The Journal of the Japan Society for Respiratory Care and Rehabilitation
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Symposium
Respiration and circulation from the viewpoint of oxygen dynamics
Keisuke Miki
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2026 Volume 35 Issue 2 Pages 137-141

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要旨

近年,高齢化を背景に,幅広く呼吸,循環器疾患に対応する機会も増え,疾患に拘らず病態に応じた対応が求められる.しかしながら,実際,患者を目前にして換気能力にまだ余力があるのか,末梢で酸素を抽出する能力は十分保たれているのか等,個々の病態をどう理解し,更にはどう治療すべきか判断し辛いことは少なくない.呼吸,循環器疾患において最高酸素摂取量は運動耐容能のみならず予後をも反映する要となる指標である.酸素摂取量は,心肺運動負荷検査(CPET)では吸気平均酸素濃度と呼気平均酸素濃度の差と換気量との積を用いて算出される.前者は筋肉を含む体全体での“酸素抽出率”を,後者は肺での換気能力を表す.運動耐容能を向上させるには,患者個々の換気能,血流循環能,下肢疲労に繋がる動的病態生理を慮ったテイラーメイド的対策を講じることが求められ,酸素摂取に絡む呼吸-循環-筋クロストークについて理解することは重要である.

第32回日本呼吸ケア・リハビリテーション学会学術集会 シンポジウム9

はじめに

労作時の息切れは呼吸器および循環器疾患において運動耐容能低下と伴に出現する共通の症状であるが,その機序は様々である.両疾患において息切れ軽減と共に運動耐容能向上への対策が求められてきたが未だに不十分なままである.更に近年,息切れのみで運動が中止になることよりはむしろ,高齢化による筋力低下も伴い下肢疲労を含めた息切れで運動が終了することもよく経験するようになった.運動耐容能の指標とされる酸素摂取量は,心肺運動負荷検査(cardiopulmonary exercise test: CPET)では吸気平均酸素濃度(FIO2)と呼気平均酸素濃度(FEO2)の差(酸素抽出率:ΔFO2=FIO2-FEO2)と換気量との積を用いて,スワンガンツカテーテル検査ではフィックの原理により動脈血O2含量と混合静脈血O2含量の差と心拍出量の積で算出される1.何れの検査においても前者は筋肉を含む臓器による酸素を抽出する能力を,後者は其々,肺での換気能,心臓からの血流循環能を表す.両疾患の運動耐容能向上には,患者個々の換気能,血流循環能,下肢疲労に繋がる動的病態生理を慮り個別に対策を講じることが求められる(図1).本稿では,呼吸器疾患,特に慢性閉塞性肺疾患(COPD)を中心にCPETから見た酸素摂取に絡む呼吸-循環-筋クロストークについて概説し,運動耐容能を高めるべく,“酸素抽出率”および“換気能”の向上について考察する.

図1 呼吸と循環からみた酸素摂取量

V ˙ O2:酸素摂取量;FIO2:吸気平均酸素濃度;FEO2:呼気平均酸素濃度;CaO2:動脈血酸素含量;CvO2:混合静脈血酸素含量.文献1より引用改定.

COPDの運動耐容能

令和元年国民健康・栄養調査結果の概要によると喫煙者の割合はここ10年減少傾向で,著明な換気制限による息切れのみで運動が制限されることは以前より少なくなり,高齢化も伴い下肢疲労を伴う息切れへの対策が要となっている.とは言え,COPDの運動耐容能低下の主原因は呼気気流制限に伴う息切れでありその対策は重要である.COPDの運動耐容能低下を考えるには換気因子と末梢因子の2つに分けると分かり易く,前者では1回換気量低下,呼気延長,呼吸数増加不良,分時換気量増加不良が,後者では酸素抽出率増加不良が主要因として挙げられる(図2).運動耐容能低下に関わるCOPDの換気制限パターン(図3)に着目すると,病期進行と伴に運動中の1回換気量増加不良は勿論のこと呼吸数増加不良となり,吸気時間率(Ti/Ttot)は低下し呼気延長を来す.運動中の橈骨動脈からの動脈血評価では,重炭酸イオン(HCO3)が上昇し呼吸性アシドーシスに陥りそれを換気で代償できなくなると運動は終了する.図らずもその時の動脈血pHおよび息切れの程度は病期に拘わらずほぼ同じレベルで運動が終了することが多い.即ち,COPDにとって換気は,酸素摂取量を高め運動耐容能を向上させるためだけではなく,息切れを軽減させるための代償機構を担っている.一方,運動耐容能に関わる末梢筋を含む体全体での酸素抽出率2に着目すると,疾患対照群および最重症COPDにおける最高酸素摂取量と分時換気量との寄与率(r2)は其々,0.62,0.39と疾患対照群で高く,最高酸素摂取量と酸素抽出率との寄与率(r2)は其々,0.15,0.29と最重症COPDで高かった.即ち,図4は疾患対照群では最高酸素摂取量がより分時換気量に依存し,一方,換気能力が乏しい最重症COPDでは最高酸素摂取量はより酸素抽出率に依存していることを示している.

