The Journal of the Japan Society for Respiratory Care and Rehabilitation
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Skill-up Seminar
Pulmonary rehabilitation for acute pneumonia in a general ward
Yasutaka Hagimori
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2025 Volume 34 Issue 1 Pages 24-29

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要旨

肺炎に対する呼吸リハビリテーションは,入院後早期から開始することが重要であり,そのためには担当医によるリハ処方が必要である.介入遅延は入院関連機能障害を誘発し,高齢入院患者の約30%で発症する1と言われている.介入目的は,①呼吸状態の改善(呼吸管理の一環としての体位変換や気道クリアランス法),②早期離床の獲得(安静度の確認と多職種連携,バイタルサイン評価),③廃用症候群の予防と再調整,運動耐容能の回復(炎症所見の確認,栄養療法と運動療法の併用),④日常生活動作の再獲得(情報収集)などに集約される.明確な短期,または中長期的アウトカムを設定し,その目標が達成出来たか否かを評価しつつ呼吸リハビリテーションを展開する.早期離床に関しては,抗生剤による感染コントロールが出来ているかを確認し,全身状態,特に呼吸・循環動態に関してバイタルサインやフィジカルアセスメント等の評価を駆使する必要がある.

はじめに

超高齢社会を迎えた本邦では,肺炎患者は増加傾向にある.2011年に医療介護関連肺炎診療ガイドライン2,2017年に成人肺炎診療ガイドライン3が発刊され,疾患末期,老衰等の終末期の状態判断や治療は,患者個人や家族の意思を尊重したうえで生活の質(quality of life; QOL)を優先した治療を考慮するとの記載がある.しかし,呼吸リハビリテーション(呼吸リハ)の記載はなく,その内容等の指針は皆無である.本稿では,肺炎急性期に対する呼吸リハの評価と基本的な概要に関して解説する.

早期呼吸リハ介入の重要性と評価

1. 早期呼吸リハ介入

肺炎で入院した高齢患者は,そのほとんどが誤嚥性肺炎であり,65歳以上の肺炎患者の内80.1%が誤嚥性肺炎であるとの報告もある4.安静臥床や医原性絶食は,廃用症候群を伴う入院関連機能障害(hospitalization-associated disability; HAD)を誘発する可能性が大きくなる.

近年,早期呼吸リハ介入や早期経腸栄養開始の重要性に関する報告が数多くあり,肺炎後3日以内の呼吸リハ開始で30日死亡率の低下5や在院日数が減少する6などの効果が示されている.

2. 介入時の評価

1) 高齢肺炎患者の特徴

肺炎患者は,高齢で栄養障害を伴い痩せている症例が多い.入院後は絶食と末梢ルートからの維持液や電解質補正輸液だけの投与で管理されている事もあり,必要カロリーを満たすことができず,栄養障害や廃用症候群をさらに助長しているケースがある.また,加齢に伴う数多くの併存疾患(multimorbidity)を有しており,呼吸リハと言っても肺だけの治療ではなく,身体全体に眼を向けた介入が望まれる.そのため既往歴や入院時から呼吸リハ開始までの経過,治療内容も把握しておく必要がある.

誤嚥性肺炎の発症機序として,すべての誤嚥が肺炎に繋がるわけではなく,侵襲(誤嚥物の量や内容物)と抵抗(呼吸・喀出力や免疫機能)のバランスが,侵襲に傾くと肺炎になりやすい.また誤嚥性肺炎のほとんどは不顕性誤嚥であり,口腔内環境の確認や摂食・嚥下機能,咳嗽力等の評価も重要になる.

