The Journal of the Japan Society for Respiratory Care and Rehabilitation
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Changes in physical function and ADL before and after surgery in elderly lung cancer patients—Comparison with non-elderly people—
Nobuhisa Ishii Yu ShinoharaMaki Taguchi
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2023 Volume 31 Issue 3 Pages 322-327

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要旨

高齢者はがん手術後の回復遅延,術後合併症,ADL低下のリスクが高いとされている.本研究では高齢群と非高齢群に分け,肺癌手術前後の運動耐容能,身体機能・ADLの特性,手術前後における身体機能・ADLの変化率を比較した.対象は原発性肺癌の診断で肺切除術を受けた患者46名(高齢群22名,非高齢群24名)とした.カルテより患者背景(年齢・呼吸機能など),手術関連因子(術式・手術時間など),手術前後の身体機能・ADLとその変化率を調査し群間比較を行った.術前の6分間歩行距離,TUG,片脚立位保持時間は高齢群で有意に低値を示したが,手術前後における身体機能・ADLの変化率は両群間で有意差は認めなかった.術前の運動耐容能や身体機能で非高齢群に比して有意に低値を示した高齢群でも,周術期の呼吸リハビリテーションにより非高齢群と同程度の改善効果を得ることができ,手術後のADLが維持できる可能性が示唆された.

緒言

2020年の日本胸部外科学会学術調査2017年次報告1によると,原発性肺癌に対して年間44,140例の手術が行われ,そのうち70歳以上が56%と高い比率を占めており,手術対象者の高齢化の傾向は年々増加している2

高齢者肺癌手術の治療法選択は,第一義的に治療介入により生存期間の延長が期待されること,第二義的には治療介入によるquality of life(QOL),activities of daily living(ADL)といった社会生活機能の維持が,治療に際して予測される合併症のリスクを上回ると推察されることであるとされている2.そのため高齢者肺癌手術の有益性の判断には手術前後でのADL評価や合併症の発生率が重要項目であるが,これまでに高齢者の手術前後のADL変化に着目した報告はみられず,今後さらに高齢手術適応者の増加が予想されることからも早急に検証が必要と考える.一般的に高齢者は,身体機能低下や呼吸・循環機能低下,糖尿病などの代謝機能異常,認知機能の低下などの様々な身体的・心理的脆弱性を伴うため,手術後のADL低下や運動耐容能などの回復の遅れや術後合併症の発生が懸念されている3,4,5

肺癌周術期には合併症予防やADL改善を目的に呼吸リハビリテーションが推奨される3.これまでに,肺癌手術者への呼吸リハビリテーションの効果として手術前後の運動耐容能の変化は報告されている6,7,8,9.これらの報告は開胸術や60歳代を対象とし,術後7-10日目の評価が中心である.そのため,手術の低侵襲化により対象者の高齢化や入院期間が短縮している現状に合わせた高齢者の術後早期の段階での運動耐容能の検証が必要である.また,高齢者への手術が有益であるかを判断するには,運動耐容能の変化だけでなく,社会生活機能の維持を判断するADLやQOL,それらに影響を与えるバランス機能や筋力などの身体機能変化を明らかにする必要があると考えた.

そこで,本研究では75歳以上(以下,高齢群)と75歳未満(以下,非高齢群)の2群に分け,これまでの報告よりも術後早期の時点での運動耐容能に加えて筋力やバランス機能などの身体機能とADLを比較し,高齢者と非高齢者における肺癌手術前後の身体機能・ADLの特性の違いと手術前後における身体機能・ADLの変化率の違いを明らかにすることを目的とした.

対象と方法

1. 研究の概要

本研究は,肺癌手術前後の身体機能・ADLの特性と手術前後における身体機能・ADLの変化率を高齢者と非高齢者で比較した後方視的な観察研究である.

2. 倫理的配慮

本研究は,茨城県立中央病院の倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号857).対象者には,本研究の目的・方法・内容を十分に説明し,同意を得て実施した.また,研究の実施にあたっては,ヘルシンキ宣言に基づき対象者の個人情報の取り扱いについて個人情報保護法を遵守した.

