The Journal of the Japan Society for Respiratory Care and Rehabilitation
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Questionnaire survey of CPAP telemedicine: a comparison between just after medical fee revision and one year later
Naomi Takahashi Toru OgaSusumu SatoToyohiro HiraiKazuo Chin
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2023 Volume 31 Issue 2 Pages 224-230

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要旨

2018年の診療報酬改定によりCPAP診療に対して遠隔モニタリング加算が新設されたが,運用状況の把握が必要とされる.患者・医療機関双方に有益な遠隔医療の在り方を検討するため実態調査を実施し,制度新設4か月後(2018年)とその1年後(2019年)のCPAP診療状況を比較した.日本睡眠学会・日本呼吸器学会・日本循環器学会の認定・専門・関連施設に自記式アンケートを送付した.CPAP使用人数は104,354人(2018年),116,151人(2019年)であった.1年後の2019年には73.5%の施設が遠隔診療を認知し,うち19.0%,8,854台が遠隔診療を実施中と,わずかに増えた.66.7%の施設が加算点数の増加など見直しがあればCPAP遠隔診療を実施すると回答した.制度新設後1年で受診間隔延長や遠隔医療が進んでいるものの十分とはいえなかった.遠隔診療実施には遠隔加算の診療報酬が十分でなく施設基準等のハードルもあり,全国的な遠隔診療の普及には時間が必要で,今後の普及に期待したい.

緒言

遠隔医療とは,情報通信機器を活用した健康増進,医療に関する行為である1.在宅遠隔モニタリングが世界的に普及するなか,本邦でも2018年の診療報酬改定により,持続性陽圧気道圧(continuous positive airway pressure: CPAP)療法,在宅酸素療法(home oxygen therapy: HOT)に対して遠隔モニタリング加算が新設された.遠隔モニタリング加算は,情報通信機能を備えた機器を用いて患者情報の遠隔モニタリングを行い,その上で療養上必要な指導,管理を行った場合に算定される.

私たちは,厚生労働科学研究費補助金地域医療基盤開発推進研究事業「持続陽圧(CPAP, ASV)治療管理開始時からの治療状況確認と自己学習を含めた患者・医療機関相互方向の遠隔医療の試み」のプロジェクト中で,まず2018年度に,日本睡眠学会専門・登録医療機関,日本呼吸器学会認定・関連施設,日本循環器学会認定循環器専門医研修・研修関連施設にCPAP診療に関する実態調査をしたところ,遠隔医療はまだ十分に実施されていないことがわかった2.遠隔モニタリング加算の制度を利用することで患者は受診間隔を延長できて医療従事者側の負担も軽減されることが可能となるなど,在宅遠隔モニタリングの有用性の認識が広まるなか,2018年度調査の時点で遠隔医療が十分広まっていないCPAP診療において,よりこの遠隔モニタリング加算の制度を普及させるためには制度新設1年後の運用状況の把握が必要とされた.そこで2019年度にも同様のCPAPの遠隔診療に関する実際調査を実施し,現在の対面診療を含めた診療の状況,遠隔診療の現実と課題,将来的展望などに関して,調査し,分析比較した.

対象と方法

日本睡眠学会専門医療機関・登録医療機関,日本呼吸器学会認定施設・関連施設,日本循環器学会認定循環器専門医研修施設・研修関連施設を対象に,自記式CPAP診療実態に関するアンケートを送付し,Webへの入力送信もしくはアンケート用紙へ記入返送で回答を収集した.研究参加同意はアンケートへの回答をもって得られたとし,回答者のプライバシーに配慮して回答施設名は含めず解析した.アンケート調査は,2018年,2019年と実施し,その結果を比較した.

以下の内容に関して2018年,2019年の現状を比較する質問項目を作成した.①現在のCPAP患者受診状況,また,CPAP「遠隔モニタリング加算」に関して,②診療報酬認可の認知状況,③それに基づいた遠隔診療の実施状況,④施設基準の認知状況,⑤施設基準に関する疑義解釈の認知状況.

