2025 Volume 34 Issue 1 Pages 30-35
肺炎回復期の呼吸リハビリテーションでは,まず排痰や呼吸練習などのコンディショニングから開始する.また,日常生活活動(activities of daily living,以下ADL)トレーニングを行いながら,低強度での運動療法の割合を徐々に増やし,運動強度を増加していくことや時間の延長を図っていく.維持期では,呼吸困難の軽減,運動耐容能の向上および身体活動性の向上・維持を主たる目的とする.重症例における運動療法では,コンディショニングや低強度の全身持久力・筋力トレーニングから開始する.軽症例では,全身持久力・筋力トレーニングが開始時より主体となり,強度も高強度から開始可能である.
再発予防には,原因に対する個別の対策が必要である.本稿では症例を提示しながら,肺炎後の呼吸リハビリテーションを紹介する.
肺炎による死亡者数は新型コロナウイルス感染症流行以前から多く,2020年の統計では本邦の死亡原因の第5位に位置しており,特に高齢者の死亡者数が多いことが問題となっている1).
高齢者には「誤嚥性肺炎」が多く,明らかな誤嚥や,誤嚥が強く疑われる場合だけではなく,食事と無関係に唾液を少量繰り返し誤嚥することや,夜間の唾液の下気道への流れ込みなどによる不顕性誤嚥も誤嚥性肺炎の原因となる.
また,肺炎は感染する場所によっても分類されている.病院外で日常生活を送っている時になんらかの微生物に感染し,発症するものは「市中肺炎」,療養病床や介護施設に入院・入所している人に発症する肺炎は「医療・介護関連肺炎」に分けられる.特に後者は免疫力が低下している高齢者に発生することが多いため予防や治療が難しく,死亡率が高いことも知られている.
肺炎の主な症状には,咳,痰,発熱,低酸素血症およびそれに伴うチアノーゼや呼吸困難がある.また,肺の炎症が強くなってくると肺の組織を覆っている胸膜まで炎症が広がり胸痛を惹起することもある.高齢者では症状に乏しい患者も多く,受診が遅れることもしばしばある.
本稿では,これまでに呼吸リハビリテーション(以下,呼吸リハ)を受けていなかった症例を提示しながら,多職種のチームによる肺炎回復期・維持期の呼吸リハの意義を,在宅での再発予防も含めて述べていく.
肺炎の回復期・維持期の呼吸リハの実施は,日本呼吸ケア・リハビリテーション学会,日本呼吸理学療法学会,日本呼吸器学会が合同で発表したステートメント2)に記されている各病期での呼吸リハが参考になる.
回復期では,まず排痰や呼吸練習,四肢や体幹の他動・自動運動などのコンディショニングから開始する.食事・排泄動作といった日常生活活動(activities of daily living,以下 ADL)の自立に向けて,ADLトレーニングを行いながら,歩行を中心とした低強度の全身持久力・筋力トレーニングの割合を徐々に増やし,運動強度を増加していくことや時間の延長を図りながら進めていく.臥床による運動能力低下のために,コンディショニングの継続は必要である.
維持期では,呼吸困難の軽減,運動耐容能の向上および身体活動性の向上・維持を主たる目的とする.全身持久力・筋力トレーニングを中心とした運動療法,呼吸練習,コンディショニング,ADLトレーニングから構成される.重症例における運動療法では,コンディショニング,基礎的なADLトレーニングを行いながら,低強度から開始することが望ましい.一方,軽症例では,強度も高強度から開始可能である.
重症例では,導入プログラムの開始時にはコンディショニングが主体となるが,徐々に全身持久力・筋力トレーニングの割合を増し,導入プログラム終了時,維持期(生活期)では,全身持久力・筋力トレーニングを主体とする必要がある.ADLトレーニングも基本的なトレーニングから応用的なトレーニングに移行していく.
運動療法の前後では,ウォームアップ,クールダウンを行うことも推奨されている.
以下,回復期・維持期の呼吸リハの実際について,症例を提示して解説する.
