The Journal of the Japan Society for Respiratory Care and Rehabilitation
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Symposium
The principles and applications of high flow nasal cannula
Toru Kadowaki
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2025 Volume 35 Issue 1 Pages 12-14

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要旨

高流量鼻カニュラ酸素療法(high flow nasal cannula: HFNC)は,急性呼吸不全において急速に普及し,COVID-19の治療でも重要な役割を果たした.慢性呼吸不全,特に安定期COPDにおいてもエビデンスが蓄積され,日本発の研究も国際的に高く評価されている.

HFNCの特長は「正確なFIO2の供給」「小さいがPEEP効果」「死腔の洗い出し効果による換気効率の向上」「NPPVより優れた加温加湿効果」「快適性」である.低酸素血症の是正には「正確なFIO2の供給」と「PEEP効果」が有用であり,低酸素血症と高炭酸ガス血症の是正にはさらに「死腔の洗い出し効果」が役立つ.気道分泌物が多い場合や快適性を重視する場合には「加温加湿効果」と「快適性」が重要である.酸素療法やNPPVとの境界は未だ明確ではなく,HFNCの原理と特長を理解した上での使用が重要である.

緒言

HFNCの特長は,「正確なFIO2の供給」「小さいがPEEP効果」「死腔の洗い出し効果による換気効率の向上」「NPPVより優れた加温加湿効果」という生理学的効果であり,加えてこれらが鼻カニュラを用いることでもたらされる「快適性」である1.臨床応用する場合には,HFNCの原理から得られるこのような生理学的効果と特長を理解した上での使用が極めて重要となる.

本講演は「ネーザルハイフローの原理と適応」の演題名で依頼されたため講演を行ったため,本稿も同タイトルとしている.しかしながら,本稿では用語として高流量鼻カニュラ酸素療法(high flow nasal cannula: HFNC)を使用する.

ハイフローセラピー(HFNC)の原理

HFNCの原理は,「高流量の空気を発生→そこに酸素をブレンド→加温加湿→鼻カニュラで患者に届ける」というものである1.以下,HFNCの特長について解説する.

① 「正確なFIO2の供給」

安静呼吸では吸気・呼気・ポーズからなっており,それぞれ1秒,2秒,1秒程度(呼吸数15/分の時)と言われている2.1回換気量が 500 mlとすると,その平均吸気流量は 30 L/分ということになる2.したがってこの流量を下回るものを低流量システム,上回るものを高流量システムと定義されている2.HFNCはその後者に属するものであり患者の吸気流速以上の酸素ガスを供給する.そのため設定したFIO2を吸入させることができる3

② 「小さいがPEEP効果」

HFNCが流通し始めた頃にはこの生理学的効果の期待値が高かった.PEEPの発生はフロー依存性であり,10 L/minのフローあたり 1 cmH2Oの陽圧がかかるとの報告もある3.開口によりリーク量が増加すると,医療者が期待するほどのPEEPはかからない.しかしながら小さいながらもPEEPがかかっていることは,無気肺の改善や換気血流比の改善,横隔膜の負荷を改善する可能性がある1

③ 「死腔の洗い出し効果による換気効率の向上」

鼻カニュラで高流量ガスを送り込むことで,鼻咽頭の解剖学的死腔をwash outする4.体格やフロー量にもよるが 50 ml程度の死腔が減少(wash out)する5.COPD患者においてはこの生理的効果により換気効率が改善して呼吸回数がフロー依存性に減少することが明らかとなっている6

④ 「NPPVより優れた加温加湿効果」

HFNCは相対湿度100%かつ37°Cの高流量酸素混合気を供給し,気道の自然な加湿効果が期待できる7ため排痰に有利なデバイスと考えられている.COPDと気管支拡張症の合併症例の急性増悪において喀痰量が増え,排痰がしやすくなることも示されている8

⑤ 「快適性」

鼻カニュラを用いて行うことが,快適性をもたらすことは明らかである.急性呼吸不全においても,治療中断率がNPPVより低い.会話・食事・飲水も可能で忍容性が良好な呼吸管理デバイスであるため,エンドオブライフケアにおいても使用しやすいデバイスである9

HFNCの生理学的効果に基づいた適応を考える

生理学的効果に基づいて,よくフィットする患者像・病態を考えてみる.

【パターン1】目的:低酸素血症の是正

例えば間質性肺疾患の増悪,が代表的である.労作時に極端にSpO2が低下する,頻呼吸(+),酸素投与量が多い,など.このような病態においては生理学的効果として①「正確なFIO2の供給」②「小さいがPEEP効果」が酸素化改善を目指すために有効である.

その他有効と考えられる病態や場面として,酸素吸入で安定(改善)しない高度低酸素血症,抜管後,急性期NPPV中のトイレや食事中の酸素化補助(いわゆるNPPV break),気管支鏡検査時の低酸素血症(予防も含む)などが挙げられる.

