The Journal of the Japan Society for Respiratory Care and Rehabilitation
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The reality of physical activity in COPD patients without history of hospitalization for exacerbation
Chiho Kobayashi Utako ShimizuTaku OsawaChikako YukiYoko OkataYu KoyamaKunihiko Sakai
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2025 Volume 34 Issue 2 Pages 144-150

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要旨

【目的】増悪入院歴のない慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の身体活動量の実態を呼吸困難の程度の違いも含め,明らかにする.

【方法】増悪入院歴のない男性のCOPD患者を対象とし,修正MRC息切れスケール(mMRC)を基に2群[A群(mMRC 0-1),B群(mMRC≧2)]に分類し,身体活動量(歩数,代謝当量別時間)測定し比較検討を行った.

【結果】歩数は両群において有意差を認めないが,B群は歩行および屋外活動に相当する 3.0~3.9 METsが有意に減少していた.また両群は1日の活動において,臥位,座位または立位に相当する 1.0~1.9 METsの割合が高いことが示された.

【考察】COPD患者が呼吸困難を経験した時点から,身体活動量に関する情報提供と呼吸リハビリテーションの促進が必要であり,身体活動量の向上と維持に対して有益にはたらくようセルフマネジメント支援が課題である.

緒言

慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease; COPD)は,進行性の気流制限を呈する疾患であり,労作時の呼吸困難は日常生活に支障をきたし,身体不活動に陥りやすい.COPD患者の身体活動量の実態では,軽症であっても日常生活における身体活動量は低下しており,歩行時間や立位時間は同年代の非COPDと比べて短く,歩行速度も遅いことが明らかになっている1.COPD患者の身体活動量の向上と維持に向けた支援において,患者教育は軽症時から介入し2,3,身体活動量の評価と介入が必要である4.しかし,患者教育の現状は,増悪入院や在宅酸素療法等を使用する段階で実施されることが多く5,増悪入院歴のないCOPD患者に対する患者教育は十分とは言えず,身体活動量の実態についても明らかにされていない.

本研究の目的は,増悪入院歴のないCOPD患者の日常生活における歩数や運動強度を示す身体活動量の実態を明らかにし,COPD患者に対する身体活動量の向上と維持に向けた支援を検討することである.

対象と方法

1. 対象者の選定とリクルート

本研究は,診療録,3軸加速度センサー付き歩数計(以下,加速度計)による調査の組み合わせによる横断調査で,筆者らの先行研究である「在宅酸素療法を導入していない高齢者の身体活動量に影響を及ぼす要因6」をもとに,増悪入院歴がないCOPD患者を抽出し,GOLD(Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease; GOLD)7の病期分類における増悪入院歴のないGroupのA群[修正MRC息切れスケール(modified Medical Research Council dyspnea scale; mMRC)0-1],B群(mMRC≧2)の2群に分類し比較検討する.

対象となった研究実施施設は,呼吸リハビリテーションが提供されており,日本呼吸器学会専門医の診療,または慢性呼吸器疾患看護認定看護師による看護外来で療養支援が行われている医療機関5施設(下越病院,勤医協中央病院,長岡赤十字病院,新潟臨港病院,松本協立病院)とした.研究対象者の選定では,呼吸器内科外来に通院する65歳以上80歳以下の男性で,在宅酸素療法を導入していないCOPD患者とし,過去にCOPD増悪による入院歴がなく病状が安定している,呼吸器疾患以外の要因による日常生活活動(activities of daily living; ADL)制限がない,明らかな認知症や精神疾患,不安,抑うつ症状による治療がない者とし,呼吸器科医師及び慢性呼吸器疾患看護認定看護師が呼びかけ,調査に関して書面及び口頭で説明し同意が得られた者とした.

2. 調査内容

1) 対象者の属性と呼吸困難の程度

対象者の属性については調査用紙を用い,年齢,体重,体格指数(body mass index; BMI),同居者の有無,仕事の有無,併存症の有無と病名,mMRC,COPD罹患期間,呼吸リハビリテーションの経験の有無,吸入薬の種類を収集した.診療録からは,GOLD病期分類,呼吸機能検査[1秒率(forced expiratory volume % in one second; FEV1/FVC),対標準1秒量,対標準肺活量(調査開始時点で直近のデータ)]について,調査開始時点で間近のデータを収集した.