1. 症例80歳代,男性.body mass index(以下,BMI)18.0 kg/m2,喫煙歴は 28 packs/year.1年前から市中肺炎のため入退院を繰り返していた.併存症は気管支拡張症と高血圧症.発症前の生活状況は妻と二人暮らしで,ADLはおおむね自立していた.要介護2を取得しており,入浴のみヘルパーによる訪問入浴を利用していた.身体障害者手帳3級(呼吸障害)を所有していた.
本症例の要望は,繰り返す肺炎による入退院が続いたため,この先なるべく長期間,自宅での生活をしたいことであった.
2. 現病歴と入院中の経過気管支拡張症にてA病院(診療所)で外来通院中であった.同院にて在宅酸素療法(home oxygen therapy,以下HOT)を導入されていたが,具体的な呼吸リハ,セルフマネジメント教育は受けたことがなかった.肺炎のため過去1年間,B病院(急性期一般病床)に2回の入院歴あり.
今回は,38.5°Cの発熱と修正MRC(modified medical research council dyspnea scale,以下mMRC)息切れスケールによる呼吸困難ではgrade 4を訴えて,細菌性肺炎の診断により,家族の勧めでX日に当院を受診,同日入院となった.
上・中肺野に粗い断続性ラ音が聴取され,両下肺野では呼吸音が消失していた.saturation of percutaneous oxygen(以下,SpO2) は68%(酸素 1 L/分),多量の漿液性黄色痰が頻回に吸引された.吸引後はSpO2 が96%(酸素 1 L/分)まで改善していた.
3. 検査所見入院時の血液生化学検査,動脈血ガス分析,肺機能検査の結果を表1に示す.C反応性蛋白(C-reactive protein,以下CRP)が上昇しており,高二酸化炭素血症を認めていた.肺機能検査では対標準肺活量と1秒率の低下があり,混合性換気障害を呈していた.
血液生化学検査 | |
WBC, ×100/μL | 86.0 |
CRP, mg/dL | 10.35 |
動脈血ガス分析(鼻カニュラ酸素 1 L/分) | |
pH | 7.34 |
PaO2, mmHg | 72 |
PaCO2, mmHg | 57.2 |
HCO3-, mEq/L | 30.3 |
肺機能検査 | |
VC, % predicted | 23.4 |
FEV1, L | 0.33 |
FEV1, % predicted | 15.6 |
FEV1/FVC, % | 58.93 |
WBC, white blood cell; CRP, C-reactive protein; pH, acid base equilibrium; PaO2, arterial partial pressure of oxygen; PaCO2, arterial partial pressure of carbon dioxide; HCO3-, bicarbonate; VC, vital capacity; FEV1, forced expiratory volume in one second; FEV1/FVC, forced expiratory volume % in one second
本症例の胸部単純X線画像と胸部Computed Tomography(以下,CT)画像を図1に示す.両上肺野に軽度の気腫化を認めるとともに,右肺尖部の胸膜肥厚所見ならびに気管の右方偏位を伴う容量減少,右肺上葉および両肺下葉に気管支拡張所見を認め,一部の拡張気管支には液面形成を伴っていた.
両上肺野に軽度の気腫化を認めるとともに,右肺尖部の胸膜肥厚所見ならびに気管の右方偏位を伴う容量減少,右肺上葉および両肺下葉に気管支拡張所見を認め,一部の拡張気管支腔内には液面形成を伴っていた.
入院時の視診や触診の評価結果を表2に示す.mMRC息切れスケールはグレード4で,呼吸困難によって著明なADL低下を認めていた.胸部聴診では胸部画像異常所見に一致して粗い断続性ラ音を聴取した.
評価項目 | 初期評価 | 最終評価 |
---|---|---|
身体所見 | ||
視診 | 呼吸補助筋活動亢進 | 呼吸補助筋活動亢進 |
口呼吸 | 吸気は鼻から可能 | |
表情が硬い | ||
触診 | 斜角筋触診法:grade 2度 | 斜角筋触診法:grade 3度 |
左右胸郭のコンプライアンス低下 | 左右胸郭のコンプライアンス低下 | |
打診 | 両下肺野に鼓音を認める | 両下肺野に鼓音を認める |
聴診 | 右上・中・下肺野で呼吸音減弱 | 右下肺野で呼吸音減弱 |
左右・下肺野で粗い断続性ラ音 | 左中肺野・左右下肺野で粗い断続性ラ音 | |
NRADL(100点満点) | ||
動作速度 | 7点 | 10点 |
息切れ | 9点 | 18点 |
酸素流量 | 4点 | 4点 |
連続歩行距離 | 0点 | 2点 |
合計 | 20点 | 34点 |
呼吸困難 | ||
mMRC | grade 4度 | grade 4度 |
斜角筋触診法grade 2度,斜角筋が先に収縮して腹部の隆起が起こる; 斜角筋触診法grade 3度,腹部の隆起と斜角筋の収縮が同時に起こる.