2) 酸素化の評価

患者は入院時に低酸素血症になっていれば,様々なデバイスで酸素投与を行っている.その治療の過程で,動脈血酸素飽和度(SpO2)が常時99~100%あるような酸素投与をしていると,血液ガス分析等の検査の頻度が少ない一般病棟では,肺炎の状態悪化が生じた際に発見が遅れる可能性がある.例えば,動脈血酸素分圧(PaO2)が 100 TorrではSpO2 は99~100%,PaO2 が 150 TorrでもSpO2 は99~100%と表示される.酸素流量が一定でPaO2 が 150 Torrから 100 Torrに低下してもSpO2 は99%であり,SpO2 だけ見ていても肺の状態が悪化(肺炎の再燃)しているが気が付かない事がある.また,肺の基礎疾患や円背姿勢等の拘束性換気障害があれば,肺胞低換気を伴いCO2 ナルコーシスを合併する恐れもある.さらに全身状態が悪く,貧血や血圧低下等があれば酸素運搬障害[酸素含有量(CaO2)=1.34×ヘモグロビン(Hgb)×SaO2/100+(PaO2×0.003),酸素供給量(DO2)=心拍出量(C.O.)×CaO2×10]を,敗血症を有していれば酸素利用障害を考慮すべきである.

3) 胸部画像・血液データ所見

病態把握や短期的な呼吸リハの効果を確認するためには,定期的な画像や血液検査が必須となる.しかし,一般病棟では定期的な評価が実施されない場合もあり,主治医に対して検査の依頼を行うことも必要である.その際は,共通言語を意識したコミュニケーションを図るべきである.

高齢肺炎患者は,不顕性誤嚥であり,肺炎部位として下葉(背側病変)であることが多い.胸部レントゲンだけでなく,CTによる肺炎部位の評価が必要である.

血液データでは,全身状態や炎症所見の確認とともに,栄養障害や脱水を伴っていることが高頻度に認められ,分泌物の粘稠度や呼吸リハの実施や経過にも多大な影響を及ぼす可能性があるため定期的な評価が必要となる.栄養障害に関しては,体重や筋肉量等の身体所見と併用して評価をすべきである.

4) フィジカルアセスメント

病態情報を患者から直接入手する手段として,視診・触診・打診・聴診・嗅診などがある.

呼吸リハ実施前に画像所見や血液データである程度の目安を立てておき,フィジカルアセスメントによる評価とリンクさせ,それを呼吸リハのプログラム立案に繋げていく.アセスメントの中でも聴診は重要な評価の一つであり,呼吸リハ実施の際は次のポイントに注意を要する.①安静仰臥位や坐位の聴診のみでは,ほとんど意味をなさない.②安静臥床時は,背側(下葉)の音を重点的に聴取する.③深呼吸や咳嗽などの気道での空気の流れ(流量)や肺拡張の変化を意識する.(呼吸音やウィーズは,一定以上の流量にならなければ発生せず,クラックルは一定以上の肺容量にならなければ発生しない7.)④副雑音だけではなく,肺胞呼吸音の減弱や消失,気管支呼吸音の伝達部位にも喀痰がある可能性がある.⑤ポジショニングや離床の経過での聴診が重要となる.⑥気道クリアランス手技や吸引後の音の変化を確認する事などである.また,感染対策も十分に行う必要があり,患者の呼気の空気の流れを意識して評価を行い,立ち位置に配慮する.

早期呼吸リハ実施内容

1. ポジショニング

ポジショニングとは,体位変換によって特定の体位を一定時間保持する方法である.その目的として,すでにある呼吸器障害に対しての治療と新たな呼吸器合併症の予防である.肺は重力の影響を受けやすい臓器の一つであり,肺血流と換気量のバランス,肺拡張の変化,胸郭形状変化,呼吸筋,特に横隔膜の可動性や作用変化を活用する.方法は,酸素化改善や肺拡張(リクルートメント効果)を目的とする場合,病変部位が上側になる体位を選択する.手段として,側臥位,前傾側臥位(半腹臥位),腹臥位,半坐位(ヘッドアップ)等がある.無気肺や気道内分泌物ドレナージ,緊急の酸素化改善を目的とする場合は,通常30分~2時間程度保持される.

一般病棟でのポジショニングの実施は,集中治療室(intensive care unit; ICU)と比較して,看護師等スタッフの監視が行き届かず,モニタなどの環境も不十分であり,急変や転倒・転落等のリスクを伴う.当院では,理学療法士がポジショニングを実施している写真をベッドサイドに掲示し,より分かりやすく具体的な内容を記載し,チームで協働できるよう心掛けている.

