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Featured Article / Invited Peer-reviewed Article
Effects of Adding End Information on the Happiness Judgment:
Replication of the Study by Diener, Wirtz, & Oishi (2001) with a Different Factorial Design
Yoshitsugu Fujishima
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2025 Volume 45 Issue 1 Pages 44-54

Details
Abstract

Diener et al.(2001)は,人生の幸福度評価に結末情報が影響することを見出し,主観的幸福感の判断にピーク・エンドの法則と持続の無視が存在することを示した。しかしながら,彼らの研究は実験参加者に結末情報が異なる2つのシナリオを対比することを許しており,そのことが結果に影響した可能性がある。本研究は,結末情報の操作を参加者間要因にした場合(研究1,研究2)と,参加者内要因にした場合(研究3,研究4)とで直接的追試を行った。その結果,結末情報の対比ができない場合には結果が再現されなかったが,対比ができる場合には結果が再現された。このことは,結末情報が対比によって顕現的である場合でのみ,結末情報が幸福度判断に利用されることを示唆した。ピーク・エンドの法則が利用される要件と直接的追試の意義と困難について考察した。

Translated Abstract

Diener et al. (2001) found that ending information influences life happiness ratings and suggested that peak-end rule and duration neglect exist in judgments of subjective well-being. However, their study allowed participants to contrast two scenarios with different ending information, which may have affected the results. The present study conducted direct replications manipulating ending information, using a between-participants factorial design (Study 1 and Study 2) and a within-participants factorial design (Study 3 and Study 4). The results showed that the previous findings were not replicated when the contrast of the ending information was unavailable but were replicated when the contrast was available. These results suggest that ending information can be used to judge happiness only when it becomes more salient. The requirements for the peak-end rule and the significance and difficulty of direct replication are herein discussed.

I. 問題

1. 幸福判断の心的過程と影響因

(1) 主観的幸福感とその判断

本研究は主観的幸福感(subjective well-being)の判断過程について検討する。主観的幸福感は,喜びや満足などを含んだ肯定的な感情,感覚と,自分の状態や人生に対する評価や心理的安寧の複合状態として捉えられる(Uchida, 2020)。多くの研究で主観的幸福感は,個人の長期的な肯定感情と人生における評価の双方の意味合いで使用されており(Diener & Suh, 2000),特に後者は生活満足度として尺度化もされている(Diener et al., 1985; Oishi, 2009)。このような主観的幸福感は,消費行動に関わる個人要因としてマーケティング領域でも着目されている(e.g., Devezer et al., 2014)。主観的幸福感を高める要因についても数多くの研究があり,社交性や経済的支援など様々な要因が影響する(Folk & Dunn, 2024)。

その一方で,主観的幸福感はヒューリスティック的判断の対象でもある。ヒューリスティックとは正確性を犠牲にして効率性を重視した問題解決手続きであり,ヒューリスティック的判断とはこれらの手続きを用いて行う判断過程を指す。先述の通り,主観的幸福感は様々な要因から構成される複雑な感情,感覚であるため,その判断は,単純な課題に置き換えたり判断材料を要約して簡略化したりした上で行われる。たとえば,生活満足度の判断は,判断時の気分が影響する(Schwarz & Clore, 1983)。これは,生活満足度という複雑な評価を,その時その場でどう感じているかという単純な感情の問題に置き換え(Kahneman, 2011),その場の気分を参照して判断したことによる。

さらには,主観的幸福感を判断する際,記憶内容を縮約して判断することもある。これは,ピーク・エンドの法則と呼ばれる過程であり(Kahneman, 2011),記憶に基づく幸福感評価は,感情の高まりが最大となるピーク時と終了時の感情の平均で決まるとするものである。Redelmeier and Kahneman(1996)は,苦痛を伴う大腸内視鏡検査の経験を回顧した際に,苦痛が大きいが短時間で終わった場合よりも,大きな苦痛の後に幾分苦痛が緩和した時間が継続した場合の方で苦痛が小さかったと評価されることを見出した。また,Fredrickson and Kahneman(1993)は,視聴後に振り返って動画を評価する際にもピーク・エンドの法則が成立することを見出している。これらの知見に共通する特徴として,持続時間の無視がある。これらの研究で,高まった感情の持続時間は回顧時の幸福度評価に影響しなかった。つまり,我々の主観的判断は,経験全体を総合するのではなく,経験の中で印象的な部分を抽出して評価対象とすることでなされるのである。このように,主観的幸福感は,判断場面での感情状態に問題を置き換えたり,判断に用いる記憶情報を要約したりした上で判断される。

