The Journal of the Japan Society for Respiratory Care and Rehabilitation
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Skill-up Seminar
Sarcopenia and frailty
Tomoko Kutsuzawa
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2021 Volume 29 Issue 3 Pages 359-364

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要旨

サルコペニアは,筋量低下に加えて,筋力の低下または身体機能の低下を伴う場合を表す.フレイルは加齢に伴う予備能力の低下のため,ストレスに対する回復力が低下した状態で,健康な状態と要介護状態の中間として位置づけられている.高齢化がすすむ日本では,サルコペニア・フレイルが高齢者の健康寿命の延伸を目指すうえで重要な病態である.日本のサルコペニア・フレイルの診療ガイドが発表され,統一した基準で診断されるようになった.サルコペニア,フレイルともに高齢住民の約10%くらいに認められているが,COPD患者では有病率が高い.両者とも運動・栄養が予防・治療の中心となる.

超高齢化社会とフレイル・サルコペニア

日本の総人口は,平成29年10月1日の時点で1億2,671万人,65歳以上の高齢者の総人口に占める割合(高齢化率)は27.7%にあたる.高齢化率は今後も上昇を続け,2025年には30%にも達すると予測されている1.平成28年の平均寿命は,男性80.98歳,女性87.14歳で,今後も伸びていくと予想されている1.健康寿命は,日常生活に制限のない期間のことで,平均寿命と健康寿命の差は,平成28年(2016年)では,男性8.84年,女性12.35年である1.厚生労働省「国民生活基礎調査」(平成28年)2によれば,65歳以上の要介護者等の介護が必要となった原因では,「認知症」18.7%と最も多く,「脳血管疾患」15.1%,「高齢による衰弱」13.8%,「骨折・転倒」12.5%,「関節疾患」10.2%と続く.筋骨格系の疾患が,要介護や要支援にいたる原因の22.5%を占め,高齢者が自立して生活するためには,筋骨格系の健康を維持することがきわめて重要であることがわかる.加齢とともに骨格筋量が減少し筋力が低下する(サルコペニア)と,「ふらつき」「転倒」に結びつき,要介護状態に至りやすい.なお「高齢による衰弱」は後述する「フレイル」にあたると考えられる.健康寿命の延伸のためには,この「サルコペニア」と「フレイル」への対処が重要である.

本稿では,最近刊行された「サルコペニア診療ガイドライン」3,「フレイル診療ガイド」4などに基づき,サルコペニア,フレイルについて概説し,COPDとサルコペニア,フレイルについても触れていきたい.

サルコペニア

定義・診断

1989年にRosenberg5が加齢に伴い骨格筋量の減少がおこることの重要性を指摘し,サルコペニアという言葉を提唱した.サルコペニアという言葉は,Rosenbergの造語で,ギリシャ語の“肉”を表す“サルクス”と“減少”を意味する“ペニア”を組み合わせたものである.筋量が減少すると,筋力,パフォーマンスの低下が認められることから,2010年ヨーロッパのワーキンググループ(EWGSOP)が,サルコペニアは「筋量と筋力の進行性かつ全身性の減少に特徴づけられる症候群で,身体機能障害,QOL低下,死のリスクを伴うもの」と定めた6.従って,サルコペニアは,筋量低下に加えて,筋力の低下または身体機能の低下を伴う場合を表す.

アジア人はヨーロッパ人に比べ体格が小さく,筋力も弱い.そのため東アジアの人々の疫学データを基にして,アジアの基準が2014年に発表された7表1にヨーロッパとアジアの診断基準を示す.対象の高齢者は,国による高齢者の定義を用いる.EWGSOPの基準に比較して,AWGSでは筋量・握力のカットオフ値は小さくなっている.2017年10月に発表された日本のサルコペニア診療ガイドライン3ではAWGSの診断基準を用いることを推奨している.