NRADL, Nagasaki university respiratory ADL questionnaire; mMRC, modified medical research council dyspnea scale
本症例は基礎疾患に気管支拡張症があり,安定期でも 70-80 mL/日の自己喀痰があった.今回,肺炎を発症したことで喀痰量はさらに増加したが,自己排痰は十分ではなかった.理学療法士による排痰支援にて 150 mL/日の喀痰を排痰した.疾患やセルフマネジメントの教育指導を受けていなかったために排痰法などの知識がなく,排痰の際には努力を要していたが,BMIも 18.0 kg/m2 と低く,易疲労性のため十分な排痰ができていなかった.また,HOTの導入はされていたが,前医では酸素ボンベと機械酸素の使用方法しか説明を受けていなかった.そのためHOTを行う理由や必要性について理解が乏しく,これまではベッドから離れての動作では鼻カニュラを外して移動しており,労作時は低酸素血症を認めていた.妻も高齢のため,HOT管理をサポートすることができない状況であった.さらに,肺炎発症前から食事摂取量は少なく,呼吸補助筋の活動亢進やるい痩を認め,BMI:18.0 kg/m2 の低栄養状態であった.
7. 多職種による介入本症例に対して多職種による介入を行った.医師は,患者と家族へ,疾患とHOTの必要性を説明し,退院後の目標決定など,疾患の管理と全体の治療方針の決定を担った.看護師は,日々の体調管理と,引き続きHOT関連機器の使い方や必要性を説明し,酸素療法実施の定着を図った.また,退院後の在宅生活を見据え,服薬の管理やアクションプランの作成と活用を含めたセルフマネジメント教育を行った.理学療法士は,少ない負担で痰を喀出できるように自己排痰法の練習と,ADL上の呼吸困難軽減を目的にADLトレーニングを行った.本症例は低体重も認めていたため,管理栄養士による栄養指導を家族も含めて行い,自宅退院後も少量で高カロリーの食事ができるように食事内容を提案した.さらに本症例は入院時,呼吸器機能障害の身体障害者手帳3級を認定されていたが,医師により1級相当であると判断され,医療ソーシャルワーカーから手続き,その他,パルスオキシメータ―,超音波ネブライザーの購入補助,重度障害者医療としての医療費の減額など社会資源の活用について説明を行った.
理学療法士の立場から,本症例についての情報共有について述べる.医師と共有した内容は,患者がADL動作によってどの程度SpO2 が低下するのか,また,その時の呼吸困難や呼吸状態を評価し報告した.医師はその内容から労作時の酸素流量を決定し,指示するとともに多職種間で共有した.
本症例の喀痰は粘稠度が低かったことから,体位排痰法でも喀出可能であると判断し,時間を決めて定期的に排痰体位をとれるように体位変換表を作成,看護師と共有して,協同で患者への声掛けを行った.ADLにおいて,起居動作は自立しており,トイレまでの移動とトイレ動作は見守りで実施可能であることや,入浴時の洗髪・洗体動作で一部介助が必要であるなど,できる動作と介助が必要な動作を情報提供し,介助が過剰にならないようにした.また,更衣動作で腕を挙げた時に呼吸困難を感じるため,更衣の際は休憩を多く入れるよう,介助方法を統一できるように患者の動作能力を共有した.また,看護師からは日中ならびに夜間における自室での状況を報告してもらい,リハビリテーション実施時間以外の患者の状態や排痰の状況の把握に努めた.管理栄養士とは,身体活動度やリハビリテーションの実施によるエネルギー消費量(1,530 kcal)と経口エネルギー摂取量(920 kcal)の程度を共有し,エネルギーバランスを把握しながら呼吸リハを行った.