(2) 人生全体を見た場合の判断:Diener et al.(2001)の研究

先述の知見は時間間隔が相対的に短い経験における主観的幸福感の判断であったが,人生のような時間間隔が長い事象における主観的幸福感の判断においても同様に,ピーク・エンドの法則と持続時間の無視が生じることが示されている(Diener et al., 2001)。この研究では,実験参加者にある人物の生涯を示すシナリオを呈示し,幸福度を評定させた(表1)。シナリオには,極めて肯定的なものと極めて否定的なものが存在した。また,各シナリオでは,肯定性,否定性の程度である誘因価(valence)が以前よりも低減した晩年が情報として付加されるかどうかが操作された。たとえば,肯定シナリオの場合,極めて肯定的な30年の人生の後に,突然,死を迎える場合と,極めて肯定的な30年の人生の後にそれまでと比べると肯定性の程度が低下した5年の人生が付加され35歳で死を迎える場合とがあった。実験参加者は,この付加情報の有無が異なるシナリオを見比べる形で幸福度を評定した。

表1

Diener et al.(2001)における実験シナリオの日本語訳

注 Diener et al.(2001)の掲載情報より作成。下線部は追加および変更された部分を示す。Diener et al.(2001)では,延長なしのシナリオと延長ありのシナリオを見比べる形で幸福度を評定した。また,実際の研究では年齢が30歳のバージョンと60歳のバージョンも用意されていたが,ここでは省略した。

その結果,参加者は,極めて肯定的な人生が突然終わる場合を,その後程々に肯定的な人生が数年続く場合よりも好ましく評定した。その一方で,極めて否定的な人生が突然終わる場合よりも,その後に少し緩和した人生が数年続く場合の方を好ましく評定した。それぞれ歴史上の人物になぞらえ,前者をジェームス・ディーン効果,後者をアレクサンダー・ソルジェニーツィン効果と呼ぶ。これらの効果では,持続時間の無視が生じている。もし幸福度評価が,持続時間を考慮して人生における肯定性,否定性の総量で判断されているのであれば,幸福シナリオでは35年の人生の方が,否定シナリオでは不幸が少ない30年の人生の方が幸福だったと判断されるはずである。しかし,結果はそれぞれ逆転しており,持続時間を考慮していなかった。むしろ,幸福度は結末の肯定性で判断されていた。これは,主観的幸福感判断において結末情報を重視するピーク・エンドの法則と整合する結果であった。

他方で,この研究には制約がある。先述した通り,Diener et al.(2001)の研究では,2つのシナリオを意識的に対比して考えることが可能な状態にあった。言い換えると,人生の延長の有無が顕現的で注目しやすく考慮しやすかったと考えられる。そのため,結末情報を判断に用いたのは,それが重要な情報であったというよりも注目しやすかったからである可能性がある。このような意識的な対比が認知判断に影響することは,ステレオタイプ研究などの他の社会的認知領域でも確認されている(e.g., Judd et al., 2005)。Diener et al.(2001)における付加情報の影響は,意識的対比によるもので,ピーク・エンドの法則によるわけではない可能性がある。つまり,付加情報の対比機会がない場合には,ジェームス・ディーン効果やアレクサンダー・ソルジェニーツィン効果が生じない可能性があるのである。

2. 再現性危機と本研究の目的

本研究は,以上の点を考慮し,Diener et al.(2001)の研究1を追試する。主観的幸福感の判断におけるピーク・エンドの法則および持続時間の無視の存在,人生のような長期的経験における主観的幸福感に及ぼす影響の存在を確認しておくことは,主観的幸福感の判断過程を紐解く上で意義がある。さらには,近年,社会心理学で問題となっている再現性危機に対応する意味でも意義がある。

科学においては方法,結果,推論の再現性が重視される。そのうち,ある研究を同じ手続きで追試したときに元研究と同様の結果が得られることを結果再現性という。この結果再現性への疑義が社会心理学を中心に生じている(Ikeda & Hiraishi, 2016; Yamada, 2024)。Open Science Collaboration(2015)は,2008年に社会心理学の主要科学雑誌に掲載された研究を網羅的に追試したが,元研究の97%が有意な結果を示したのに対し追試の36%でしか有意な結果を示さなかったことを報告している。つまり,研究の半数以上が再現されなかったのである。再現性が低い研究が蔓延している理由については,HARKing(Kerr, 1998),p-hacking(e.g., Simmons et al., 2011)などの疑わしい研究実践(Questionable Research Practices: QRP)が指摘されている(John et al., 2012)。

再現性の危機に対抗措置を講じるには,事前登録した上での直接的追試が有効とされる。事前登録(pre-registration)とは,研究で検証する仮説,方法,解析の内容などをデータ収集の前に明確にして第三者機関に登録することを指す(Hasegawa et al., 2021)。研究計画や分析計画を事前登録しそれに従った分析を実施することで,QRPの抑制が期待される(Nosek et al., 2018)。また,直接的追試(direct replication)とは,先行研究とまったく同一の手続きを用いて実施し,先行研究の報告どおりの結果が得られているか確認することを指す。直接的追試は,概念的追試とは異なる。概念的追試(conceptual replication)は,仮説は先行研究と同一であるが刺激や測定などの手続きを変更する追試であり,概念測定の妥当性を高めることで仮説の根拠たる理論が妥当であることを確認する目的がある。これに対し,直接的追試には理論が依拠する知見の1つを頑健にする目的がある。結果再現性が問題とされる現在,直接的追試を実施することで研究知見の信憑性を高めることには,重要な意義がある。