1) 側臥位

一側肺障害の病変部位を上側にすることで,酸素化の改善,気道クリアランス改善,換気血流比のマッチング効果等が期待される.しかし長時間の同じ体位を保持する事により,流動性のある分泌物が健側肺に垂れ込むこともある.また,健側肺に荷重側肺障害を生じる可能性もあり注意を要する.

2) 腹臥位

両側下葉の病変時に用いる.急性呼吸窮迫症候群(acute respiratory distress syndrome; ARDS)等のICUで呼吸管理を必要とする重症呼吸不全の病態で適応となる.

近年,理解力のあるCOVID-19症例に対して,覚醒中の腹臥位療法(awake prone positioning)による気管内挿管の回避等の効果の報告がある8,9.当院ではCOVID-19ではない急性肺炎で,理解力や協力性の得られる症例に対して積極的な腹臥位療法を導入している.その結果,早期に病態や酸素化の改善効果を示した症例を経験した(図1).

図1 自主的な腹臥位療法による効果

左;入院時の胸部CT所見(左下葉の浸潤影と右中葉の無気肺を認める).

右;呼吸リハ開始後,8日目の胸部CT所見(左下葉浸潤影と右中葉の無気肺の改善を認める).

3) 半坐位

臥位からベッドを挙上する事により,機能的残気量や横隔膜可動性が増大し,肺の拡張効果が期待される.また,新たな誤嚥性肺炎の予防や腹筋の収縮効率が改善し咳嗽力が増加する結果,分泌物の喀出効果が増大する.注意点として,頸部が過伸展にならない事,膝を屈曲位になるよう大きなクッション等を使用し,安楽姿勢を模索する配慮も必要である.肺機能以外の効果として,胃食道逆流の減少,頭部の重さにより頸部の嚥下筋に荷重が加わり筋力トレーニングの一助になる可能性がある.また,視野が変わる事により,精神・心理面の改善効果も期待される.

2. 早期離床

本邦におけるICU等での早期離床とは,48時間以内の開始であると定義されている10.何だかの理由で離床が継続出来ない,または進まない症例では,早期に離床を開始し,それを継続できる症例と比較して,肺炎の病態改善が乏しく,再燃しやすいと思われる.呼吸リハの実施時間は,せいぜい1~3単位(20~60分)/日程度であり,リハ実施以外の時間や休日における離床を如何に促し,身体活動量を向上できるかがポイントとなる.そのため,リハ職種だけでは限界があり看護師等の他職種との協働が必要である.

3. 気道クリアランス法11,12

高齢者で栄養障害や脱水があり運動能力が低下した症例では,粘液線毛輸送機能や咳嗽力が低下している.様々なクリアランス手技があるが,分泌物の性状や原疾患の病態に基づき適切な手技を使い分ける必要がある.しかし,米国呼吸療法学会(American Association for Respiratory Care; AARC)の気道クリアランス療法ガイドラインでは,合併症のない肺炎症例におけるルーチンの気道クリアランス手技は推奨しないとしており13,本邦においても,従来から行われてきたクリアランス手技と比較して,早期離床や運動に伴う呼気流量,換気量や機能的残気量の増大を促す方がドレナージ効果がより大きく,急性期での積極的な手技の使用に関しては賛否両論がある.

また,スタンダードプリコーションを実施し,分泌物の飛沫や咳嗽の空気の流れを意識して手技を行う必要があり,1患者1手洗いと同様に聴診器もアルコール綿等で洗浄を行い,感染伝播に注意を払う.喀出した分泌物は,性状(粘稠度)や色,においの変化を評価する.

1) 中枢気道からのクリアランス手技

分泌物の性状により手技を選択すべきである.粘稠度の高い喀痰では,聴診所見としてロンカイ音が聴取される事が多く,咳嗽やハフィングで比較的容易に喀出できることがある.一方,粘稠度の低いものは,重力や換気の影響を受けやすい.ランブル音が聴取され,分泌物貯留部位にラトリングを触知する.また呼吸に同調して移動し,咳嗽力が低下している症例に対しては,早期に吸引操作を考慮した方が良いかもしれない.