図2 COPDにおける酸素摂取量低下の主な要因

V ˙ O2:酸素摂取量; V ˙ E:分時換気量;FIO2:吸気平均酸素濃度;FEO2:呼気平均酸素濃度.文献9より引用改定.

図3 COPDの運動耐容能に関わる換気制限パターン

fR:呼吸数;VT:1回換気量;Ti/Ttot:吸気時間率.文献1より引用改定.

図4 運動耐容能に関わる酸素抽出率パターン(n=156)

FIO2:吸気平均酸素濃度;FEO2:呼気平均酸素濃度; V ˙ O2:酸素摂取量; V ˙ E:分時換気量.GOLD I~IV:GOLD: Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Diseaseの気流閉塞分類I~IV.青:分時換気量と最高酸素摂取量との関連性,赤:酸素抽出率と最高酸素摂取量との関連性.文献2より引用改定.

COPDに対する呼吸リハビリテーション

近年,各種吸入薬が開発,普及されるもCOPDの高齢化も伴い今なおQOLレベル以上の運動耐容能向上には達していない.運動耐容能低下の要因を検討すべく当センターで2000年~2021年の間,入院下で4週間の運動療法を含めた呼吸リハビリテーション(pulmonary rehabilitation: PR)が行われその前後でCPET評価が可能であった重症・最重症COPD患者38名を対象にPR前後で運動耐容能に関わる換気能力および酸素抽出率について後向解析を行った3.症例数は少なく十分な評価ではないが,PR後,最高酸素摂取量変化は-0.02 mL/min-1/kg-1と増加しなかった.PR後の分時換気量( V ˙ E)変化および酸素抽出率変化に分けてPR効果について検討した.先ず,最大運動時の V ˙ EがPRで増加したpeak V ˙ E増加群と増加しなかったpeak V ˙ E非増加群に分けると,peak V ˙ E増加群では,頻呼吸による換気量増加により運動耐容能(最高酸素摂取量: V ˙ O2 peak)のみが改善した(表1).一方,最大運動時のΔFO2がPRで増加したpeak ΔFO2増加群と増加しなかったpeak ΔFO2非増加群に分けると,peak ΔFO2増加群では呼吸数減少を伴って運動耐容能と換気効率( V ˙ E/ V ˙ CO2-nadir, V ˙ E- V ˙ CO2-slope)の改善が得られた(表2).又,PR後に得られたpeak V ˙ E変化量とpeak ΔFO2変化量とは互いに独立(r2=0.00)していた.以上から,重症・最重症COPDに対するPRでは,換気能力のみが改善すると運動耐容能は向上するがその場合の換気量向上は呼吸数増加に依存する可能性が高く,一方,酸素抽出率が向上する場合,換気効率および運動耐容能が共に改善する可能性が高い.進行したCOPDでは呼吸数増加不良は換気量低下の要因と懸念されるが,換気制限が強いと頻呼吸は換気効率の悪化に繋がることが多いことから,前述の所見は筋肉を含む体全体での酸素を抽出する能力を高めることが出来れば頻呼吸に陥ることなく運動耐容能を向上させることが可能であり,個々の酸素抽出率を評価項目としながらPR処方,評価することの重要性を示唆している.