3. 対象

2020年3月から12月の間に,当院呼吸器外科において原発性肺癌の診断で肺切除術を受けた患者のうち,理学療法の処方があった56名を対象とした.そのうち,手術前,退院時に理学療法未介入の症例(10名)を除外した46名を解析対象とし,75歳以上を高齢群,75歳未満を非高齢群と定義した.

4. 方法

評価・測定項目は,患者背景として年齢・性別・body mass index(以下,BMI)・喫煙指数(Blinkman Index)・原疾患進行度(clinical stage分類)・Performance Status(PS)・呼吸器疾患の既往の有無(慢性閉塞性肺疾患,間質性肺炎,気管支喘息,肺がんの手術歴)・糖尿病の有無・栄養状態(手術前血清アルブミン値(Alb))・フレイルの評価(日本語版CHS基準(J-CHS))・mMRC息切れスケール,呼吸機能として%肺活量・%1秒量・1秒率(FEV1/FVC),手術関連要因として術式(開胸術・胸腔鏡下手術(video-assisted thoracic surgery: VATS))・切除領域(葉切除・区域切除・部分切除)・手術時間・麻酔時間・胸腔ドレーン留置期間,身体機能・ADLとして手術前後の6分間歩行距離(6MWD)・握力・short physical performance battery(SPPB)・Timed Up & Go Test(TUG)・片脚立位保持時間・Barthel Index,術後経過として術後在院日数・術後合併症の発生数と内容をカルテより調査した.身体機能・ADLの手術後の値を手術前の値で除したものをそれぞれの変化率とした.上記項目を高齢群と非高齢群に分類し,群間比較を行った.

周術期の呼吸リハビリテーションは,術前は術前評価,有酸素運動の指導と深呼吸や排痰などの呼吸練習,手術後の早期離床の必要性を説明した.手術翌日より深呼吸や排痰などの呼吸練習,離床を開始した.手術翌日の歩行距離はリハビリテーション中止基準と経皮的酸素飽和度90%以上,修正Borg scale4以内を基準として,最大歩行距離に制限は設けなかった.手術後2日目から退院までは上記の基準に準じて歩行練習,自転車エルゴメーター,階段昇降などの有酸素運動,呼吸練習を中心に継続し,胸腔ドレーン抜去後に術後評価を実施した.周術期の呼吸リハビリテーションプログラムは両群とも同一の方法で行った.

5. 統計解析

量的変数の項目はShapiro-Wilk検定を行い,正規性が否定されない場合は対応のないt検定,正規性が否定された場合にはMann-WhitneyのU検定を実施した.質的変数の項目に関しては,χ2検定またはFisherの正確確率検定を実施した.統計には,IBM SPSS Statistics version 27を使用し,有意水準はp<0.05とした.

結果

対象者の背景を表1に示した.年齢は高齢群79.0±2.7歳,非高齢群67.8±5.7歳と高齢群で有意に高値を認めた(P<0.01).原疾患進行度,糖尿病の有無に両群間で有意差は認めなかった.PSは0もしくは1であり,全例が歩行可能で両群間に有意差は認めなかった.呼吸器疾患の既往がある症例は高齢群で有意に多く(調整済み残差:高齢群2.0,非高齢群-2.0),手術前Albは高齢群4.1±0.4g/dl,非高齢群4.3±0.3g/dlと高齢群で有意に低値を示した(P<0.05).J-CHSでは0のフレイルなしは非高齢群が有意に多く(調整済み残差:高齢群-2.9,非高齢群2.9),1のプレフレイルで高齢群が有意に多くなった(調整済み残差:高齢群2.7,非高齢群-2.7).mMRC息切れスケールでは0が非高齢群で有意に多く(調整済み残差:高齢群-3.0,非高齢群3.0),2が高齢群で有意に多くなった(調整済み残差:高齢群2.2,非高齢群-2.2).呼吸機能検査では%肺活量は高齢群102.1±16.2%,非高齢群93.8±16.8%,%1秒量は高齢群89.1±25.3%,非高齢群85.1±18.5%,1秒率は高齢群66.3±12.7% 非高齢群69.8±7.2%と両群間で有意差は認めなかった.