①咳嗽(咳嗽介助手技)

咳嗽は,第7~8分岐の分泌物を除去するために使用される.咳嗽の4相(I;咳の誘発,II;深吸気,III;声門閉鎖による圧縮,IV;早い呼気)に対して,どの相が出来ていないのか,問題なのか評価をする.

咳嗽介助は,胸郭の動きや腹筋の収縮を意識して,タイミングを合わせて胸壁または腹部を圧迫する方法である.高齢肺炎患者は咳嗽反射が減弱しており,日常で咳嗽が出ないような呼吸様式を行っていることがある.離床に伴う機能的残気量や呼気流量の変化で発生する湿性咳嗽を見逃さないように注意する.

②ハフィング(強制呼出手技)

口を少し横に開くイメージで声門を開存させ呼出を行う.ハフィングは,等圧点(equal pressure point; EPP)が肺気量の変化に伴い移動する事を利用している.2種類あり,低肺気量域からゆっくり長く吐き出すと,EPPが末梢に移動し細い気道の分泌物を捕える.次に,高い肺気量から早く強く呼出する強制呼気を行うとEPPは中枢側に向かって移動する.分泌物を捕えると「咳込み」が起こる.また,中枢側に分泌物を移動するには,最大呼気流量(peak expiratory flow rate; PEFR)が最大吸気流量(peak inspiratory flow rate; PIFR)を約10%超えなければならない14

③アクティブサイクル呼吸法

呼吸コントロール⇒深呼吸⇒ハフィング⇒咳嗽を組み合わせて行う自己排痰法である.ハフィングに際の吸気の最後に3秒間の息止めを行うと効果的であるという報告がある.3秒間休止すると時定数が変化し,圧力勾配がより高い閉塞されていない肺領域から,肺の閉塞された領域に空気が移動し,換気の不均一性が減少する.これはpendelluft flowと呼ばれる14

④吸引

平成22年から理学療法士等リハ関連職種も上気道や挿管チューブ内の吸引操作が合法化する通知が出た.呼吸リハ実施の際,吸引のタイミングで考慮したい事がある(表1).気道クリアランス法を実施しても,中枢気道からの分泌物の喀出が得られず有害事象を生じる可能性が高い時など,咳嗽力が低下している症例などで使用を検討する.安全な吸引操作を行うためには,十分な学習と経験が必要である.また,操作によるメリットと実施に伴うリスクを考慮する.

表1 呼吸リハ実施の際,吸引のタイミングで考慮すべき事

リハ開始時⇒上気道に貯留している分泌物により離床に伴い誤嚥を誘発する可能性
リハ実施中⇒機能的残気量や呼気流量増加に伴う末梢からの喀痰移動
リハ終了時⇒臥床後,肺気量や換気パターンの変化に伴う喀痰の中枢側への移動

呼吸リハ実施前,実施中,実施後のSpO2 や聴診による評価が重要

2) 末梢気道からのクリアランス法

臥床期間が長くなると末梢気道が閉塞し,分泌物が貯留しやすい.

①体位ドレナージ

聴診等で分泌物のある部位を上側になるような姿位を一定時間とり,重力を利用して中枢側へ誘導排出を促す方法である.

②スクイージング

体位ドレナージと併用し,分泌物のある部位が上側になるような姿位をとり,胸郭に手掌を全面接触し,呼気終末にかけて圧迫する.しかし十分なエビデンスが無いのが問題視されているが,本邦のオリジナルな手技であり,セラピストとして獲得しておくべきものである.

③離床

姿勢変化に伴い機能的残気量が増加し,末梢の肺胞の拡張を促すことが出来る.また離床に伴い酸素需要が増加し,それに応じて分時換気量と肺気量が増加する15.結果として換気が増加することで,相互依存と側副換気によって空気が閉塞した肺胞に移動する.肺の拡張は,フィジカルアセスメントやSpO2 の上昇で評価できる.

④機器を用いたクリアランス法

上記①~③の実施でも喀痰の喀出が得られず,病態の改善が得られない場合,機械的クリアランス法の使用を考慮する.様々な機種があり,それぞれの特徴を把握し症例に適したものを選択する.

