDSにおいてカットオフポイント8である40点以上の者は7名であった.

表1 解析対象者の属性(n=11)
身長(cm)160.7±8.8
体重(kg)56.1±10.7
年齢(歳)71.5±8.1
男性(名)9
女性(名)2
GOLDの重症度分類
 I期(名)4
 II期(名)4
 III期(名)3

:平均±標準偏差

表2 各項目の測定結果(n=11)
中央値(四分位範囲)
FVC(L)3.6(2.7-3.8)
VC(L)2.9(2.6-3.2)
%VC(%)99.3(95.9-109.0)
FEV1.0(L)1.5(1.3-1.8)
FEV1.0%(%)43.1(34.0-65.7)
%FEV1.0(%)56.1(47.8-98.9)
6MWD(m)470.0(442.5-515.0)
NRADL(点)86.0(83.0-90.0)
SDS(点)44.0(34.5-47.5)
SGRQ:Symptoms(点)44.5(26.0-60.2)
SGRQ:Activity(点)35.5(18.5-49.0)
SGRQ:Impacts(点)19.1(11.1-24.2)
SGRQ:total score(点)27.1(17.0-37.1)
歩数平均値(歩)4,417.4(3,007.7-6,895.8)
歩数最大値(歩)7,433.0(4,596.0-8,915.5)
歩数最小値(歩)1,627.0(983.5-3,916.5)
歩行距離平均値(m)3,398.0(1,939.0-4,682.0)
歩行距離最大値(m)4,820.0(2,980.0-6,285.0)
歩行距離最小値(m)1,250.0(655.0-2,435.0)

6MWD: 6 minutes walking distance

NRADL: The Nagasaki University Respiratory ADL Questionnaire

SDS: Self-rating Depression Scale

SGRQ: St George’s Respiratory Questionnaire

身体活動量の測定では,5日間のうちの歩数・歩行距離ともに最大値は11名中5名が平日に示し,残りの6名は土曜・日曜日のいずれかに示した.歩数・歩行距離最小値は8名が平日に,3名が土曜・日曜日に示した.

統計学的解析の結果,歩数,歩行距離の各指標間では歩数最大値と歩数最小値,歩行距離最小値で有意な相関が認められなかった以外は全ての項目間で有意な正の相関が認められた(表3).

表3 歩数,歩行距離各指標の相関係数(n=11)
歩数最大値歩数最小値歩行距離平均値歩行距離最大値歩行距離最小値
歩数平均値0.900**0.750*0.973**0.882**0.752**
歩数最大値0.6000.873**0.964**0.597
歩数最小値0.700*0.618*0.980**
歩行距離平均値0.909**0.715*
歩行距離最大値0.633*

Spearmanの順位相関係数

*: p<0.05,**: p<0.01

また,歩数,歩行距離とその他の項目間の関連については,歩数平均値・最小値,歩行距離平均値・最大値・最小値とSGRQのActivity scoreがそれぞれ有意な負の相関を認めた.歩数最小値ではSGRQのTotal scoreと有意な負の相関を認めた.また,歩数平均値・最大値とFEV1.0が有意な正の相関を認めた.歩数最小値と歩行距離最小値ではSDSと有意な負の相関を認めた.歩行距離最大値では6MWDと有意な正の相関を認めた(表4).

表4 歩数,歩行距離とその他指標の相関係数(n=11)
歩数平均値歩数最大値歩数最小値歩行距離平均値歩行距離最大値歩行距離最小値
FEV1.0(L)0.645*0.627*
6MWD(m)0.618*
SDS(点)-0.665*-0.612*
SGRQ: Activity(点)-0.764**-0.755*-0.764**-0.627*-0.733*
SGRQ: total score(点)-0.618*

有意な関連を認めた項目のみを表記した.