2) 身体活動量評価

身体活動量は,歩数や姿勢・動作時間・運動強度を測定することが可能な加速度計(Active style Pro HJA-750C, OMRON)で測定した1日の「歩数」と,運動の強さを示す指標となる代謝当量(metabolic equivalents; METs)に要した時間を「METs別時間」としてデータを収集した.分析対象は連続した8日間の測定を行い,座位の目安となる 1.0 METs以上の記録が5時間/日以上かつ5日間以上測定できたデータを抽出し,得られた歩数データの上側5日間の歩数およびMETs別時間(≧1.0 METs,≧2.0 METs,≧3.0 METs)別に中央値を算出した.除外基準は,1.0 METs以上の記録が5時間/日未満かつ5日間未満の場合とした.

3. 調査方法

研究者は対象者より研究参加の同意が得られたら,対象者の属性に関して調査用紙を記入し,対象者へ加速度計を配布した.研究対象者は,翌日の起床から就寝までの間,加速度計を腰に装着し,連続した8日間の測定を行ってもらい,加速度計を郵送し研究責任者が回収した.

4. 調査期間

調査期間は外気温の低下により活動性が低下する8冬季を除き,2019年9月1日~2019年10月31日,2020年4月1日~8月7日とした.

5. 分析方法

本研究では対象者を2群[A群(mMRC 0-1),B群(mMRC≧2)]に分類し,記述統計として連続変数は中央値[四分位範囲(Inter-Quartile Range; Q3-Q1)],名義変数及び順序変数は度数または割合で示した.2群の比較では名義変数はχ二乗検定,連続変数および順序変数はマンホイットニーのU検定を行い,統計処理はIBM SPSS Statistics ver27.0を用い,統計学的な有意水準を5%未満とした.

6. 倫理的配慮

本研究は新潟大学倫理審査委員会の承認(受付番号:2018-0389)と,研究協力施設の倫理委員会の承認を受け実行した.研究対象者には研究の目的と方法,協力への自由意志と辞退による不利益がないこと,匿名性の保持について説明し同意を得た.

結果

1. 対象者の属性と呼吸困難の程度

研究に参加した49名のうち,過去に増悪入院歴がある患者14名を除く35名を対象とし,mMRCの程度によりA群23名 [mMRC 0:7名(30.4%),mMRC 1:16名(69.6%)]と,B群12名[mMRC 0および1:0名(0%),mMRC 2:10名(83.3%),mMRC 3:2名(16.7%)]に分類した(図1).本研究の対象者の属性を表1に示す.年齢,BMIは両群に有意差は認めず,仕事を有している者の割合は低く両群に差はなかった.COPDの罹患期間では,B群[6.0(9.3-1.0)年]はA群[2.0(8.0-1.0)年]よりも,その期間は長かった.気流閉塞の程度を示すFEV1/FVCは両群に差を認めないが,対標準1秒量(p<0.03)および対標準肺活量(p<0.01)はB群が有意に低かった.GOLD重症度分類における分布では,A群はII期(13名/56.5%),B群はIII期(6名/50.0%)が多く,呼吸リハビリテーションの経験では,A群;2名(8.7%),B群;4名(33.3%)であった.薬物治療として安定期の吸入薬が処方されている者は,A群;18名(78.3%),B群;12名(100%)で,B群は全ての患者が吸入薬による治療を行っていた.短時間作用性β2刺激薬については,A群;3名(13.0%),B群;2名(16.7%)であった.

図1 対象者の選定

研究に参加した49名のうち,過去に増悪入院歴がある患者14名を除く35名を対象とし,mMRCの程度によりA群(23名)とB群(12名)に分類した.

表1 対象者の属性と身体活動量(n=35)