さらに2019年調査では,以下の4点について遠隔モニタリング加算の見直しがあればCPAP遠隔医療を行うか,に関して意見を伺う調査も行った.①施設基準(2)「緊急時に概ね30分以内に当該保険医療機関が対面による診察が可能な体制を有していること」を「本加算の対象患者の日常的な通院・訪問によって対面診療が可能である医療機関」と変更,②加算点数を現行の150点から260点への増点,③連絡方法にメールを追加する,④治療経過(アドヒアランス)が良好な患者において,事前に患者から連絡不要の合意を得ている場合,連絡がなくとも臨床所見等の遠隔モニタリング加算の見直し.

結果

アンケート送付数は日本睡眠学会専門医療機関・登録医療機関(2018年送付数:110, 2019年送付数:109),日本呼吸器学会認定施設・関連施設(2018年送付数:880, 2019年送付数:905),日本循環器学会認定循環器専門医研修施設・研修関連施設(2018年送付数:1,354, 2019年送付数:1,358)であった.回収率を表1に示す.回収率は全体で2018年が27.8%,2019年が26.6%であった.

表1 自記式質問票の送付数と回収数
送付数回収数合計web回収紙回数総回収率(%)
日本睡眠学会*2018年11065402559.1
2019年10970462464.2
日本呼吸器学会*2018年88028918410532.8
2019年90527216610630.1
日本循環器学会2018年1,35430118811322.2
2019年1,35828818810021.2
全体2018年2,34465240924327.8
2019年2,37263040023026.6
*  重複(1つの回答に2学会名記載)含む

現在のCPAP患者受診状況について表2に示す.3学会関連施設では,2018年は104,354人のCPAP診療患者数に対して54.1%の患者で毎月受診が継続されていた.2019年は116,151人のCPAP診療患者数に対して45.1%の患者で毎月受診が継続されていた.特に2018年は62.8%で毎月受診が継続されていた日本睡眠学会関連で2019年では毎月受診の割合が49.8%に減少していた.

表2 CPAP患者数と受診間隔のようす
CPAP患者全体数1ヶ月受診2ヶ月受診3ヶ月受診
nnnn
日本睡眠学会2018年度51,96532,62762.814,71028.36,22212.0
2019年度52,89026,36249.818,17334.47,13713.5
日本呼吸器学会2018年度33,41916,30848.812,40837.14,39713.2
2019年度40,83917,88943.816,99241.65,63113.8
日本循環器学会2018年度18,9707,57239.97,64340.33,54118.7
2019年度22,4228,17736.510,63247.43,25814.5
全体2018年度104,35456,50754.134,76133.314,16013.6
2019年度116,15152,42845.145,79739.416,02613.8

2018年4月から始まった,遠隔モニタリング加算が診療報酬上認められたことについての認知度であるが,2018年は3学会全体で67.3%,日本睡眠学会で98.5%,日本呼吸器学会で70.2%,日本循環器学会で57.8%であった.2019年は3学会全体で73.5%,日本睡眠学会で97.1%,日本呼吸器学会で78.3%,日本循環器学会で63.2%とその認知度が高まった.

遠隔モニタリング加算が診療報酬上認められたことを把握していた施設を対象に遠隔診療の実施率を調べた結果を図1に示す.3学会全体で2018年では17.0%だった遠隔診療が2019年では19.0%とわずかに増加した.また遠隔モニタリング加算を行っているCPAP台数について調査した結果を図2に示す.こちらの結果からCPAP遠隔診療に関しては,3学会関連施設では2018年は6,609人で実施されていたが2019年では8,854人まで増加していた.

