The Journal of the Japan Society for Respiratory Care and Rehabilitation
Online ISSN : 2189-4760
Print ISSN : 1881-7319
ISSN-L : 1881-7319
Original Articles
A survey of satisfaction of long-term rehabilitation for outpatients with chronic respiratory disease
Mai Yumoto Daigo KatoDaisuke UgaMasaki ShibusawaShota SuzukiKeita TakagawaNaoya WadaKunio DobashiNaoto FuekiMakoto Fueki
Author information
JOURNAL FREE ACCESS FULL-TEXT HTML

2024 Volume 32 Issue 3 Pages 319-323

Details
要旨

【目的】外来リハビリテーションの改善点や問題点を明らかにするため満足度調査を実施した.

【対象と方法】当院の呼吸リハビリテーションを1年以上継続している慢性呼吸器疾患患者13名に,呼吸リハビリテーションに対する満足度について,「欲求の充足に基づく顧客満足度(以下,CSSNS)」,自作の質問紙を用い調査した.

【結果】CSSNSの得点と息切れに関する指導への満足度(r=0.718,p<0.05),息切れ対処法に対する指導への満足度(r=0.717,p<0.05)で有意な相関を認めた.CSSNSの各領域では,『自律性欲求の充足』,『担当者との関係欲求の充足』において息切れに関する指導と有意な相関を認めた.

【結語】息切れに関する指導に対する満足度が高いと,CSSNSで評されるリハビリテーションへの満足度も高くなることが明らかになった.満足度を向上させ,リハビリテーションへの主体性や日常生活動作能力向上を目指すためには息切れに関する指導が重要であることが示唆された.

緒言

慢性呼吸器疾患(chronic respiratory disease:以下,CRD)の生命予後は身体活動量が有意に関係していると報告されている1,2,3.慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:以下,COPD)患者の呼吸リハビリテーション(以下,リハビリ)では,常に身体活動量の向上や維持を意識することが望ましく,そのためには週2回以上の実施頻度での継続が推奨されている4

呼吸リハビリを継続して,身体活動量向上や身体機能向上を目指すためには患者のモチベーションの向上や動機づけの促進が必要であるとされている5.先行研究では,歩数計や日記帳を用いて自己管理を促し2,6,7,運動に対する動機付けや自主性・自発性を高めることが必要である1と報告されている.なかでも運動に対する動機づけと満足度は相関する13と報告されており,意欲の低下に対して満足度へのアプローチが有効となる可能性が考えられる.

満足度とは「利用者のサービスに対する個別的かつ主観的評価」8や「利用者のサービスに対する期待感と関係しており,事前に期待した以上のもの」8とされている.満足度に影響を及ぼすリハビリ因子では,リハビリの技術性や共感性が高いこと9,十分な時間や量・練習環境が整備されていること10,ADL能力の改善や治療の品質が向上されていること11,12があると報告されている.運動に対する高い動機付けを有する者ほど活動性が高く,その結果として高い身体機能を維持する5と報告されており,活動性の高い良い予後を得るには満足度の向上や主体的なリハビリへの参加が必要不可欠である.

現在,当院の外来リハビリでは月1回程度の頻度になっている患者が存在することから,長期に渡り低頻度で実施している現状では,患者の主体的なリハビリへの参加が必要不可欠になり,満足度や運動への動機づけを高めることが重要なのではないかと考えた.そこで,本研究では外来リハビリ患者の満足度や要望を調査し,当院におけるリハビリ内容や環境等の改善点を検討することを目的とした.

対象と方法

1. 対象

2020年8月時点で当院に外来リハビリ通院している患者のうち,1年以上定期的に外来リハビリを継続しているCRD患者13名を対象とした.明らかな認知機能低下等により質問紙への回答が困難と予想される患者や,書字が不可能な患者は対象から除外した.本研究は上武呼吸器科内科病院治験審査委員会の承認を得て実施した(承認番号:JKNH202002).データの取り扱いについては個人が特定できないよう十分に配慮した.

2. 方法

基本情報として年齢,性別,病名・重症度,リハビリ歴・頻度・内容についての情報をカルテから収集した.

満足度調査として「欲求の充足に基づく顧客満足度(Customer Satisfaction Scale on Need Satisfaction:以下,CSSNS)14,15」を使用した.CSSNSは田中ら14,15が作成した満足度測定尺度であり,5領域(有能さの欲求の充足,自律性欲求の充足,利用者との関係欲求の充足,担当者との関係欲求の充足,生理的欲求の充足)15項目で構成されている.CSSNSはその信頼性14,内容的妥当性14,15,基準関連妥当性14,因子的妥当性15が先行研究により検証されている.CSSNSでは「全く感じない(1点)」から「強く感じる(5点)」までの5件法で回答してもらった.

