The Journal of the Japan Society for Respiratory Care and Rehabilitation
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Investigation of factors associated with frontal lobe function in elderly patients with chronic respiratory diseases
Kazutaka Horikoshi Oriho OnishiYuko TakedaNaoki KobayashiHiroki Watanabe
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2025 Volume 34 Issue 3 Pages 265-271

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要旨

【目的】慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease; COPD)や間質性肺疾患(interstitial lung disease; ILD)を中心とした高齢慢性呼吸器疾患患者の前頭葉機能に関連する要因を明らかにすることを目的とした.

【方法】42名を分析対象者とし,Frontal Assessment Battery(FAB):14点以上を前頭葉機能維持群,FAB:13点以下を前頭葉機能低下群とし2群間で比較検討を行った.次に,従属変数をFABとして重回帰分析を行った.

【結果】前頭葉機能低下群ではShort Physical Performance Battery(SPPB),日本語版軽度認知障害スクリーニング検査(Japanese Version Montreal Cognitive Assessment; MoCA-J),hospital anxiety and depression scale(HADS)の抑うつが有意に低値を示し,軽度認知機能障害(Mild Cognitive Impairment; MCI)の有病率も高かった.重回帰分析の結果,FABに影響する項目は,年齢(β=0.12, p<0.05),SPPB(β=0.64, p<0.01)であった.

【考察】高齢慢性呼吸器疾患患者の前頭葉機能低下は,認知機能や精神機能,運動機能の低下との関連が示唆された.高齢慢性呼吸器疾患患者の身体活動向上や行動変容を促すためには,前頭葉機能の評価と介入が重要である可能性が示唆された.

緒言

慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease; COPD)や間質性肺疾患(interstitial lung disease; ILD)をはじめとする慢性呼吸器疾患患者に対する呼吸リハビリテーションでは,運動療法だけでなく移動,食事,排泄,入浴などの日常生活活動(activities of daily living; ADL)に関するADL練習や家事,外出,服薬,金銭管理などの手段的日常生活動作(instrumental activities of daily living; IADL)に関するIADL練習,福祉用具の使用などに関する練習,退院後の住環境に即した練習が必要となる.

呼吸リハビリテーションの関わりの中では,ADLやIADL練習に対して新たな動作指導や効率的な呼吸方法の指導を日常生活の中で円滑に取り入れて実践できるように介入し,ADLトレーニングを通して自己の病態を把握し,セルフマネジメントができるように患者教育を行うことが重要である1

セルフマネジメント教育は,単に知識や技術の習得に止まらず,今までの生活習慣を変換させ,新たな生活習慣を再獲得するために行動変容が必要である2

患者自身の行動変容を促すためには,実際の動作や環境の変化の中で楽にできたという成功体験を用いて自己効力感を高めることや,実際の動作を数値化して本人へわかりやすくフィードバックすることが重要である.また,本人だけでなく家族や周囲の支援者にも直接連携を行うことが重要である3

COPDやILD患者の特徴として,何回指導してもすぐに忘れてしまう,酸素の取り扱いや吸入薬の使用方法をなかなか理解できない,易刺激性があり抑制が取れて多弁であり,記憶・注意・遂行機能障害をはじめとした軽度認知機能障害(Mild Cognitive Impairment; MCI)の罹患率が高く前頭葉機能低下を認め,これらの症状が治療やリハビリテーションの効率化やその維持に問題となることが多いと報告されている3,4,5,6,7

このように,前頭葉機能低下による記憶・注意・遂行機能障害は,セルフマネジメント獲得のための行動変容に影響すると想定され,その実態について調査することは,臨床的に有用であると思われる.

そこで,本研究の目的は,COPDやILDを中心とした高齢慢性呼吸器疾患患者における前頭葉機能とMCIの関連を調査し,前頭葉機能に関連している要因を明らかにすることとした.