4. 運動療法

炎症反応の強い時期の運動療法は,基礎エネルギー消費量が一日エネルギー摂取量より多く,運動機能の改善効果は乏しいため,過度な運動は筋萎縮等の反応を助長してしまう可能性がある.蛋白異化期が同化期に変換される目安として,CRP(C反応性蛋白)が 3~5 mg/dl以下であると言われている16.したがって,この時期の運動療法の捉え方として,①運動機能の維持,②肺の拡張に伴う喀痰ドレナージ効果,③認知症やせん妄等に対しての精神・心理面のサポートに主眼を置く必要がある.しかし,急性期肺炎患者に対して運動療法ベースの呼吸リハプログラム(介入群)と従来の排痰法を含めた自主的歩行でのプログラム(対象群)とを比較した研究では,介入群の方が,運動能力・末梢筋力・呼吸困難感・およびQOLの改善効果が大きかったという報告もある17.筋肉量・筋力や筋の機能を維持する事は,生命予後を改善し18,19,反対に筋肉量減少は,3か月後の死亡率上昇の独立した予測因子であるとの報告がある20.筋肉量の維持のためには,運動療法と栄養療法の併用が重要で,如何に筋萎縮を生じないような呼吸リハを展開できるかが重要なポイントになる.当院のデータでも,早期に歩行や経腸栄養を開始した群の方が,有意差は無いが筋萎縮は予防できていた(図2).

図2 早期経腸栄養と早期歩行開始による下腿三頭筋の筋萎縮の推移

左;48時間以内に栄養療法を開始した群で筋萎縮の予防効果を認めた.

右;48時間以内に歩行を開始した群で筋萎縮の予防を認めた.

5. ADLトレーニング

入院前の家庭での日常生活活動(activities of daily living; ADL)ADL状況を聴取し,入院後,その動作の際に転倒の危険がなく安全に実施できるものや,酸素化(SpO2>90%)や循環動態が安定している動作に関しては制限せず,継続し実施すべきである.また,動作に伴う低酸素血症に対しては酸素療法を併用し,呼吸困難を生じる場合は,呼吸法の指導や動作スピードの調整も考慮し,より早期からADLトレーニングを開始する必要がある.

経過は良好なのか?適切な呼吸リハを行えているのか?

胸部画像所見や血液データでの確認を行うとともに,下記の評価を並行して実施する.①解熱状況や抗生剤投与の経過確認,②呼吸数減少や呼吸パターン変化,③気道分泌物の減少(色・粘稠度の変化)や呼吸音の改善,④脈拍等循環動態や酸素化改善,⑤疲労感や夜間の睡眠状態の改善,⑥離床の進行やADLの改善状況等の確認を行う.

高齢肺炎患者は入院時に脱水や脳血管疾患,認知機能障害を伴って入院している事が多い.これらはせん妄発症のリスク因子である.当院の転倒・転落に関する経年的データでは,その発生の約1割は肺炎患者である事が分かった.せん妄や転倒・転落事故発生により,離床センサーやミトン等の装着(身体抑制)⇒自発的離床のバリア⇒呼吸リハ実施時間以外の臥床時間延長⇒睡眠リズムやせん妄の悪化⇒眠剤使用(増量)⇒日中の傾眠を伴うリハの進行遅延⇒咳嗽・嚥下反射低下⇒肺炎悪化や再燃といった悪循環を形成する可能性があり,せん妄に対する評価や対策も必要である.

おわりに

肺炎に対する呼吸リハの目標は,呼吸・全身機能の改善を図り,運動機能やADL・QOLを可能な限り維持し,入院前生活場所に戻れるように支援する事である.肺炎は繰り返す疾患であり,栄養療法や口腔ケア,摂食・嚥下リハも含めた多職種介入を行う必要があり,その多職種間での人間・信頼関係の構築が重要である.また,急性期病院での状況やその再発予防方法等を家族,転院先の病院や施設スタッフと情報共有することも求められる.

著者のCOI(conflicts of interest)開示

本論文発表内容に関して特に申告すべきものはない.

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