The Journal of the Japan Society for Respiratory Care and Rehabilitation
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Study Reports
Investigation of factors that prolong postoperative hospital stay in patients undergoing video-assisted thoracic surgery
Tatsuya Watanabe Takahiro UchidaEri TokunagaToshiki KaneHitomi KiyonoAya FujikawaChihiro MinamiMotoki KandaNoriko IkedaIsao Matsushita
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2025 Volume 35 Issue 1 Pages 80-85

Details
要旨

【目的】当院におけるビデオ補助下胸腔鏡手術(video-assisted thoracic surgery; VATS)患者の術後在院日数が長期化する因子について検討した.

【方法】VATS患者50名を対象に術後在院日数が11日未満の短期群35名と11日以上の長期群15名に分けて,身体機能や呼吸機能等の各調査項目を比較した.

【結果】短期群と比較し,長期群では術前呼吸機能(1秒量,対標準1秒量,最大呼気流速,対標準最大呼気流速,対標準一酸化炭素肺拡散能)が有意に低値を示した.術後肺合併症の併発率は,長期群が短期群に比べて有意に高かった.

【考察】術後在院日数を長期化させる因子は,術前の呼吸機能低下と術後肺合併症であった.術前の最大呼気流速は,手術適応を決定する上で重要とされる1秒量や一酸化炭素肺拡散能と同様に,術後在院日数の長期化リスク因子として有用な指標であることが示唆された.

緒言

肺癌は本邦において罹患患者数は第2位であり,死亡数は第1位と最も多い1.肺癌患者に対する術前の呼吸リハビリテーションは,術後肺合併症(postoperative pulmonary complication; PPC)のリスクや胸腔ドレーンの留置期間,在院日数等を減少させ,運動能力や努力性肺活量を改善することが示されている2.呼吸器外科手術は1960年代に比べ,2000年代では術後死亡率やPPCは有意に減少し,術式も従来の開胸手術からビデオ補助下胸腔鏡手術(video-assisted thoracic surgery; VATS)やロボット支援手術が行われ,より侵襲の少ない手術によって術後死亡率とPPCの更なる減少が報告されている3.原発性肺癌に対するVATSは全体の70%と報告されており,標準手術となりつつある4.VATSの利点は,開胸手術と比較して切開創が小さく痛みが少ないこと,呼吸筋である広背筋,前鋸筋,肋間筋の切離が最低限で手術直後の呼吸機能温存に有効であること,術後ドレーンの排液量や留置期間,在院日数の短縮が期待できることが挙げられる5.一方,当院においてVATSを施行した患者のうち術後在院日数が長期化する症例が存在しており,その要因については明らかとなっていない.今回,当院におけるVATS患者の術後在院日数が長期化する因子について検討した.

対象と方法

対象

2020年4月から2021年10月までに本研究に同意され,VATSを施行した患者56名を対象とした.整形外科的疾患により歩行機能が低下していた症例,リハビリテーションを拒否した症例,欠損するデータがあった症例6名を除外し,最終的に50名を分析対象とした.本研究はヘルシンキ宣言を遵守し,対象者へ本研究の趣旨,方法に関して説明し同意を得た.金沢医科大学病院研究倫理審査委員会からの承認を得ており(承認番号:H247),個人情報の取り扱いについては十分配慮して行った.

方法

1. 呼吸リハビリテーションの流れ

当院では,外来看護師が術前にインセンティブ・スパイロメトリー(インスピレックス,日本メディカルネクスト株式会社)を用いて呼吸指導を行い,患者は手術までの期間,自宅で呼吸練習を実施する.入院後,術前リハビリテーションとして,身体機能評価を行い,呼吸練習や排痰指導,基本動作指導を行う.術後リハビリテーションは,手術翌日から早期離床を開始する.胸腔ドレーンや酸素チューブの取り扱い方法の指導や労作時の酸素化評価,歩行動作の安全性について評価する.また,呼吸練習や下肢を中心とした筋力増強運動,全身持久力練習,ADL練習を実施し,退院するまで継続して行う.退院の基準は,医師がレントゲン画像所見やC反応性蛋白(C-reactive protein; CRP)値の正常化を確認し,身体機能や労作時酸素化が改善したと判断できるものとした.