図1

CPAPに関する「遠隔モニタリング加算」に基づいた遠隔診療を行っていますか.(回答対象はCPAPに関する「遠隔モニタリング加算」を認知していると回答した施設)

図2

「遠隔モニタリング加算」を行っているCPAP台数はどれくらいですか.(総数,回答対象はCPAPに関する「遠隔モニタリング加算」を認知していると回答した施設)

本調査実施当時の遠隔モニタリング加算を行うにあたっての施設基準について,その内容の認知状況と施設基準の疑義解釈に関連する調査結果を表3に示す.本調査実施当時の遠隔モニタリング加算施設基準は,①厚生労働省の定める,情報通信機器を用いた診療に係る指針等に沿って,診療を行う体制を有する保険医療機関であること,②緊急時に概ね30分以内に,当該保険医療機関において診察可能な体制を有していること(ただし,小児科療養指導料,てんかん指導料又は難病外来指導管理料の対象患者は除く)の2点であった.この施設基準を満たす旨の届け出を行った施設は,2018年は3学会全体で17.4%,2019年は3学会全体で21.9%となり少し増加していた.施設基準の内容についての認知は日本睡眠学会では2018年で96.9%,2019年で95.7%と,他の2つの学会と比較し認知度が非常に高く,疑義解釈の認知についても同様の傾向がみられた.

表3 遠隔モニタリング加算を行うにあたっての施設基準とその疑義解釈に関する調査(%)
「遠隔モニタリング加算」を行うにあたって下記の施設基準があることをご存知ですか.(1)厚生労働省の定める情報通信機器を用いた診療に係る指針等に沿って診療を行う体制を有する保険医療機関であること.(2)緊急時に概ね30分以内に当該保険医療機関において診察可能な体制を有していること.(ただし,小児科療養指導料,てんかん指導料又は難病外来指導管理料の対象患者は除く.)
日本睡眠学会日本呼吸器学会日本循環器学会全体
はいいいえ無回答はいいいえ無回答はいいいえ無回答はいいいえ無回答
2018年96.93.10.054.743.91.447.551.21.355.643.11.2
2019年95.74.30.062.535.71.850.747.91.460.837.81.4
施設基準を満たす旨の届出を出しましたか.
日本睡眠学会日本呼吸器学会日本循環器学会全体
はいいいえ無回答はいいいえ無回答はいいいえ無回答はいいいえ無回答
2018年41.558.50.012.186.21.716.980.72.317.480.81.8
2019年48.651.40.016.980.52.620.178.11.721.976.21.9
「CPAP遠隔医療」を行っていないのは施設基準を満たしていないからですか.
日本睡眠学会日本呼吸器学会日本循環器学会全体
はいいいえその他無回答はいいいえその他無回答はいいいえその他無回答はいいいえその他無回答
2018年24.630.824.620.028.446.717.67.325.249.815.99.026.646.617.69.3
2019年17.141.418.622.928.336.823.211.830.239.915.614.227.938.719.214.1
施設基準の中で,次のような疑義解釈があったことをご存知ですか.「緊急時に概ね30分以内に当該保険医療機関が対面による診察が可能な体制」とは,日常的に通院・訪問による診療が可能な患者を対象とするものであればよい.
日本睡眠学会日本呼吸器学会日本循環器学会全体
はいいいえ無回答はいいいえ無回答はいいいえ無回答はいいいえ無回答
2018年66.233.80.025.372.72.128.967.83.331.066.62.4
