The Journal of the Japan Society for Respiratory Care and Rehabilitation
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Original Articles
Instrumental activities of daily living in patients with stable COPD and related factors
Tomoyuki MurakamiTakeshi KobayashiEtsuhiro NikkuniTetsuya AdachiShinya OhkouchiMasao TabataToshiya IrokawaHiromasa OgawaTsuneyuki TakahashiHajime Kurosawa
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2023 Volume 31 Issue 2 Pages 231-238

Details
要旨

【目的】安定期COPD患者において手段的日常生活活動(IADL)を含む臨床項目を広く評価し,IADL規定因子を明らかにする.

【対象と方法】2019年12月から2021年3月で安定期COPD患者74名(男性66名,年齢74.9±7.7歳,%FEV157.8±20.1%)を対象とした.日本語版Frenchay Activity Index(FAI)を用いIADLを評価し,各臨床評価項目との相関関係,および,それらの因子分析について検証した.

【結果】FAI平均値は20.2±9.3点であった.FAIは臨床的重症度を示す各指標,呼吸機能,ADL,身体活動性,運動耐容能と有意に相関していた(p<0.05).特に身体活動性の高強度軽負荷活動(2.0~2.9 METs)時間との関係が強く,重回帰分析でも寄与因子であった(p<0.01).また因子分析で抽出された4因子でも身体活動性に関わる因子と相関を認めた.

【結論】安定期COPD患者のIADLは臨床的な疾患進行と関連しており,特に身体活動性に関わる因子と最も強く関連していた.

緒言

手段的日常生活活動(instrumental activities of daily living: IADL)とは,Lawtonらにより提案された概念で,電話の使用,買い物や食事の準備などの家事,交通機関の利用,服薬管理や金銭管理など在宅生活する上で必要な活動を含んでいる1.また,地域で自立して生活するために重要な幅広い活動が含まれるが,年齢,性別,家庭・社会における役割等,各個人によっても必要なIADLは様々である.一般的に生活機能の低下は,知的能動性や社会的役割といった高次な活動の喪失からIADLの低下を示し,その後,日常生活活動(activity of daily living: ADL)の低下に至る2,3.地域在住高齢者のIADL低下者の割合は地域や文化・社会的役割の違い等の影響はあるものの11~53.5%で4,5,6,IADLには年齢,性別,抑うつ症状,認知機能,身体機能,身体活動性,生活の質(quality of life: QOL),趣味活動,多剤服用等の多くの要因が関連している6,7,8,9

慢性呼吸器疾患患者におけるIADLの研究は十分に行われていない.Oh10らの慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease: COPD)患者のリハビリテーションの報告では,IADLは改善項目の一つであったが,それ以外の情報には乏しい.また,Okubadejo11ら,および,竹澤12らは,在宅酸素療法(home oxygen therapy: HOT)使用のCOPD患者でIADLが制限されることを報告しているが,それら以外のIADL規定因子についてはほとんど言及していない.本研究では,COPDとIADLの関連の限られたこれらの報告をふまえ,IADLを含む臨床項目を広く評価し,COPD患者におけるIADLを規定する因子をさらに追究し,明らかにすることを目的とした.

対象と方法

1. 研究デザイン

単一施設での患者を対象とした侵襲を伴わない前向き横断研究とした.

2. 研究対象者

2019年12月から2021年3月までに東北医科薬科大学若林病院呼吸器内科外来において定期的に経過観察を行った40歳以上の安定期COPD患者とした.除外基準は,①定期評価時に増悪を認めた患者(過去1ヶ月以内),②問診にてコミュニケーション困難を認め,アンケート記載不能な患者,③精神疾患で精神科に通院服薬中の患者,④インフォームドコンセントの得られない患者とした.

3. 倫理的配慮

本研究計画は東北大学大学院医学系研究科倫理委員会(承認番号:2019-1-593),および,東北医科薬科大学若林病院倫理委員会(承認番号:2019-1-012)により承認を受け実施した.全ての研究対象者に対して書面と口頭で研究内容を十分に説明して署名により同意を得た.