以上のように本症例に対しては,多職種それぞれの役割で介入を進めながら,情報の共有に努めた.
8. 理学療法の内容喀痰量も多かったことから,肺炎の再発を予防する目的で排痰法の練習から行った.まずは体位排痰法とスクイージングを用いて十分な排痰に努めた.本症例は 150 mL/日ほどの喀痰量があり,十分な排痰によって胸部聴診上,粗い断続性ラ音が減少することから,1日に 150 mlの喀痰量を目標とし,胸部聴診所見を指標に排痰支援を実施した.しかし,理学療法士による排痰は,疲労を惹起してしまうこともあった.そこで,喀痰の性状は十分な流動性を認めたことから,体位排痰法とハッフィングによる自己排痰を中心に指導した.理学療法士による排痰は疲労が生じない程度に留めた.疲労を生じた際の呼吸介助も考慮したが,同居の妻も高齢であり,在宅復帰した際の呼吸介助は困難であると判断し,理学療法士による排痰以外は,時間を決めて体位変換表を用い,患者のペースで排痰が行えるように支援した.その結果,自己排痰にて目標の達成と維持が可能となり,排痰による疲労感の軽減を図ることができた.
自己排痰が可能となったため,ADL練習へと移行した.全ての動作に共通する指導として呼吸と動作を同調させることを説明した.慢性呼吸不全患者は,力を必要とする動作や速い動作を行う際に,息こらえや呼吸が乱れることで,その後の激しい呼吸困難をきたしやすい.そのため,努力を要する動作は呼気に合わせて行うよう指導した.また,動作速度を落としてゆっくり呼吸に合わせるよう指導した.このような場合,動作速度を落とすことが目的ではない.Marcelaら3)によると動作速度を落とすことは,逆に体を動かす時に高いエネルギーコストが必要となることや,快適歩行と比較して,ゆっくり歩行するだけでは呼吸困難に有意差がなかったとも報告されている.動作速度を落とすことによって,呼吸と動作を協調させることが重要である.また,必要に応じて動作の前や実施中に休憩を入れ,呼吸を整えて動作に移るような指導も行った.さらに,入浴時の洗体・洗髪動作や更衣動作,セルフケア,食事といった具体的なADL動作の練習には,イメージしやすいようパンフレットや動画4)を用いながら実施した.本症例におけるADL練習の効果は,体動中の息切れ・動作速度・酸素流量を総合的に評価できるNagasaki university respiratory ADL questionnaire(以下,NRADL)によって行った.結果は,初期評価時に比べ最終評価時では改善を認めた(表2).ADL練習の効果に関してはSpO2 の低下が抑制できたことや,身体活動の強度を示すmetabolic equivalents(METs)が低下するとの報告がある5)が,エビデンスが確立されているものではないため,その効果を検証していくことは今後の検討課題でもある.
次に本症例は,鼻カニュラによる酸素療法を行っているが,口呼吸となっており十分な酸素吸入が行えていなかった.鼻カニュラは鼻腔から酸素を供給する器具である.そのため,高濃度の酸素を吸入するには鼻から吸気を行う必要がある.実際に口を開けて行う呼吸に比べ,鼻から行う吸気では気管分岐部での吸入器酸素濃度が高い6)報告があり,鼻からの吸気が行えるように,安静時から練習を行い,労作時の呼吸法練習へと移行していった.最終評価時には意識している時は労作時でも鼻からの吸気が可能となったが,意識をしていない時は口呼吸になることも認められた.
本症例は,コンディショニングである排痰やADL動作で呼吸困難や疲労を訴えていた.また,肺機能の%FEV1(forced expiratory volume in one second)15.6%や%VC(vital capacity)23.4%からも重症であると判断した.呼吸リハのステートメントでも,患者の重症度や年齢,病態に合わせた負荷の運動が推奨されている2).そこで今回は,病態や本人の体調を考慮し,持久力トレーニングや筋力トレーニングなど積極的な運動療法の実施までには至らなかった.