2019年70.028.61.433.865.11.128.170.81.035.263.71.1
施設基準の中で,次のような疑義解釈があったことをご存知ですか.在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料の遠隔モニタリング加算の施設基準に,「遠隔モニタリング加算の算定を行う患者について,緊急時に概ね30分以内に当該保険医療機関が対面による診察が可能な体制を有していること.」とあるが,当該モニタリングに係る疾患について,緊急時に概ね30分以内に当該保険医療機関が対面による診察が可能な体制があればよいか.(答)そのとおり.
日本睡眠学会日本呼吸器学会日本循環器学会全体
はいいいえ無回答はいいいえ無回答はいいいえ無回答はいいいえ無回答
2018年72.327.70.026.071.62.429.966.14.032.464.72.9
2019年81.418.60.037.561.41.131.667.41.039.759.41.0
上記の施設基準の疑義解釈で「当該モニタリングに係る疾患について,緊急時に概ね30分以内に当該保険医療機関が対面による診察が可能な体制」とあるが,CPAP使用中の患者で機器,マスクの不具合など以外で,睡眠時無呼吸の患者が睡眠時無呼吸自体によって緊急を要することがありますか.(通常,機器マスクの不具合は業者が担当すると思われる.また,睡眠時無呼吸患者が脳心血管障害などを起こした場合,脳心血管障害が緊急を要するので,「当該モニタリングに係る疾患」すなわち睡眠時無呼吸とは別個に考える.)
日本睡眠学会日本呼吸器学会日本循環器学会全体
はいいいえ無回答はいいいえ無回答はいいいえ無回答はいいいえ無回答
2018年4.695.40.02.194.83.14.391.04.73.493.13.5
2019年10.090.00.04.893.02.23.194.12.84.693.22.2
2018年7月10日の疑義解釈で【遠隔モニタリング加算】問19に,「区分番号「C103」在宅酸素療法指導管理料及び区分番号「C107-2」在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料の遠隔モニタリング加算について,モニタリングを行った結果,その時点で急を要する指導事項がなく,療養上の指導を行わなかった場合にも算定できるか.(答)遠隔モニタリング加算は,予め作成した診療計画に沿って,モニタリングにより得られた臨床所見に応じて,療養上の指導等を行った場合の評価であり,モニタリングを行っても,療養上の指導を行わなかった場合は,算定できない.となっています.本算定の参考に中医協でも報告されたランダム化比較試験(RCT)では「遠隔モニター資料を評価したうえで,一定の基準を満たしていれば,その要件をカルテに記し,その月は連絡なしでも,毎月受診と差がなかった」との資料でした.昨年,中医協でも報告されたRCTと同様に「患者と取り交わされた診療計画書の基準を満たしてCPAPを使用していた場合,その資料をモニタリングで確認した当該月は{基準を満たしたので患者連絡なし}」としてカルテに記載して遠隔指導モニタリング加算した場合と,そのような当該月でも「今月はかわりありませんでした」などと患者に直接連絡した場合とでは患者のCPAP療養に差が出ると思われますか.
日本睡眠学会日本呼吸器学会日本循環器学会全体
はいいいえ無回答はいいいえ無回答はいいいえ無回答はいいいえ無回答
2018年13.881.54.68.384.47.37.085.47.68.284.67.2
2019年14.381.44.39.284.66.38.088.23.89.285.94.9