2. 調査項目

1) 患者背景

年齢,性別,身長,体重,体格指数(body mass index; BMI),喫煙歴,喫煙指数(ブリンクマン指数),チャールソン併存疾患指数(charlson comorbidity index; CCI),慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease; COPD)・間質性肺炎(interstitial pneumonia; IP)・気管支喘息・糖尿病(diabetes mellitus; DM)の有無,切除範囲,在院日数,術後在院日数,リハビリテーション実施期間,切開創の長さ,手術時間,出血量,PPCの有無について調査した.肺・胸腔・胸壁に関連する術後合併症をPPCと定義し,JCOG術後合併症基準(Clavien-Dindo分類)Grade II以上の患者をPPCありと判定した.合併症の有無と重症度は当院の呼吸器外科医師が診断した.

2) 呼吸機能

術前に行われた呼吸機能検査の肺活量(vital capacity; VC),対標準肺活量(percent predicted vital capacity; %VC),対標準努力性肺活量(percent predicted forced vital capacity; %FVC),1秒量(forced expiratory volume in one second; FEV1),1秒率(forced expiratory volume % in one second; FEV1/FVC),対標準1秒量(percent predicted forced expiratory volume in one second; %FEV1),最大呼気流速(peak expiratory flow rate; PEFR),対標準最大呼気流速(percent predicted peak expiratory flow rate; %PEFR),対標準一酸化炭素肺拡散能(percent predicted diffusing capacity of the lung carbon monoxide; %DLco),インスピレックスのダイアル値について調査した.

3) 身体機能

身体機能は術前と退院時に評価した.修正MRC息切れスケール(modified Medical Research Council dyspnea scale; mMRC),安静時呼吸数,安静時の修正Borgスケール,術側肩関節屈曲可動域,握力,10 m歩行速度,サルコペニアの有無,機能的自立度評価(functional independence measure; FIM),6分間歩行距離(six-minute walk distance; 6MWD),6分間歩行試験(six-minute walk test; 6MWT)時の経皮的動脈血酸素飽和度(saturation of percutaneous oxygen; SpO2)最低値,6MWT終了時の修正Borgスケールについて調査した.握力はスメドレー式デジタル握力計(グリップ-D,竹井機器工業株式会社)を用いて左右2回ずつ測定し最大値を採用した.サルコペニアの有無は,Asian Working Group for Sarcopenia 2019(AWGS2019)6の握力(男性 28 kg,女性 18 kg),歩行速度(1.0 m/sec)の基準値を用いて判定した.6MWTは米国胸部学会のガイドライン7に準じて,歩行路は 30 mの平坦な直線コースを折り返して6MWDを測定した.退院時の評価では,術前評価に加えて疼痛や6MWDの改善率を調査した.疼痛は表情尺度スケール(face rating scale; FRS)を用いて評価した.6MWDの改善率は,退院時の6MWDを術前の6MWDで除してその割合を算出した.

3. 統計解析

平均術後在院日数は10.3±4.7日であり,11日未満の短期群35名と11日以上の長期群15名に分けて各調査項目を比較検討した.群間比較において,順序変数に対してMann-WhitneyのU検定を用い,連続変数に対して正規分布している場合はStudentのt検定,正規分布していない場合はMann-WhitneyのU検定を用いた.カテゴリー変数の比較について,性別や喫煙歴,切除範囲に関してはχ2検定を実施し,併存症(COPD,IP,気管支喘息,DM)やPPCの有無に関してはFisherの正確確率検定を適用した.有意水準は5%とした.術後在院日数の長期化リスクを評価するため,従属変数に術後在院日数長期を,独立変数にFEV1,%DLco,PEFRを用いてロジスティック回帰分析(強制投入法)を行い,呼吸機能検査の各指標の1標準偏差上昇当たりの長期入院のオッズ比を算出した.多変量解析では,性別と年齢で調整した.関連の強さはWaldのχ2値を用いて比較した.

結果

患者背景を表1に示す.男性は28名,女性は22名であり,31名(62%)が喫煙者であった.併存症はCOPD 5名,IP 5名,気管支喘息4名,DM 10名であり,切除範囲は葉切除18名,区域切除18名,部分切除14名であった.術後合併症は50名中12名(24%)に認め,そのうちPPCは11名(22%)であった.PPCの内訳は,重複を含めて無気肺5名(10%),肺瘻4名(8%),肺炎3名(6%),胸水1名(2%),肺うっ血1名(2%)であった.長期群は15名中9名で術後合併症を認め,そのうち8名がPPCであり,その内訳は,重複を含めて無気肺3名,肺炎3名,肺瘻3名,肺うっ血1名であった.残りの6名に関しては,エアリークに対して早期にフィブロガミンを投与した2名,在宅酸素療法(home oxygen therapy; HOT)導入のための準備が必要となった2名,CRP上昇により自宅退院が延期となった2名であった.