【パターン2】目的:低酸素血症に加えて高CO2血症の制御もしたい

例えばCOPD(増悪含む)が代表的である.PaCO2貯留があってもpH>7.25(>7.30が無難),頻呼吸(+)などが挙げられる.このような病態では生理学的効果として上記①「正確なFIO2の供給」②「小さいがPEEP効果」に加えて③「死腔の洗い出し効果による換気効率の向上」の生理的効果が,NPPVほどでないがPaCO2をコントロールしたい,死腔換気率を低下させて呼吸回数を減じて呼吸困難を改善させる目的に寄与する.

その他有効と考えられる病態や場面として,PaCO2貯留のある低酸素血症または酸素投与継続でそのおそれがあるとき,気管支鏡検査時の鎮静でPaCO2貯留の懸念があるときなどがある.

【パターン3】目的:排痰促進や快適性を期待したい

前者(排痰目的)で使用する場合に,気管支拡張症が代表的病態である.呼吸不全状態であってもなくても痰が粘稠・大量で頻回に喀出しているとき,などが良い適応となる.後者(快適性を期待したい場面)として悪性腫瘍(原発部位は問わず)を基礎疾患とする呼吸不全に対するHFNCの使用が挙げられる.頻呼吸・高度呼吸困難,酸素投与量が多い,NPPVを嫌がる/同意が得られない,また苦痛少なく会話時間を確保したい場合になどにHFNCがフィットする.

前者では④「NPPVより優れた加温加湿効果」が排痰を補助し,後者では⑤「快適性」が症状緩和とQOLの維持・向上をもたらす.これらの生理学的効果が有効と考えられるその他の病態や場面として,気管支喘息発作やCOPD増悪や肺炎等で痰が多いとき,不穏や認知症などでNPPV困難や拒否があるとき,非がん性呼吸不全の看取りの場面,などがある.

ガイドライン等の整備状況

現在,急性期のHFNCについては既述のような病態での経験や臨床研究の積み重ねにより,それらを元にしたガイドラインがいくつか発表されている10,11,12,13.そのうち主要なものは2022のEuropean Respiratory Societyのものであり,表1に抜粋を示す10.病態や重症度による対応が必要なことは言うまでもないが,概ねHFNCは急性期においては有効な呼吸管理デバイスという位置付けとなっている10

表1 ERS clinical practice guideline(抜粋)

Clinical questionsERS task forceの見解
I型呼吸不全酸素療法 or HFNC
HFNC or NPPV
HFNCを推奨(条件付き)
HFNCを推奨(条件付き)
I型呼吸不全
NPPV break
酸素療法 or HFNCHFNCを推奨(条件付き)
II型呼吸不全
COPD増悪など
NPPV or HFNCHFNC使用の前にNPPVを試すことを推奨(条件付き)

また慢性期(在宅)のHFNC使用についてはCOPDに関するエビデンスは揃いつつあり,その点に関して国内の2つの研究の貢献度は非常に高い14,15.他の疾患に対するエビデンスの蓄積はそれほどないものの,2023年にデンマーク呼吸器学会が示したガイドライン16表2に示すようにかなり踏み込んだ内容となっている.もちろん今後も研究を重ねていくことが重要ではあるが,将来的にはこのガイドラインのような形に集約されるのではないかと予測される.

表2 デンマーク呼吸器学会ガイドライン

絶対的推奨・年間2回以上増悪する持続的低酸素性COPD患者
・増悪後のHFNCから離脱できないCOPD患者
相対的推奨・持続的な低酸素性呼吸不全を呈する間質性肺疾患患者
・最適化された治療下にもかかわらず繰り返す感染増悪を気管支拡張症患者
・長期NPPVの基準を満たすが,長期NPPVに耐えられない持続的な高炭酸ガス血症を呈する患者

しかしながら国内では在宅HFNCはCOPDのみをターゲットにしており,適応基準に則った導入が重要である(表3).

表3 国内在宅HFNC導入基準

在宅HFNC導入時に以下のいずれも満たすCOPDの患者であって,病状が安定し,在宅でのHFNCを行うことが適当と医師が認めたものとする.
呼吸困難,去痰困難,起床時頭痛・頭重感等の自覚症状を有すること.
在宅酸素療法を実施している患者であって,次のいずれかを満たすこと
(イ)在宅酸素療法導入時または導入後に動脈二酸化炭素分圧 45 mmHg以上 55 mmHg未満の高炭酸ガス血症を認めること.
(ロ)在宅酸素療法導入時または導入後に動脈二酸化炭素分圧 55 mmHg以上の高炭酸ガス血症を認める患者であって,在宅人工呼吸療法が不適であること.
(ハ)在宅酸素療法導入後に夜間の諦観期による低酸素血症を認めること(終夜睡眠ポリグラフィーまたは経皮的動脈血酸素飽和度測定を実施し,経皮的動脈血酸素飽和度が90%以下となる時間が5分間以上持続する場合または全体の10%以上である場合に限る).

著者のCOI(conflicts of interest)開示

本論文発表内容に関して特に申告すべきものはない.

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