Spearmanの順位相関係数

6MWD: 6 minutes walking distance

SDS: Self-rating Depression Scale

SGRQ: St George’s Respiratory Questionnaire

*: p<0.05,**: p<0.01

考察

COPD患者の多くは,病期の進行につれ息切れ,呼吸困難感が増大し,不安感や症状のために息切れが生じる動作を避けるようになり,ADL能力,活動性は徐々に低下する.心理的問題としてもうつ症状やQOL低下を呈す患者も多い11.COPD患者の身体活動量について,Pittaら12は,COPD増悪後,退院後1ヶ月で歩行時間の低下している人は翌年に増悪しやすいとしており,増悪の予防にも重要なポイントである.また,動的肺過膨張に伴う運動耐容能低下とともに,デコンディショニングの悪循環による身体活動量の低下が報告されている13.国内のCOPDガイドライン内でも身体活動量の維持,改善の重要性が述べられている14.その上,COPD患者において身体活動量の持つ意味は運動耐容能とは異なり,運動耐容能とは「どれだけ活動できるか」を意味し,身体活動量は「どれだけ活動しているか」を意味する.本研究では,身体活動量の指標として一日の歩数と歩行距離を測定し,これまで身体活動量の指標として用いられることが多かった複数日数間の平均値と,患者の日常生活内での最高・最低活動レベルを反映するであろう5日間のうちの最大・最小値を採用した.

QOLと身体活動量との関連では,歩数最大値以外の項目でSGRQのActivity scoreと相関を認めた.SGRQはCOPD患者の疾患特異的な健康関連QOLの評価尺度であり,呼吸器症状を含んだQOL低下を客観的に評価できる.特に,Activity scoreは呼吸困難によって制限される日常生活の活動レベルを点数化している.COPD患者では,安静時,動作時の息切れ,呼吸困難感によりQOLが低下し15,16,QOLの低下と身体活動量の低下は関連するとされている17.Activity scoreに表される項目の内容が身体活動に関するものであることが他のscoreよりも有意に相関が認められた理由であると考える.今回用いた指標の中で,歩数・歩行距離の平均値は,先行研究12,13,17で用いられている身体活動量の指標と同様のものであり,結果としても活動レベルを示すSGRQのActivity scoreと相関が認められたことは,先行研究17を支持するものである.また,歩数・歩行距離の最小値においてもSGRQのActivity scoreと相関を認めたことは,その患者の最低レベルの身体活動量はQOLが低い者ほど少ないことを示唆している可能性が考えられる.歩数・歩行距離の最小値に関しては,SDSで評価したうつ度も有意に相関を認めた.先行研究でもCOPD患者の身体活動量は重症度に関わらず,うつ度の影響を受けやすいとされている17.本研究では歩数・歩行距離の最小値と運動耐容能,歩数・歩行距離の平均値とSDSの間に有意な相関を認めなかった.ゆえに,今回の結果を踏まえると,うつ度の高い者は毎日の身体活動量が総じて低下しているというよりも,身体活動量を大きく制限する日があり,身体活動量の最低レベルが低いことを示唆している可能性が考えられる.

以上のように歩数平均値,歩行距離平均値とは違った観点から身体活動性を評価でき,日常生活上での1日単位の最低レベルの身体活動量を表すと考えられる点で歩数・歩行距離の最小値を評価する有用性はあると考える.また,歩数最小値は歩数最大値と有意な相関を認めず,COPD患者の身体活動量の最小値と最大値の関係にはばらつきがあり,それぞれを評価する必要性が示唆された.