表1 患者背景
高齢群(n=22)非高齢群(n=24)P-Value
年齢(歳)79.0±2.767.8±5.70.00*
性別(女性)17(5)19(5)0.88
BMI(kg/m223.1±3.223.6±3.10.60
Blinkman Index911.4±716.8720.6±717.10.35
原疾患進行度17/5/0/019/2/3/00.14
 clinical stage分類I/II/III/IV(人)
Performance Status (0/1)(人)20/223/10.60
呼吸器疾患既往(人)18130.046**
糖尿病の合併(人)350.45
Alb(g/dl)4.1±0.44.3±0.30.014**
J-CHS 0/1/2/3/4/5(人)8/12/2/0/0/019/4/0/1/0/00.003*
mMRC息切れスケール 0/1/2/3/4(人)10/8/4/0/021/3/0/0/00.006*
%肺活量(%)102.1±16.293.8±16.80.60
%1秒量(%)89.1±25.385.1±18.50.55
1秒率(FEV1/FVC)(%)66.3±12.769.8±7.20.57

平均値±標準偏差

* p<0.01 ** p<0.05

BMI: body mass index

J-CHS:日本語版CHS基準

手術関連要因を表2に示した.術式,切除領域に両群間で有意差は認めなかった.手術時間は高齢群191.3±93.0分,非高齢群205.3±75.6分,麻酔時間は高齢群261.1±97.9分,非高齢群269.2±83.1分と両群間で有意差は認めなかった.

表2 手術関連要因
高齢群(n=22)非高齢群(n=24)P-Value
術式 開胸術/VATS(人)8/145/190.33
切除領域 葉/区域/部分(人)10/2/1014/3/70.57
手術時間(分)191.3±93.0205.3±75.60.58
麻酔時間(分)261.1±97.9269.2±83.10.76
胸腔ドレーン留置期間(日)4.0±1.74.5±3.70.89

平均値±標準偏差

* p<0.01 ** p<0.05

VATS: video-assisted thoracic surgery(胸腔鏡下手術)

手術前・手術後の身体機能・ADLを表3に示した.術前評価は手術前1週間の期間,術後評価は術後平均5.8日(中央値4日)に実施した.手術前の6MWDは高齢群423.0±88.2 m,非高齢群488.1±64.3 m(P<0.01),TUGは高齢群7.2±1.6秒,非高齢群6.3±1.5秒,片脚立位保持時間は高齢群21.9±20.1秒,非高齢群37.4±23.4秒(P<0.05)と両群間で有意差を認めた.握力とSPPBは両群間で有意差は認めなかった.Barthel Indexは両群で全例が100点で自立していた.手術後は,6MWD,握力,片脚立位保持時間,Barthel Indexは両群間で有意差は認めなかった.SPPBは高齢群11.5±0.9,非高齢群12.0±0(P<0.05),TUGは高齢群8.7±2.3秒,非高齢群7.4±1.5秒(P<0.05)と両群間で有意差を認めた.

表3 手術前・手術後における身体機能・ADLの比較
高齢群(n=22)非高齢群(n=24)P-Value
6分間歩行距離(m)
 術前423.0±88.2488.1±64.30.006*
 術後364.8±109.7400.6±90.60.24
握力(kg)
 術前30.0±8.533.5±8.20.15
 術後29.3±9.132.2±8.30.27
SPPB
 術前11.7±0.611.9±0.30.16
 術後11.5±0.912.0±0.00.02**
TUG(sec)
 術前7.2±1.66.3±1.50.03**
 術後8.7±2.37.4±1.50.04**
片脚立位保持時間(sec)
 術前21.9±20.137.4±23.40.02**
 術後24.2±19.934.9±24.70.07
Barthel Index
 術前100.0±0.0100.0±0.01.00
 術後98.0±1.4100.0±0.00.06

平均値±標準偏差

* p<0.01 ** p<0.05

SPPB: short physical performance battery TUG: Timed Up & Go Test

手術前後における身体機能・ADLの変化率を表4に示した.6MWDは高齢群85%,非高齢群82%と両群間で有意差は認めなかった.握力,SPPB,TUG,片脚立位保持時間,Barthel Indexの変化率でも両群間で有意差は認めなかった.