A群およびB群(n=35)A群:mMRC 0-1(n=23)B群:mMRC ≧2(n=12)p値
患者属性
年齢(歳)72(76.5-69.5)72.0(76.5-69.5)74(76.3-69.5)0.98
身長(cm)166.4(170.1-164.1)167.9(172.6-164.5)165(166.2-164.0)0.15
体重(kg)65.1(67.9-59.2)64(67.2-58.6)67.2(69.3-62.8)0.29
BMI(kg/m223.7(24.9-20.8)23.1(24.4-20.5)24.5(25.0-23.6)0.10
同居者あり,n(%)32(91.4)21(91.3)11(91.7)0.97
仕事あり,n(%)7(20.0)5(21.7)2(16.7)0.72
COPD罹患歴(年)5.0(8.5-1.0)2.0(8.0-1.0)6.0(9.3-1.0)0.36
GOLD重症度分類
(I/II/III),n(%)
8(22.9)/18(51.4)/
9(25.7)
7(30.4)/13(56.5)/
3(13.0)
1(8.3)/5(41.7)/6(50.0)0.04
mMRC(0/1/2/3),n(%)7(20.0)/16(45.7)/
10(28.6)/2(5.7)
7(30.4)/16(69.6)/0/00/0/10(83.3)/2(16.7)0.01
呼吸リハビリテーション
経験あり,n(%)
6(17.1)2(8.7)4(33.3)0.06
安定期吸入薬あり,n(%)30(85.7)18(78.3)12(100)0.67
SABA, n(%)5(14.3)3(13.0)2(16.7)
LAMA, n(%)5(14.3)2(8.7)3(25.0)
LABA, n(%)1(2.9)1(4.3)0(0)
ICS, n(%)0(0)0(0)0(0)
LAMA+LABA, n(%)9(25.7)6(26.1)3(25.0)
ICS+LABA, n(%)3(8.6)2(8.7)1(8.3)
LAMA+LABA+ICS, n(%)12(34.3)7(30.4)5(41.7)
併存疾患あり,n(%)31(88.6)20(87.0)11(91.7)0.68
気管支喘息,n(%)11(31.4)7(30.4)4(33.3)
糖尿病,n(%)9(25.7)5(21.7)4(33.3)
うっ血性心不全,n(%)2(5.7)2(8.7)0(0)
高血圧,n(%)8(22.9)7(30.4)1(8.3)
脂質異常症,n(%)8(22.9)4(17.4)4(33.3)
呼吸機能
FEV1/FVC(%)61.6(64.4-55.0)61.6(63.8-56.5)60.3(66.1-52.6)0.71
対標準1秒量(%)69.9(79.4-51.1)75.8(86.3-64.3)48.1(60.2-46.0)0.004
対標準肺活量(%)100.2(114.4-85.0)102.2(117.3-89.9)80.4(103.6-66.9)0.03
身体活動量
測定時間(分)671(818.5-627.0)675(804.5-633.0)649(817-619)0.47
歩数(歩)6,322.0(9,394.0-3,657.0)7,229.0(9,395.5-3,929.5)5,629.5(7,778.8-2,249.3)0.27
1.0~1.9 METs(分)478(566.0-381.5)476(564.0-374.0)526.5(577.5-386.8)0.73
2.0~2.9 METs(分)152(175.0-112.5)159(175.0-122.5)120(169.3-103.0)0.25
3.0~3.9 METs(分)51(68.5-32.5)61(76.0-37.0)37.5(54.3-21.3)0.04
4.0~4.9 METs(分)8(20.0-4.5)12(22.5-6.5)6(9.5-3.5)0.05

体格指数(body mass index; BMI),修正MRC息切れスケール(modified Medical Research Council dyspnea scale; mMRC),代謝当量(Metabolic Equivalents; METs),短時間作用性β2刺激薬(short-acting beta2 agonists; SABA),抗コリン薬(long-acting muscarinic antagonists; LAMA),長時間作用性β2刺激薬(long-acting beta2 agonists; LABA),吸入ステロイド薬(inhaled corticosteroid; ICS),1秒率(forced expiratory volume % in one second; FEV1/FVC)

中央値[四分位範囲(Inter-Quartile Range; Q3-Q1)],Mann–Whitney U test p<0.05,χ二乗検定 p<0.05.

連続変数は中央値(四分位数範囲Q1-Q3),名義変数及び順序変数は度数または割合で示した.

METs別時間は,歩行および屋外活動に相当する 3.0~3.9 METs[A群;61.0(76.0-37.0)分,B群;37.5(54.3-21.3)分]のみ,B群は有意に減少(p<0.05)していた.臥位,座位または立位に相当する 1.0~1.9 METsの活動では,両群に有意差を認めないが,A群;476.0(564.0-374.0)分,B群;526.5(577.5-386.8)分,ともに時間は長かった.

2. 歩数の比較

身体活動量が測定された曜日の割合を図2に示す.対象者全体(n=35)の歩数は6,322.0(3,657.0-9,394.0)歩であった.両群の比較では,B群[5,629.5(7,778.8-2,249.3)歩]はA群[7,229.0(9,395.5-3,929.5)歩]よりも歩数は少ないが,有意差を認めなかった.