4. 評価項目

1) IADL

IADLは性差,年齢などで必要性や重要性が異なり,現在標準的な評価法は確立されていない.本研究では,日本語版Frenchay activity index(FAI)を使用し評価した13. 日常生活における応用的な活動や社会生活に関する15項目(食事の用意,食事の後片付け,洗濯,掃除や整頓,力仕事,買い物,外出,屋外歩行,趣味,交通機関の利用,旅行,庭仕事,家や車の手入れ,読書,勤労)を各項目0~3点で採点し,合計0~45点で評価する.それぞれの項目は,点数が高いほど活動的とされる.

2) 患者背景

患者背景として,患者の性別,年齢,体格指数(body mass index: BMI),喫煙歴,併存疾患,modified Medical Research Council(mMRC),COPDの病期分類,労作時低酸素血症の有無(6分間歩行試験でSpO2が90%未満),HOT使用の有無,過去1年間の増悪頻度,同居家族の有無,居住環境について情報収集しデータとした.

3) 呼吸機能

呼吸機能検査はCHESTAC-8800(チェスト,東京)を使用し,測定は呼吸機能検査ガイドラインを基に実施した14,15.SVC手技では肺活量(vital capacity: VC),最大吸気量(inspiratory capacity: IC),FVC手技では努力性肺活量(forced vital capacity: FVC),1秒量(forced expiratory volume in one second: FEV1),1秒率(forced expiratory volume% in one second: FEV1/FVC)を測定した.肺拡散能力(lung diffusing capacity of CO: DLCO)は1回呼吸法で測定した.予測式には,VC,FVC,FEV1については2001年呼吸器学会16,DLCOについてはCotes17による式を用いた.

4) ADL

Barthel Index(BI)と疾患特異的ADL評価のThe Nagasaki University Respiratory ADL questionnaire(NRADL)を使用し包括的にADLを評価した.

5) QOL

COPD Assessment test(CAT)を使用し評価した.

6) 身体活動性

活動量計Active Style Pro HJA-750C(オムロンヘルスケア,京都)を使用し,歩数,活動強度(metabolic equivalents: METs)を評価し,身体活動性の指標とした.データは,天候,休日,季節などの影響を考慮し,雨天,休日(有職者のみ),平均気温が2.5°C未満または27.0°C以上の日を除き,1日8 時間以上,3日以上の装着記録を抽出条件とした18,19,20,21.活動強度は 1.6~1.9 METsの低強度軽負荷活動(low-intensity light physical activity: LLPA),2.0~2.9 METsの高強度軽負荷活動(high-intensity light physical activity: HLPA),3.0 METs以上の中等度負荷以上活動(moderate to vigorous-intensity physical activity: MVPA)に分類した22,23

7) 運動耐容能

米国胸部学会(American Thoracic Society: ATS)に準じて246分間歩行試験を施行し,6分間歩行距離(6 minutes walk distance: 6MWD)を評価した.

8) 体組成

生体インピーダンス測定器はInBody S10(インボディ・ジャパン,東京)を使用し,除脂肪体重(fat-free mass: FFM),筋肉量(muscle mass: MM),四肢骨格筋指数(skeletal muscle mass index: SMI),位相角(phase angle: PhA)を評価した.

5. 統計解析

統計解析には,JMP® Pro 15(SAS Institute Inc., Cary, NC, USA)を用いた.カテゴリー変数は度数と割合で示し,連続変数は平均値と標準偏差あるいは中央値と四分位範囲で示した.データの正規分布の適合度検定は,Shapiro-Wilk検定を行った.FAIと各指標との相関分析はSpearmanの順位相関係数を用い,FAIに影響を与える因子分析はstepwise法による重回帰分析を用いた.またFAIの全15項目を用いて最尤法による探索的因子分析を行った.因子数の決定は,相関行列の固有値を順に並べて固有値の大きさが平坦になる前の固有値番号を因子数とするスクリー基準に基づく判断を参考にして決定した.因子負荷量は0.40以上の基準を設定し,プロマックス回転を行った.FAIの各因子を反映する項目の合計得点と各指標との相関分析にはSpearmanの順位相関係数を用いた.全ての解析は,両側検定で有意水準は5%とした.