なお,直接的追試において実験方法を完全に複製して実施することは,言語やサンプルの相違などもあり不可能である。Zwaan et al.(2017)は,追試に関する議論の中で,直接的追試で実験方法すべてを複製する必要はなく,理論上必要な要素が複製されれば良いと主張している。この観点からすれば,主観的幸福感には文化差が存在しうるものの(Oishi, 2009; Uchida, 2020),ピーク・エンドの法則を理論的根拠とするDiener et al.(2001)の知見においては,使用言語を含め文化差の影響は想定しづらい。また,意識的対比の可能性があるものの,ピーク・エンドの法則に依拠する限り,シナリオにおける付加情報の対照が可能な参加者内要因,不可能な参加者間要因といった要因配置の変更による影響も想定しづらい。このような観点に従い,本研究では次のような仮説を立て直接的追試を行った1)2)

仮説1:極めて肯定的な人生が30歳で突然終わるシナリオの方が,その後程々に肯定的な人生が5年付加されたシナリオよりも幸福度を高く見積もるだろう(ジェームス・ディーン効果)。

仮説2:極めて否定的な人生が30歳で突然終わるシナリオよりも,その後程々に否定的な人生が5年付加されたシナリオの方で幸福度を高く見積もるだろう(アレクサンダー・ソルジェニーツィン効果)。

II. 実証研究

1. 研究1

(1) 目的および元研究からの改変

研究1では,Diener et al.(2001)の研究1の直接的追試を実施する。実施にあたり手続き上の改変を5点行った。研究計画ならびに分析計画を事前登録した(https://osf.io/4w9cz)。

改変の第一は,メディアの変更である。Diener et al.(2001)は紙筆版で行ったが,研究1はオンライン実験とした。第二は,使用言語の変更である。実験刺激および教示,回答項目はすべて日本語とした。第三は,年齢要因の除外である。元研究においては仮説に関わるような年齢の効果は認められず,彼らも後続研究(Diener et al., 2001,研究3)では年齢要因を省略した。本研究でも,実施の容易さを考えて,年齢要因を加えなかった。

研究1における重要な改変である第四の改変は,要因配置の変更である。Diener et al.(2001)では,年齢と誘因価が参加者間要因,付加情報が参加者内要因であった。研究1では,付加情報を参加者間要因とし,付加情報の有無を参加者が意識的に対比して考える可能性を排除した。そこで,肯定シナリオおよび否定シナリオそれぞれで無作為配置し直した。これは,オンライン実験プログラムの仕様によるものである。誘因価を参加者内要因とできなかったことから,分析は各シナリオにおいて対応のないt検定を実施することとした。第五は,第四の改変に伴うターゲット人物の名称変更である。元研究では,ターゲット人物の名称は「ジェン」で統一されていた。本研究では,肯定シナリオ,否定シナリオをそれぞれ読ませる形に改変したので,混同を避け,読みやすさも考慮して前者の名前を「ジェーン」,後者の名前を「アリス」とした。

(2) 実験参加者

最初に件数設計を行った。研究1では対応のないt検定を実施するため,有意水準5%,検出力.80,想定される効果量にd=.30を想定して算出した。必要な実験参加者数は352名以上となったが,参加者募集上の制約から200名以上の参加者を目指した。その結果,東京都内の女子大学に通う学生237名(平均年齢18.90 歳,標準偏差1.02)が実験に参加した。無回答が存在した肯定シナリオ5名分,否定シナリオ6名分を分析から除外した。

(3) 方法

オンライン調査システムを利用して,研究倫理に関する事前説明を行い,同意を得た上で,シナリオを2つ呈示しそれぞれについて質問への回答を求めた。シナリオは肯定シナリオと否定シナリオの2種類があり,肯定から否定への順番で呈示した。肯定シナリオでは,30歳の架空の人物ジェーンに関する文章を読ませた。シナリオの共通部分は「ジェーンは独身女性で,30歳まで非常に幸せな一生を送ってきた。仕事や旅行を楽しみ,大勢の友達もあり,趣味にもいそしんだ。」というものであった。この後の付加情報について実験操作を行った。延長なし条件では,「ある日,自動車事故で少しも苦しまず,30歳で死亡した。」と呈示した。延長あり条件では,「30歳からの5年間はまずまず楽しくもあるが,以前ほどではなかった。ある日,自動車事故で少しも苦しまず,35歳で死亡した。」と呈示した。その後,登場人物に関わる2つの質問に9件法で回答した。質問項目は,「全体としてジェーンの人生はどれくらい望ましいものでしたか?」と「ジェーンはその生涯でどれくらい幸せ,もしくは不幸だったと言えますか?」であった。