対象と方法

1. 対象

対象者は,2022年4月~2023年6月までに当院呼吸器内科に入院し呼吸リハビリテーションを実施した65歳以上の高齢慢性呼吸器疾患症例でミニメンタルステート検査(mini-mental state examination; MMSE)が27点以上で認知機能の異常がないと思われ8,歩行補助具の有無は問わずに歩行自立にて自宅退院した者とした.除外基準は,認知機能や前頭葉機能に影響すると思われる脳血管障害や認知症の既往歴がある者とした.

なお,本研究はヘルシンキ宣言に基づき徳洲会グループ共同倫理審査委員会の承認を得ている(承認番号:TGEO2322-008).

2. 調査項目

(2-1)一般情報

年齢,性別,body mass index(BMI),要介護度,ブリンクマン指数を調査した.

(2-2)運動機能

運動機能の評価として,Short Physical Performance Battery(SPPB)を用いた.SPPBは,①バランステスト(閉脚立位10秒,セミタンデム肢位10秒,タンデム肢位10秒),② 4 m歩行時間,③立ち座りテスト(5回立ち上がり時間)からなる身体パフォーマンスの評価指標で,各項目0~4点で総得点0~12点となり得点が高いほど移動動作能力が高いことを示す9.SPPBは呼吸器疾患領域において運動機能評価ツールとして有用である可能性が示唆されている10

(2-3)認知機能

日本語版軽度認知障害スクリーニング検査(Japanese version of Montreal Cognitive Assessment; MoCA-J)を用いた.MoCA-Jは,MCIのスクリーニングツールであり,注意機能,集中力,実行機能,記憶,言語,視空間認知,概念的思考,計算,見当識など多領域の認知機能に関する10項目で構成されており10分程度で評価可能な検査である.合計得点は30点で26点未満がMCIとされている11

(2-4)前頭葉機能

前頭葉機能の評価は,Frontal Assessment Battery(FAB)を用いた.FABは,簡便な前頭葉機能評価であり,①類似性(概念化),②語の流暢性(心の柔軟性),③運動系列(運動プログラミング),④葛藤指示(干渉刺激に対する敏感さ),⑤GO/NO-GO課題(抑制コントロール),⑥把握行動(環境に対する被影響性)の6つの下位項目で構成され,合計得点は18点満点で示す(表1).施行が簡便で所要時間も15分程以内で済むこと,得点の幅が少な過ぎず多過ぎず直感的に高低を把握しやすいことから臨床場面で頻用されている.高齢者の場合には14点以上であれば前頭葉機能は正常と判断しても良いとされている12,13

表1 Frontal Assessment Battery(FAB)