図2 身体活動量測定曜日の割合(n=35)

本研究で対象データとなった身体活動量の測定曜日を示す.

測定曜日の頻度/研究対象者数(35)にて算出する.

3. METs別時間の比較

対象者全体(n=35)のMETs別時間は,立位および座位やリクライニングに相当する 1.0~1.9 METsでは478(381.5-566.0)分,ゆっくりとした歩行や屋内活動に相当する 2.0~2.9 METsでは152(112.5-175.0)分,歩行および屋外活動に相当する 3.0~3.9 METsでは51(32.5-68.5)分,自転車に乗る,階段を上るに相当する 4.0~4.9 METsでは8(4.5-20)分であった.両群の比較では,3.0~3.9 METs[A群;61.0(76.0-37.0)分,B群;37.5(54.3-21.3)分](p<0.05),4.0~4.9 METs[A群;12.0(22.5-6.5)分,B群;6(9.5-3.5)分](p<0.05)ではB群は有意に減少していた.そのほかは,1.0~1.9 METs[A群;476.0(564.0-374.0)分,B群;526.5(577.5-386.8)分],2.0~2.9 METs[A群;159.0(175.0-122.5)分,B群;120.0(169.3-103.0)分]では,有意差を認めなかった.1.0~1.9 METsの活動では,両群に有意差を認めないが,1日の活動における割合においてはA群;67.2%,B群;76.3%と高い結果となった(図3).

図3 1日の生活活動におけるMETs別時間の割合(n=35)

両群の1日の生活活動におけるMETs別時間の割合を示す.

A群;67.2%(476分),B群;76.3%(526.5分)ともに高い結果となった.

修正MRC息切れスケール(modified Medical Research Council dyspnea scale; mMRC)

代謝当量(Metabolic Equivalents; METs)

考察

本研究は増悪入院歴がないCOPD患者の身体活動量を捉えるために,mMRCの程度により2群に分け,歩数とMETs別時間について比較検討を行った.その結果,歩数は両群において有意差を認めないが,B群(mMRC≧2)はMETs別時間で歩行および屋外活動に相当する 3.0~3.9 METsが有意に減少していた.また両群は,1日の活動において,臥位,座位または立位に相当する 1.0~1.9 METsの割合が高く,先行研究と同様の結果であった.しかし,本研究の対象者は増悪入院の経験がないことに加え,先行研究1と比較し気流閉塞の程度がさらに軽度であることから,より早期の段階から身体活動量が低下していることが示され,身体活動量の向上と維持に向け,外来安定期の支援の重要性を示唆する結果であったと考える.

本研究の対象者は,年齢,身長,体重ともに両群間に有意差を認めなかった.「国民健康・栄養調査(令和元年)10」では,70歳以上の高齢男性の平均体重は 62.4 kg,BMIは 23.5 kg/m2と報告されおり,研究対象者は一般的な70歳以上の高齢男性と同等であった.次に本研究の対照はmMRCの程度により2群に分けていることから,B群はA群よりも呼吸困難が強い集団であり,B群はGOLD重症度分類においてもIII期の分布が多い.さらに,呼吸機能においてはFEV1/FVCは両群に差を認めないが,B群はA群と比較し,対標準1秒量(p<0.01)および対標準肺活量(p<0.03)が有意に低いことから,B群はA群と比較し閉塞性換気障害がより強く,病期が進行している対照群であった.

COPD患者の身体活動量に関与しうる因子として,気流閉塞や生活習慣,環境等,様々な因子の可能性が指摘されている.なかでも,呼吸困難は身体活動へ影響を及ぼす因子のひとつであると報告されている11.しかし,増悪入院歴がないCOPD患者の歩数においては,B群[5,629.5(7,778.8-2,249.3)歩]はA群[7,229.0(9,395.5-3,929.5)歩]よりも少ないが両群に有意差を認めなかった.METs別時間では普通歩行および屋外活動に相当する 3.0~3.9 METsにおいて,B群[37.5(54.3-21.3)分]はA群[A群;61.0(76.0-37.0)分]よりも有意に低い結果となった(p<0.05).