次に否定シナリオでは,30歳の架空の人物アリスに関する文章を読ませた。シナリオの共通部分は「アリスは独身女性で30歳まで落胆と怒りに満ちた一生を送ってきた。仕事は単調で,親しい友人もおらず,休暇はひとりでテレビを観て過ごしていた。」というものであり,付加情報について実験操作を行った。延長なし条件では,「ある日,自動車事故で少しも苦しまず,30歳で死亡した。」と呈示した。延長あり条件では,「30歳からの5年間はまずまずつらくもあるが,以前ほどではなかった。ある日,自動車事故で少しも苦しまず,35歳で死亡した。」と呈示した。その後,肯定シナリオと同様に,登場人物に関わる2つの質問に9件法で回答した。最後に事後説明を呈示し実験を終了した。

(4) 結果

尺度得点間の関連を見るために肯定シナリオの望ましさと幸せ度の相関係数(r)を算出した結果,有意な正相関が認められ(r=.53, p<.001),人生を望ましいと思うほど幸せ度も高くなる傾向にあった。相関を確認できた2項目を平均し幸福度得点を算出した(M=5.97, SD=1.47)。次に,肯定シナリオの幸福度得点に対し延長なし条件と延長あり条件との間で得点が異なるか検証するために対応のないt検定を行った(表2)。その結果,有意差はみられなかった(t=0.52, df=230, p=.61)。延長なし条件(M=6.02)と延長あり条件(M=5.92)との間には差が見られず,仮説1は支持されなかった。

表2

各条件における幸福度得点の平均値ならびに標準偏差(研究1)

注 カッコ内は標準偏差。付加情報における延長の有無は参加者間要因となっているがシナリオの誘因価はオンライン実験プログラムの仕様により要因配置ができていない。

同様に,否定シナリオの望ましさと幸せ度の相関係数(r)を算出した。その結果,有意な正相関が認められたので(r=.64, p<.001),2項目を平均し幸福度得点を算出した(M=3.35, SD=1.40)。否定シナリオの幸福度得点に対し,延長なし条件と延長あり条件との間で対応のないt検定を行った(表2)。その結果,有意差は見られなかった(t=1.07, df=229, p=.29)。延長なし条件(M=3.24)と延長あり条件(M=3.44)の間には差がなく,仮説2は支持されなかった。

(5) 考察

仮説不支持の理由として,手続き改変の影響が考えられる。第一に,オンライン実験プログラムの仕様のためシナリオの誘因価を実験の参加者内要因に組み込むことができなかった。その結果,本来であれば小さくできるはずの誤差を大きくした可能性がある。第二に,付加情報を参加者間要因にしたことにより,付加情報の有無を参加者に意識的に対比させる機会を失った。このことが結果に影響した可能性がある。また,件数設計において352名の実験参加者が必要であったが,研究1ではその人数に達していなかった。そのため,本来あるべき差異を統計学的に検出できなかった可能性もある。

2. 研究2

(1) 目的

研究2では,研究1で実現しなかったシナリオの誘因価を参加者内要因として組み込んだ実験を実施する。研究1では実験プログラムの仕様のため実現できなかったが,このことが誤差を大きくした可能性がある。また,研究1ではシナリオの順序が固定されていた。順序効果の影響もありうることから,研究2ではシナリオの順序のカウンターバランスをとった。研究計画ならびに分析計画は事前登録した(https://osf.io/uwd6n)。

(2) 実験参加者

最初に件数設計を行った。研究1と同様の対応のないt検定を実施する場合,必要な実験参加者数は352名以上となる。他方,参加者間1要因参加者内1要因の混合計画の分散分析を実施する場合,有意水準5%,検出力.80,想定される効果量をf=0.25(η2=.06),変数間相関を.50と想定すると,必要な実験参加者数は34名以上となる。今回の実験では実施の制約から200名以上の参加者を目指した3)。その結果,東京都内の女子大学に通う学生187名(平均年齢18.58 歳,標準偏差1.02)が実験に参加した。すべての従属変数に回答しなかった延長なし条件2名分のデータを分析から除外した。

(3) 方法

オンライン調査システムを利用し,研究倫理に関する事前説明を行い,同意を得た上で,シナリオを2つ呈示しそれぞれについて質問への回答を求めた。実験参加者を延長なし条件もしくは延長あり条件の2条件のいずれかに無作為配置した。延長なし条件では,研究1で用いた肯定シナリオと否定シナリオの共通部分と延長なしの付加情報を呈示し,それぞれのシナリオに対して研究1と同様に登場人物に関わる2つの質問に9件法で回答させた。延長あり条件では,肯定シナリオと否定シナリオの共通部分と延長ありの付加情報を呈示し,それぞれのシナリオに対して研究1と同様に登場人物に関わる2つの質問に9件法で回答させた。いずれの条件でもシナリオの順序はカウンターバランスをとった。最後に事後説明を呈示し実験を終了した。