表1 ヨーロッパとアジアのサルコペニアの基準
四肢骨格筋量筋力(握力)身体機能(通常歩行速度)
EWGSOPDXA若年層の平均値-2標準偏差の値未満
男性<7.26 kg/m2
女性<5.5 kg/m2
男性<30 kg
女性<20 kg
≦0.8 m/秒
BIA若年層の平均値-2標準偏差の値未満
男性<8.87 kg/m2
女性<6.42 kg/m2
AWGSDXA男性<7.0 kg/m2
女性<5.4 kg/m2
男性<26 kg
女性<18 kg
≦0.8 m/秒
BIA男性<7.0 kg/m2
女性<5.7 kg/m2

EWGSOP: The European Working Group on Sarcopenia in Older People, AWGS: Asian Working Group of Sarcopenia

DXA: dual energy X-ray absorptiometry, BIA: bioeletrical impedance analysis.

サルコペニアの診断は,まず握力と歩行速度を測定し,両者が正常ならサルコペニアなし,握力もしくは歩行速度が低下している場合は筋量を測定する.筋量が正常ならサルコペニアなし,低下ならサルコペニアありと診断する3,7

サルコペニアは,加齢以外に明らかな原因のない一次性のサルコペニア(加齢性サルコペニア)と不活動や様々な疾患や栄養状態によって筋量低下をきたす二次性サルコペニアに分類される.二次性サルコペニアには不活動に関連するサルコペニア(寝たきり,不活動など),疾患に関連するサルコペニア(重症臓器不全(心・肺・腎・肝など)),栄養に関連するサルコペニア(摂取エネルギーまたはタンパク質の摂取不足)がある.日本のガイドラインでは,1次性サルコペニアは65歳以上が対象であるが,二次性サルコペニアには特に年齢の規定はない.

疫学

サルコペニアの有病率は,用いられた定義やデータによって異なる.日本の地域住民を対象としたROAD(Research on Osteoarthritis/Osteoporosis against Disability)スタディでは,山村と漁村在住の60歳以上の住民1,099名(平均72.1歳)のサルコペニアの有病率を調査し,AWGSの基準を用いた有病率は,60歳以上の8.2%(男性8.5%,女性8.0%)であったと報告している8.同じ対象者をEWGSOPの基準で評価すると,男性13.8%,女性12.4%の有病率となっている9.これは,筋量と握力のカットオフ値の違いによると考えられる.Yoshidaらは,4,811人の健康な高齢地域住民のサルコペニアの有病率は,EWGSOPの基準で評価した結果,全体で7.5%(男性8.2%,女性6.8%)であったと報告している10

Shafieeらは,サルコペニアの有病率について2009から2016に発表された論文のメタアナリシスを行い,35論文58,404人全体の推定有病率は男・女ともに10%であったと報告している11.この中には7本の日本からの報告が含まれている.アジア系より,非アジア系の住民のほうがサルコペニアの有病率が高いが,アジア系のほうが若年層の筋肉量が低いこと,アジアのライフスタイルなどに関係しているのではないかと述べている.

サルコペニアの有病率に男女差はないが,年齢とともに有病率は高くなり8,10,75歳以上で男女とも10%を超え,80歳以上で25%を超えてくる.

サルコペニアのメカニズム12,13,14

骨格筋は,筋タンパク質の合成と分解が繰り返されており,筋肉の萎縮は筋タンパク質の分解が合成より多いことを意味する.筋タンパク合成には,成長ホルモン,インスリン様成長因子-1(IGF-1),性ホルモン,インスリン,機械刺激などが関係する.加齢に伴うIGF-1分泌低下,テストステロン分泌低下,インスリン抵抗性などが筋タンパク合成を低下させる.活動低下も筋肉への機械刺激を減じ,筋タンパク合成の低下をもたらす.また加齢によるタンパク質摂取不足,ビタミンDを含むさまざまな栄養素の不足も筋タンパク質合成の低下に結びつく.

加齢による筋肉の変化は,筋線維数や筋断面積の減少だけでなく,筋線維の質的変化がおこる.筋線維はその収縮特性や代謝特性などから,遅筋線維(type I)と速筋線維(type II)に分類される.サルコペニアの筋肉は,速筋線維(II型筋線維)の萎縮が特徴的である.不活動や廃用では,遅筋(I型)が萎縮しやすいことが報告されていることから,サルコペニアで認められる骨格筋の表現型とは異なる.速筋線維は遅筋線維より収縮のスピードが速く,発生する張力も大きいので,筋肉の機能面では,ゆっくりとした日常動作はできるが,瞬発力は低下してくる.