方法・手順得点採点基準
類似性□概念化
「次の2つは,どのような点で似ていますか?」
①バナナとオレンジ(果物)
②机と椅子(家具)
③チューリップとバラとヒナギク(花)
①のみヒント可 完全な間違いの場合や 皮がある など部分的な間違いの場合は「バナナとオレンジはどちらも・・・」とヒントを出す ②③はヒントなし
33つとも正答
22つ正答
11つ正答
0正答なし
語の流暢性□柔軟性
「[か]で始まる単語を出来るだけたくさん言ってください.ただし,人の名前や固有名詞は除きます.」
制限時間:60秒
最初の5秒間反応がなかったら,例えば,「紙」とヒントを出す.
さらに10秒黙っていたら「[か]で始まる単語ならなんでもいいですから」,と刺激する.
同じ単語の繰り返しや変形(「傘,傘の柄」など),人の名前,固有名詞は正答としない
310語以上
26~9語
13~5語
02語以下
運動系列□運動プログラミング
「私がすることをよく見ておいてください.」
検者は左手でLuriaの系列「拳 fist-刀 edge-掌 palm」を3回実施する.
「では,右手で同じことをしてください.はじめは私と一緒に,次は独りでやってみてください」という.
3被検者独りで,正しい系列を6回連続してできる
2被検者独りで,正しい系列を少なくとも3回連続してできる
1被検者独りではできないが,検者と一緒に正しい系列を3回連続してできる
0検者と一緒でも正しい系列を3回連続することが出来ない
葛藤指示□干渉刺激に対する敏感さ
「私が1回叩いたら,2回叩いてください」
被検者が指示を理解したことを確かめてから,次の系列を施行する.
1-1-1
「次は,私が2回叩いたら,1回叩いてください」
被検者が指示を理解したことを確かめてから,次の系列を施行する.
2-2-2
そして次の系列を実施する.
1-1-2-1-2-2-2-1-1-2
3間違いなく可能
21,2回の間違いで可能
13回以上の間違い
0被検者が4回連続して検者と同じように叩く
Go/No Go課題□抑制コントロール
「私が1回叩いたら,1回叩いてください」
被検者が指示を理解したことを確かめてから,次の系列を施行する.
1-1-1
「次は,私が2回叩いたら,叩かないでください」
被検者が指示を理解したことを確かめてから,次の系列を施行する.
2-2-2
そして次の系列を実施する.
1-1-2-1-2-2-2-1-1-2
3間違いなく可能
21,2回の間違いで可能
13回以上の間違い
0被検者が4回連続して検者と同じように叩く
把握行動□環境に対する被影影響
「私の手を握らないでください」
被検者に両手の手掌面を上に向けて膝の上に置くように指示する.
検者は何も言わないか,あるいは被検者の方を見ないで,両手を被検者の手の近くに持っていって両手の手掌面に触れる.
そして,被検者が自発的に検者の手を握るかどうかをみる.
もし,被検者が検者の手を握ったら,「今度は,私の手を握らないでください」と言って,もう一度繰り返す.
3被検者は検者の手を握らない
2被検者は戸惑って,何をすればいいのか尋ねてくる
1被検者は戸惑うことなく,検者の手を握る
0被検者は握らなくともいいと言われた後でも検者の手を握る

文献13)より改変

(2-5)精神機能

精神機能の評価は,不安,抑うつ状態の指標であるhospital anxiety and depression scale(HADS)の日本語版14を用いた.HADS日本語版は,抑うつ7項目,不安7項目の14項目をそれぞれ0~3点で採点し合計得点を算出するもので点数が高くなるほど抑うつや不安が強い傾向にあることを示す指標である.0~7点を「抑うつ,不安なし」,8~10点を「抑うつ,不安の疑い」,11~21点を「抑うつ,不安あり」と判定する15

3. 統計学的手法

当院呼吸器内科に入院しリハビリテーションを実施し,選択基準を満たす42名を分析対象者とした(図1).仲秋らによる報告12を参考にし,FAB:14点以上を前頭葉機能維持群,FAB:13点以下を前頭葉機能低下群の2群に分類した.この2群間において年齢,性別,BMI,疾患内訳,要介護度,ブリンクマン指数,SPPB,MoCA-J,HADSの各項目をMann-WhitneyのU検定,χ2検定,Fisherの直接確率法を行って比較した.さらにFABと各調査項目との関連をSpearman順位相関分析にて行い,従属変数をFAB,独立変数をFABと関連のあった項目として重回帰分析を行った.統計解析は,EZR(Saitama Medical Center, Jichi Medical University, Saitama, Japan)16を用い,有意水準は5%未満とした.

図1 分析対象者の選定

結果

1. 対象者の属性,および前頭葉機能低下群と維持群との比較

分析対象者42名のうち,対象者の属性は,年齢は76.4±5.3歳,男性24名,女性18名であり,MCIは32名でMCI有病率は76.1%であった.

次に,前頭葉機能維持群と前頭葉機能低下群の比較を表2に示す.前頭葉機能低下群ではSPPB,MoCA-J,HADS(抑うつ),の項目が有意に低く,MCIが有意に多かった.