結果

1. 患者背景(表1

今回,解析対象となった74名の患者背景および各指標の評価結果を表1に示す.FAI 平均値は20.2±9.3点,平均年齢74.9±7.7歳,%FEV1 57.8±20.1%,BMI 22.5±3.6 kg/m2,男性が89%,HOT使用率は20%であった. ADLはBI中央値100[四分位点95,100]で,基本的なADLが自立している患者がほとんどであった.

表1 患者背景
IADL
 FAI(点)20.2±9.3
患者一般情報
 年齢(歳)74.9±7.7
 男性,n(%)66(89%)
 BMI(kg/m222.5±3.6
 喫煙歴(非喫煙/過去/現在),n(%)1(1.4%)/66(89.2%)/7(9.4%)
 COPDの病期分類(I/II/III/IV),n(%)11(15%)/38(51%)/16(22%)/9(12%)
 労作時低酸素血症,n(%)38(51%)
 増悪頻度(回/年)0[0-1]
 併存疾患数(個)2[1-2]
 HOT使用,n(%)15(20%)
 mMRC(0/1/2/3/4),n(%)14(19%)/24(32%)/20(27%)/16(22%)/0(0%)
 独居,n(%)17(23%)
 住環境(戸建て/集合住宅),n(%)56(76%)/18(24%)
呼吸機能
 VC(L)2.99±0.71
 %VC(%)91.5±16.8
 FEV1(L)1.45±0.56
 %FEV1(%)57.8±20.1
 FEV1/FVC(%)50.3±11.5
 FVC(L)2.81±0.72
 %FVC(%)88.8±19.3
 IC(L)2.10±0.59
 DLCO(mL/min/mmHg)7.79±4.49
 %DLCO(%)38.0±19.8
ADL
 BI(点)100[95-100]
 NRADL(点)83[71.3-95]
QOL
 CAT(点)9.5[5-16]
身体活動性
 歩数(歩/日)2446.8[854.2-5399.4]
 LLPA(分/日)84.8[60-111.9]
 HLPA(分/日)112.1[74.7-169.6]
 MVPA(分/日)34.6[16.8-65.1]
身体機能
 6MWD(m)390.6±133.7
体組成
 FFM(kg)41.3±7.6
 MM(kg)39.0±7.2
 SMI(kg/m26.6±1.1
 PhA(°)4.8±0.8

mean±SD or median[IQR].

FAI, Frenchay activities index; BMI, body mass index; mMRC, modified Medical Research Council; VC, vital capacity; FEV1, forced expiratory volume in 1 second; FEV1/FVC, forced expiratory volume% in one second; FVC, forced vital capacity; IC, inspiratory capacity; DLCO, lung diffusing capacity of CO ; BI, Barthel Index; NRADL, The Nagasaki University Respiratory ADL questionnaire; CAT, COPD Assessment test; LLPA, low-intensity light physical activty; HLPA, high-intensity light physical activity; MVPA, moderate to vigorous-intensity physical activity; 6MWD, 6 minute walk distance; FFM, fat-free mass; MM, muscle mass; SMI, skeletal muscle mass index; PhA, phase angle.

2. FAIと各指標との単相関(表2

FAIと各指標との単相関の結果を表2に示す.臨床的重症度を示すCOPDの病期分類が高度なほど有意に低値を示し(p<0.05),HOT使用者で有意に低値を示していた(p<0.01).呼吸機能ではFEV1,%FEV1,FEV1/FVCが低下しているほど有意に低値を示した(p<0.05).ADL自立度や運動耐容能が高く,身体活動性が多いほど有意に高値を示した(p<0.01).各臨床評価項目の中でも特にHLPAとの相関関係を強く認めた.

