2024 Volume 32 Issue 3 Pages 336-341
【目的】COPD患者の健康関連QOL低下に及ぼす低体重の影響を明らかにすること.
【方法】COPD患者160例(年齢:76.4±6.8歳,1秒率:51.7±16.3%)をBMI 20 kg/m2未満(低体重)と20~26 kg/m2(標準体重),6分間歩行距離 300 m未満と 300 m以上の組み合わせで4群に分け,一般的健康関連QOL尺度のSF-36について説明変数を患者分類,共変量を気流閉塞,MRC息切れスケールとした共分散分析による比較を行った.
【結果】MRC息切れスケールを共変量とした推定値の比較が可能で,標準体重の患者と比較して低体重で6分間歩行距離 300 m以上の患者で日常役割機能身体,心の健康に有意な低下が示された.
【結語】運動耐容能が維持された低体重のCOPD患者では呼吸困難の影響を調整することで標準体重の患者と比べて包括的な健康度の一部に低下を認める可能性があることが示された.
高齢社会の進行とともに我が国の疾病構造の中心は老人退行性疾患へと変容しており,臨床では障害の回復や軽減だけではなく獲得させた能力の維持や活用を主目標として個人の生活の質(quality of life: QOL)を考慮した援助を必要とする機会が少なくない.持続性の呼吸器症状と気流閉塞を特徴とする慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease: COPD)の治療でも呼吸困難や運動耐容能の低下によって日常生活活動(activity of daily living: ADL)が制限されることで低下したQOLを可能な限り改善し良好に保つためにリハビリテーションが実施されている1).健康関連QOL(health related QOL: HRQOL)はそれら介入の重要なアウトカム指標であり,先行研究ではその評価に妥当性や反応性に優れたSt. George’s Respiratory QuestionnaireやChronic Respiratory Disease Questionnaire(CRQ)などの疾患特異的尺度が用いられてきた2).しかし,質問内容を疾患に関連する項目に限定することは心身の限られた領域の評価に偏る可能性があるため,生活を支援するうえでは多様な側面から患者の健康状態やADL障害を捉えて介入を行えることが望ましい.
MOS short-form 36 items questionnaire(SF-36)はさまざまな疾患の患者から一般に健康とされる人々までを対象とした一般的HRQOL尺度である3).呼吸器疾患患者の評価にも利用されており,COPD患者では幅広いHRQOL障害を認めることが報告されている4,5).ただ,このような疫学的アプローチによって得られた知見をHRQOLの維持・改善を目的とした介入に活かすには具体的にどの要素がその改善に有効であるのかを検討する努力が求められる.先行研究ではHRQOL障害に最も強く寄与する因子として呼吸困難の重要性が示されているが6,7),全身疾患としての特徴を持つCOPDでは気流閉塞,呼吸困難,栄養障害,運動耐容能低下などさまざまな要因がその悪化に複合的に影響することが予想される.そのなかでKatsuraらはCOPD患者の予後と関連する体格指数(body mass index: BMI)の減少がSF-36で評価したHRQOL低下と関連することを報告しており8),低体重が呼吸困難とは異なる側面のHRQOL悪化に関わる可能性を示している.
COPD患者において栄養状態を表す指標である体重は呼吸機能と独立した予後因子であることが知られており9),栄養障害による体重減少は長期的に運動耐容能低下と関連し,それに伴う骨格筋障害は易疲労性とともに活動制限を介してHRQOL障害を引き起こすと考えられる10).一方で病状に関わる気流閉塞や呼吸困難も運動を制限する重要な要素であり,それらが違った側面でHRQOLに影響するのであれば運動耐容能との関係から互いの影響を分析することで低体重がHRQOL低下に及ぼす影響をより明確に捉えられる可能性がある.本研究ではCOPD患者のHRQOL障害に影響すると考えられる気流閉塞や呼吸困難などの要因から低体重とそれに伴って引き起こされる運動耐容能の低下による影響を抽出することを目的として患者をBMIと6分間歩行距離(six-minute walk distance: 6MWD)によって低体重と標準体重,低運動耐容能と運動耐容能維持に分け,その組み合わせで患者を4群に分類して気流閉塞や呼吸困難を共変量とした共分散分析によるHRQOLの比較を行った.
