Japan Marketing Journal
Online ISSN : 2188-1669
Print ISSN : 0389-7265
Editorial Note
Editorial Note
Akinori Ono
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2020 Volume 40 Issue 1 Pages 121

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私事,まだ髭を蓄えていない若かりし頃,文部科学省のご支援を受けて在外研究を行った時,渡米後数日しか経っていないうちに,当地の研究プロジェクトチームのメンバーに入れていただいて初めて執筆した英文論文が,製品カスタマイゼーションの日米比較に関する論文だった。彼らとしては,「カスタマイゼーションの本場からやってきた若者がいる。仲間に加わってもらおう!」ということだったのだろう。私としては,日本がカスタマイゼーションの本場だという意識はなく,むしろ,ハンバーガーからパソコンまで何でもカスタマイズして顧客を楽しませてくれる米国のほうが本場に思えて恐縮した。けれど期待に応えるべく,誰よりも貢献しようと懸命に取り組んだ思い出がある。

以来,このトピックは私を魅了しつづけている。巻頭言で触れたとおり,カスタマイゼーションは,製品差別化の究極的な形態である。この戦略を導入すれば,製品マップ上に自社製品と競合製品をプロットするような分析が,全く意味をなさなくなる。製品差別化の理論と実務が,根底から覆されるのである。そういう意味でワクワクする研究テーマだったし,今も色あせずにそうありつづけている。今回の特集号をきっかけにして,著者ならびに読者諸氏に同じ思いを感じていただけたならば幸いだし,私自身,編集作業を通じて,思いを新たにすることができた。この機会を頂けたことに深謝したい。

最後にもう一つ,これもまた私事であるが,本号には,私の元指導学生と,その元指導学生の指導学生が,それぞれ論文を寄稿してくれている。彼らは私にとって学問上の子と孫である。普段全く交流しているわけではないけれど,研究対象に対峙する際の情熱と謙虚さ,分析を行う際の歓びと苦しみといったものを引き継ぐ若い研究者がいてくれることは,いずれ老いを迎える研究者にとって頼もしく,この上ない喜びである。と言いつつも,老いさらばえるにはまだ早い。子や孫に負けずにワクワクするような研究を行って,社会に貢献していきたい。

 
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