2020 Volume 28 Issue 3 Pages 491
釧路市を中心とする北海道東部の釧根地区において,在宅療養患者のうちHMVは30名弱,HOTは450名強が暮らしている(平成29年4月現在).うち当院が担当しているものはHMV4名,HOT25名である(平成29年10月現在.当院では在宅医療における安全性向上,より患者のニーズに応える目的で,技士が平成26年度よりHMVの訪問業務,平成29度よりHOTにおける家屋調査等の訪問業務を開始した.
当院では在宅医療において使用するメーカーレンタルによる呼吸関連機器は,訪問による点検は全てメーカー担当者任せになっていた.HMV導入後に技士が関与するのは外来受診時の点検や回路交換のみであり,在宅における使用状況の把握や安全性の確保が万全とは言い難い状況であった.在宅機器の管理責任はレンタル器であっても病院にあることから技士による訪問業務開始に踏み切った.HOTについても病棟カンファレンス等によりニーズがあると判断し,業務を開始するに至った.
導入が決定してから退院までの一連の流れ全てに技士が介入している.家屋調査(療養環境や機器の配置環境など),患者の理解度に合わせた説明書の作成,試験外出・外泊時の同行,退院時の同行まで行い,HMVに関しては導入後メーカー担当者同伴で定期的に訪問点検を行っている.流れとしては導入が決定した後患者状態,処方指示を基に患者に合った機器の選定を行い,患者及び患者家族への指導を実施する.特に火器の取り扱いについて繰り返し指導を行っている.入院中にも実際に機器を使用し,退院までに慣れて頂き,スムーズな導入を図っている.また,退院前に家屋調査を実施し,その後のカンファレンスにて退院の日程等調整を行った後退院となる.また退院時も患者に同行し,最終確認をもって導入となる.
患者本人及び患者家族への機器の取扱説明や事故の危険性に関する指導,患者の生活にあった機器の選定を行った.個々に応じた簡易取扱説明書の作成,機器表示の工夫などにおいて,メーカー任せでは成し得ないきめ細かな対応を行った.また,試験外泊時や退院時に同行することで,機器の設置から患者状態安定までを見守ることにより,安全性の向上,患者や患者家族の安心感を得られたのではないかと考える.また,HMVについては定期的な訪問をすることで,季節による環境変化などで発生する不具合の対策など,技士の関与で一歩進んだ在宅医療の提供が可能となったと考える.
釧根地区は釧路市以外は人口希薄地帯である為,釧路市内の病院の守備範囲が広域に渡る.当院から距離にして 45 kmの場所でのHMV導入事例があった.急変時や機器トラブル時の対応に課題が残っている.生命維持管理装置である人工呼吸器という性格上,月一度程度の点検で良いのかという疑念もある.臨床工学技士の訪問業務については,現状診療報酬は得られず,金銭的メリットは全く無い.機器トラブルなどの緊急時対応を充実させる意味でも診療報酬が認められる必要がある.
本論文の要旨は,第27回日本呼吸ケア・リハビリテーション学会学術集会(2017年11月,宮城)で発表し,座長推薦を受けた.
本論文発表内容に関して特に申告すべきものはない.