The Journal of the Japan Society for Respiratory Care and Rehabilitation
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Factors affecting physical activity in elderly COPD patients without Long-Term Oxygen Therapy
Chiho Kobayashi Utako ShimizuTaku OsawaChikako YukiYoko OkataKunihiko SakaiTikayo KoyamaMieko UchiyamaYu Koyama
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2022 Volume 30 Issue 2 Pages 233-238

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要旨

【目的】在宅酸素療法を導入していない高齢慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の,身体活動量(PA)に影響を及ぼす要因を検討する.

【方法】呼吸器内科外来に通院する高齢COPD患者を対象に,対象者の特性と呼吸困難(mMRC),PA,呼吸困難マネジメントを調査し分析した.

【結果】対象者49名,PAは5896(3500-9167)歩で,mMRCと負の相関,仕事の有に対して相関を認めた.重回帰分析では,mMRCが低値,1秒率が高値,呼吸困難マネジメント実行の合計点が高く,仕事ありは,高いPAと関連があった.

【考察】PAに影響を及ぼす要因として,mMRC,呼吸困難マネジメント,仕事が示された.在宅酸素療法を導入していない高齢COPD患者においては,活動につながる習慣を持ち,活動に応じた呼吸困難マネジメントの実行が,PAの向上と維持に重要であることが示唆された.

緒言

慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease; COPD)における身体活動量(physical activity; PA)は,COPDの増悪,生存率及びQOLに影響を及ぼし1,2,PAレベルは運動耐容能など他の因子に比べて最も独立した予後規定因子であると報告されている3.また,COPD患者のPAに関与しうる因子として,気流閉塞や生活習慣,環境等,様々な因子の可能性が指摘されている.なかでも,呼吸困難はPAへ影響を及ぼす因子のひとつであると報告されている1.呼吸困難とは呼吸の際に感じる不快な主観的経験4であり,個々のCOPD患者がおかれている状況によって症状の認識や捉え方は異なる.そのため,COPD患者は呼吸困難の認識に基づき,日常生活のあらゆる活動に対して,症状や活動の程度に応じた呼吸困難マネジメントを実行し,PAを維持していることが推察できる.

病期が早期の段階にあるCOPD患者は,呼吸困難による日常生活への影響を受けながらも,一定のPAが維持されているが,病期が進行すると,呼吸困難による日常生活への影響が生じ,その改善に苦慮することが多い.以上のことから,PAの向上及び維持への支援においては,病期が早期の段階から,症状や活動の程度に応じた,呼吸困難マネジメントを実行することがPAの向上及び維持に有益であると考える.先行研究では,病期が早期の段階にあるCOPD患者の呼吸困難がPAにどのような影響を及ぼしているかは明らかにされていない.そこで,病期が早期の段階にあるCOPD患者のPAを明らかにし,PAの向上及び維持に向けた看護ケアに関して示唆を得るため,本研究では,在宅酸素療法導入前の高齢COPD患者のPAの実態と,PAに影響を及ぼす要因を検討することを目的とする.

用語の定義

本研究におけるCOPD患者の呼吸困難マネジメントとは,今戸の呼吸困難のセルフマネジメントの定義5を参考に,「動作時に生じる呼吸困難を調整するために必要な行動や技能とし,身体活動を維持するためのプロセス」と定義する.

対象と方法

1. 研究デザイン

本研究は診療情報調査,3軸加速度計によるPA測定(歩数),及び質問紙調査の組み合わせによる横断調査である.

2. 対象者の選定

対象者は,薬物,栄養,運動療法等の呼吸リハビリテーション(pulmonary rehabilitation; PR)プログラムが提供されている医療機関で,日本呼吸器学会専門医の診療,または慢性呼吸器疾患看護認定看護師による呼吸器看護外来で療養支援を受け,在宅酸素療法導入を導入していないCOPD患者で,男性,65歳以上80歳以下,過去6ヶ月以内に増悪がなく病状が安定している,呼吸器疾患以外の要因によるADL制限がない,明らかな認知症や精神疾患がない,不安,抑うつ症状がない,自記式質問紙に記入ができる者とした.