筋線維の萎縮だけにとどまらず,筋再生能力の低下による筋線維数の減少もサルコペニア発症に関与している.筋線維の表面には筋サテライト細胞とよばれる単核の細胞があり,骨格筋の損傷などが起こると活性化され,筋細胞へ分化する.この筋サテライト細胞が加齢に伴い減少することが報告されている.また,筋肉以外に,加齢により運動神経細胞数の減少,神経筋接合部の形態変化が認められる.神経筋接合部の形態変化は,サルコペニアの速筋線維萎縮のメカニズムとして注目されている.

予防・治療

サルコペニアのメカニズムに述べたように,筋萎縮の予防や治療には,筋タンパク合成を増加させることが必要で,運動・栄養が重要である.サルコペニア診療ガイドライン3では,適切な栄養摂取,特に1日に(適正体重)1 kg当たり 1.0 g以上のたんぱく質摂取はサルコペニアの発症予防に有効である可能性があるとして推奨している.65歳以上の日本人1,074名を対象とした食事の多様性の調査では,男性において,食品摂取の多様性の低さとサルコペニアに関連性を認めている15.食品摂取の多様性が低い ということは,エネルギー・タンパク質摂取が低いということを意味する.

サルコペニアと診断された人に対して,栄養介入が効果をもたらすことは大いに期待されているが,有効かどうかはまだ不明な点が多く残されている.報告されたrandomized controlled study(RCT)では,対象がサルコペニアに限定されていないこと,栄養補給が様々であることから効果が一定しない.なお,近年,バリン,ロイシン,イソロイシンの3種類の分子鎖アミノ酸(BCAA),特にロイシンが注目されている.ロイシンは筋肉細胞に直接働いて筋タンパク合成を刺激する.高齢者ではたんぱく質同化抵抗性があり,若年者と比較してロイシンのタンパク同化作用が低下しているため,2.2 gを超えるロイシンの摂取が必要である16

安静にしていると筋萎縮がおこり,筋力も低下することから,運動もサルコペニアの発症を予防すると推察される.前述したROAD studyにおいて,都会,山村,漁村の65歳以上1,000名を調査した研究9では 男性も女性もサルコペニア群では,サルコペニアのない群にくらべて有意に中年期の運動習慣がなかったことが示されている.「サルコペニア診療ガイドライン」でも,運動習慣ならびに豊富な身体活動量はサルコペニアの発症を予防する可能性があり,運動ならびに活動的な生活を推奨している3

サルコペニアを有する人への運動介入は,サルコペニア患者に絞られたRCTは少なく,エビデンスレベルは低いが,四肢骨格筋量,膝伸展筋力,通常歩行速度,最大歩行速度の改善効果あり,として推奨されている3.サルコペニアでは速筋線維の萎縮がもたらされるが,速筋線維の維持には定期的に強めの活動が必要であり,レジスタンス運動が推奨されている16

栄養療法と運動療法は,単独介入より,両者を併用したほうが有効であるとの報告がいくつかある.Kimらは75歳以上のサルコペニア女性155名への「運動(60分)」,「アミノ酸補給(アミノ酸 3 g,ロイシン40%)」,「両者」,「健康教育のみ」の介入を行った結果,運動介入に栄養療法を加えると,運動単独,栄養単独の介入より筋量や筋力に効果があったことを報告している17

フレイル

定義

加齢に伴う脆弱な状態は,英語でfrailtyと表現され,従来「虚弱」や「老衰」と訳されてきた.欧米では,Buchner & Wagner18が1990年代に,frailtyの概念を「体の予備力が低下し,身体機能障害に陥りやすい状態」とし,すでに障害のある状態と区別し,日常生活機能障害の前段階として定義づけた.日本では,2014年に日本老年医学会が邦訳を「虚弱」から「フレイル」に変更した19.これは「虚弱」という言葉が回復不可能なことをイメージしやすいこと,フレイルが健康と身体機能障害をきたした要介護状態の中間をあらわすことなどがその理由である.日本では,フレイルの定義として,日本老年医学会が提唱した「加齢に伴う予備能力の低下のため,ストレスに対する回復力が低下した状態」を用いている19