表4 手術前後における身体機能・ADLの変化率の比較
高齢群(n=22)非高齢群(n=24)P-Value
6分間歩行距離変化率(%)85.2±16.682.0±15.40.28
握力変化率(%)97.6±7.596.2±9.60.27
SPPB変化率(%)98.7±5.0100.7±2.60.11
TUG変化率(%)119.3±21.8118.1±17.70.87
片脚立位保持時間変化率(%)124.8±74.0107.0±61.30.39
Barthel Index変化率(%)98.0±6.7100.0±0.00.064

平均値±標準偏差

*p<0.01 **p<0.05

SPPB: short physical performance battery TUG: Timed Up & Go Test

術後経過を表5に示した.術後在院日数は高齢群6日(4-16日),非高齢群6日(5-29日)と両群間で有意差は認めなかった(P=0.77).術後合併症は高齢群6名,非高齢群5名で発生したが,発生率に両群間で有意差は認めなかった(P=0.61).JCOG術後合併症規準(Clavien-Dindo分類)による内訳は,Grade1は高齢群2名(せん妄2名),非高齢群1名(肺瘻),Grade2は高齢群3名(低酸素血症,乳び胸,皮下気腫),非高齢群1名(低酸素血症),Grade3は高齢群1名(肺瘻),非高齢群3名(肺瘻2名,気管支肺動脈瘻)だった.

表5 術後在院日数と術後合併症の比較
高齢群(n=22)非高齢群(n=24)P-Value
術後在院日数(日)6(4-16)6(5-29)0.77
術後合併症(人)(Grade1/2/3)6(2/3/1)5(1/1/3)0.61

術後在院日数:中央値(最小値-最大値)

考察

本研究では高齢群と非高齢群に分け,肺癌手術前後の運動耐容能,身体機能・ADLの特性,手術前後における身体機能・ADLの変化率を比較した.本研究では運動耐容能の指標である6MWDに加え,身体的虚弱(高齢者)理学療法診療ガイドライン10において推奨グレードAの評価項目である握力,SPPB,TUG,片脚立位保持時間とADL評価指標のBarthel Indexを評価項目とした.

まず術前の患者背景として,高齢群と非高齢群で原疾患進行度に差はなく,PSも歩行に問題ない症例が対象となった.しかしながら,高齢群では呼吸器疾患の既往が多く,術前の栄養状態は低く,プレフレイルが多く,息切れも強い背景が明らかとなった.これまでに肺癌外科手術ではアルブミン低値や体重減少,BMI低値などの低栄養所見と術後合併症の発生の関連が報告され11,12,血清アルブミン値は80歳以上の高齢肺癌手術症例におけるGrade3以上の有害事象に相関する独立因子とされている1.本研究の高齢群はAlb値 4.0 g/dlと低栄養のカットオフ値 3.8 g/dlを上回っており合併症発生のリスクは低いと考えられるが,非高齢者と比較すると有意に低く高齢者は合併症のリスクが高いことが推察された.また,低栄養の背景には肺癌患者は肺癌診断時に37.8%が現在喫煙者で13,COPD合併率が約30%とされており14,呼吸筋でのエネルギー消費量の増加,炎症性サイトカインによる全身の代謝亢進の影響などでエネルギー消費が1.3~1.5倍増加していることが挙げられている15.本研究の対象者も呼吸器疾患の既往のある症例が高齢群で82%を占めていたことも低栄養の一因と考えられた.加齢に伴いADL能力は低下し,75歳以上の高齢者のうち20~30%に虚弱が存在するとされる16.本研究の高齢群のうち64%がプレフレイルで非高齢群よりも有意に多く,mMRC息切れスケールでも息切れを認める症例が多いことからも,高齢肺癌手術対象者はPSが保てていてもフレイルや活動量低下がある背景が推察された.身体機能・ADLでは,6MWDは先行研究9と同様に,高齢群423.0 m,非高齢群488.1 mと高齢群で低値を示した.術前6MWDが400 m未満の対象者の5年全生存率は有意に低く17,術前の低運動耐容能者は,術後のさらなる運動耐容能低下により活動範囲の狭小化や外出機会の減少をきたし健康関連QOLが損なわれるとされる18.本研究の高齢群は非高齢群よりは運動耐容能が低いもののカットオフ値を上回っており,5年生存率において高い生存率が期待できるものと考えられる.片脚立位保持時間,TUGは転倒リスクの選定に有効な指標とされている19,20,21.60歳を過ぎると開眼片足立ちは急激に減少し5秒以内の者は転倒ハイリスク者とされ19,TUGは13.5秒がカットオフ値とされている20.また,TUGは外出頻度との関係も報告されており22,高齢者の社会生活機能の指標として有用であると考えられる.本研究では高齢群でも片脚立位保持時間,TUGとも術前評価でカットオフ値を上回り転倒リスクは低い症例が手術対象者となっていた.一方で,高齢群で非高齢群よりも有意に低値を示し,PSやBarthel IndexでADLが維持されていても,高齢群ではバランス機能低下があることが示唆された.

