The Journal of the Japan Society for Respiratory Care and Rehabilitation
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Current status and outcomes of the certified chronic respiratory nursing training program
Tomoko Hasegawa
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2025 Volume 34 Issue 2 Pages 120-121

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要旨

【慢性呼吸器疾患看護】分野の認定看護師は,呼吸器疾患を抱える患者・家族の安定した療養生活を支えるだけでなく,急性増悪期の予防と対処,呼吸リハビリテーションに携わるほか,在宅ケアと終末期看護にも関わる人材である.このような幅広い領域で専門的知識と技術を持った看護師が増えることで,個々の対象者に合ったカスタマイズされた看護・医療の実現が可能となった.

また,2020年からは新たに【呼吸器疾患看護認定看護師】となり,期待される技術としては,①呼吸症状のモニタリングと評価,重症化予防,②療養生活行動支援及び地域へつなぐため生活調整,③症状緩和のためのマネジメント,④身体所見を病態判断し,呼吸器系,栄養および水分管理に関する特定医療行為の教育が組み込まれた.今後,このような高度な知識と技術をもった認定看護師に益々期待がかけられている.

認定看護師制度は,特定の看護分野において熟練した看護技術と知識を用いて高度な看護を実践できる看護士へのニーズの高まりを受けて,1995年に発足された日本看護協会の認定制度である1(日本看護協会資格認定制度)であり,21分野2,000人以上の認定看護師(A課程)が,実践・指導・相談の役割を担って活躍している.【慢性呼吸器疾患看護】認定看護師は2010年に特定され1,2012年より認定が開始された比較的新しい分野の認定看護師である(日本看護協会資格認定制度).

認定看護師に期待される役割として,看護現場が地域へ広がることが期待され,あらゆる場で看護を必要とする対象者に,看護実践を提供できるようにするため,2019年に認定看護師制度が見直され,特定行為研修を組み込んだ新たな認定看護師教育(B課程19分野)が開始された1(日本看護協会資格認定制度).呼吸器疾患は急性期と慢性期が連続性を持った病態であり小児から高齢者までかかりうる疾患であるため,区分せずに専門的なケアを提供する必要があることから,【慢性呼吸器疾患看護】から,【呼吸器疾患看護】と改められ2021年よりB課程の教育に切り替えられた.B課程では特定行為研修が組み込まれているため,従来の教育内容に加え,高い臨床推論力と病態判断力に基づいた看護実践が提供できるような教育となっており,これにより対象者にタイムリーなケアの実践による症状緩和と重症化の予防が期待できる.

在宅での活動が期待されているため,B課程では全ての分野で〔栄養および水分管理に係わる薬剤投与関連(持続点滴中の高カロリー輸液の投与量の調整,脱水症に対する輸液の補正)〕が組み込まれている1.【呼吸器疾患看護】B課程では,〔呼吸器(人工呼吸療法)関連〕の4医療行為,①侵襲的陽圧換気の設定の変更,②非侵襲的陽圧換気の設定の変更,③人工呼吸管理がなされている者に対する鎮静薬の投与量の調整,④人工呼吸器からの離脱が組み込まれている1

福井大学では2021年よりB課程の【呼吸器疾患看護】の教育を提供しており,少しずつではあるが,特定行為を実施できる【呼吸器疾患看護】認定看護師を輩出している.特定行為研修を受講した者としていない者を含めた本学卒業の呼吸器疾患看護認定看護師250名に対し,特定行為研修終了後の活動,および特定行為研修に関する希望等について実態調査を行った.方法はGoogle Formを使用し,無記名にて回答を求めた.倫理的配慮としては,調査の趣旨を書面で説明し,回答をもって承諾と満たした.

その結果,99名(40%)より回答が得られた.現在の職位でもっとも多かったのはスタッフ(58%)であり,ついで主任等(29%),看護師長等(10%)であった.特定行為研修を受けた者は99名中19名(19%)で,その内容は〔栄養・水分管理等〕と〔呼吸器関連〕(各90%),〔気管カニュレ交換〕(70%),〔動脈血採血〕(60%)などであった.認定看護師としての手当等の支給がある者とない者はほぼ等しく,活動内容としては,自施設全体に対する活動と,ついで施設外の活動であった.その内容は,講演・講師等の教育活動(73%)がもっとも多く,コンサルテーション(14%)や看護協会等の活動(13%)があった.特定行為研修終了後の実施頻度については,頻回に実施している者と時々実施している者は19名中8名(40%)であり,実施していない者とニーズがなくて依頼されていない者が11名(60%)であった.特定行為研修を終了していない【呼吸器疾患看護】認定看護師の中で研修中の者は9名あったが,研修していない者は71名で,その理由は希望がないあるいは予定がないというものが圧倒的に多かった.しかし,研修を薦められている者やすぐに受講を希望している者も若干名あった.

【呼吸器疾患看護】認定看護師のなかで,特定行為研修を終了している者はまだまだ少ないことが明らかになった.特定行為研修を終了している者の中で,〔呼吸器関連〕の知識と手技を得ている者は多かったものの,それを実践している者は少なかった.特定行為研修を終了している者は,認定看護師としての知識と技術に加え臨床推論力や病態判断力が強化されているにも係わらず,臨床での実践の場が得られていない現状が明らかとなった.この原因としては,特定行為研修終了生の役割が臨床で理解できていない可能性がある.今後は特定行為研修を受けた認定看護師の役割について,医療者や患者・家族への理解を深めることが課題である.

著者のCOI(conflicts of interest)開示

本論文発表内容に関して特に申告すべきものはない.

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