3. 調査内容

1) 対象者の特性と呼吸困難の程度(診療情報調査)

対象者の特性を診療録から,年齢,肥満度指数(Body Mass Index; BMI),体重,同居者の有無,仕事の有無,併存症の有無と病名,修正MRC息切れスケール(Modified Medical Research Council dyspnea scale; mMRC),COPD罹患期間,増悪入院回数,PRの経験の有無,短時間作用性β2刺激薬の吸入の有無,吸入の種類,呼吸機能検査[1秒率(forced expiratory volume % in one second; FEV1/FVC),対標準1秒量(percent predicted forced expiratory volume in one second; %FEV1),対標準肺活量(percent vital capacity; %VC)],GOLD重症度分類による病期,安静時の経皮的動脈血酸素飽和度(saturation of percutaneous oxygen; SpO2)であり,調査開始時点で間近のデータとした.

2) PA(3軸加速度計調査)

3軸加速度計(Active style Pro HJA-750C, OMRON)を用い8日間測定し,得られた歩数データの上側5日間の平均値を算出した.また,3軸加速度計の非装着によるデータを除外するために,1.0 METs以上の記録が5時間以上かつ5日間以上測定できたデータを抽出し分析対象とした.

3) 呼吸困難マネジメントの実行状況

PA測定終了後,PAを測定している期間に実行した呼吸困難マネジメントに関して「息切れ・呼吸困難の対処に関する質問紙」を用い実行状況を調査した.質問紙は,まず今戸らの慢性呼吸器疾患患者が行う息切れに対するマネジメント法の実態6を参考に抽出した呼吸困難マネジメントから質問項目を検討し,有職者による内容確認,プレテストを経て作成した.質問項目は動作に関する9項目として,「自分のペースで動く」「動作をゆっくり行う」「早めに休憩をとる」「続けて動作を行わない」「呼吸法を取り入れる」「呼吸と動作を合わせる」「息をはきながら動く」「息苦しくなりやすい動作を避ける」「気持ちを落ち着かせて動く」で構成した.回答は,「いつも行っている(4点)」「だいたい行っている(3点)」「あまり行っていない(2点)」「行っていない(1点)」の4段階のリッカート尺度とした.

4. 研究期間

2019年9月1日から2020年8月7日までとした.ただし,2019年11月1日~2020年3月31日までの期間はPAが気候の影響を受けるため除外した.

5. 分析方法

記述統計として連続変数は中央値(四分位数範囲Q1-Q3),名義変数及び順序変数は度数または割合で示した.検定では,多群の比較ではKruskal-Wallis検定を行い,群間の比較は多重比較(Bonferroni)を行い,有意水準を0.8%未満とした.PA,FEV1/FVC,mMRC,動作に関する呼吸困難マネジメント9項目の実行の合計点,仕事の有無,PR経験の有無,の関係を明らかにするために相関分析を行った.さらに,PAを従属変数とし,独立変数は先行研究でPAと関連がある,FEV1/FVC1,mMRC1,7,呼吸困難マネジメント実行状況による得点8,仕事の有無7,9を独立変数として強制投入法による重回帰分析を行った.

解析はIBM SPSS Statistics ver 27.0を用い,統計学的な有意水準を5%未満とした.

6. 倫理的配慮

本研究は,新潟大学倫理審査委員会の承認(受付番号:2018-0389)と,研究協力施設の倫理委員会の承認を受け実行した.研究対象者には研究の目的と方法,協力への自由意志と辞退による不利益がないこと,匿名性の保持について説明し同意が得られた者とした.

結果

1. 対象者の特性

本研究に参加した54名のうち,PA測定における除外基準に該当した5名を除く49名を対象とした(表1参照).PAは5896(3500-9167)歩で,mMRCグレード間のPAを比較すると,mMRC grade 1 が最も高い結果であったが,群間での有意差を認めなかった[grade 0(p=0.886),grade 2(p=0.033),grade 3(p=0.048)](表2).次に,mMRCのグレード間の呼吸困難マネジメント実行の合計点を比較すると,mMRC grade 2 が最も高い結果であったが,群間での有意差を認めなかった[grade 0(p=0.027),grade 1(p=0.089),grade 3(p=1.000)].