表1 患者背景

調査項目(n=50)
年齢(歳)70.1±10.0
性別(男性/女性)28/22
身長(cm)159.0±9.0
体重(kg)60.0±15.0
BMI(kg/m223.5±4.7
喫煙歴(有/無)31/19
ブリンクマン指数(本/日×年)515(0-990)
CCI(点)0.5(0-1)
併存症(COPD/IP/気管支喘息/DM)5/5/4/10
切除範囲(葉/区域/部分)18/18/14
在院日数(日)10.5(9-16.5)
術後在院日数(日)8(7-11.5)
入院中のリハビリ実施期間(日)10(8-14)
術後のリハビリ実施期間(日)7(5-10.5)
切開創の長さ(mm)60(45-75)
手術時間(分)109.3±38.8
出血量(ml)10(0-30)
PPC(有/無)11/39

平均値±標準偏差,中央値(四分位範囲)

BMI: body mass index, CCI: charlson comorbidity index, COPD: chronic obstructive pulmonary disease, IP: interstitial pneumonia, DM: diabetes mellitus, PPC: postoperative pulmonary complication

全症例において認知機能に問題は認めなかった.患者背景における群間比較を表2に示す.短期群と比較し,長期群では在院日数,術後在院日数,リハビリテーション実施期間が有意に長かった.PPC併発率は長期群が8/15,短期群が3/35と長期群で有意に高かった.年齢や性別,BMI,ブリンクマン指数,CCI,併存症,切除範囲等では両群で有意差は認めなかった.術前の呼吸機能と身体機能における群間比較を表3に示す.短期群と比較し,長期群では術前呼吸機能(FEV1,%FEV1,PEFR,%PEFR,%DLco)が有意に低値を示した.握力や 10 m歩行速度,FIM,6MWD等の身体機能では両群で有意差は認めなかった.握力は短期群で6名(男性2名,女性4名)に,長期群で4名(男性1名,女性3名)に低下を認めたが,歩行速度は全症例で正常との判定であったことから術前サルコペニアと診断された症例は認めなかった.退院時の身体機能における群間比較を表4に示す.退院時評価は,短期群では術後平均6日目に,長期群では術後平均14日目に実施された.長期群において,6MWT時のSpO2最低値は短期群と比較して有意に低値であった.呼吸機能検査値と術後在院日数長期化リスクの関連を表5に示す.単変量解析の結果では,FEV1,%DLco,PEFRいずれの指標も,高いことが術後在院日数の長期化リスクを有意に低下させた.これらの関係は,性別と年齢で調整しても同様であった.χ2値で評価した関連の強さはPEFRで最も大きかった.

表2 患者背景における群間比較

調査項目短期群
(n=35)
長期群
(n=15)
P値
年齢(歳)69.9±6.770.7±15.40.07
性別(男性/女性)20/158/70.80
身長(cm)159.7±9.1157.6±9.00.45
体重(kg)160(154-167.5)158(149.5-165.1)0.81
BMI(kg/m222.7(20.7-25.9)22.5(20.4-28.3)0.86
喫煙歴(有/無)21/1410/50.66
ブリンクマン指数(本/日×年)400(0-990)600(0-1,180)0.51
CCI(点)0(0-1)1(0-1.5)0.78
併存症
 COPD(有/無)2/333/120.15
 IP(有/無)3/322/130.85
 気管支喘息(有/無)2/332/130.35
 DM(有/無)7/283/120.66
切除範囲(葉/区域/部分)11/14/107/4/40.55
在院日数(日)9(9-11)19(15.5-27.5)<0.01
術後在院日数(日)8(6.5-9)16(11.5-19)<0.01
入院中のリハビリ実施期間(日)8(7.5-10.5)16(14-23)<0.01
術後のリハビリ実施期間(日)6(5-7)14(10.5-16)<0.01
切開創の長さ(mm)59.2±17.165.9±21.10.24
手術時間(分)108.3±36.5111.6±45.00.78
出血量(ml)10(0-30)5(0-27)0.54
PPC(有/無)3/328/7<0.01

平均値±標準偏差,中央値(四分位範囲)

群間比較に関して,連続変数はStudentのt検定またはMann-WhitneyのU検定,カテゴリー変数はχ2検定またはFisherの正確確率検定を用いた.

