2023 Volume 4 Issue 1 Pages 59
マーケティング・レビュー誌は本号で第4巻になるが,カンファレンスで報告された論文の中から選りすぐられた7本が掲載されている。学会員の6割以上がビジネスパーソンであり,本号からも変化の激しい現代社会において広範囲にわたる実務の最先端がどのような眼差しからマーケティングを捉えているかを理解することができる。本誌はやがて歴史的なアーカイブとして評価されるようになるのではないか。大学の研究者と実務家との共同研究が多く収録されているからである。
本号の各論文のテーマを列挙すると,特定保健用食品におけるナッジ効果,個人の趣味と組織のクリエイティビティの関係,企業内リードユーザーのイノベーション,映像認識AIによるデジタルサイネージの効果検証,量り売り小売店の価値共創プロセスの把握,医療に携わる製造業のサービス化,コロナ禍における顧客感情などである。
日本マーケティング学会が目指している「たんきゅうと創発」における“たんきゅう”は探究ではなく探求である。どちらも学会にとって重要であるが,求めると究めるは思考の方向性が異なり,求めるには発見や発明という動機が強い。机上の空論ではなく最先端の知見を実務的なインプリケーションに繋げるための意欲的な実証研究が圧倒的に多いこともこのことを表している。
ところで,本誌は本号から早期公開されるようになった。また,マーケティング・ジャーナル同様にDOAJに掲載されるように準備を進めている。査読に関わった多くの学会員,並びに短期間で論文の質向上に大きく貢献してくれたシニアエディターの方々に深く感謝すると同時に,ますます質の高い多くの論文が投稿されるよう学会員に期待したい。