表1 対象者の特性(n=49)
年齢(歳)74.0(70.0-77.0)
体重(kg)62.8(56.0-67.0)
BMI(%)22.5(20.4-24.5)
同居者(あり/なし)46名(93.9%)/3名( 6.1%)
仕事(あり/なし)10名(20.4%)/39名(79.6%)
罹患期間(年)5.0(1.0~9.0)
併存症(あり/なし)43名(87.8%)/6名(12.2%)
主な併存症気管支喘息19
高血圧症17
糖尿病9
脂質異常症7
前立腺肥大5
GOLD重症度分類(I/II/III)9名(18.4%)/23名(46.9%)/17名(34.7%)
呼吸機能FEV1/FVC(%)57.39(45.30-63.56)
%FEV1(%)62.20(47.00-76.00)
%VC(%)100.20(85.70-114.00)
呼吸困難の程度(mMRC)Grade 07名(14.3%)
Grade 120名(40.8%)
Grade 216名(32.7%)
Grade 36名(12.2%)
安静時経皮的酸素飽和度(%)97.0(96.0-98.0)
短時間作用性β2刺激薬使用者あり/なし14名(28.6%)/35名(71.4%)
安定期吸入薬使用あり/なし44名(89.8%)/5名(10.2%)
呼吸リハビリテーションの経験あり/なし16名(32.7%)/33名(67.3%)
歩数(歩)5896(3500-9167)
呼吸器疾患の増悪による入院回数0回35名(71.4%)
1回8名(16.3%)
2回3名( 6.1%)
3回以上3名( 6.1%)
†  中央値(四分位数範囲Q1-Q3)

連続変数は中央値(四分位数範囲Q1-Q3),名義変数及び順序変数は度数または割合で示した.

PAを示す歩数は5896(3500-9167)歩であった.mMRC,GOLD重症度分類ごとの分布を示す.

表2 mMRC gradeと身体活動量及び呼吸困難マネジメントの比較(n=49)
mMRC 0(n=7)mMRC 1(n=20)mMRC 2(n=16)mMRC 3(n=6)p値
年齢74.0(73.0-77.0)71.5(69.0-76.3)73.5(70.0-76.3)75.5(72.0-76.0)0.57
BMI22.5(19.5-24.0)21.5(20.4-24.2)24.2(20.6-24.7)22.2(20.5-23.1)0.75
罹患期間7.0(3.5-9.5)2.0(1.0-8.5)6.5(1.0--9.3)3.5(2.3-6.3)0.57
増悪入院回数0(0-0)0(0-0)0(0-1.0)1.0(0.3-1.8)0.03
FEV1/FVC63.31(59.49-66.63)57.74(47.48-62.29)55.72(39.43-62.54)45.90(43.58-47.79)0.20
歩数5772(3789-7782)8593(5776-10014)3792(1990-6361)3461(2054-4722)0.01
呼吸困難マネジメント得点15(10.5-20.5)21.0(15.0-23.0)26.0(22.5-27.3)25.5(20.8-29.5)0.01

連続変数は中央値(四分位数範囲Q1-Q3)

3群の比較ではKruskal-Wallis検定を行った.

2. PA及び呼吸困難マネジメントと各種項目の相関(表3

呼吸機能を示すFEV1/FVCは,mMRC(r=-0.29),呼吸困難マネジメント実行の合計点(r=-0.33),PA経験の有無(r=-0.46),に対して負の相関を認めた.呼吸困難マネジメント実行の合計点は,mMRC(r=0.46),PR(r=0.47)に対して相関を認めた.PAはmMRC(r=-0.34)と負の相関,仕事の有無(r=0.35)に対して相関を認めたが,PRとの相関を認めなかった.

表3 PA及び呼吸困難マネジメントと各種項目との相関(n=49)
歩数FEV1/FVCmMRC呼吸困難
マネジメント
実行の合計点
仕事の有無呼吸リハビリ経験の有無
歩数相関係数10.14-0.34-0.020.35-0.24
有意確率0.320.020.870.010.09
FEV1/FVC相関係数0.141-0.29-0.33-0.02-0.46
有意確率0.320.050.020.88<0.01
mMRC相関係数-0.34-0.2910.46-0.180.33
有意確率0.020.05<0.010.220.02
呼吸困難マネジメント実行の合計点相関係数-0.02-0.330.461-0.150.47
有意確率0.870.02<0.010.31<0.01
仕事の有無相関係数0.35-0.02-0.18-0.1510.01
有意確率0.010.880.220.310.96
呼吸リハビリ経験の有無相関係数-0.24-0.460.330.470.011
有意確率0.09<0.010.02<0.010.96

Spearmanの相関係数

身体活動量,FEV1/FVC,mMRC,動作に関する呼吸困難マネジメント9項目の実行の合計点,仕事の有無,PR経験の有無,の関係を明らかにするために相関分析を行った.