2004年から2018年までに北海道と長野県の病院・診療所の呼吸器科に通院されたCOPD患者160例(男性156名,女性4名,年齢 76.4±6.8歳,身長 160.2±7.2 cm,体重 51.9±8.2 kg,1秒率:51.7±16.3%)とした.本研究は筆者らが慢性呼吸不全患者を対象として主治医によるインフォームドコンセントのもと実施した呼吸リハビリテーションプログラムに関する研究データを使用し,姫路獨協大学生命倫理委員会の承認(姫獨生14-08)を得て個人を識別することができない状態で提供されたデータを後方視的に解析した.データ選択では運動時の仕事量の増加や横隔膜の運動制限のため運動能力に不利に働く可能性がある過体重の影響を除くため,COPD患者を低体重と標準体重に分けてHRQOLの比較を行った先行研究を参考にBMI>26 kg/m2の者を除外した6,11).
2. 方法被験者をBMI≦20 kg/m2の低体重群と 20 kg/m2<BMI≦26 kg/m2の標準体重群の2群に分け,それぞれを6MWD≦300 mを低運動耐容能,300 m<6MWDを運動耐容能維持として計4群に分類した.class 1 は低体重で低運動耐容能群,class 2 は低体重で運動耐容能が維持された群,class 3 は標準体重で低運動耐容能群,class 4 は標準体重で運動耐容能が維持された群を示す.日本呼吸器学会のCOPDガイドラインにおいて%標準体重(% ideal body weight: %IBM)が90%未満の患者では栄養障害の存在が疑われることから栄養治療の適応が示されており,標準体重はBMIでほぼ 22 kg/m2に相当するためBMI 20 kg/m2未満は%IBMで90%未満の痩せと同等となる11).臨床では栄養状態の指標としてBMIを利用することが多く,本邦のCOPD患者を対象とした検討でもBMI≦20 kg/m2では予後が不良であることが報告されていることから13),BMI 20 kg/m2以下を低体重と定義して患者を低体重群と標準体重群に分けた.また,運動耐容能についてはATS/ERS のシステマティック・レビューにおいて 6MWDが300 m 未満で予後が悪いことが示されており14),心不全患者でも 6MWDが 300 m以下で生命予後不良とする報告が多いことを踏まえて15),6MWD 300 m以下を低運動耐容能と定義し,患者を低運動耐容能と運動耐容能が維持された群に分けた.
4群間のデータ比較には年齢,BMI,酸素投与量,臨床症状の指標としてMedical Research Council(MRC)息切れスケール16),呼吸機能の指標として肺活量の正常予測値に対する割合(% vital capacity: %VC)と一秒量の正常予測値に対する割合(% forced expiratory volume in one second: %FEV1),運動耐容能の指標として 6MWD,HRQOLの指標として疾患特異的尺度であるCRQと一般的尺度であるSF-36の初回評価時の値を用いた.CRQでは4つの下位尺度であるdyspnea,fatigue,emotional function,masteryを算出した17).SF-36では8つの下位尺度である身体機能(physical functioning: PF),日常役割機能身体(role physical: RP),体の痛み(bodily pain: BP),全体的健康感(general health: GH),活力(vitality: VT),社会生活機能(social functioning: SF),日常役割機能精神(role emotional: RE),心の健康(mental health: MH)について全国調査で報告された同性,同年代の国民標準値を50点,標準偏差を10点とする偏差得点を求めた18).
3. 統計解析4群の比較には一元配置分散分析を用い,多重比較にはBonferroni法を使用した.さらに従属変数をHRQOL,説明変数をBMIと 6MWDによる患者分類,共変量をFEV1,MRC息切れスケールとして共分散分析を行った.共分散分析の使用にあたってはHRQOLの下位尺度と共変量の間でPearsonの相関係数を求めて共変量の採択の有無を決定し,複数の共変量が採択された場合には共変量間の多重共線性を確認した19).また,HRQOLと共変量の交互作用の有無を確認するために分散分析による回帰直線の平行性の検討,HRQOLにおける回帰直線の傾きが0でないことを確認するためF分布検定による回帰の有意性の検討を行った12).統計処理にはIBM SPSS Statistics 23(IBM社)を使用し,有意水準はp<0.05とした.
