2020 Volume 29 Issue 2 Pages 195
超高齢社会を迎えて誤嚥性肺炎の治療に関して,医療現場では若干の不安と混乱が続いている.最近では基礎疾患などの背景因子や老衰状態の評価など総合的なリスクアセスメントが求められている.このような現状でも摂食嚥下障害の評価と治療方針は主治医をはじめ医療スタッフの最大の関心事である.このシンポジウムでは日本気管食道科学会との共同企画により,摂食嚥下障害や誤嚥をめぐる最新の知見を議論したい.気管食道科学会からは本学会員があまり経験することがないアプローチを報告する.はじめに嚥下内視鏡検査を提示することで誤嚥のおこるメカニズムを画像としてダイナミックに捉えることができる.これに基づく理論的な食事指導の進め方を解説する.次に声門閉鎖術を多数おこなった経験から新しい術式開発とその今日的意義を報告する.最後に先進的な試みとして嚥下障害の在宅診療に熱心にとり組んでいる診療所の現状を報告する.ケアリハ学会からは主治医として内科医の役割,チーム医療の中心として看護師の役割から議論する.従前の「とりあえず禁食」の決まり文句から脱却を目指して,摂食嚥下障害への介入や多面的ケアへの取り組みをエビデンスを踏まえて報告する.また看護師は患者と向き合う時間が圧倒的に長く,多職種のチーム医療の要としての役割が期待されている.患者・家族への援助や看護ケアの病院全体にわたる標準化を目指した「誤嚥性肺炎看護プログラム」の作成とその運用成果を報告する.このシンポジウムを通して参加者が誤嚥診療の最新知識を吸収し,治療に関しては多方面の切り口からアプローチができる一助となれば幸いである.
本論文発表内容に関して特に申告すべきものはない.