3. PAに影響を及ぼす要因に関する重回帰分析(表4

重回帰分析の結果を表4に示す.FEV1/FVCが高値(β=0.22,p=0.12),mMRC gradeが低値(β=-0.29,p=0.05),呼吸困難マネジメント実行の合計点(β=0.33,p=0.03)が高く,仕事あり(β=0.38,p<0.01)は,高いPAに関連があった.重回帰式はY=75.90×FEV1/FVC-1427.93×mMRC+219.74×呼吸困難マネジメント実行の合計点+4235.05×仕事の有無-1287.36が示された.

表4 PAに影響を及ぼす要因に関する重回帰分析(n=49)
従属変数:身体活動量
偏回帰係数α標準化係数βtp値VIF
定数-1287.36-0.330.75
FEV1/FVC75.900.221.580.121.20
mMRC-1427.93-0.29-1.990.051.36
呼吸困難マネジメント実行の合計点219.740.332.200.031.41
仕事の有無4235.050.382.97<0.011.04

R2=0.23

【重回帰式】

Y=75.90×FEV1/FVC-1427.93×mMRC+219.74×呼吸困難マネジメント実行の合計点+4235.05×仕事の有無-1287.36

身体活動量を従属変数とし,独立変数は,FEV1/FVC,mMRC,呼吸困難マネジメント実行状況による合計点,仕事の有無を独立変数として強制投入法による重回帰分析を行った.

考察

COPD患者のPAは,健康な高齢者と比較すると,立位や歩行時間が有意に短縮し,座位や臥位の時間が有意に延長しておりPAの低下が報告されている10,11.本研究対象のPAは5896(3500-9167)歩で,これまで報告されている非COPDの高齢者12と,軽症から中等症のCOPD患者7,13のPAと同等であったといえる.

相関分析では,高いPAはmMRCが低く,仕事ありとの間に相関が示されたが,FEV1/FVC,PRの経験とは相関を認めなかった.本研究の対象者のように,在宅酸素療法導入以前の病期が早期の段階では,PAはmMRCとの関連性が高いことが示された.次に,PAが低い患者の割合は,mMRCが高くなるにつれて有意に増加していると報告14されており,本研究においてもmMRC grade 2,3はgrade 1 と比較してPAが低かった.しかし,本研究ではmMRC grade 0 は,grade 1 よりも気流閉塞の影響が少ないにも関わらず,PAは低いという相反する結果となった.COPD患者のPAは半数以上(59.2%)に低下がみられ,mMRCが0の患者ではPAが低い割合は45.8%という結果14が報告されており,本研究の対象者においても,PAが低下している者が含まれていることが推察できる.さらに,PRの経験はFEV1/FVC,mMRCと相関があることから,呼吸機能が低下し,呼吸困難が強くなる段階でPRを経験する傾向にあることが示唆された.そのため,呼吸困難が軽度の段階にある患者は,PRを経験する機会が少なく,PAの必要性に関する情報提供や,行動変容に向けた個別的かつ継続的な支援を受ける機会が少ないことが要因の一つとして考えられる.次に,呼吸困難マネジメントは呼吸リハビリと相関を認めていることから,PRで呼吸困難マネジメントの指導を受けている可能性がある.しかし,呼吸困難マネジメントは,mMRC grade 0 の段階から実行されており,実行される頻度は少なくとも,PRの経験の有無に関わらず,症状に合わせた呼吸困難マネジメントが用いられていると推察できる.続いて,呼吸困難マネジメントとPAとの関連について,相関分析では両者に相関を認めないが,重回帰分析では呼吸困難マネジメントが多いほど,PAの高さに影響を及ぼしており,相反する結果であった.これは,呼吸困難マネジメントの実行の種類と頻度が多い背景に,呼吸機能の低下と呼吸困難の影響を受け,日常生活の多くの場面でPAを抑制するように呼吸困難マネジメントを実行している対象が存在した可能性がある.その一方で,呼吸困難の影響が少ない患者では,呼吸困難マネジメントを実行し呼吸困難を調整することで,PAの向上と維持が期待できる.以上のことから,呼吸困難による日常生活への制限が少ない段階からPRを実施し,呼吸困難マネジメントを習得することが,PAの向上と維持に繋がる可能性が示唆された.