4群の患者背景因子とHRQOLの比較を表1に示す.背景因子の比較では群分けに用いたBMIと 6MWDの差を除くとMRCでclass 1 とclass 2 および4,class 2 とclass 3,class 3 とclass 4,%VCでclass 1 とclass 2 および4,class 3 とclass 4,%FEV1でclass 1 とclass 4,酸素投与量でclass 1とclass 2~4に有意差が示された.HRQOLの比較ではCRQに有意差は認められなかったが,SF-36ではclass 1 でPF,RP,VT,SF,REがclass 4 と比較して有意に低値を示した.また,class 2 ではPFがclass 1 および3と比較して有意に高値となる一方でRP,MHがclass 4 と比較して有意に低値を示し,class 3 ではPF,RP,SFがclass 4 と比較して有意に低値を示した.
class 1(n=46) | class 2(n=28) | class 3(n=44) | class 4(n=42) | |
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BMI≦20 kg/m2 | 20 kg/m2<BMI≦26 kg/m2 | |||
6MWD≦300 m | 300 m<6MWD | 6MWD≦300 m | 300 m<6MWD | |
年齢(歳) | 77.7±7.4 | 74.8±5.6 | 77.2±7.2 | 75.0±6.1 |
BMI(kg/m2) | 17.4±1.5†‡ | 17.9±1.5†‡ | 22.4±1.7 | 22.6±1.5 |
MRC | 3.7±0.9*‡ | 2.6±0.6† | 3.6±0.8‡ | 2.5±0.6 |
%VC(%) | 62.8±20.5*‡ | 81.8±20.3 | 73.4±19.7‡ | 87.6±18.1 |
%FEV1(%) | 35.9±17.6‡ | 46.9±24.8 | 41.2±14.6 | 51.9±21.0 |
6MWD(m) | 171.9±85.9*‡ | 377.7±48.0† | 197.0±80.8‡ | 382.6±56.8 |
酸素投与(L/min) | 0.8±1.0*†‡ | 0.1±0.3 | 0.4±0.6 | 0.2±0.4 |
dyspnea | 17.5±7.0 | 18.9±5.8 | 17.2±6.2 | 19.5±5.9 |
fatigue | 17.5±5.8 | 17.3±4.2 | 17.3±4.8 | 18.8±4.7 |
emotional function | 32.9±8.9 | 32.8±8.4 | 33.8±8.6 | 37.2±6.3 |
mastery | 17.5±5.6 | 18.2±4.1 | 17.2±5.3 | 19.4±4.6 |
PF | 35.5±9.8*‡ | 46.5±9.2† | 36.9±12.2‡ | 45.0±8.3 |
RP | 40.4±8.9‡ | 41.6±10.1‡ | 41.8±9.9‡ | 48.5±9.2 |
BP | 46.0±13.1 | 46.2±11.5 | 49.2±12.4 | 52.3±10.5 |
GH | 41.8±9.6 | 43.0±7.9 | 45.1±9.9 | 46.6±7.3 |
VT | 43.5±10.0‡ | 46.6±9.1 | 46.5±9.9 | 49.4±8.7 |
SF | 43.6±12.6‡ | 46.1±9.7 | 43.3±13.6‡ | 51.1±8.6 |
RE | 42.4±10.3‡ | 43.5±11.5 | 44.7±10.5 | 48.7±9.0 |
MH | 45.0±9.4 | 42.2±11.7‡ | 47.1±11.1 | 49.8±8.8 |
*:有意差あり(vs. class 2),†:有意差あり(vs. class 3),‡:有意差あり(vs. class 4)
共分散分析によるHRQOLの推定値を表2に示す.CRQではすべての項目で共変量であるMRC息切れスケールの影響を考慮したHRQOLとBMIおよび 6MWDによる群分けの関係の解析が可能で,推定値の比較では4群間に有意差は示されなかった.SF-36ではBP,SFを除く6つの項目で共変量であるMRC息切れスケールの影響を考慮したHRQOLとBMIおよび 6MWDによる群分けの関係の解析が可能で,class 2 ではRPがclass 4,MHがclass 3 および4と比較してそれぞれ有意に低値を示した.