表2 前頭葉機能維持群と低下群の比較

全体前頭葉機能維持群
FAB14点以上
前頭葉機能低下群
FAB13点以下
p値
n=42n=16n=26
年齢(歳)76.4±5.377.2±6.1 75.2±4.8 0.39
性別(男性)241410 0.45
BMI(kg/m220.2±2.220.9±1.919.5±2.3 0.09
ブンリンクマン指数725(200-2,120)600(200-2,120)750(300-2,000) 0.75
疾患内訳
 COPD(名)261016 0.78
 ILD(名)16 610
要介護度
自立(名)2110110.16
要支援1(名)14 410
要支援2(名) 4 2 2
要介護1(名) 3 0 3
SPPB(点) 8.5±2.2 9.7±2.40 7.5±1.7<0.01
MMSE(点)28.8±0.828.7±0.9 28.8±0.7 0.82
MoCA-J(点)23.3±3.425.5±3 21.5±2.5<0.01
MCI(名)32 824<0.01
HADS(点)10.6±4.2 9.5±5.1 11.3±3.4 0.18
 不安 4.6±2.4 4.5±2.9 4.5±2.1 0.99
 抑うつ 6.1±2.7 5.1±2.6 6.8±2.6<0.05
FAB(点)13.7±2.516.1±1.4 11.7±0.9<0.01

平均値±標準偏差,中央値(最小値-最大値)

chronic obstructive pulmonary disease; COPD, interstitial lung disease; ILD, Short Physical Performance Battery; SPPB, mini-mental state examination; MMSE, Japanese version of Montreal Cognitive Assessment; MoCA-J, Mild cognitive impairment; MCI, hospital anxiety and depression scale; HADS, Frontal Assessment Battery; FAB

2. FABと各測定項目の相関関係

FABと各調査項目の相関関係を表3に示す.FABは,SPPB(r=0.65, p<0.01),MoCA-J(r=0.76, p<0.01),HADS(r=-0.36, p<0.05)と有意な相関関係を認めた.

表3 FABと各測定項目の相関行列

FAB年齢BMIブンリンクマン指数SPPBMoCA-J
年齢0.09
BMI0.19-0.07
ブリンクマン指数-0.27-0.37*0.15
SPPB0.65**-0.250.46 **0.06
MoCA-J0.76**-0.07-0.17-0.170.51**
HADS-0.36*0.38 **-0.25-0.23-0.53**-0.31*

*; p<0.05 **; p<0.01

Frontal Assessment Battery; FAB, body mass index; BMI, Short Physical Performance Battery; SPPB, Japanese version of Montreal Cognitive Assessment; MoCA-J, hospital anxiety and depression scale; HADS

3. FABを従属変数とした重回帰分析

FABを従属変数とし,年齢,性別,SPPB,HADSを独立変数とした重回帰分析の結果を表4に示す.独立変数の各項目において多重共線性は認められなかった.FABに影響する項目は,年齢(β=0.12, p<0.05),SPPB(β=0.64, p<0.01)であった.(R2=0.54,自由調整済みR2=0.49, p<0.01).

表4 重回帰分析の結果

標準偏回帰係数(β95%信頼区間VIF
年齢0.12*0.04~0.131.32
性別0.39-0.92~1.671.18
SPPB0.64**0.33~0.941.34
HADS-0.14-0.33~0.051.80
R20.54**
R2 adj0.49**

*; p<0.05, **; p<0.01

variance inflation factor; VIF, Short Physical Performance Battery; SPPB, hospital anxiety and depression scale; HADS

決定係数;R2,自由度調整済み決定係数;R2 adj

従属変数:Frontal Assessment Battery(FAB)

独立変数:年齢,性別,SPPB,HADS

考察

1. 前頭葉機能低下とMCIとの関連

本研究の対象者は,MMSE:27点以上の高齢者を選択基準としており認知機能に異常がないと思われる者であった8.その中でもMCIの有病率は71.4%と高かった.Balwinderらによると,COPD患者ではMCIの有病率が健常者よりも高いと報告しており17,本研究も先行研究と同様の傾向となった.