B群が呼吸困難の影響を受けながらも歩数を維持していた背景として,本研究の対象者はADLの制限がなく自立している患者であったことが考えられる.しかし,B群では 3.0~3.9 METsのMETs別時間において低値を示した.先行研究ではCOPD患者は健常者と比較し,いずれの強度においても活動時間が健常者より有意に短縮しており,3.0 METs以上の強度の活動時間は健常者の約半分に短縮していることが報告されている12.さらに,COPD患者を対象とした報告ではmMRC2以上の患者では,2.5 METs以上の活動について有意に低下していると報告されており13,本研究においても類似した結果が示された.これは,呼吸困難に対するセルフマネジメントが多様であることが影響していると推察できる.COPD患者を対象とした研究では,患者は医療者からの支援の有無にかかわらず,日常生活の中で息切れを体験し始めたときから,日々試行錯誤し何らかのマネジメントを行っていることが報告されている14,15,16.対象者は両群ともに呼吸リハビリテーションの実施率は低く(A群;8.7%,B群;33.3%),運動前の短時間作用性β2刺激薬吸入が両群ともに少なく,呼吸困難に対する個別の経験に基づいたセルフマネジメント実施されADLを遂行していたことが推察できる.一方,呼吸困難を起こさないために,意識して活動を抑制する方向に調整し,ADLを自ら制限していく可能性が指摘されていることから17,B群は呼吸困難による直接的な影響のほかに,呼吸困難へのセルフマネジメントにより運動強度は制限されている可能性が示唆された.したがって,増悪入院歴のないCOPD患者は呼吸リハビリテーションを経験する機会が少ないことや,看護外来は限られた施設のみでの運用であるため,COPD患者が呼吸困難を経験した時点から,身体活動量の向上と維持に必要な情報提供と,呼吸リハビリテーションを促進する必要性があり,その具体的な支援として,歩数計や活動日記等を活用し身体活動量を把握する必要性がある.また,ADLが制限されている場合には,呼吸困難を体験した際のADL内容及び運動強度を評価し,身体活動量の向上と維持に対して有益にはたらくようセルフマネジメント支援が課題である.

次に,1.0~1.9 METsの活動では両群に有意差を認めないが,先行研究9と同様に1日の活動における割合が高い結果が示された.COPD患者を対象とした研究では,立位や歩行時間が有意に短縮し,座位や臥位の時間が有意に延長していると報告されているが1,本研究の対象者はFEV1/FVCがより高い患者群であったことから,さらに早い時期から立位や歩行時間が短縮していることが示された.COPD患者の運動耐容能と身体活動量に関する研究では,運動耐容能が高くても身体活動量が低い患者がいることが示されており18,19,一定数含まれていることが推察できる.近年では覚醒時の 1.5 METs以下の活動を示すsedentary(座位)時間が注目されており,COPD患者において,長時間の座位が予後に悪影響を与えることが報告されている20.COPD患者に対する身体活動量向上の介入に関する研究では,高強度の活動よりも低強度の活動で歩数を増やすことが入院リスクを低減させると示され,座位時間を減らし,立位や緩徐な歩行を積極的に行うことの重要性が示唆されている21.また,成人を対象としたメタ解析では,運動強度を上げる介入よりも座位時間を減らす介入の方が効果的であり22,座位等の活動しない時間へのアプローチが重要であることが示されている23.以上のことから,日常生活による活動や趣味,外出等,すべての活動や動作が身体活動量を向上させる機会になることを伝え,経時的な評価やフィードバックを行いながら支援する必要性がある.

本研究の限界として,対象は増悪入院歴がないCOPD患者の身体活動量を捉えたが,対象者が男性に限定されており女性については検討されていない.また,身体組成評価および運動耐容能に関する臨床データは得られておらず,それらが身体活動量に及ぼす影響については明らかにできない現状がある.さらに身体活動量のデータ抽出においては,サンプルサイズが少ない点や天候についての情報が調査できていないことから,身体活動量に影響を及ぼしえる因子を除外できていない.しかし,増悪入院歴がないCOPD患者の歩数およびMETs別時間を客観的に捉えたことは意義が深く,増悪入院歴がないCOPD患者に対する身体活動量の向上と維持に向けた療養支援において,呼吸困難の程度に応じた運動強度と活動時間を検討する上で重要である.今後は更に症例数を増やし検討を進めるとともに,症状が軽度のCOPD患者への療養支援の重要性について調査を進めたい.

本研究は令和2年度新潟大学大学院保健学研究科博士前期課程の学位論文に加筆・修正したものである.

著者のCOI(conflicts of interest)開示

本論文発表内容に関して特に申告すべきものはない.

文献
 
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