表1 最大運動時の分時換気量(peak V ˙ E)増加群と非増加群における呼吸リハビリテーション後の運動指標(漸増負荷最大運動時)(n=38)

Peak V ˙ E増加群
(n=20)
Peak V ˙ E非増加群
(n=18)
p-値
(群間比較)
呼吸リハ前変化量呼吸リハ前変化量
Dyspnea, Borg scale7.3(2.0)-1.8(2.1)***5.5(2.8)-0.6(2.0)0.0778
V ˙ O2 peak, ml・min-1・kg-113.1(3.6)+0.8(2.3)13.6(3.9)-0.9(1.4)**0.0109
AT, V ˙ O2, ml・min-1536.0(124.6)-1.7(64.1)538.0(102.7)-9.0(58.1)0.6429
VT, mL1,043(251)+79(160)*976(209)+35(165)0.1932
fR, breaths・min-130(7)+1(5)30(6)-3(6)*0.0415
VD/VT0.36(0.08)+0.00(0.05)0.36(0.05)+0.00(0.05)0.9415
O2 pulse, mL・beats-15.6(1.2)+0.1(0.7)6.1(1.6)-0.5(0.6)**0.0108
ΔFO2,2.85(0.50)-0.10(0.34)2.89(0.41)-0.03(0.37)0.4558
V ˙ E/ V ˙ CO2-nadir42.9(8.3)+1.2(4.4)42.4(7.1)+0.8(4.1)0.5685
V ˙ E- V ˙ CO2-slope32.8(8.5)+2.6(4.6)*33.9(10.2)+2.7(4.5)*1.0000
運動中止理由呼吸リハ前呼吸リハ後呼吸リハ前呼吸リハ後施行せず
Dyspnea/leg fatigue14/611/911/79/9施行せず

平均(標準偏差).peak V ˙ E:最大運動時の分時換気量; V ˙ O2 peak:最高酸素摂取量;AT:嫌気性代謝閾値;VT:1回換気量;fR:呼吸数;VD/VT:死腔換気率;O2 pulse:酸素脈;ΔFO2:酸素抽出率(吸気平均酸素濃度と呼気平均酸素濃度の差); V ˙ E/ V ˙ CO2-nadir:運動中の V ˙ E/ V ˙ CO2における最下点値; V ˙ E- V ˙ CO2-slope;呼吸代償開始点迄もしくは呼吸代償開始点が認められない場合は最大運動時迄での V ˙ E- V ˙ CO2プロットの傾き; V ˙ CO2:二酸化炭素産生量.* p<0.05,** p<0.01,*** p<0.001,**** p<0.0001:呼吸リハ前との比較(群内比較).文献3より引用改定.

表2 最大運動時の酸素抽出率(Peak ΔFO2)増加群と非増加群における呼吸リハビリテーション後の運動指標(漸増負荷最大運動時)(n=38)

Peak ΔFO2 増加群
(n=17)
Peak ΔFO2 非増加群
(n=21)
p-値
(群間比較)
呼吸リハ前変化量呼吸リハ前変化量
Dyspnea, Borg scale6.3(2.9)-0.8(2.4)6.5(2.3)-1.6(1.8)***0.2457
V ˙ O2 peak, ml・min-1・kg-113.0(4.1)+0.7(1.7)13.6(3.3)-0.6(2.2)*0.0136
AT, V ˙ O2, ml・min-1502.3(111.8)+50.3(38.7)***564.5(110.3)-49.1(30.0)****<0.0001
V ˙ E, L・min-129.2(8.0)-0.1(2.7)29.9(5.9)+1.4(6.8)0.7134
VT, mL986(206)+110(153)**1,031(253)+16(159)0.0167
fR, breaths・min-130(5)-3(4)**31(7)0(7)0.0049
VD/VT0.38(0.06)-0.01(0.04)0.34(0.07)+0.02(0.05)*0.0534
O2 pulse, mL・beats-15.8(1.5)-0.1(0.6)5.9(1.4)-0.3(0.8)*0.2218
V ˙ E/ V ˙ CO2-nadir44.0(7.4)-2.1(2.6)**41.6(7.9)+3.5(3.5)****<0.0001
V ˙ E- V ˙ CO2-slope32.5(6.7)+0.8(3.9)34.0(10.9)+4.1(4.5)***0.0413
運動中止理由呼吸リハ前呼吸リハ後呼吸リハ前呼吸リハ後施行せず
Dyspnea/leg fatigue10/79/815/611/10*施行せず