また,1日の歩行距離最大値は6MWDおよびSGRQのActivity scoreと相関を認めた.6MWDは呼吸器疾患患者の運動耐容能の評価には妥当性があり,有用性も示されている18.運動耐容能の低下は呼吸機能検査値と相関し,薬物療法やリハビリテーションによる改善効果がみられ19,予後の規定因子でもある20.Steeleら21は,軽症から最重症のCOPD患者において,身体活動量は6MWD,COPD重症度,過去30日間の呼吸困難感と相関を示すとしている.また,Garcia-Rioら22は,中等症から重症COPD患者において,身体活動量と運動耐容能が相関を示したとしている.本研究では,一般的に身体活動量の指標として用いられる歩行距離平均値または歩数平均値と6MWDとは相関が認められず,歩行距離最大値のみ有意な相関を認めた.歩行距離最大値は1日の中でどれだけ歩行できるか(活動できるか)といった最大能力に近いものを示すと考える.つまり,6MWDで示される単位時間内でどれだけ歩けるかといった結果と同じ要素を含んでおり,結果,相関が認められたものと考える.COPD患者の場合は,運動耐容能に関わらず,呼吸困難感や精神的不安が身体活動量に影響するために6MWDと歩行距離平均値には直接的に有意な相関が認められなかったと考える.SGRQのActivity scoreと歩行距離最大値が有意な負の相関を認めたことからも5日間のうちの歩行距離最大値はQOLが高い者ほど大きくなることが示唆された.これらの結果から,歩行距離平均値と最大値は異なる要素を含んだ身体活動量の指標であると考えられる.しかし,これまでCOPD患者の身体活動量に関しては平均値のみを指標としており,最大能力に近いものとして把握することは少なかった.気候や呼吸器症状,全身倦怠感,精神的モチベーションなどの面で日内での症状や身体活動量が変化することが多い23COPD患者では,週の身体活動量平均値に加え,1日の身体活動量の最大値を評価することも有用な可能性がある.身体活動量を増大させるためには家庭内の役割や運動習慣を有することが重要であり,その継続時間・距離には運動耐容能が影響すると考える.呼吸理学療法で6MWDの改善とともに日常生活内の歩数増大もみられるとされており24,リハビリテーション遂行の上では運動耐容能の向上は重要な目標となる.この点では,在宅で生活しているCOPD患者の身体活動量の評価やプログラムの負荷設定として,活動量計を用いて測定した日内の歩行距離を指標にすることは有用であると考える.加えて,その最大値は“日常生活内での運動耐容能”を推定する指標として有用な可能性がある.また,行動変容のためには,患者自身が日常生活内でどこまで活動ができるのかを把握し,医療者の指導を含めて,ペーシングを行うことが重要である.今回,6MWDに対して歩行距離最大値では有意な相関を認めたにも関わらず,歩数最大値では認めなかった理由としては,歩行距離最大値と歩数最大値の相関係数は高く,対象者数の少なさと3軸加速度センサー活動量計で算出された歩数と歩行距離の誤差が考えられる.対象者数の増加と日常生活内で行う安静時歩行時の歩幅を考慮した評価が必要である.

呼吸機能と身体活動量の関連について,呼吸機能低下に伴い身体活動量も低下するとの報告25があるのに対し,本研究では歩数平均値・最大値がFEV1.0と相関を認めたのみで,GOLDの重症度分類に用いられる%FEV1.0やCOPDの診断基準となるFEV1.0%とは有意な関連を認めなかった.ゆえに,いわゆる身体活動量や日常生活内での身体活動量の最大値・最小値には気流制限は必ずしも反映されないことが示唆された.本研究ではMRCなどの呼吸困難感の評価を行なっていないが,呼吸機能と自覚症状に乖離がある対象者が多かった可能性も考えられる.身体活動量はQOLや呼吸困難感などの自覚症状の強度などにより変化するため,直接的には呼吸機能の影響を受けない場合も多いと考える.

また,今回全対象者同じ曜日の設定で身体活動量を測定したが,最大値・最小値を示す曜日について,平日・休日の明らかな特徴はみられなかった.就業や家庭内での役割の有無でも平日と休日の生活が変化すると考えられるが,今回の調査項目には含まれておらず今後の課題である.

本研究の課題として,COPD患者に対する身体活動量測定の妥当性,信頼性の問題が挙げられる.COPD患者の場合,健常者に比べ安静時の代謝量が大きくなっているとされるが,非活動時の消費エネルギーを考慮した測定は今回の方法では困難である.また,測定期間を5日間とし,平均値と最大・最小値を算出したが,天候や気温の影響までは調査できていない.他の要因を含め,より長期の測定・観察を行うことで,各値の信頼性を高めることができると考える.加えて,よりADL,QOL,うつ度との関連が明らかになる可能性が考えられる.継続的な調査で各項目の変化や因果関係を検討することも必要である.また,対象者数が少ないことも本研究の一つの課題である.今後対象者を増やしての調査を行うことでよりCOPD患者の身体活動量に関する知見,各指標の有用性を提示することができると考える.

本研究のまとめとして,身体活動量測定の指標としては多くは複数日数の平均値を用いているが,平均値だけではなくQOL,うつ度と相関する最小値や運動耐容能と相関する最大値も評価し,その理由を分析しアプローチ方法を考え,実践することが必要である.また,各要素の相互関係を考慮し,症状増悪,ADL低下,QOL低下,身体活動量低下の悪循環を断ち切ることが必要であり,多方面からの包括的なアプローチが重要であると考える.

著者のCOI(conflicts of interest)開示

本論文発表内容に関して特に申告すべきものはない.

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