(4) 結果

肯定シナリオの望ましさと幸せ度の相関係数(r)を算出した結果,有意な正相関が認められたので(r=.57, p<.001),2項目を平均し幸福度得点を算出した(M=6.25, SD=1.77)。同様に,否定シナリオの望ましさと幸せ度の相関係数(r)を算出した結果,有意な正相関が認められたので(r=.64, p<.001),2項目を平均し幸福度得点を算出した(M=3.26, SD=1.47)。2つの幸福度得点は無相関であった(r=-.13, p=.08)。これらの得点に対して2(誘因価:肯定・否定)×2(付加情報:延長あり・延長なし)の参加者間1要因参加者内1要因の混合計画に基づく分散分析を実施した。誘因価が参加者内要因,付加情報が参加者間要因であった。各条件の平均値ならびに標準偏差を表3に示す。その結果,誘因価の主効果が認められ(F(1, 183)=262.19, p<.001),否定シナリオ(M=3.27)よりも肯定シナリオ(M=6.25)の方で幸福度が高かった。付加情報の主効果(F(1, 183)=0.02, p=.89)ならびに誘因価×付加情報の交互作用効果(F(1, 183)=0.04, p=.84)は認められず,仮説1,2を支持しなかった。

表3

各条件における幸福度得点の平均値ならびに標準偏差(研究2)

注 カッコ内は標準偏差。シナリオの誘因価は参加者内要因,付加情報における延長の有無は参加者間要因となっている。

(5) 付加的分析

研究1では,対応のないt検定を実施するに足る検定力を確保できていなかった。そこで付加的分析として研究1と研究2のデータを統合し(N=418),この統合データにおいて付加情報の有無による幸福度得点の差が見られるか,各シナリオで対応のないt検定を実施した(表4)。その結果,肯定シナリオでは有意差はみられず(t=0.56, df=415, p=.58),延長なし条件(M=6.14)と延長あり条件(M=6.05)との間には差がなかった。仮説1は支持されなかった。否定シナリオでも有意差はみられなかった(t=1.07, df=416, p=.29)。延長なし条件(M=3.24)と延長あり条件(M=3.39)との間には差はなく,仮説2は支持されなかった4)

表4

各条件における幸福度得点の平均値ならびに標準偏差(研究1,2統合データ,N=418)

注 カッコ内は標準偏差。研究1,2のデータを統合した上で,条件間で対応のないt検定を実施した。

(6) 考察

シナリオの誘因価を要因として実験に組み込んだ場合でも仮説は支持されなかった。その一方で,シナリオの誘因価そのものの効果は見られており,否定シナリオよりも肯定シナリオの方が幸福度を高く見積もられていた。このことは,実験参加者がシナリオの内容を理解しており,その理解に基づき幸福度を評定したことを示している。つまり,文章をよく読まずに回答した可能性は低く,その上で付加情報の影響がなかったと結論づけられる。また,付加的分析における十分な件数を確保した上での分析においても,仮説は支持されなかった。このことは仮説の不支持が統計学的な検出力の問題ではないことを意味している。

仮説不支持に関して残された可能性は,Diener et al.(2001)では付加情報が参加者内要因であったが,研究1,研究2では参加者間要因であった点である。元研究で仮説が支持されたのは,延長の有無を対比できたからという可能性がある。そこで研究3では,付加情報を参加者内要因とし,Diener et al.(2001)にさらに忠実な直接的追試を実施する。

3. 研究3

(1) 目的

研究3では,先行研究の手続きをこれまで以上に忠実に複製する。研究2の要因配置を変更し,付加情報を参加者内要因,シナリオの誘因価を参加者間要因とした直接的追試を実施する。研究計画ならびに分析計画を事前登録した(https://osf.io/tkbmr)。

(2) 実験参加者

最初に件数設計を行った。研究2と同様に分析において参加者間1要因参加者内1要因の混合計画の分散分析を実施するため,有意水準5%,検出力.80,想定される効果量をf=0.25(η2=.06),変数間相関を.50と想定すると,必要な実験参加者数は34名以上となる。今回の実験では200名以上の参加者を目指した。その結果,東京都内の女子大学に通う学生188名(平均年齢18.84 歳,標準偏差1.22)が実験に参加した。すべての従属変数に回答しなかった者のデータを分析から除外した。

(3) 手続き

これまでと同様,オンライン調査システムを利用し,研究倫理に関する事前説明を行い,同意を得た上で,シナリオを2つ呈示しそれぞれについて質問への回答を求めた。実験参加者を,肯定シナリオ条件もしくは否定シナリオ条件の2つの条件のいずれかに無作為配置した。各シナリオ条件では,研究1で用いたシナリオの共通部分に延長なしの情報を付加したシナリオと,延長ありの情報を付加したシナリオを呈示し,それぞれのシナリオに対して登場人物の幸福度に関わる質問2つに9件法で回答させた。延長なし条件と延長あり条件の順序はカウンターバランスをとった。最後に事後説明を呈示し実験を終了した。

