The Journal of the Japan Society for Respiratory Care and Rehabilitation
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Yuji Higashimoto
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2022 Volume 31 Issue 1 Pages 27-29

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要旨

日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌(以下呼吸ケアリハ誌)に採択されやすい論文の書き方について解説する.呼吸ケアリハ誌はオープンアクセスジャーナルで,多職種が関わっているため,他の学会誌に比較しても高いアクセス数を誇っている.したがって,一旦論文が採択され,掲載されればインパクトが高くなるものと考えられる.本学会の学会員であればどのような医療職種であっても投稿可能である.しかし,残念ながら,ここ数年は,投稿数が減少傾向にある.原著論文の採択率は昨年1年間でみると44%と,和文誌にしては,やや厳しいと思われるが,編集委員会の方針としては,論文の主旨がはっきりしないものや,倫理的に問題がある場合を除いて,積極的に採択することとしている.本学会誌に採択されるための“こつ”を伝授する.

はじめに

はじめに,この解説は,今まで学術論文の執筆に慣れていない方や,呼吸ケアリハ誌に投稿したが,掲載に至らなかった方を対象にしている.すでに,多くの論文を執筆されている方には物足りない内容になっているかもしれない.本学会誌はオープンアクセスジャーナルで,だれでも無料で閲覧できるため,多くのダウンロード数を誇っている.つまり,一旦,本学会誌に掲載されれば,大きなインパクトがある.本学会の会員であれば,どのような医療職種であっても投稿可能である.当初は理学療法士の投稿がほとんどであったが,最近は作業療法士,看護師,薬剤師などからの投稿が増えてきている.しかし,投稿数自体は減少しており,原著論文に限ると2年ほどで半分以下になっており,採択率も75%から44.4%まで低下している(表1).投稿数が減少している原因としては,採択率が低下したために敬遠しているということがあるかもしれない.多くの学会員は学術論文を読むことはあっても,執筆する経験がないと思われる.論文の書き方が分からずに投稿されていることも多くみられた.以上の背景があって,論文の書き方についての教育講演が企画された.

表1 呼吸ケアリハ誌の採択率と投稿数
年度採択率投稿数
2018/9/1-2019/8/3175%48
2019/9/1-2020/8/3141.4%34
2020/9/1-2021/8/3144.4%17

編集方針と査読制度

本学会誌の編集方針は,「呼吸管理,呼吸リハビリテーションならびにその周辺領域に関する基礎的,臨床的研究の成果を発表するために刊行される.本誌には,本学会会員の大多数に寄与すると認められた論文を掲載するものとする.」と投稿規定に記載されている.多職種が自由に議論に参加できる本学会の利点を生かして,様々な職種から情報発信をしていくことが期待されている.論文投稿があると,まず編集委員長が投稿原稿をチェックして,適切な投稿であるかをチェックし,問題なければ,論文の内容によって10名いる査読編集者へ送付される.査読編集者は 理学療法士3名,看護師1名,医師6名の構成で,投稿された論文の内容によって,代議員あるいは編集委員から査読者を選定して査読を依頼する.査読者は原則2名で,医師と各専門職種としている.査読日数は最近の集計では平均で13日であった.

採択されない理由と論文執筆時の注意点

投稿論文が採択されなかった(リジェクト)理由は①論旨展開が学術論文のレベルでない②論文の体裁が整っていない(修正できるレベルでない)③新規性に欠ける④データの信頼性・妥当性に欠ける⑤倫理的に問題がある⑥2重投稿である(英文であっても2重投稿にあたる)⑦研究デザインの誤り(対象の偏りが大きすぎる,研究目的と方法があっていない)⑧論旨が明確でない(なにを言いたいのかが分からない)などである.①,②,や⑧については,論文執筆に慣れた人に前もって監修してもらえば解決することが多いが,それ以外の項目については,修正は難しい.③の新規性については,すでに類似した報告があったとしても,確立されたことでなければ,論文としての価値があるので,積極的に投稿していただきたい.

論文執筆の手順

学会で発表はするものの,論文を書くこと自体に抵抗がある,あるいは初めから論文を書くことなど考えていないという会員もいるであろう.この解説を読んで,その抵抗感がいくらか軽減されればと期待する.論文執筆の経験がない人でも学会発表の経験はあるという人は多い.実は,学会発表した時点で,ほぼ論文はできている.背景,方法,結果,図表,考察と文献検索は発表時点で完成しているからである.あとは発表原稿を文章としてフォーマットにおとしていくだけの作業となる.論文はできるだけ簡潔にする方がいいので,長い文章を考える必要はない.