また,満足度にはリハビリ開始や継続の理由,リハビリ内容,患者のニーズ等が影響を及ぼすと予想されたため自作の質問紙を作成した.自作の質問紙では,リハビリ開始や継続の理由,ニーズに対する満足度や自覚的改善度について回答してもらった.リハビリのニーズに関しては,在宅呼吸ケア白書16を参考に作成し,息切れに関する指導やセルフエクササイズ実施,栄養指導,リハビリ全体に対する満足度を「全く満足していない(0点)」から「とても満足している(10点)」の10点満点,自覚的改善度を「悪化している(0点)」から「全く改善していない(5点)」,「とても改善している(10点)」の10点満点にて点数を付けてもらった.

さらに,修正MRC息切れスケール(modified Medical Research Council dyspnea scale:以下,mMRC),COPDアセスメントテスト(以下,CAT)についても調査した.

質問紙は外来リハビリ終了時に担当とは別の療法士が研究について説明し,同意の得られた対象者に配布し回収箱にて回収を行った.

3. 統計解析

本文中の数値は中央値(最小値,最大値)で示した.CSSNSの得点とmMRCやCAT,ニーズに対する満足度の各項目,自覚的満足度について,Shapiro-Wilkの正規性の検定を行い,両項目に正規性が認められた場合にはPearsonの積率相関係数,いずれか一方もしくは両項目に正規性が認められなかった場合にはSpearmanの順位相関係数を用いて相関の検討を行った.統計処理はIBM SPSS Statistics ver. 27を用いた.なお有意水準は両側5%とした.

結果

対象者の基本情報を表1に示す.リハビリ歴は69.0(15.0,116.0)ヵ月,頻度は週に1.0(1.0,6.0)回だった.

表1 対象者背景(n=13)

年齢79(60,86)歳
性別男:女=11:2
病名COPD:気管支喘息=11:2
疾患重症度COPD(n=11) I期:II期:III期:IV期=2:1:5:2 (不明1)
気管支喘息(n=2)中等症持続型(治療ステップ3)
リハビリ歴69.0(15.0,116.0)ヵ月
リハビリ頻度1.0(1.0,6.0)回/月
リハビリ内容呼吸筋ストレッチング体操(セルフエクササイズ指導を含む):7名
筋力トレーニング(セルフエクササイズ指導を含む):5名
歩行練習:9名
日常生活動作指導:3名
ベルト電極式骨格筋電気刺激法:1名
その他 呼吸筋トレーニング:1名 身体機能の定期検査:1名
リハビリ開始理由自らの希望:主治医の勧め:入院からの継続=1:10:2
リハビリ継続理由症状改善のため:主治医の勧め=10:5(重複あり)

CSSNSの結果,ニーズに対する満足度や自覚的改善度の結果を表23に示す.CSSNS全体の合計得点では息切れに対する指導への満足度(r=0.718,p=0.013),息切れ対処法に対する指導への満足度(r=0.717,p=0.013)と有意な相関関係を認めた(表3).またCSSNSの領域別の結果では『自律性欲求の充足』と息切れに対する指導への満足度(r=0.748,p=0.008),息切れ対処法に対する指導への満足度(r=0.798,p=0.003)と有意な相関関係を認め(表4),『担当者との関係欲求の充足』においても息切れに対する指導への満足度(r=0.621,p=0.041)と有意な相関関係を認めた(表4).

表2 CSSNSの領域別の得点と合計点の結果

点数
CSSNS(領域別)(点)中央値(最小値,最大値)
 有能さの欲求の充足6.0(6.0,9.0)
 自律性欲求の充足8.0(6.0,11.0)
 利用者との関係欲求の充足9.0(8.0,9.0)
 担当者との関係欲求の充足10.0(3.0,15.0)
 生理的欲求の充足10.0(7.0,13.0)
CSSNS合計得点42.0(36.0,57.0)

中央値(最小値,最大値).CSSNSの合計得点は75点満点,各領域は15点満点.

表3 ニーズに対する満足度や自覚的改善度,mMRC,CATとCSSNSの相関

点数CSSNS(全体)との相関
相関係数有意確率
mMRC(点)2.0(1.0,3.0)0.0670.829
CAT(点)13.0(8.0,22.0)0.2750.363
ニーズに対する満足度(点)
 息切れに対する指導6.0(3.0,8.0)0.7920.004**
 息切れ対処法に対する指導7.0(3.0,9.0)0.6900.019*
 セルフエクササイズ実施5.0(3.0,8.0)0.3450.273
 栄養指導8.0(5.0,10.0)-0.7040.077
 リハビリ全体9.0(7.0,10.0)0.2530.453
自覚的改善度(点)
身体機能改善9.0(6.0,10.0)-0.2360.438

*有意確率 <0.05,**有意確率 <0.01

中央値(最小値,最大値).