平均(標準偏差).ΔFO2:酸素抽出率(吸気平均酸素濃度と呼気平均酸素濃度の差); V ˙ O2 peak:最高酸素摂取量;AT:嫌気性代謝閾値; V ˙ E:分時換気量;VT:1回換気量;fR:呼吸数;O2 pulse:酸素脈;VD/VT:死腔換気率; V ˙ E/ V ˙ CO2-nadir:運動中の V ˙ E/ V ˙ CO2における最下点値; V ˙ E- V ˙ CO2-slope;呼吸代償開始点迄もしくは呼吸代償開始点が認められない場合は最大運動時迄での V ˙ E- V ˙ CO2 プロットの傾き; V ˙ CO2:二酸化炭素産生量.* p<0.05, ** p<0.01, *** p<0.001, **** p<0.0001:呼吸リハ前との比較(群内比較).文献3より引用改定.

換気改善に向けたCOPDに対する呼気圧負荷トレーニング

COPDにおいて十分な運動耐容能向上に至らなかった最大の理由は換気量向上が依然として得られなかったからで,それには末梢気道のみならず声門を含む中枢気道の閉塞による換気制限が影響している4,5,6.我々は,先ず,運動中に呼息が不十分となり呼気延長を来すCOPDでは,呼気圧負荷トレーニング(expiratory pressure load Training: EPT)により上気道の機能強化を行うと十分な呼息が得られ息切れや運動耐容能の改善に繋がるという仮説を報告した7.次に,予備的研究として呼気延長を来すCOPDを対象に3ヶ月間のEPTを行った結果,進行したCOPD患者が多く含まれたにも拘わらず,運動耐容能の改善が確認された6.更に,多施設無作為化コントロール比較試験による検証において,我々は,病期が進行するに連れて声門が運動中に閉塞度を増しそれが息切れに関与していること,EPT後の声門開大化(図5)と伴に下気道疾患であるCOPDの運動耐容能および日常生活の質が著明に改善したことを見出した5.それに加え呼息時の換気制限が改善された機序として,運動中,閉塞していた声門がEPTにより閉塞を免れ換気量増加に繋がったことが確認され,特に重症・最重症群でEPT後の声門開大比変化が軽症・中等症より大きく,軽症・中等症と同等の最高酸素摂取量増加(両群共にEPTを実施しないコントロール群に比して 2.1 ml/min/kgの増加)に繋がった.これ迄,COPDにおいて最高酸素摂取量の臨床上意味のある最小変化量の報告はないが,Ward らの報告8によると介入後の最高酸素摂取量変化が+0.52 ml/min/kgあれば意味があるとされ,更に病期が進行するとその変化量も小さくなると報告されていることから前述の結果は極めて興味深い.従来COPDは末梢気道の閉塞によるとされてきたことから,上気道をも治療標的とするEPTによる今後の研究結果がCOPDの疾患概念,および治療概念に大きな影響を与える可能性は高い.EPTは比較的安価であり,高齢者でも自宅で簡単に出来ることから,医学的のみならず,本研究の経済的,社会的意義は高い.

図5 重症COPDに行った3ヶ月間の呼気圧負荷トレーニング(EPT)

前評価として行った漸増負荷試験で得られた最大運動時心拍数の90%(=85/分)の時点において EPT前後で漸増負荷中の声門の動きを観察した.EPT後,呼気終末の声門が開大化した.

おわりに

呼吸・循環器疾患において,運動耐容能を向上させるには患者個々の動的病態生理を慮ったテイラーメイド的対策を講じることが求められ,そのためにも酸素摂取に絡む呼吸-循環-筋クロストークについて理解することが重要である.心肺運動負荷試験から得られる情報はその把握に長けており,特に,筋肉を含む体全体での“酸素抽出率”と“換気能”に分けて考えることは運動耐容能を向上させるための実際に即した情報提供に役立つ.

備考

本論文の要旨は,第32回日本呼吸ケア・リハビリテーション学術集会(2022年11月,幕張)にてシンポジウム9,呼吸リハビリテーションと心臓リハビリテーションとの接点,特定非営利活動法人日本心臓リハビリテーション学会との共同企画にて発表した.

呼気圧負荷トレーニング管理装置およびシステム,特許第6798747号(日本).国際特許出願中,国際出願番号PCT/JP2019/037405.

著者のCOI(conflicts of interest)開示

本論文発表内容に関して特に申告すべきものはない.

文献
 
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