2019年調査では,前出の「対象と方法」で示したように遠隔モニタリング加算の見直しがあればCPAP遠隔医療を行うか,に関する調査も行ったところ,3学会全体で66.7%,日本睡眠学会で78.6%,日本呼吸器学会で66.5%,日本循環器学会で63.9%がこれらの見直しがあればCPAP遠隔診療を行うと回答した.また2019年調査で「CPAP使用中の患者で機器,マスクの不具合など以外で,睡眠時無呼吸の患者が睡眠時無呼吸自体によって緊急を要することがあるか」尋ねたところ,3学会全体で「はい」の割合は4.6%で,睡眠時無呼吸のみで30分以内に受診が必要とされた例はなかった.

考察

本アンケート調査は多くの施設から回答をいただき,CPAP使用全体患者数は,2018年度も2019年度も10万人以上を網羅している貴重なデータ記録である.この記録の解析から次のことが示された.(1)3学会関連施設では,2018年は104,354人のCPAP診療患者数に対して54.1%の患者で毎月受診が継続されていたが,2019年は116,151人のCPAP診療患者数に対して45.1%の患者で毎月受診が継続されていた.(2)遠隔モニタリング加算が診療報酬上認められたことについての認知度は,3学会全体で2018年は67.3%であったが,2019年は3学会全体で73.5%まで高まった.(3)3学会全体で2018年では17.0%だった遠隔診療施設が2019年では19.0%とわずかに増加し,2018年はCPAP遠隔診療が6,609人で実施されていたが,2019年では8,854人まで増加していた.(4)CPAP遠隔診療施設基準を満たす旨の届け出がなされたのは,3学会全体では2018年は17.4%,2019年は21.9%となり増加していた.(5)66.7%もの施設が,遠隔モニタリング加算の見直しがあればCPAP遠隔医療を行うと回答した.

CPAPの毎月受診患者の割合の低下(54.1%から45.1%)は,一つには,遠隔使用患者数の増加も合わせ,遠隔診療が少しずつ浸透しつつあることを示している.しかし,まだ半数近くが毎月受診を継続している点については,すべての施設で遠隔診療を容易に実施できる環境が整っているわけではないことが,今回の調査結果でもCPAP診療に関する遠隔モニタリング加算に基づいた遠隔診療を行っている施設の割合が2019年で19.0%に留まっていることからも推察される.遠隔診療を行っている施設でのみ順調にCPAP遠隔診療が進んでいる可能性も否定できないので,今後は各施設が遠隔医療を実施しやすくするための制度や加算の見直しが必要と考えられる.さらにCPAP遠隔診療を行うには,通信インフラの整備や情報システム等の整備,遠隔モニタリングで得られたデータを実際の診療で円滑に活用出来るように補助する臨床検査技師などのメディカルスタッフの確保も必要となる.そのため各施設が遠隔医療を取り入れるための環境整備への支援も重要と考えられる.また,加えて,CPAP使用患者が増加の一途で,使用患者の半数は60歳以下が占めており3,受診間隔をあけたい社会的な要請を反映しているかもしれない.

遠隔モニタリング加算が診療報酬上認められたことについての認知度が1年で67.3%から73.5%まで高まったことは,学会などでも情報共有され,議論されることの効果が大きいと考えられる.特に影響を受けやすいであろう日本睡眠学会で高値であったことがそれを表している.

遠隔診療を行なっている施設の割合はそれほど伸びておらず(17.0%から19.0%),台数にして2018年度は6,609台,2019年度は8,854台程度であった.Muraseらの報告では,遠隔モニタリングを実施していれば受診間隔が3ヶ月の場合でも,毎月受診と同等のCPAPアドヒアランス維持効果があり,かつ,患者満足度も高く,診療報酬改定など普及を促す施策が望まれると考えられている4.しかし2年で遠隔診療実施率がそれほど伸びなかった理由として,上記の施設基準が影響すると考えられる.この施設基準は,2018年度は55.6%,2019年度は60.8%と,多くの施設が上記基準を認識していた.しかし施設基準を満たす旨の届出がなされたのが2018年度は17.4%,2019年度は21.9%程度であったことは,この施設基準の厳しさが届出をするか否かのハードルになっていた可能性が考えられる.なお,前出の施設基準のうち「②緊急時に概ね30分以内に,当該保険医療機関において診察可能な体制を有していること(ただし,小児科療養指導料,てんかん指導料又は難病外来指導管理料の対象患者は除く)」は2020年に見直すことが明言され,削除されているので,今後届出を行う施設は増える可能性がある.

遠隔モニタリング加算の見直しがあればCPAP遠隔医療を行うと回答した施設が全体で66.7%も占めたことから,毎月受診の割合がなかなか減少しないのは併存疾患の扱いや患者の希望だけが理由でないことや遠隔モニタリング加算の診療報酬が十分とは言い難いことを示しているといえる.診療報酬の増減は病院経営に大きな影響を与える原因となり得るため,従来よりも得られる報酬が少なくなるような制度の改定は,新たな遠隔診療実施のためにはコストや労力も必要となる医療機関側には大きな負担でしかない.制度を改定する場合は,患者側だけでなく医療機関側にも十分配慮されることが必要と考えられる.