BMI: body mass index, CCI: charlson comorbidity index, COPD: chronic obstructive pulmonary disease, IP: interstitial pneumonia, DM: diabetes mellitus, PPC: postoperative pulmonary complication

表3 術前の呼吸機能と身体機能における群間比較

調査項目短期群
(n=35)
長期群
(n=15)
P値
呼吸機能
 VC(L)3.2±0.72.9±0.90.26
 %VC(%)105.3±17.299.5±11.40.24
 %FVC(%)104.7±15.896.6±10.60.08
 FEV1(L)2.4±0.51.9±0.8<0.05
 FEV1/FVC(%)75.6(68.8-80.1)70(56.3-83.2)0.39
 %FEV1(%)102.3±19.387.6±21.2<0.05
 PEFR(L/min)419.7±127.9329.1±151.2<0.05
 %PEFR(%)89.7±18.472.3±24.7<0.01
 %DLco(%)92.8±21.077.2±20.6<0.05
 インスピレックス(cc)505(285-505)505(285-505)0.27
身体機能
 mMRC0(0-0.5)0(0-1)0.18
 安静時呼吸数(回/分)17(15.5-19)18(15-20)0.62
 安静時の修正Borgスケール0(0-0)0(0-0)0.61
 術側肩関節屈曲可動域(°)180(162.5-180)180(152.5-180)0.20
 握力(kg)30.6(21.6-38.8)26.3(17.5-37.5)0.84
 10 m歩行速度(秒)6.5±1.46.3±1.50.63
 FIM運動項目(点)91(91-91)91(90-91)0.29
 6MWD(m)421.0±87.6390.7±69.70.33
 6MWT時のSpO2最低値(%)95(94.5-97)95(92.5-96)0.14
 6MWT終了時の修正Borgスケール3(1-4)3(0.5-4.5)0.76

平均値±標準偏差,中央値(四分位範囲)

群間比較に関して,順序変数はMann-WhitneyのU検定,連続変数はStudentのt検定またはMann-WhitneyのU検定,カテゴリー変数はχ2検定またはFisherの正確確率検定を用いた.

VC: vital capacity, %VC: percent predicted vital capacity, %FVC: percent predicted forced vital capacity, FEV1: forced expiratory volume in one second, FEV1/FVC: forced expiratory volume % in one second, %FEV1: percent predicted forced expiratory volume in one second, PEFR: peak expiratory flow rate, %PEFR: percent predicted peak expiratory flow rate, %DLco: percent predicted diffusing capacity of the lung carbon monoxide, mMRC: modified medical research council dyspnea scale, FIM: functional independence measure, 6MWD: six-minute walk distance, 6MWT: six-minute walk test, SpO2: saturation of percutaneous oxygen

表4 退院時の身体機能における群間比較

調査項目短期群
(n=35)
長期群
(n=15)
P値
mMRC1(0-2)1(0-2)0.61
安静時呼吸数(回/分)17(15-20)19(18-22)0.06
安静時の修正Borgスケール0(0-0.8)0(0-1.5)0.88
術側肩関節屈曲可動域(°)170(140-180)170(137.5-180)0.96
握力(kg)28.9±10.826.9±9.40.53
FRS(安静時)0(0-1)0(0-1)1.00
FRS(深呼吸時)1(0-2)1(0-1)0.06
FRS(咳嗽時)2(1-3)1(0.5-2)0.10
FRS(起居動作時)2(1-3)1(0-2)0.23
10 m歩行速度(秒)6.9(5.7-8.2)6.8(6.5-8.2)0.43
FIM運動項目(点)91(90-91)91(90-91)0.38
6MWD(m)363(302.5-432.5)345(265-384)0.14
6MWDの改善率(%)89.4(78-102.5)89.1(63-97)0.32
6MWT時のSpO2最低値(%)94(92-96)93(89-94)<0.05
6MWT終了時の修正Borgスケール3(1-6)3(1.5-4)0.62