フレイルは健康な状態と日常生活でサポートが必要な介護状態の中間として位置づけられ,自立機能維持の機会を逃さないようにする警鐘をならす概念でもある.フレイルは,身体的脆弱性(身体的フレイル)のみならず,精神・心理的脆弱性(精神・心理的フレイル)や社会的脆弱性(社会的フレイル)などの多面的な問題を抱えやすく,自立障害や死亡を含む健康障害を招きやすいハイリスク状態を意味する.本稿では身体的フレイルにつき概説する.

診断

身体的フレイルに関して,2001年にFriedらが加齢に伴って現れる身体機能の衰退兆候をとらえる5つの表現型モデルを提唱した20.この5つの表現型(動作の緩慢さ,筋力の低下,活動性の低下,倦怠感・疲労感,体重減少)は,cardiovascular health study(CHS)基準といわれ,身体的フレイルの代表的な診断法として用いられている.その他に,Mitnitskiらが提唱した欠損累積モデルがある21.欠損累積モデルは,健康や自立を支える様々な因子の欠損を累積として評価する方法で,評価項目数に対する累積障害数の割合をFrailty Indexとして表す.

日本では,介護予防事業で用いられている基本チェックリストの質問を取り入れた日本版CHS基準が提唱されている.体重減少(6か月で 2~3 kg以上),筋力低下(握力 男性<26 kg,女性<18 kg),疲労感(ここ2週間わけもなく疲れたような感じがする),歩行速度(通常歩行速度<1.0 m/sec),身体活動(①軽い運動・体操をしているか,②定期的な運動・スポーツをしているかのいずれも「していない」)のうち,3項目以上あてはまるとフレイル,1~2項目あてはまるとプレフレイルと診断する4

疫学

代表的な身体的フレイル評価法であるCHS基準を用いた身体的フレイルの割合は,メタ解析によれば,地域在住高齢者11,940名の7.4%に認められ,加齢とともに増加し,男性より女性にやや多いと報告されている22.また,Satakeらによる日本の地域在住高齢者16,251名の日本版CHS基準を用いた調査では,11.2%がフレイルと診断され,年代別にみると,年齢があがるとともに割合は増え,85歳以上では34.0%に達する23.さらに,慢性疾患で外来通院中の高齢者や施設入所者では,地域在住高齢者より高いと報告されている.

CHS基準の中に,サルコペニアの診断基準でもある筋力,歩行スピードが含まれており,サルコペニアと診断された人はフレイルの可能性が高くなることが予想される.日本人の65歳以上の地域在住女性273名の調査では,フレイルを10.6%,サルコペニアを8.1%に認めた.フレイル(+)の住民中サルコペニア(+)の割合は37.9%,サルコペニア(+)の住民中フレイル(+)の割合は50.0%だった24.サルコペニアとフレイルの合併頻度を調べた研究では,CHS基準を用いたフレイル高齢者におけるサルコペニアの割合は20~63.2%,逆にサルコペニア高齢者がフレイルを合併する割合は8.2~50%である(4: p 25-26).

フレイルは,高齢者の様々な健康障害に関係することが示されている.主要なアウトカムとして,転倒・骨折,術後合併症,要介護状態,認知症,施設入所,死亡などがあり,高齢者医療におけるフレイル評価が重要であることが示されている.生活習慣病,特に糖尿病,心血管疾患の発症,およびポリファーマシーなどはフレイルのアウトカムでもあり,発症リスクでもある.

予防・対策

身体的フレイルの発症には,老化に影響する多数の因子が関連する.栄養面では,たんぱく質の摂取量,毎食のたんぱく質摂取配分,微量栄養素(ビタミンDなど),食事内容の質(多様性),抗酸化作用を有する食品摂取など,身体活動については,活動性の低い生活が危険因子として挙げられる.その他,生活習慣病,ポリファーマシー,意欲低下や抑うつなども関連がある.身体的フレイルとサルコペニアは関連が深いため,フレイルの予防・対策には,サルコペニアの予防・対策である栄養療法と運動療法は共通する.栄養療法と運動療法は,単独介入より,両者の併用が推奨されている.