医師対患者の遠隔医療の今後であるが,通信サービスの発展やスマートフォンなどのコミュニケーションに関する先進機器の普及が始まり,日常生活に浸透して診療行為を改革すると期待される.そのためには情報通信機器を用いた診療と遠隔モニタリングの分離から脱却して,オンライン診療や外来診療とプロセスが結びつく診療モデルおよび診療報酬のあり方などが課題となる5.遠隔医療は今後,ますます普及していくと考えられるので,すでにクラウドシステムがほぼ完備されているCPAP遠隔医療の適正な発展は,遠隔医療全体のプロトタイプとして期待される.そして受診間隔延長や遠隔医療の推進には,現場で遠隔医療を実施しやすくなるような制度や遠隔モニタリング加算の見直しが必要と考えられる.

本調査の限界として,調査対象が日本睡眠学会専門医療機関・登録医療機関,日本呼吸器学会認定施設・関連施設,日本循環器学会認定循環器専門医研修施設・研修関連施設に限られているため,特に地域医療を支えるクリニックなどが含まれず,存在する全ての医療機関を対象としたものではない.しかしながらCPAP診療を実施している全国の主要医療機関を網羅しているため,本調査の結果は貴重なものと考えられる.

今回の調査では,CPAP診療に対する遠隔モニタリング加算制度新設後1年での変化として患者数でみると,受診間隔延長や遠隔医療が進んでいるが,CPAP診療に関する遠隔モニタリング加算に基づいた遠隔診療を行っている施設数はそれほど増加していないことがわかった.このことから,遠隔診療を行っている施設では順調に遠隔診療が浸透しているが,CPAP診療全体としては遠隔診療の浸透が十分とはいえない現状が明らかとなった.今回の調査により,CPAP診療全体として受診間隔延長や遠隔医療を推進するには,現場で遠隔医療を実施しやすくなるように,遠隔モニタリング加算に基づく遠隔診療実施認定施設基準の改定などの制度の改革や,算定額の増加などの遠隔モニタリング加算の見直しが必要と考えられる課題も見えた.医療機関には現状にあった制度が整えば遠隔診療を実施する意欲はあると考えられ,実際に2020年度には制度改定もあったので,今後の普及に期待したい.2020年の新型コロナウイルス感染症の蔓延の影響もあり,遠隔診療の需要は今後ますます高まるであろう.

備考

本研究は,厚生労働科学研究費補助金(地域医療基盤開発推進研究事業)持続陽圧(CPAP, ASV)治療管理開始時からの治療状況確認と自己学習を含めた患者・医療機関相互方向の遠隔医療の試み(H30-医療-一般-009)によって実施された.

謝辞

本アンケート実施にあたり,お力添えを頂きました日本睡眠学会・日本呼吸器学会・日本循環器学会関係者の皆さま,アンケートにご協力頂きました日本睡眠学会専門医療機関・登録医療機関,日本呼吸器学会認定施設・関連施設,日本循環器学会認定循環器専門医研修施設・研修関連施設の先生がたに,心より感謝申し上げます.

本論文の要旨は,第30回日本呼吸ケア・リハビリテーション学会学術集会(2021年3月,京都)で発表し,座長推薦を受けた.

著者のCOI(conflicts of interest)開示

高橋順美,佐藤晋;寄附講座(フィリップス・ジャパン,レスメド株式会社,フクダ電子株式会社,フクダライフテック京滋株式会社),小賀徹;講演料(帝人在宅医療株式会社),平井豊博;本論文発表内容に関して特に申告すべきものはない,陳和夫;寄附講座(フィリップス・ジャパン,レスメド株式会社,フクダ電子株式会社,フクダライフテック京滋株式会社,フクダライフテック東京株式会社)

文献
 
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