(4) 結果

延長なし条件の望ましさと幸せ度の相関係数(r)を算出した結果,有意な正相関が認められたので(r=.65, p<.001),2項目を平均し幸福度得点を算出した(M=4.72, SD=1.90)。同様に,延長あり条件でも望ましさと幸せ度との間で有意な正相関が認められたので(r=.71, p<.001),2項目を平均し幸福度得点を算出した(M=4.65, SD=1.60)。2つの幸福度得点は高い正相関を示した(r=.83, p<.001)。これらの得点に対して2(誘因価:肯定・否定)×2(付加情報:延長あり・延長なし)の参加者間1要因参加者内1要因の混合計画に基づく分散分析を実施した。誘因価が参加者間要因,付加情報が参加者内要因であった。各条件の平均値ならびに標準偏差を表5に示す。その結果,誘因価の主効果が認められ(F(1, 180)=105.28, p<.001),否定シナリオ(M=3.85)よりも肯定シナリオ(M=5.93)の方が幸福度を高く見積もっていた。さらに誘因価×付加情報の交互作用効果(F(1, 183)=21.69, p<.001)が認められた。肯定シナリオ条件では,延長あり条件(M=5.69)と比較して延長なし条件(M=6.16)の方で幸福度が高かった(t=4.02, p<.001)。否定シナリオ条件では延長なし条件(M=3.73)よりも延長あり条件(M=3.97)で幸福度が高かった(t=2.44, p=.02)。この結果は,仮説1,仮説2を支持した。付加情報の主効果(F(1, 180)=2.44, p=.12)は認められなかった。

表5

各条件における幸福度得点の平均値ならびに標準偏差(研究3)

注 カッコ内は標準偏差。シナリオの誘因価は参加者間要因,付加情報における延長の有無は参加者内要因となっている。

(5) 考察

付加情報を参加者内要因としたところ,仮説1,仮説2を支持する結果を得た。研究3のこのような結果は,これまでの研究1,研究2と対照的である。研究2と研究3でサンプルサイズが変わらず検出力がほぼ同等であることから,統計学的な検出力の相違が結果の相違の原因になったとは考えづらい。また,実験に用いた刺激や質問項目も同一であり,手続き上の問題も考えづらい。残された可能性は,付加情報が参加者内要因であることによって,実験参加者が付加情報の有無を対比し,着目しやすくなった可能性である。この可能性が正しいとすると,研究3の結果はDiener et al.(2001)の仮説を支持しているが,その仮説の根拠とするピーク・エンドの法則の再考を促す。これに関する考察を行う前に,研究3の知見が頑健で一般的であるかを確認するため,成人サンプルで研究4を実施する。

4. 研究4

(1) 目的

研究4は,成人サンプルを対象に研究3の手続きを実施し,結果の頑健性と一般性を確認する。研究計画ならびに分析計画を事前登録した(https://osf.io/8q6eb)。

(2) 実験参加者と方法

研究3と同様に200名以上の参加者を目指した。ポイント報酬制の公募型Web調査に参加した18歳以上の一般成人311名が参加し,同一IPアドレスの回答(n=30)および無回答(n=2)を除外した279名(男性130名,女性149名,平均年齢39.42歳,標準偏差9.79)が分析対象となった。実験手続きは研究3と同様であった。

(3) 結果

延長なし条件の望ましさと幸せ度との間に有意な正相関が認められたので(r=.69, p<.001),2項目を平均し幸福度得点を算出した(M=4.48, SD=1.99)。同様に,延長あり条件の望ましさと幸せ度との間で有意な正相関が認められたので(r=.69, p<.001),2項目を平均し幸福度得点を算出した(M=4.43, SD=1.49)。2つの幸福度得点は高い正相関を示した(r=.81, p<.001)。これらの得点に対して2(誘因価:肯定・否定)×2(付加情報:延長あり・延長なし)の参加者間1要因参加者内1要因の混合計画に基づく分散分析を実施した。誘因価が参加者間要因,付加情報が参加者内要因であった。各条件の平均値ならびに標準偏差を表6に示す。その結果,誘因価の主効果が認められ(F(1, 277)=80.72, p<.001),否定シナリオ(M=3.60)よりも肯定シナリオ(M=5.17)の方が幸福度を高く見積もっていた。さらに誘因価×付加情報の交互作用効果(F(1, 277)=86.18, p<.001)が認められた。肯定シナリオ条件では,延長あり条件(M=4.89)と比較して延長なし条件(M=5.46)の方で幸福度が高かった(t=6.92, p<.001)。否定シナリオ条件では延長なし条件(M=3.32)よりも延長あり条件(M=3.88)で幸福度が高かった(t=6.26, p<.001)。この結果は,仮説1,仮説2を支持した。付加情報の主効果(F(1, 180)=0.00, p=.96)は認められなかった。

表6

各条件における幸福度得点の平均値ならびに標準偏差(研究4)