身体活動量に影響を及ぼす要因として,重回帰分析では仕事の習慣と呼吸困難マネジメントの実行がある者はPAが高く,呼吸困難の進行はPAの低下に影響を及ぼすことが明らかになった.PAと仕事との関連について先行研究では,家事・仕事による活動があるCOPD患者は,活動のない者に比べ有意にPAが高いと報告されている7.したがって,COPD患者は仕事等の役割や活動の習慣を持ち,呼吸困難による日常生活への影響を調整しながら呼吸困難マネジメントを実行することは,PAの向上と維持につながる可能性が示唆された.しかし,COPDのさらなる進行に伴い呼吸困難は高まり,PAに影響を及ぼすことが予測できる.今戸らは,息切れを経験し始めた時期から,継続的に患者が実践していることを医療者が一緒に振り返りつつ,その効果の確認や意味付け,さらなるマネジメント法の調整を行うことが重要であると述べている6.以上のことから,COPD患者に対する療養支援として,病期が早期の段階から歩数計等を用い,COPD患者のPAの実際を知ることは,日常生活における活動を客観的に把握し,患者と共有することで,呼吸困難にともなう日常生活への影響とマネジメントについて話し合う機会を得ることができると考える.そして,患者自身がPAを測定するセルフモニタリングは,具体的数値を持った目標を設定しやすいほか,患者が自らの生活を振り返るきっかけとなる.セルフモニタリングについてWildeらは,「自らの健康や疾病を適切に管理するために,病気の症状や身体感覚を定期的に測定したり,記録したり,観察して認識すること」と定義し,セルフマネジメントはより良いセルフモニタリングにより改善する15と述べている.さらに,PAの維持や目標値を達成することで自己効力感を高めることが期待できる.Banduraは,ある行動を遂行することができる,と自分の可能性を認識していることを自己効力感と呼び,自己効力感が強いほど実際にその行動を遂行できる傾向にあると述べている16.以上のことから,COPD患者がPAを測定することの意義として,患者自身がセルフモニタリングによってPAを把握するとともに,PAの目標を設定し取り組むことで自己効力感が高まり,PAのさらなる向上と維持に向けて有用であると考える.したがって,在宅酸素療法導入前の高齢COPD患者への療養支援においては,PAを量的に把握するとともに,患者の状態や生活背景をふまえた適正な活動量の判断と,PAを維持するためのマネジメント支援が求められる.

本研究の限界として,本研究はPAに影響を及ぼす要因について検討したが,在宅での通常の生活のなかでの活動に焦点を当てていたため,活動時のSpO2を測定していないこと,呼吸困難マネジメントは実行の数や頻度を点数化し調査したが,標準化された質問紙を用いていない点である.今後の課題として,呼吸困難マネジメントは,PAに影響を及ぼす要因である可能性が高く,呼吸困難マネジメント質問紙を開発するとともに,COPD患者の呼吸困難に対する症状の認識や捉え方がPAに及ぼす影響について明らかにしていく必要性がある.

本研究では,在宅酸素療法導入前の高齢COPD患者のPAに影響を及ぼす要因について調査した結果,mMRC,呼吸困難マネジメント,仕事が示された.COPD患者が活動につながる習慣を持つとともに,患者の病状や生活習慣に応じた呼吸困難マネジメントを実行することが,PAの向上と維持に重要であることが明らかとなった.

備考

本研究は令和2年度新潟大学大学院保健学研究科博士前期課程の学位論文に加筆・修正したものである.

著者のCOI(conflicts of interest)開示

本論文発表内容に関して特に申告すべきものはない.

文献
 
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