相関関係をSpearmanの順位相関係数,Pearsonの積率相関係数を使用.

表4 CSSNS(領域別)と息切れに関する指導との相関

息切れに対する指導息切れ対処法に対する指導
CSSNS(領域別)相関係数有意確率相関係数有意確率
有能さの欲求の充足0.5210.1000.2460.465
自律性欲求の充足0.7480.008**0.7980.003**
利用者との関係欲求の充足0.3100.3540.2380.481
担当者との関係欲求の充足0.6210.041*0.5580.074
生理的欲求の充足0.4120.2080.5770.063

*有意確率 <0.05,**有意確率 <0.01

相関係数をSpearmanの順位相関係数,Pearsonの積率相関係数を使用.

考察

本研究は,CSSNSと自作の質問紙を使用し,1年以上外来リハビリを実施しているCRD患者の満足度調査を行い,当院リハビリ内容や環境等の改善点を検討した.分析の結果,息切れに関する指導と満足度に有意な相関関係を認め,リハビリにおいて息切れに関する指導を行うことが重要であることが示された.

CSSNSにおける『担当者との関係欲求の充足』では先行研究の結果15と同様に得点が高く,リハビリにおいて担当者と外来患者の人間関係に関する欲求は,全体的に高い水準で充足されていることは一般的であると思われる.『生理的欲求の充足』は,症状や健康面の改善を見る尺度であり,この領域において得点が高いことは,外来リハビリに一定の効果があったことを示しているのではないかと考える.自作の質問紙による評価においても『身体機能改善に対する満足度』でも高い得点であり,同様ではないかと考える.

CSSNSと各項目の相関を検討した結果,息切れに対する指導や息切れ対処法に対する指導への満足度が高いとCSSNSの合計得点で表されるリハビリへの満足度が高かった.また,運動に対する自己決定に関する項目である『自律性欲求の充足』においても息切れに関する指導への満足度と有意な正の相関が確認された.先行研究では,息切れはCRD患者にとって活動制限因子となり得るといわれている1,17.COPD患者ではすべてのADL動作において息苦しさを訴えており,「息切れによる恐怖感」により外出意欲が阻害されているとの報告もある16.本研究で,息切れに関する指導と満足度において有意な相関が認められたことは,息切れに対する指導により患者の求める情報の提供や指導に繋がり,その結果としてリハビリに対する満足度が高かった結果と考える.今後の外来リハビリでは,実際に息切れにより制限を受けている動作を詳細に調査し,個々の患者に見合った息切れに対する指導を行うことが重要であると同時に,呼吸・身体機能に見合った運動を提供し,患者はその運動の獲得や継続に積極的に取り組むように促すことができると考える.

本研究の限界として,まず対象者の人数が少ないこと,症例数設計ができていないことが挙げられる.調査時点で1年以上定期的に外来リハビリを継続しているCRD患者を対象としたため13名という少人数の調査となった.また,本研究で用いた自作の質問紙は信頼性・内容的妥当性・基準関連妥当性・因子的妥当性の検討を行っておらず,本研究における正確性の限界であると考える.さらに,本研究では客観的評価指標ではなく,対象者の自覚的改善度を求めたため,実際に身体機能が維持されていたのか,改善・悪化していたのかは不明であるという点が挙げられる.身体機能改善度を客観的に評価することにより,改善又は悪化する機能と満足度との関係を検討することができ,満足度を向上させ得るより具体的なリハビリ内容の検討が可能になると考える.

最後に本研究では長期間外来リハビリを継続しているCRD患者の満足度を調査し,息切れに関する指導を行うことで満足度が高くなることが確認された.CRD患者は病状進行とともに肺機能や呼吸困難は増悪していくため,外来リハビリにおいて日常生活や運動時の息切れが生じる動作について詳細に調査し,息切れが出現しない工夫,息切れが出現した時の対処法について十分に指導を行い,リハビリや運動に対する満足度を高めることで,身体活動量の向上やADL能力の維持を目指し,より良い予後を得ることができるようにリハビリ内容を工夫していくことが求められる.

著者のCOI(conflicts of interest)開示

本論文発表内容に関して特に申告すべきものはない.

文献
 
© 2024 The Journal of the Japan Society for Respiratory Care and Rehabilitation
feedback
Top