注 カッコ内は標準偏差。シナリオの誘因価は参加者間要因,付加情報における延長の有無は参加者内要因となっている。

(4) 考察

成人サンプルにおいても仮説1,仮説2を支持する結果が得られた。研究3と併せて考えると,Diener et al.(2001)の研究の直接的追試に成功し,この研究知見が頑健かつ一般的であることが示された。

III. 総合考察

1. ピーク・エンドの法則は成り立つか

本研究は,Diener et al.(2001)の研究1を追試し,人生の幸福感判断におけるピーク・エンドの法則および持続時間の無視の存在を検証した。付加情報を参加者間要因で操作した研究1,研究2では仮説1および仮説2は支持されず,ジェームス・ディーン効果,アレクサンダー・ソルジェニーツィン効果は認められなかった。研究1では,シナリオ誘因価を要因に組み込めなかったこと,参加者数が件数設計時の数値に到達しなかったことなどの手続き上の不備が仮説不支持の理由として考えられたが,シナリオ誘因価を要因に組み込んだ研究2や,データを統合することで検出力を保証した分析でも仮説1,仮説2は支持されておらず,これらの理由は該当しないと考えられる。残された可能性として,元研究と異なり付加情報を参加者間要因としたことが考えられた。その一方で,ピーク・エンドの法則から理論的に考えると,このような要因配置の変更が実験結果に影響を及ぼすとは考えにくい。なぜなら,ピーク・エンドの法則は,記憶やエピソードの縮約において感情がもっとも高まった時点と結末時点を重視するというものであり,これらの時点への着目は事前に決定されていると考えられるからである。このような理論上の想定と直接的追試に対するZwaan et al.(2017)の主張に基づけば,要因配置の影響は想定できない。

しかし,付加情報を参加者内要因配置とした研究3,研究4では,シナリオの誘因価と付加情報の交互作用効果が認められ,仮説1ならびに仮説2が支持された。統計学的検定力が保証された女子大学生サンプルおよび成人サンプルで仮説を支持する結果が得られており,付加情報を参加者内要因とした手続きにおいて,このような結果は一般的かつ頑健であると考えられる。これらのことは,Diener et al.(2001)の知見の再現可能性が高く,信頼する知見であることを保証するものである。ただし,Diener et al.(2001)の知見を再現できたことが,ピーク・エンドの法則と持続時間の無視の存在を支持しているとは言い難い。研究1,研究2の結果と研究3,研究4の結果を併せると,Diener et al.(2001)の知見を再現するには,付加情報を参加者内要因配置とすることが不可欠だと思われる。このことは,2つのシナリオを意識的に対比する心的過程が幸福度判断に関与している可能性を示唆する。

そもそも主観的幸福感は様々な要因からなることから,幸福度判断は複雑な課題である。Diener et al.(2001)の人生シナリオは情報量自体は少ないが,判断する側は人に多様な価値観や考え方があることを理解していると考えられる。そのため,幸福度判断に関して適切な判断基準を用意し,最適と思われる判断をするのは複雑な課題であると考えられる。このような課題で判断するにあたって,人は,複雑な課題を単純な課題に置き換える傾向にある(Kahneman, 2011)。この置き換えを試みる際に比較対照となる別シナリオが存在した場合には,これらのシナリオ間で対比することで幸福度判断を単純にすることができる。シナリオの差異部分に焦点化し評価すれば良いからである。Diener et al.(2001)の手続きでは,追加の5年の有無に焦点化することになる。このようなシナリオの比較対照は,参加者間要因配置ではなく参加者内要因配置である場合に可能となる。その意味で,Diener et al.(2001)のシナリオにおける結末部分は,初めから注目されることが決まっているような,優先的な情報でなかったと考えられる。

その一方で,研究2,研究3,研究4においてシナリオの誘因価は幸福度に影響を及ぼしていた。このことは,結末場面の情報だけではなく絶頂期の情報も考慮して幸福度判断がなされたことを示している。さらには,研究3,研究4ではジェームス・ディーン効果とアレクサンダー・ソルジェニーツィン効果が認められており,持続時間の無視が生じていた。持続時間の無視の存在は,幸福度判断にピーク・エンドの法則が用いられた可能性を示唆する。これらを総合すると,次のような過程が考えられる。人生シナリオのピーク時情報と結末情報が存在したときに,結末情報が優先的に着目されるとは限らないが,ピーク情報は着目される。結末情報が注目されない時はピーク時情報で幸福度判断がなされる。他方で,結末情報が着目されたときには,ピーク・エンドの法則を用いた判断がなされるのである。その意味で,Diener et al.(2001)が考えたほどには結末情報の重要性は高くなく,結末情報が顕現的であることが前提となる。このようなこともあり,主観的幸福感の判断にピーク・エンドの法則が常に用いられるわけではないと考えられる。

