2026 Volume 35 Issue 2 Pages 134-136
2025年10月25日開催の第35回学術集会での教育講演13「国際化委員会」報告のまとめである.多様性が膨張する現代社会では国際化は必須アイテムと言える.その向き合い方はさまざまであるとは思うが,呼吸ケアやリハビリテーション分野での国際相互理解と競合は,日本の呼吸ケアやリハビリテーション学や技術向上にとって不可欠であろう.日本呼吸ケア・リハビリテーション学会国際化委員会は委員会規定第1条「本委員会は海外学会との連携・国際化に向けた諸施策を立案し実行する」に従い,1)日本における呼吸ケア・リハビリテーションの知識や技術の向上や維持のための国際社会との情報共有と連携を維持,2)日本の呼吸ケア・リハビリテーションの知識や技術を世界水準レベルまでに向上させることで日本や国際社会に貢献,3)国際化を視野に入れた学会員の育成を掲げて活動中である.本委員会の今後の方向性や課題について述べる.
第35回日本呼吸ケア・リハビリテーション学会学術集会 教育講演13
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会の国際化委員会は委員会規定第1条「本委員会は海外学会との連携・国際化に向けた諸施策を立案し実行する」に従い,1)日本における呼吸ケア・リハビリテーションの知識や技術の向上や維持のための国際社会との情報共有と連携を維持,2)日本の呼吸ケア・リハビリテーションの知識や技術を世界水準レベルまでに向上させることで日本や国際社会に貢献する,3)国際化を視野に入れた学会員の育成を使命にしている.
2025年10月24日と25日の2日間にわたり,国立病院機構西新潟中央病院病院長大平徹郎先生の大会長の下,新潟朱鷺メッセ新潟コンベンションセンターにおいて,第35回日本呼吸ケア・リハビリテーション学会学術集会が開催された.大平大会長の要請で,学会2日目の10月25日土曜日に教育講演13の時間枠をいただき,本学会「国際化委員会」の代表として,「なぜ呼吸ケアとリハビリテーションには国際化が必要なのでしょうか?」と題して講演した.
本稿は教育講演13のまとめとして報告する.
講演内容は,1)インターネットを利用した海外の現状把握,2)本学会国際化委員会の現状,3)日本の呼吸器リハビリテーションに対する医療報酬点数の現状,4)ガイドラインから観た呼吸リハビリテーションの学術的意義,5)国際化委員会主導アンケートのまとめ,であった.
海外では呼吸ケアやリハビリテーションは大学や学会が中心となって,ICT(information and communication technology,情報通信技術)を利用したTele-respiratory care and rehabilitationが多く配信されていた.ただしその配信は患者や一般市民向けであって,医療従事者のFD(Faculty Development)研修用の配信は無かった.
2) 本学会国際化委員会の現状学会が他の学会や団体等と締結(MOU,memorandum of understanding)するには,団体加盟や相互協力費として,年間数百万円の支出を要する.また日本の医学に関する学会は,日本医学会に加盟し,海外学会とMOUを実現するための承認を得る必要がある.その条件は,①英文の学会誌を発刊している,②MOU後相互の学会にブースを設置しなければならない等がある.
日本呼吸器学会は米国胸部疾患学会,欧州呼吸器学会やアジア太平洋呼吸器学会等とMOUが出来ていが,上記の理由から現時点では本学会はMOUを実施している海外の学会は無い.そのため,学会相互協力として,常時,学術集会等に海外演者を招聘することが困難な状況にある.
3) 日本の呼吸器リハビリテーションに対する医療報酬点数の現状日本における医療報酬点数において呼吸リハビリテーションと他領域のリハビリテーションと比較して,1単位当たりの報酬点数は高いと言えない(表1)1).また入院と外来リハビリテーションでは入院報酬点数が高く,外来リハビリテーションは慢性呼吸器疾患患者に対して日数の制限が存在する.
| 呼吸器 | 心大血管 | 脳血管等 | 運動器 | 廃用症候群 | がん | ||
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 205 | |||||||
| 施設基準I | 理学療法士 | 175 | 205 | 245 | 185 | 180 | |
| 作業療法士 | 175 | 205 | 245 | 185 | 180 | ||
| 言語聴覚士 | 175 | 245 | 180 | ||||
| 看護師 | 205 | ||||||
| 集団療法 | 205 | ||||||
| 医師 | 175 | 205 | 245 | 185 | 180 | ||
| 施設基準II | 理学療法士 | 85 | 125 | 200 | 170 | 146 | |
| 作業療法士 | 85 | 125 | 200 | 170 | 146 | ||
| 言語聴覚士 | 85 | 200 | 146 | ||||
| 看護師 | 125 | ||||||
| 集団療法 | 125 | ||||||
| 医師 | 85 | 125 | 200 | 170 | 146 | ||
| 施設基準III | 理学療法士 | 100 | 85 | 77 | |||
各医療報酬点数は1単位当たりの点数(文献1を参考に著者が作成した)
慢性閉塞性肺疾患のガイドライン2)は日本人の医師や患者のために作成しているが,呼吸リハビリテーションのシステマティックレビューに関しては,海外からの論文が主体で,日本からの報告は無い.