次に,前頭葉機能低下群では,MMSEでは有意な差を認めず,MoCA-J得点が有意に低値であったことについて考察する.MoCA-Jは,MMSEと比較して全体的に難易度が高く,MMSEにはない遂行機能が3つの課題で評価されており,視空間や遂行機能への配点が多く前頭葉機能を評価する項目が多いためFABと類似した結果になったと考えられる.大谷らはMMSE:27点以上を上回る高得点であってもMoCA-Jが26点を下回る例が多くありMMSEではMCIや初期の認知機能低下を見落としやすい,と報告している18

このように,高齢慢性呼吸器疾患患者においても,MMSEでは感知できない軽度な認知機能障害や前頭葉機能低下への影響が示唆され,適切な前頭葉機能の評価を行う必要性が示唆された.

前頭葉機能低下の特徴は,習慣的な行為や認知傾向を抑制するステレオタイプの抑制が困難となること,言語による行為の制御の障害や,複数の情報や視点を含めた対処,処理が困難になる,などがあげられ19,20,一つの考えや視点にこだわり固執したり,柔軟な思考ができなくなることが想定される.このように,前頭葉機能低下は,新しい行動様式の獲得や習慣化に影響するためセルフマネジメント獲得に必要な行動変容にも影響を及ぼすと考えられる.

そのため,ADL/IADL練習の際に,パンフレットやDVDを用いた指導を行っても,複数の情報処理に対応できず在宅生活での課題の多い状況では対応が困難となることが予測されるため,個別の具体的な問題に対して指導を行う必要があると思われる3

2. 前頭葉機能低下と運動機能,精神機能との関連

前頭葉機能低下群は,SPPBとHADS(抑うつ)が有意に低かった.また,重回帰分析の結果からはFABに影響する要因としてSPPBが強く影響していたことから前頭葉機能と運動機能との強い関連が示唆された.前頭葉は注意,記憶,遂行機能の中枢であるが,歩行や姿勢制御との関連も認めることから前頭葉機能と運動機能との関連が示唆されており21,22,本研究も同様の傾向となった.

本研究における前頭葉機能低下群のSPPBは,7.5±1.7であったが,COPDの移動能力低下のカットオフ値が10点であることから23,前頭葉機能低下群は移動能力低下を認めていると考えられた.

また,呼吸器疾患患者におけるSPPBは,大腿四頭筋筋力や運動耐容能,身体活動と関連23,24しており,予後予測に有用である可能性25も報告されている.また,前頭葉機能低下が,運動耐容能の低下にも関連しており26,本研究の結果から,前頭葉機能が低下している者は,SPPBが低値である可能性が示唆され,高齢慢性呼吸器疾患患者の身体活動は,運動機能や前頭葉機能の影響を受けている可能性が示唆された.

MCIや前頭葉機能低下している地域在住高齢者者は,うつ傾向やアパシーによって身体活動の低下との関連があり27,28,29,下肢筋力低下や歩行速度などの運動機能との関連も報告されている30.本研究においても,前頭葉機能低下群ではMCI有病率が高く,SPPBやHADS(抑うつ)が有意に低下していることより高齢慢性呼吸器疾患患者においても同様の傾向が示唆された.本研究では,身体活動の評価を行っていないため前頭葉機能と身体活動の関連については言及できないため,今後検討していく必要がある.

呼吸器疾患患者の予後に重要な身体活動31の向上には,薬物療法よりも身体活動に対する行動変容介入でより大きな改善を示したとの報告もある32.そのため,行動変容介入に影響すると思われる前頭葉機能低下について適切に評価し介入していくことが重要になると思われる.

3. 本研究の限界

本研究は,単施設の調査であり症例数が少ないためすべての高齢慢性呼吸器疾患患者に適応することができない.また,罹患歴,呼吸器疾患ごとの特性や呼吸機能,身体活動との関連が調査できていないことも今後の課題である.さらに,横断研究のため前頭葉機能と運動機能の因果関係については言及することができない.これらを明らかにするため,今後は縦断的な研究を行うことにより前頭葉機能と運動機能についての変化や関係性を調査していく必要がある.

備考

本論文の要旨は,第33回日本呼吸ケア・リハビリテーション学会学術集会(2023年12月,仙台)で発表し,座長推薦を受けた.

著者のCOI(conflicts of interest)開示

本論文発表内容に関して特に申告すべきものはない.

文献
 
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