平均値±標準偏差,中央値(四分位範囲)

群間比較に関して,順序変数はMann-WhitneyのU検定,連続変数はStudentのt検定またはMann-WhitneyのU検定,カテゴリー変数はχ2検定またはFisherの正確確率検定を用いた.

mMRC: modified medical research council dyspnea scale, FRS: face rating scale, FIM: functional independence measure, 6MWD: six-minute walk distance, 6MWT: six-minute walk test, SpO2: saturation of percutaneous oxygen

表5 呼吸機能検査値と術後在院日数長期化リスクの関連

独立変数単変量解析多変量解析
χ2オッズ比95%信頼区間P値χ2オッズ比95%信頼区間P値
FEV14.210.460.22-0.970.045.260.260.08-0.820.02
%DLco4.920.430.20-0.910.034.930.420.20-0.900.03
PEFR4.100.470.23-0.980.045.270.330.13-0.850.02

調整変数:性別・年齢

呼吸機能検査の各指標1標準偏差上昇当たりの術後在院日数の長期化リスクを示す.ロジスティック回帰分析を用い,多変量解析では性別と年齢で調整した.

FEV1: forced expiratory volume in one second, %DLco: percent predicted diffusing capacity of the lung carbon monoxide, PEFR: peak expiratory flow rate

考察

一般的な外科手術に伴うリスクファクターとして,年齢や肥満,喫煙,栄養状態,その他の合併症等があり,それらを術前から把握しておく必要度は高い8.呼吸機能評価の項目としてはFEV1とDLcoの評価が手術適応を決定する上で重要であり,日本呼吸器外科学会はリスク評価として,術後予測FEV1と術後予測DLco,運動負荷試験を指標としたアルゴリズムを提唱しており,特に低肺機能患者の手術適応を決定する際には有用である9,10.しかし,本研究の調査結果で術後在院日数が長期化する因子として挙げられたPEFR,%PEFRはリスク評価の指標となっていない.咳嗽時最大呼気流量(cough peak flow; CPF)はPEFRと有意な正相関を認め,自己排痰能力に関連しており11,自己排痰の可否を判断するCPF水準は 240 L/min12と示されている.PPCの予測に関してPEFRは女性で 250 L/min以下,男性で 320 L/min以下で危険性が高く,CPFは少なくとも 160 L/minは必要13と報告されている.PEFRに関する報告は少なく,本研究での術前のFEV1,%DLco,PEFRのいずれの指標も術後在院日数の長期化リスク因子という結果は重要と考える.すなわち,肺切除術前のPEFRは,手術適応を決定する上で重要とされるFEV1やDLcoと同様に,術後在院日数の長期化リスク因子として有用な指標であることが示唆された.

長期群は15名中9名で術後合併症を認め,その他では,エアリークに対して早期にフィブロガミンを投与した2名,HOT導入が必要となった2名,CRPが上昇した2名であり,追加治療や経過観察が術後在院日数延長の原因と考えられた.

肺切除の場合,術前の呼吸機能だけではなく術後の切除範囲を考慮した術後予測肺機能も重要となる.本研究結果より得られたPEFRを用いて術後予測PEFRを算出することで,PPCの高リスクとなるか予測することができPPC予防に寄与する可能性があると考える.本研究の限界は,症例数が少ないことや術前にCPFが測定できなかったことである.今後はCPFの測定も術前より行い,術前PEFRや術前CPF低値の患者に対して咳嗽トレーニング等を行うことで術後在院日数の長期化を予防できるか,PPCを減少させることができるか検討していきたい.

結論

今回,当院におけるVATS患者の術後在院日数が長期化する因子について検討した.術後在院日数を長期化させる因子は,術前の呼吸機能(FEV1,%FEV1,PEFR,%PEFR,%DLco)の低下とPPCであった.肺切除術前のPEFRは,手術適応を決定する上で重要とされるFEV1やDLcoと同様に,術後在院日数の長期化リスク因子として有用な指標であることが示唆された.

備考

本研究にご協力を頂きました金沢医科大学 呼吸器外科学 本野 望先生,金沢医科大学 臨床研究支援室 櫻井 勝先生に深謝いたします.

著者のCOI(conflicts of interest)開示

本論文発表内容に関して特に申告すべきものはない.

文献
 
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