表2 FAIと各指標との単相関
Spearmanの順位相関係数(rs)p値
年齢-0.10n.s.
性別0.19n.s.
BMI0.06n.s.
COPDの病期分類-0.27<0.05
労作時低酸素血症-0.03n.s.
増悪頻度-0.16n.s.
併存疾患数-0.01n.s.
HOT使用-0.25<0.05
mMRC-0.22n.s.
独居0.12n.s.
住環境-0.12n.s.
VC0.07n.s.
%VC0.05n.s.
FEV10.27<0.05
%FEV10.26<0.05
FEV1/FVC0.32<0.01
FVC0.12n.s.
%FVC0.14n.s.
IC0.10n.s.
DLCO0.21n.s.
%DLCO0.18n.s.
BI0.28<0.05
NRADL0.39<0.01
CAT-0.20n.s
歩数0.32<0.01
LLPA0.29<0.05
HLPA0.51<0.01
MVPA0.32<0.01
6MWD0.31<0.01
FFM0.20n.s.
MM0.20n.s.
SMI0.18n.s.
PhA0.17n.s.

n.s., not significant.

BMI, body mass index; mMRC, modified Medical Research Council; VC, vital capacity; FEV1, forced expiratory volume in 1 second; FEV1/FVC, forced expiratory volume% in one second; FVC, forced vital capacity; IC, inspiratory capacity; DLCO, lung diffusing capacity of CO; BI, Barthel Index; NRADL, The Nagasaki University Respiratory ADL questionnaire; CAT, COPD Assessment test; LLPA, low-intensity light physical activty; HLPA, high-intensity light physical activity; MVPA, moderate to vigorous-intensity physical activity; 6MWD, 6 minute walk distance; FFM, fat-free mass; MM, muscle mass; SMI, skeletal muscle mass index; PhA, phase angle.

3. 重回帰分析(表3

Stepwise法による重回帰分析の結果を表3に示す.FAIの有意な寄与因子としてNRADL(p<0.01),LLPA(p<0.05),HLPA(p<0.01),MVPA(p<0.01)が選択された.特にHLPAが影響を与える因子として強かった.

表3 重回帰分析
回帰係数標準化回帰係数(βp値
HOT使用-3.365693 -0.29348n.s.
NRADL0.32175130.660243<0.01
LLPA-0.083885-0.3027<0.05
HLPA0.110040.778863<0.01
MVPA-0.096206-0.39052<0.01

分散分析p<0.01,R2=0.42,共変量:年齢,性別,n.s., not significant.

NRADL, The Nagasaki University Respiratory ADL questionnaire; LLPA, low-intensity light physical activty; HLPA, high-intensity light physical activity; MVPA, moderate to vigorous-intensity physical activity.

4. 因子分析(表45

1) 因子分析の結果

探索的因子分析による結果を表4に示す.因子分析の結果,4つの因子が抽出された.「買い物」の項目は因子1,2に,「趣味」の項目は因子2,3に属していたが,どちらも因子負荷量の大きい因子に含めた.「家や車の手入れ」「旅行」の項目はどの因子にも含まれなかった.因子1は「食事の用意」「食事の後片付け」「洗濯」「掃除や整頓」「力仕事」の5項目からなり,「家事活動」と名付けた.因子2は,「買い物」「外出」「屋外歩行」「趣味」「交通手段の利用」「読書」の6項目からなり,「外出・趣味活動」と名付けた.因子3は「庭仕事」,因子4は「勤労」のみであり,それぞれ「庭仕事」,「仕事」と名付けた.

2) 各因子と各指標との単相関

各因子と各指標と単相関の結果を表5に示す.家事活動は,女性,独居者で有意に高値を示し(p<0.01),ADL,HLPAとの相関関係を認めた(p<0.05).外出・趣味活動は,FEV1,歩数,HLPAが高値であるほど有意に高値であった(p<0.05).庭仕事は,独居者,集合住宅在住者,HOT使用者で有意に低値を示した(p<0.05).また呼吸機能,ADL,QOL,HLPA,運動耐容能との相関関係を認めた(p<0.05).仕事は,年齢が若いほど有意に高値を示し(p<0.01),mMRC,ADL,身体活動性,運動耐容能,体組成との相関関係を認めた(p<0.05).