5) 国際化委員会主導アンケートのまとめ2022年に国際化委員会が実施した学会員向けの電子アンケートのまとめを示した3).職業別では,医師を基準(参考値)にすると,理学療法士や看護師は国際学会に興味や参加率が低く,今後国際学会に参加予定もなく,看護師は国際学会の視聴することにも意識が低くかった.学歴別や勤務先別では大学院や大学病院勤務の会員が国際学会に興味を示し,国際学会への参加率が高かった.年齢別では,比較的若い会員より,ベテランの会員の方が,国際学会に興味を示し,国際学会参加率が高かったが,性別や居住地域では差は無かった.
冒頭に呼吸ケアやリハビリテーション領域において国際化は必要であることを述べたが,海外と日本では医療を取り巻く環境が異なる.第32回学術集会の中で国際化委員会が共催した国際シンポジウム4)では,米国,カナダ,英国,韓国,オーストラリアおよび日本から6名の演者が各国の現状を報告した.その中で,米国はリハビリテーションに対する医療報酬が得られなくなり,財団を立ち上げたことが報告された.また米国,カナダやオーストラリアでは広大な国土に対してリハビリテーションセンターが少なく,ICTに依存しがちなのかもしれない.ICTは低コストかつ多くの患者に対して恩恵をもたらし,社会貢献度は高いが,一方で医療報酬は下げられる.日本での呼吸器リハビリテーションの低医療報酬であることを述べた.医療機関へのアクセスの良い日本において,加速度的に進展する超高齢化で医療機関受診難民の増加が推察される日本でもICTの活用は必須とは思われるが,適正な診療報酬の議論は必要であろう.
おそらく海外の呼吸ケアやリハビリテーションの現状を理解することは,日本の呼吸ケアやリハビリテーションの利点や課題を詳らかにすることに寄与する.本学会国際化委員会では学術集会プログラム委員会を通じて,海外演者の学術集会への招聘を依頼すべく活動している.また広報委員会との共同で学会員に対して国際学会への参加を促すための動画をホームページに掲載している.さらに相互理解を深めるべく,本学会員のことを海外の方に理解してもらうためのホームページの英語版を公開している.他学会とのMOUに向けては,将来計画委員会と会員増加や運営費拡大に協力したいと考えている.呼吸器リハビリテーションに対する医療報酬点数の適正化は医療経済の健全化に寄与するとし,診療報酬適正化委員会と協議していきたいと考えている.
おそらく呼吸器リハビリテーションに対する医療報酬点数の引き上げには根拠を示す必要性があるであろう.日本のガイドラインに掲載されている多くのエビデンスは海外からの報告である2).日本における呼吸リハビリテーションの有用性に関するエビデンスの構築が必要で,日本からの研究報告を海外に向けて発信することも重要である.
国際化委員会主導アンケートから,国際学会への興味や参加は医師に比べ本学会員の中心をなす理学療法士や看護師の意識が低いこと,ベテランより若手の意識も低く,大学より地方中核病院やクリニック勤務の方の国際学会参加率が低かった.自由記載の中で,地方中核病院やクリニック勤務の若手理学療法士や看護師は経済的や時間的な課題を抱えているようであった.職員が多い大学と少ない中核病院やクリニックでは自分が国際学会に参加すると常務に支障を来すことを懸念し,とくに女性は家の事情や子育て等が影響しているとの意見があった.本現状を改善すべく,国際化委員会としては,経済的支援として編集委員会が制定した最優秀論文賞のようなトラベルアワード(案)が制定できないかと議論をすすめたいと考えている.また本学会に男女共同参画委員会のような委員会が必要かもしれない.自由記載で最も多かった国際学会参加への障壁は「言葉の壁」であった.翻訳機やAI(Artificial Intelligence)の進化に期待したいと考えているが,今後は国際化委員会で海外からの呼吸ケアやリハビリテーションの動画を公募およびホームページへの公開等を計画している.
最後に,本稿が本学会員の国際化の意識が向上し,少しでも国際学会等に興味をいただいてもらえれば幸いである.呼吸ケアやリハビリテーションの国際化が日本の呼吸ケアやリハビリテーションの向上に寄与することを期待する.
本項を終えるにあたり,現国際化委員会委員である金子教宏先生(副委員長),木下 隆先生,新貝和也先生,田中貴子先生,南雲秀子先生,長谷川智子先生,吉田 誠先生および若林律子先生に感謝し,また第35回学術集会で教育講演の機会をいただきました大会長の国立病院機構西新潟中央病院病院長大平徹郎先生ならびに座長を賜りました金子教宏先生に深く御礼申し上げます.
川山智隆;講演料(アストラゼネカ,グラクソスミスクライン,サノフィ株式会社)