フレイルは,「ストレスに対する回復力が低下した状態」と定義されているが,高齢者のストレスの1つとして感染症がある.インフルエンザや肺炎の罹患により,日常活動度が低下し,要介護状態に陥りやすい.インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンの接種により,感染症の予防に努めることも必要である.

糖尿病,腎疾患,心疾患,呼吸器疾患などは,フレイルの頻度を増すとともに,各疾患の予後の悪化にも関係するため,これらの疾患の予防,疾患のコントロールをすることが必要である.また,骨・関節疾患では,疼痛のため身体活動が制限されやすいため,疼痛管理・手術などの治療やリハビリテーションが必要となる.また,ポリファーマシーは高齢者の多病を背景とするが,6~7種類以上の服用がフレイルのハイリスクとなるとフレイル診療ガイドでは述べている4

COPDとサルコペニア・フレイル

COPD患者では,全身併存症として,筋萎縮,骨格筋機能障害がもたらされることが知られている25.COPD患者の筋肉は,筋線維のシフト(遅筋から速筋へ)がおこる.Goskerらは,COPD患者の大腿四頭筋の筋線維に関する系統レビューを行い,22件の研究から,重症COPD患者では,age-matchした健常人に比べ,タイプIの筋線維の減少とタイプII xの増加が認められたと報告している26

COPD患者は高齢者が多いため,加齢による筋肉量減少と疾患による筋肉の変化から,サルコペニアの有病率も高くなることが予想される.EWGSOPの基準を用いた研究では,安定した622名のCOPD患者の14.5%にサルコペニアを認め,特に80代とGOLDのstage 4 でサルコペニアの割合が高かった27.日本28及び韓国29の報告では,安定期のCOPD患者の各々18.2%,25%にサルコペニアが認められており,健常な地域住民に比べ,高い有病率を示している.

COPDのサルコペニアに対しては,呼吸リハビリテーションや身体的トレーニングにより,筋力や運動能力の向上が示されている.栄養介入に関しては,アミノ酸補充が身体機能の改善に有効であったとの報告がある.Dal Negroらは,サルコペニアを合併した重症COPD患者32名に必須アミノ酸 8 gを12週投与した結果,体重,徐脂肪量,歩数などが非投与群より改善したと報告している30

COPD患者は,体重減少,筋肉量減少,骨格筋機能障害,身体活動の低下を伴うことからフレイルの合併も多いと予測される.COPD患者におけるフレイルの頻度は,タイの大学病院の外来COPD患者の7%31,オランダ市中のCOPD患者の10.2%(CHS基準)32,呼吸リハビリテーション外来患者の25.6%33であった.これらの研究では,フレイルはCOPD患者の重症度や併存症と関連し,死亡リスクを増大させていたことから,COPD患者のフレイルは新たな予後予測因子であると考えられる.

フレイルのCOPD患者に対する呼吸リハビリテーションの効果については,Maddocksらが,呼吸リハビリテーションに通っている816名のCOPD患者のうち25.6%にフレイルを認め,このフレイルCOPD患者に包括的リハビリテーションプログラムを施行した33.フレイルのCOPD患者のリハビリテーション中断オッズは2倍で,フレイルはリハビリテーション中止の予測因子だったが,完遂できたCOPD患者にはフレイル改善効果がみられたと報告されている.

まとめ

日本は,今後も高齢化がすすんでいくが,高齢者が健康寿命を伸ばし,要介護状態に至らないことが大きな課題である.サルコペニア・フレイルの予防は,介護予防にリンクするため,早期に病態を把握し,介入していく必要がある.運動・栄養が予防・治療の中心となるが,介入方法は様々であり,その効果については一定しておらず,今後の研究に期待したい.

著者のCOI(conflicts of interest)開示

本論文発表内容に関して特に申告すべきものはない.

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