表4 FAIの因子分析
因子1
(家事活動)
因子2
(外出・趣味活動)
因子3
(庭仕事)
因子4
(仕事)
共通性
食事の後片付け0.89633-0.00449-0.05640-0.066600.78387
食事の用意0.85632-0.180610.03238-0.033500.67384
洗濯0.83028-0.047860.06107-0.158840.67400
掃除や整頓0.588450.14232-0.107880.158840.46506
力仕事0.542170.130300.112110.336360.58864
屋外歩行0.069610.786820.01630-0.171700.60071
読書-0.145600.681460.02802-0.234510.39213
交通手段の利用-0.110560.557100.015220.415890.60645
買い物0.426550.50288-0.07181-0.002030.54190
趣味0.07210.480420.40121-0.153000.48280
外出0.161480.410540.052690.297830.43824
庭仕事-0.00438-0.033671.004980.025641.00000
家や車の手入れ0.025770.096840.389320.315560.34801
旅行-0.137880.287550.289000.100910.23393
勤労-0.04256-0.280480.038080.637790.37225
因子寄与3.49293.04431.90421.4657
蓄積寄与率23.28620.29512.6959.771

表5 各因子を反映する項目の得点合計と各指標との単相関
因子1
(家事活動)
因子2
(外出・趣味活動)
因子3
(庭仕事)
因子4
(仕事)
年齢-0.100.000.08-0.46**
性別0.38**0.02-0.020.04
BMI-0.050.08-0.03-0.03
COPDの病期分類-0.13-0.16-0.21-0.15
労作時低酸素血症-0.080.020.050.03
増悪頻度-0.110.01-0.13-0.07
併存疾患数-0.080.03-0.06-0.11
HOT使用-0.17-0.09-0.30**-0.17
mMRC-0.18-0.05-0.22-0.32**
独居0.32*-0.08-0.24*-0.11
住環境0.00-0.09-0.37**-0.12
VC-0.180.170.060.17
%VC-0.110.090.080.08
FEV10.060.23*0.180.22
%FEV10.160.150.170.14
FEV1/FVC0.200.190.26*0.20
FVC-0.110.190.050.15
%FVC0.030.130.040.04
IC-0.110.160.050.12
DLCO0.120.080.28*0.18
%DLCO0.160.020.29*0.13
BI0.25*0.120.27*0.33**
NRADL0.25*0.220.47**0.27*
CAT-0.16-0.08-0.25*-0.16
歩数0.110.34**0.080.45**
LLPA0.220.190.220.38**
HLPA0.42**0.33**0.27**0.48**
MVPA0.210.230.150.41**
6MWD0.130.200.36**0.42**
FFM-0.020.23*0.060.24*
MM-0.020.23*0.060.25*
SMI-0.020.190.040.22
PhA0.040.150.140.30**

Spearmanの順位相関係数,*: p<0.05.**: p<0.01.

BMI, body mass index; mMRC, modified Medical Research Council; VC, vital capacity; FEV1, forced expiratory volume in 1 second; FEV1/FVC, forced expiratory volume% in one second; FVC, forced vital capacity; IC, inspiratory capacity; DLCO, lung diffusing capacity of CO ; BI, Barthel Index; NRADL, The Nagasaki University Respiratory ADL questionnaire; CAT, COPD Assessment test; LLPA, low-intensity light physical activty; HLPA, high-intensity light physical activity; MVPA, moderate to vigorous-intensity physical activity; 6MWD, 6 minute walk distance; FFM, fat-free mass; MM, muscle mass; SMI, skeletal muscle mass index; PhA, phase angle.

考察

本研究では,FAIを使用し,安定期COPD患者におけるIADLとそれに関連する因子について検討した.FAIは信頼性・妥当性が検証され25,性別・年齢別の標準値が示され26,本邦で使用されることが多く,呼吸器疾患での有用性も示唆されている27.その結果,臨床的重症度を示す各指標,呼吸機能,ADL,身体活動性,運動耐容能と有意に相関していた.またHLPAが重回帰分析でも有意であり,因子分析で抽出された4因子でも身体活動性に関連する因子と有意な相関を認めた.