まず,論文にするテーマを考える一般的な手順を記載する.日々の臨床で疑問に感じていることが多いと思う.たとえば,患者さんに質問されたことを文献や教科書で調べても,記載されていないことも多い.治療がうまくいかない時,もっといい方法はないのかと模索することもある.この治療法は本当に有効であるのかなど様々な臨床的な疑問がでてくるが,これがクリニカルクエスチョン(clinical question: CQ)である,このCQをうまくリサーチクエスチョン(research question: RQ)にすることができれば研究テーマができる(図11,2.RQにするためには,文献検索や教科書で調べて臨床的な意義と新規性があることを確認する必要がある.つぎに,研究計画を具体的にPICOにおとしこむ作業になる.どういう患者(Patientあるいは対象)に,どのような治療(Intervention:介入)をして,コントロール(Control あるいはComparison比較)はどのように設定するかを考える.たとえば,“COPD患者に吸気筋トレーニングが有用か”というCQに対して,Pは「当院通院中のCOPD患者」,Iは「自宅での吸気筋トレーニング3か月実施(具体的は頻度・強度・期間を設定する)する」,Cは吸気筋トレーニングをしない通常治療みのCOPD患者,Oはアウトカムで6分間歩行距離の変化量などと設定する.ここで,注意していただきたいのは,倫理的な問題である.近年,どの学会の学会誌でもヒトを対象にした研究論文では,観察研究であっても倫理委員会での審査がされていることが前提条件となっている.倫理委員会での審査がなされていなければ,原則査読の対象にもならない.これは健常人を対象とした研究でも同じであることを留意いただきたい.

図1

論文にするテーマを考える手順

図2

リサーチクエスチョンの構造化 PICOにおとしこむ

論文作成の“こつ”

ここでは,論文執筆に慣れていない人への“こつ”を記載する.これは,あくまで私見であり,人それぞれ方法は異なるかもしれない.論文執筆に慣れていない人はまず,どこから手をつければ分からないと思わるので,簡単に書けるところから手をつけることをお勧めする.まず,研究目的を一文で簡潔に書く,研究目的は論文執筆時には明らかになっているであろう.背景もこの時に簡単に記載してもいいが,背景に凝ってしまうとなかなか先に進めないので,その前に研究方法と結果を先に記載する.方法や結果の記載は類似の論文があればそれを真似して記載すると進みやすい.図の作成なども類似の論文を真似るとよい.結果の記載は全てのデータを記載するのではなく,論文の目的にあったデータのみとする.次に,考察を記載する.この時に,研究開始時にした文献検索をもう一度実施して,最新の研究事情を把握しておく必要がある.最後に抄録をまとめ,それにあった標題を作成する.

つぎに,各項目における記載方法と注意点を記載する.背景では対象とされている疾患についての概略を記載し,臨床的な疑問点を記載する(CQとRQ).次に,研究の臨床的な意義を強調して記載して,最後には研究目的を一文で明確に記載する.方法ではまず,研究デザインがどういうものかを記載する.観察研究であるのか,介入研究であるのか,前向き研究であるのか,後ろ向き研究であるのかなどを明確に記載する.次に,PICOがすべて記載されているかを確認する.倫理委員会の申請内容と承認番号も忘れずに記載すること.最後には,統計解析方法を記載する.研究結果の記載では,まず初めに対象(患者)の背景(年齢,性別,呼吸機能,基礎疾患や合併症など)を記載する.研究テーマに関係のないデータは記載しないようにする.すべてのデータを記載すると,なにを言いたいのか分からなくことがある.考察では,冒頭に主な研究結果のまとめを記載する.つぎに,研究結果の臨床的な意義について記載し,これまでの報告との相違点や整合性について考察する.さらに研究方法や介入方法の妥当性・新規性を考察する.研究の問題点・限界(limitation)についても述べる.最後に結論では,簡潔に(1-2文)研究結果を記載して,今後の展望についても記載する.

まとめ

論文執筆方法について概説した.論文を執筆における一般的な注意点は①論文の目的が明確に記載できているか(だれが読んでも分かるか)②論文ができあがったら,何回も時間をおいて推敲する③独りよがりにならないように,できるだけ多くの人に読んでもらう④論文を書きなれた上司や先輩に見てもらう.以上ができれば採択率はかなり高くなると思われる.

著者のCOI(conflicts of interest)開示

本論文発表内容に関して特に申告すべきものはない.

文献
  • 1)  三品浩基:臨床研究デザイン リサーチクエスチョンのつくり方.外来小児 16: 24-29, 2013.
  • 2)  植田真一郎:【臨床薬理学update】新規医薬品開発と臨床研究 薬物療法に関するクリニカルクエスチョン(cq)からリサーチクエスチョン(rq)へ 適切な研究計画書の作成.医のあゆみ 267: 393-399, 2018.
 
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