9. 退院に向けた在宅との連携自宅退院にあたり,在宅生活のフォロー体制が必要であると考えた.基礎疾患の気管支拡張症の影響から喀痰量が多く,自己排痰が不十分であったことから肺炎を繰り返していたと考えた.さらに,入院中も排痰困難によって低酸素血症に陥ることや,強い呼吸困難を訴えた経緯もあったことから,訪問看護を利用することで喀痰量とともに,適切にHOTを行えているか確認してもらうことを提案した.また,低酸素血症をきたしやすいため,ヘルパーによる入浴介助を,医学的管理ができるように訪問看護による入浴介助へ変更した.さらに,排痰法が適切に継続できているか確認することと,体調管理や身体活動の継続支援を目的に訪問リハビリテーションの利用を提案した.
10. 本症例のまとめ基礎疾患に気管支拡張症があり,肺炎を繰り返す症例であった.これまでに呼吸リハやセルフマネジメント教育を受けたことがなく,疾患の理解や自己管理能力が不足していた.これらを多職種で行った結果,自己排痰法を獲得し,目標の 150 mL/日の排痰が可能となった.また,呼吸器機能障害1級を取得したことで,重度障害者医療を利用した医療費負担の軽減が可能となった.さらに,助成金を利用してパルスオキシメータ―を購入できたことで,自身でもSpO2 の確認が可能となり,疾患の理解や酸素療法の意義を理解することにつながり,自己管理能力が向上した.
自宅復帰するにあたって,訪問看護と訪問リハを導入することで,疾患管理と肺炎の再発防止を図った.管理栄養士からは在宅でもできるような調理の工夫といった栄養指導を行い,退院後の栄養管理についても介入し,自宅退院となった.
肺炎の再発予防には,原因の考察が重要である.
市中肺炎であれば発症前の行動(人混みに行ったか,他人との接触が多かったか),マスクの着用,手洗いなどの感染対策はできていたかを確認する.問題点が見つかれば原因に応じた感染対策を重点的に指導する.
医療・介護関連肺炎の場合は,入居者や患者側の感染対策が問題の場合と,施設職員が媒体となっている可能性がある.職員に対する感染対策も徹底しなければならない.
誤嚥性肺炎では,明らかな誤嚥を認める場合,摂食嚥下の練習や食形態の見直しが必要となる.不顕性誤嚥が疑われる場合は眠前の口腔ケアが再発予防として最も重要である.
肺炎の原因考察のため,肺炎発症前の対象者の生活環境,摂食嚥下機能などの評価を行う必要がある.以前,当院では退職を契機に,社会的交流が極端に減少したことで,感染源となる微生物に暴露する機会が減少し,肺炎を発症しなくなった症例や,マスク・手洗いなど感染対策を徹底したことで肺炎を発症しなくなった症例を経験した.このように肺炎はその原因を見極めれば,予防対策することも可能である.
十分な食事,睡眠,適度な運動によって基礎体力をつけておくことも肺炎の予防には重要である.偏った食事や過度なストレス,運動不足では免疫力が下がり,体内に侵入した原因菌を排除することができなくなってしまう.インフルエンザワクチンに加えて,肺炎球菌ワクチンの予防接種も有効である.現在は65歳以上になると5年ごとに定期接種が受けられ,積極的な考慮が必要である.
肺炎回復期・維持期の呼吸リハでは,肺炎となった原因を見極め,予防を含めた介入が重要となる.今回提示した症例では,排痰方法,ADL練習,栄養状態の把握,社会資源を活用した自己管理能力の向上,在宅サービスの連携など,全ての介入において多職種協同でなければできない介入であり,多職種で介入することの重要性が示された.
今回初めて呼吸リハを受けたことによって疾患の理解や自己管理能力を高めることができ,社会資源のことを知ることによってその恩恵を受けることができた.今回の症例から,呼吸リハの重要性が示されたとともに,呼吸リハを提供する医療従事者が専門の知識を持っておくことの重要性も示された.
本稿執筆にあたりましてご協力をいただきました神津 玲氏(長崎大学大学院)に感謝申し上げます.
津田 徹;講演料(ベーリンガーインゲルハイム,アストラゼネカ)