手術前後における身体機能・ADLの変化率に関しては,運動耐容能は6MWDで高齢群423.0 m,非高齢群488.1 mと高齢群で低値を示し術後回復の遅延が予想されたが,先行研究と比較し術後早期の評価でも高齢群で85%,非高齢群で82%と変化率に両群間で統計的な有意差は認めなかった.6MWDの変化率は,石坂6らは88%,Nomoriら7は65.3~85.7%,森沢ら8は94%との報告がある.これらは60歳代を対象とし,術後7日以降の比較である.本研究は術後6日前後の退院とこれまでの報告よりも短期間の入院期間になっており,術後評価は先行研究よりも早期の評価となっている.その条件下でも,先行研究の変化率と同等の変化率を両群とも示しており,手術翌日からの積極的な呼吸リハビリテーション,早期離床が6MWDの早期の高い回復率に寄与した可能性が考えられた.また,術後評価においても高齢群と非高齢群で有意差を認める項目はあったものの,術前・術後評価で有意差を認めた項目を含めて手術前後における身体機能・ADLの変化率に関しては両群間に有意差は認めず,術後の呼吸リハビリテーション,早期離床は高齢者においてもバランス機能を含めた身体機能・ADL維持に有効である可能性が示唆された.これまで早期離床の効果の報告では,酸素を必要とする期間が短縮したとの報告や四肢の廃用予防,立位・歩行による換気血流比不均衡の改善,呼気流速増加,排痰促進が報告されている23,24,25.それぞれの身体機能評価の変化率から,これらの介入効果は高齢者でも同等の効果が得られると考えられた.

術後在院日数や術後合併症の発生率に両群間で有意差は認めなかった.年齢は術後合併症の予測因子の一つであるが,高齢群においても術後早期からの積極的な呼吸リハビリテーションが在院日数短縮や術後合併症の予防にも有効である可能性も示唆された.

本研究は高齢肺癌患者の手術前後の運動耐容能だけではなく,身体機能・ADLの特性と手術前後における変化率を非高齢者と比較した点,これまでの報告より早期の評価という点に新規性があり,現状の手術対象者の高齢化と入院期間短縮に沿った検証となったと考える.高齢群においても周術期の呼吸リハビリテーションにより非高齢群と同等の身体機能・ADLの回復が期待できることが明らかになったことは,高齢者の手術適応の有益性を支持する一助になると考えられる.今後身体機能の経時変化や長期的予後に与える影響を加えて検証していく必要がある.

著者のCOI(conflicts of interest)開示

本論文発表内容に関して特に申告すべきものはない.

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