一般的にCOPD患者のADL低下は疾患進行に伴い生じ28,ADLに影響を与える因子は,呼吸困難,換気制限,動的肺過膨張等が報告されている29.本研究においてIADLも,COPDの病期分類,HOT使用,FEV1,%FEV1,FEV1/FVCと有意な相関関係を認めた.ADL低下同様にIADL低下にも臨床的な疾患進行や気流制限との関連が示唆された.これまでの報告によると,HOT使用のCOPD患者は,気流制限や呼吸困難により屋外活動が制限されやすいと指摘されている11,12.地域在住高齢者のIADLには,身体機能,身体活動性の影響が報告されている6,7,9.また,生活機能はIADL,ADLの順に低下する2,3.IADLを保つことはそれらの生活機能を保つだけでなく,基本的なADLを保つ観点からも重要である.

FAIは身体活動性のレベル指標の1つであるHLPA(2.0~2.9 METs)と相関係数が最も高く,MVPA(3.0 METs以上)およびLLPA(1.6~1.9 METs)との相関係数は相対的に低かった(表2).一般的に示されているMETs表30にしたがって本研究の活動項目を当てはめると,3.0 METs以上のMVPAに相当する項目が多い.したがって順当に考えれば,MVPAはFAIと最も強く関係してもいいはずだが,本研究の結果は異なっていた.METs表は,子どもや高齢者のエネルギーコストを反映しておらず,18~65歳のデータに基づいていることから子どもや高齢者を対象とするには限界がある.一般的に 3.0 METs以上として測定される活動項目においても,本研究対象者が平均年齢74.9歳と後期高齢者で慢性疾患を伴うことを考慮すれば,実際の測定で 2.9 METs以下になったことは理解可能な範囲と思われる.これらのことは,HLPAがFAIと最も相関係数が高かった要因の一つとなった可能性がある.

本研究では,探索的因子分析によってFAIの15項目を家事活動,外出・趣味活動,庭仕事,仕事の4つの因子に分類し,それぞれの因子の実施の有無にかかわる有意な項目を示すことができた(表5).それらの有意性の背景にある要因を考察すると,第一に生活における慣習や要求度の高さに関する要因が挙げられる.本研究の多くの対象者が含まれる65歳以上の高齢者では,家事関連時間は依然として女性が担っている傾向が強く31,有意な性差が生じていたと推察される.また家事活動は呼吸機能や呼吸困難などの重症度を示す項目とは無関係に実施されているのは,生活上必須の活動ゆえであり,独居とも有意に関連していることを考えれば,矛盾はない.第二に疾患の臨床的重症度が影響している.外出・趣味活動,庭仕事では気流閉塞の影響を認め,さらに庭仕事は気腫化やHOT使用の影響も認めていた.仕事ができているCOPD患者では,ADL,身体活動性,運動耐容能,体組成が比較的に保たれており,呼吸困難は軽度の傾向がみられた.今回の因子分析は,IADLの実施の有無に慣習や要求度の高さに関する要因と臨床的重症度が関係していることを示唆していたと考えられる.

安定期COPD患者に対して行うリハビリテーションは,呼吸困難を緩和し,身体活動性を維持し,運動耐容能を向上させる32,33.これらの要素とIADLは有意に関連していることから,リハビリテーションは,IADLを改善させたり,その低下を予防したりする効果を持つ可能性がある.IADLをターゲットとしたアプローチとしては,今回の因子分析結果を踏まえると,家庭内の役割分担の再検討で意識に変化を起こさせたり,動作指導によって呼吸困難による心理的バリアを緩和したりすることなどが挙げられる.

本研究の限界として以下の四点が考えられた.第一に,症例数が十分ではなく性別の内訳に偏りがあるため,結果の解釈に注意が必要である.第二に,単一施設での研究のため,結果の一般化に影響を与える可能性がある.第三に,横断研究のため,結果に関しての因果関係が不明である.第四に,IADLに影響を与える因子である認知機能,精神機能,多剤服用の関連を考慮していないことである.

以上,ADLがほぼ自立した安定期COPD患者におけるIADLは,環境要因および臨床的な疾患進行と関連しており,特に,身体活動に関わる因子と最も強く関連していた.安定期COPD患者のIADL低下を予防することは,身体活動性にも影響を与える可能性が示唆された.今後,縦断研究や介入試験による因果関係の検証やADL障害を呈している患者との比較検証の必要性があると考える.

著者のCOI(conflicts of interest)開示

本論文発表内容に関して特に申告すべきものはない.

文献
 
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