ピーク・エンドの法則が用いられるような,結末情報が顕現的になる場面としては次のような場面が考えられる。第一は,本研究で示唆したような複数のシナリオの対比による顕現化である。シナリオ間で結末情報に相違があった場合,その点に注目が集まり,幸福度判断時に考慮されることになる。第二は,記憶検索に基づく回顧場面が考えられる。記銘学習時の刺激系列位置が記憶成績に影響を及ぼす系列位置効果は古くから知られている。この効果において,終末部で呈示された項目の記憶成績が優れていることを新近性効果と呼ぶ。そのため,エピソードの回顧時には,新近性効果が生じ結末情報が想起されやすい可能性がある。ピーク・エンドの法則に関するいくつかの研究は,回顧的になされており結末情報が想起しやすい状況であったと考えられる(Fredrickson & Kahneman, 1993; Redelmeier & Kahneman, 1996)。実際に,味覚経験回顧時の満足度評価に新近性効果の影響がみられている(Garbinsky et al., 2014)。Diener et al.(2001)に関しても,シナリオを参加者の目前に提示するのではなく記銘させた場合には,付加情報の有無を参加者間要因としてもジェームス・ディーン効果やアレクサンダー・ソルジェニーツィン効果が認められるかもしれない。今後の検討が必要である。

2. 直接的追試の有効性と困難

本研究は,Diener et al.(2001)の直接的追試を行った。直接的追試には理論が依拠する知見の1つを頑健にする目的がある。本研究の研究3,研究4は,元研究と整合する証拠を示し,Diener et al.(2001)の知見が再現性の高い頑健なものであることを示した。このような作業は,結果の再現性問題が生じている社会心理学領域において確かな知見を弁別するために必要な作業である。社会心理学領域においては直接的追試を軽視し,概念的追試を重視する歴史があった(Ando, 2017)。その理由として,社会心理学が着目する理論の検証に重きを置いたことがあげられるが,このことは同時に,再現性問題が生起する遠因ともなった。今後はこの偏重を見直し,直接的追試の実施も重視する必要がある。

しかし,直接的追試の実施には困難が伴う。そもそも,社会状況や価値観は時代とともに変化するため,社会心理学研究に対して元研究と同一の手続きを採用することが困難であることが多い。特に古典的な研究の直接的追試は現在では困難であり,手続きの変更を余儀なくされる。仮に時代的な問題が小さかったとしても手続きを完全に複製することは不可能であり,理論上重要だと考えられる手続きのみを複製することとなる(Zwaan et al., 2017)。ただし,理論上重要な手続きのみを複製して直接的追試を実施しても,確定的な結論を導けるわけではない。本研究における付加情報の要因配置は,ピーク・エンドの法則の観点からは重要な変更ではなかった。その観点のみを保持し研究1,研究2の結果を見ると,Diener et al.(2001)の研究は再現されなかったことになる。実際には,付加情報の要因配置は,情報の顕現性に関わるという意味で理論的に重要な手続きであった。要因配置を元研究にあわせより忠実に直接的追試をした場合には,Diener et al.(2001)の研究は再現されたのである。

直接的追試によって知見が再現されたからと言って,その仮説の根拠である理論が支持されるわけではない。直接的追試の役割は知見の頑健性の確認にあるのである。しかし,本研究で示した通り,様々な改変点を考慮しながら直接的追試を重ねることで,どのような状況で頑健な知見が得られるのかを特定できることもある。さらに,このような結果は仮説の根拠である理論の修正を促すことにもつながる。本研究は4つの直接的追試からピーク・エンドの法則が成立する要件を見出した。このことから,様々に直接的追試を実施し不支持データも含めて公開することには意義がある。結局のところ,科学は誠実で地道な測定結果の蓄積なのであり,ただデータを取得するだけではなく,直接的追試や概念的追試を重ねることではじめて知見の精度を上げ,ひいては理論の妥当性を高めることができるのである。

謝辞

研究実施にあたり科学研究費(19H01750)の助成を得た。また,実験実施にあたり昭和女子大学人間社会学部心理学科の石井萌波,白石まどか,宮本祐里の協力を得た。記して感謝する。また,研究の一部は日本心理学会第85回大会,第86回大会で発表された。

1)仮説が2つに分かれているが,研究1の対応のないt検定を想定したものである。2(誘因価)×2(付加情報)の分散分析を実施する他の研究では交互作用効果の予測となり,2つの仮説が同時に検証される。

2)研究1から研究4の実施にあたっては,昭和女子大学研究倫理審査委員会の承認を得た。

3)事前登録では対応のないt検定に関わる件数設計のみが記載されていた。これはより厳しい基準を示したためだが,趣旨からいえば,分散分析に関わる件数設計についても記載すべきであった。

4)研究2のデータ単独でも同様の分析を行ったが仮説は支持されなかった。

References

藤島 喜嗣(ふじしま よしつぐ)

昭和女子大学人間社会学部教授。一橋大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。昭和女子大学人間社会学部准教授を経て現職。専門は社会的推論。主要著作に「社会的認知:現状と展望」(共著),「社会心理学・再入門:ブレークスルーを生んだ12の研究」(監訳)がある。

 
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