class 1(n=46) | class 2(n=28) | class 3(n=44) | class 4(n=42) | |
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dyspnea | 18.9±6.4 | 17.4±6.3 | 18.5±6.3 | 17.6±6.6 |
fatigue | 18.5±5.2 | 16.3±5.1 | 18.2±5.1 | 17.6±5.4 |
emotional function | 34.6±8.3 | 30.9±8.2 | 35.4±8.2 | 35.0±8.6 |
mastery | 18.3±5.3 | 17.3±5.2 | 18.0±5.2 | 18.3±5.5 |
PF | 38.6±9.7 | 43.1±9.5 | 39.7±9.6 | 41.0±10.1 |
RP | 41.9±9.9 | 39.9±9.7‡ | 43.2±9.8 | 46.4±10.3 |
GH | 43.1±9.3 | 41.5±9.1 | 46.4±9.2 | 44.8±9.6 |
VT | 45.1±9.9 | 44.9±9.7 | 47.9±9.8 | 47.4±10.3 |
RE | 44.0±10.7 | 41.7±10.6 | 46.2±10.6 | 46.5±11.1 |
MH | 46.1±10.8 | 40.9±10.6†‡ | 48.2±10.6 | 48.3±11.2 |
†:有意差あり(vs. class 3),‡:有意差あり(vs. class 4)
本研究ではHRQOL障害に影響すると考えられる気流閉塞や呼吸困難などの要因から低体重とそれに伴って引き起こされる運動耐容能低下の影響を抽出することを目的としてCOPD患者160名をBMI 20 kg/m2と6MWD 300 mを基準として4群に分け,共分散分析によるHRQOLの比較を行った.その結果,CRQの4つの下位尺度に有意差は示されなかったが,SF-36の6つの下位尺度でMRC息切れスケールが共変量として採択され,推定値の比較においてRPでclass 2 とclass 4,MHでclass 2 とclass 3,4に有意差が示された.共分散分析は年齢や性別などデータに影響を及ぼし解析を複雑にする交絡因子を調整する多変量解析のひとつであり,従属変数が交絡因子と相関関係にある場合にその交絡因子を共変量として分散分析を行うことで,その影響を取り除いて目的の因子だけによる影響を検討する方法である.そのため,低体重で運動耐容能が維持されたCOPD患者では呼吸困難の影響を調整することで標準体重の患者と比べて包括的な健康度の一部に低下を認める可能性があることが示された.
とくにMHに関しては共分散分析によってclass 2 ではclass 3,class 4 との間に有意差がみられるとともに有意差はないもののclass 1より低い得点を示した.また,MHに影響する因子であるCRQのemotional function20)にもclass 2 のみで低下傾向が認められた.先行研究ではCOPD患者と健常成人でSF-36のBP,MHに有意差を認めないことが報告されており4),本研究でもclass 2 以外ではMHは国民標準値に近い値を示していた.さらに,COPD患者をBMI 20 kg/m2を基準として体重維持群と体重減少群に分けて比較した研究でも体重減少群で呼吸困難に有意な低下を認めるなかでSF-36のRPとMHには有意な差がみられなかったことが報告されている8).一般的に体重減少を認めるCOPD患者では栄養障害によって引き起こされる骨格筋障害が易疲労性とともに活動を制限し,長期的には運動耐容能の低下と関連してHRQOL障害をもたらす可能性が高いことを考慮すると10),低体重が運動耐容能の低下に影響するほど顕著でないとも解釈できるclass 2 でみられたHRQOL低下は低体重に伴う運動耐容能の低下とは違った側面で捉えるべき問題であるかもしれない.
