The Journal of the Japan Society for Respiratory Care and Rehabilitation
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Workshop
Problems associated with the aging of patients with chronic respiratory diseases—thinking about individualized home care—
Seiichirou EdaEmiko Nashiki
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2022 Volume 31 Issue 1 Pages 64-65

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司会のことば

慢性呼吸器疾患患者は,薬物療法やNPPV・ハイフローセラピーなどの医療の発展とともに,高い重症度や終末期にあっても,在宅で生活できる選択肢が拡大している.医療者は,外来受診や訪問による定期的な疾病管理や増悪の状態変化時の対応,服薬管理や運動療法,セルフマネジメント教育等を実施し,患者の在宅生活継続を目指す.これら包括的な呼吸ケアの実践は,患者の増悪や入院回避等の医療的アウトカムとともに,活動量の拡大などの生活におけるQOLアウトカムも高めることができる.しかしここ近年,患者支援時における複雑さや困難さを,慢性呼吸器疾患に関わる医療者は感じることも少なくないのではないだろうか.

その理由の一つは,患者の高齢化および超高齢社会との関連が考えられる.多疾患併存(multimorbidity),認知機能の低下,身体機能の衰えなどを併せ持っている患者に出会うことは珍しくない.そのため患者は,外来受診を忘れる,多剤服用や薬のアドヒアランスが低下する,症状出現時に医療的行動がとれないなどの問題を抱えている.さらに国内の高齢夫婦世帯や高齢単独世帯は増加傾向にあり1,患者をサポートする介護力は不足している状況である.もう一つの理由とは,患者が支援経過の中で変化している存在であるということである.患者は,疾患進行や抗えない老いに伴って身体機能や認知機能が衰え,今まで当たり前のように行ってきた自己管理ができなくなる.例えば,HOTやNPPVの操作が出来ない,自分で服薬管理ができない,食事の準備できない,などである.

疾患の進行と併存症の増加・加齢にともなう,様々な心と身体の変化は複雑であり,患者の「唯一の人生」を意識し多職種・多事業所による「全方向的・立体的なアプローチ」でなければ掴むことができない.しかし医師はその重要な一員であるにも拘わらず,「寛容性がなく多職種への理解が不十分な医師は,複雑な患者様の多職種支援を困難にしている」という指摘もある2.患者と伴走していく際の,大切な考え方として,多職種コンピテンシー3がある(図1).2つのコアドメインは①患者・利用者・家族・コミュニティ中心,②「互いに・互いについて・互いから」の職種間コミュニケーションである.①が欠かざる要素であり②がそれを保証する.コアドメインは4つのドメインで支えられ各職種がそれを意識して職務を全うする.医師はじめ,全職種が多職種コンピテンシーを意識して互いに働きかけあうことによってこそ,患者さんの変化を共有し支援することができる4.その為には,ICTなど様々なツールを駆使することも有用であろうし,在宅患者に対する適切な医療のためには,かかわる病棟・外来医療と在宅医療が三位一体となって,看護をはじめとした多職種の医療チームが連携をし,継続した情報共有をすることが重要である.

図1

65歳以上人口割合は2025年に30%を超え,75歳以上人口は2054年まで増加傾向にあると見込まれている5.患者および取り巻く社会が複雑化する中,私たち医療者はどのような支援ができるのか.本WSでは,在宅の高齢の慢性呼吸器疾患患者に対する各職種の実際の支援を共有し,今後の支援の在り方を考えることとした.

著者のCOI(conflicts of interest)開示

本論文発表内容に関して特に申告すべきものはない.

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