この点に関して,SF-36では下位尺度ごとの質問項目について統計処理を行うことはできないもののMHに関する5つの質問の回答をみるとclass 2 で気分の落ち込みに関する得点の低下が特徴的であり(図1),MH低下の背景としてうつ症状との関わりが窺えた.うつ傾向はCOPDによくみられる併存症のひとつで多くは軽症に属すると考えられており,その関連因子として閉塞性障害,呼吸器症状,身体的障害,ADL,独居などが挙げられるとともにBMI低下との関わりも疑われている21).本研究では共分散分析によって呼吸困難の影響を調節したなかでclass 2 のみにMH低下を認めたことから,その低下には呼吸器症状以外の要因の影響がより強く反映された可能性が高い.高齢日本人の平均的な 6MWDは 500 m以上であり,400 m以下になると日常的な外出に制限が生じ,300 mを下回ると殆ど外出できないことが指摘されていることを考慮すると22),6MWDが平均 377.7 mであったclass 2 では低体重のために相対的なエネルギー消費に増大を認めるなかで外出に困難を感じながら生活を行っている状況が推察される.COPD患者の生活背景として買い物の協力者の存在が栄養状態に関連することや抑うつ傾向を認める患者では独居または2人暮らしが多いことなどが報告されており23),外出が出来ないほどの身体機能低下が認められない状況ではADLに関して十分な支援が受けられない場合も多いと思われる.また,今回の分析が初回評価時データであったことから専門家からの指導を受ける機会が少ない状況で過剰な活動を示す患者が含まれていることも考えられ,低体重を認める患者では日常生活での慢性的な負担がHRQOLの悪化に関わっていた可能性がある.ただ,身体機能に見合った生活を送ることの重要性は臨床上も経験することだが,本研究では患者の生活状況や活動度については分析できておらず,BMI減少を示すなかで 6MWDがある程度維持された患者に特徴的なHRQOL障害がみられたこと対する考察としては推測の域を出ないことからその影響を明らかにするための検討が今後の課題である.
棒グラフはclass 1,
class 2,
class 3,
class 4の平均値を示す.なお,回答は6段階で1「いつも」,2「ほとんどいつも」,3「たびたび」,4「どきどき」,5「まれに」,6「ぜんぜんない」となっており,問33,35についてはスコアを逆転して表示している.
本研究の限界として患者を群分けして範囲を限定することで得られた結果の解釈が分類に用いた基準に影響を受けることが挙げられる.低体重による群分けに利用したBMIではCOPDガイドラインに準じて栄養障害との関わりから判定を行っているが,運動耐容能による群分けに利用した 6MWDでは体格が異なる被験者で歩行距離を比較し意味づけすることの難しさが指摘されている16).本研究ではCOPDや慢性心不全で予後に影響がみられるとの報告が多い 300 mを基準としたが,群分けによっては違った結果が得られる可能性は否定できない.たしかに包括的尺度はある疾患に特有の症状を測定する際には疾患特異的尺度と比較して情報量が少なく,経時的なHRQOLの変化に対する感度も劣ることが知られている2).一方で,質問表の内容を疾患関連項目だけに限定することは身体の限られた領域について評価しているため健康状態の様々な側面における疾患の影響を十分評価しているとは言えない.COPD患者の治療目標として,生命予後の改善はもちろんであるが可能な限り障害されたHRQOLを良好に保つことが重要であり,本研究からBMI減少を示すなかで 6MWDがある程度維持された患者に特徴的なHRQOL低下が潜んでいる可能性が示された.よって,今後はCOPD患者の生活を支援するうえではこれらの特徴が健康状態や日常生活とどのように関わるのかについて患者の生活状況や活動度を含めた臨床経過の分析から明らかにしていく必要がある.
日本語版SF-36の使用許可を頂きました京都大学大学院医学研究科の福原俊一先生,日本語版CRQの使用許可を頂きました京都大学大学院医学研究科の西村浩一先生に深謝します.
本論文発表内容に関して特に申告すべきものはない.