Journal of the NARO Research and Development
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Chapter 3: Technologies to reduce radiocesium in upland crops, grass, forage crops, fruit trees and domestic agricultural products
Review of studies on the behavior of radioactive cesium in the processing/cooking of domestic agricultural products
Mayumi HACHINOHE Shioka HAMAMATSUShin-ichi KAWAMOTO
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2021 Volume 2021 Issue 8 Pages 125-133

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Abstract

東京電力福島第一原子力発電所事故は,環境中に放射性物質を放出し,国内産の農畜水産物に対する放射性物質汚染を引き起こした.国内農産物の放射性物質汚染は我が国にとってこれまでに経験のない事態であったが,食品中の放射性物質に対して,暫定規制値・基準値設定や食品中の放射性物質検査等の早急な行政対策が実施された.さらに,農地の除染対策や放射性物質の吸収抑制対策等により,市場に流通する農畜水産物の放射性物質汚染レベルは,一部の天然食材を除き事故直後から低い水準が維持されている.農畜水産物が加工・調理された食品は,原材料と比較して形態や状態が変化するだけでなく,汚染した放射性物質の濃度や含有量も変化する.今回の原子力発電所事故後には,直接口に入る食品の安全性に関する消費者の関心が高まり,国内の研究者を中心に国内農畜水産物を対象とした加工・調理に関する放射性セシウム動態研究の成果が盛んに蓄積されてきた.野菜や野草の表面に付着した放射性セシウムは水またはお湯による洗浄,茹で調理により除去される.さらに,内部汚染された穀類,豆類,肉類,山菜・キノコ類においても,特別な処理ではなく普段一般的に用いられている加工・調理による放射性セシウムの低減効果が示されている.

はじめに

2011 年(平成 23)に発生した東京電力福島第一原子力発電所事故(TEPCO-FDNPP 事故)は,環境中に放射性物質を放出し,国内産の農畜水産物に対する放射性物質汚染を引き起こした.農産物汚染の対象核種は,主に放射性ヨウ素(131I),および放射性セシウム(134Cs,137Cs)であったが,半減期の短い131I(半減期 8 日)は急速に減衰したことから事故後数か月で汚染の問題はなくなり,その後の主な汚染対象核種として 134Cs(半減期 2 年),137Cs(半減期 30 年)が注視されてきた(八戸ら 2015).物理的半減期で評価すると,事故から 10 年経過した時点での放射性セシウムは,134Cs では放射能が事故当時と比べて約 3% まで減衰するが,137Cs では依然として約 79% の放射能が残存している.

国内農産物の高濃度の放射性物質汚染は我が国にとってこれまで経験のない事態であったが,食品中の放射性物質に対しては,暫定規制値・基準値設定や食品中の放射性物質検査等の早急な行政対策が実施された(「暫定規制値・基準値」「食品中の放射性物質の検査及び出荷制限等に関するガイドライン」を参照).さらに,農地の除染対策や放射性物質の吸収抑制対策等により,市場に流通する農畜水産物の放射性物質汚染レベルは,一部の天然食材を除き事故直後から低い水準が維持されている(農林水産省 2020a).

農畜水産物は多くの場合,加工や調理を施された食品として摂食される.加工や調理後の食品は,原材料と比較して形態や状態が変化するだけでなく,汚染した放射性物質の濃度や含有量も変化する.市場に流通する農畜水産物,つまり原材料の安全性が担保されることに加え,加工・調理過程および摂食時の放射性物質の濃度や総量変動解析による原材料から加工・調理後の一連の変動を把握することは,食品産業における食品加工過程でのリスク管理のエビデンスとなるとともに,国民の食に対する安心感をより一層確かなものとする.

本稿では,放射性セシウムに焦点を絞り,TEPCO-FDNPP 事故後の食品中の放射性物質検査における検査計画や原子力災害対策特別措置法に基づく出荷制限等の取扱いに関するガイドライン,および TEPCO-FDNPP 事故由来の放射性セシウムを含む国内産農畜産物の加工・調理における放射性セシウムの動態解明に関するこれまでの研究成果について,穀類,豆類,肉類,山菜・キノコ類を中心に概説する.

暫定規制値・基準値

TEPCO-FDNPP 事故による環境中への放射性物質拡散を受けて,国内産食品の飲食に起因する衛生上の危害発生防止と国民の健康保護の目的のため,原子力安全委員会により示された指標値を,緊急を要することから食品衛生法第 6 条に基づく放射性物質の暫定規制値として設定した(平成 23 年 3 月 17 日厚生労働省食安発 0317 第3号).その後,厚生労働省薬事・食品衛生審議会,食品安全委員会,放射線審議会での議論を踏まえてより一層の食の安全・安心を確保するために,食品から許容することのできる放射性セシウムの年間線量を 5 mSV から 1 mSv に引き下げた基準値が食品衛生法第 11 条に基づいて設定され,2012 年(平成 24)4 月より施行された(平成 24 年 3 月 15 日厚生労働省食安発 0315 第 1 号).表 1 に放射性セシウムに関する暫定規制値と基準値を示す.日本の基準値は,海外の基準値と比べてもかなり厳しい設定となっている.

食品中の放射性物質の検査及び出荷制限等に関するガイドライン

暫定規制値(平成 24 年 4 月 1 日からは基準値)の設定を受けて,食品衛生法に基づき 2011 年(平成 23)3 月 18 日より国内産食品に対する放射性物質検査が地方自治体において開始された.

原子力災害対策本部は,地方自治体が実施する食品に対する放射性物質検査の検査計画や,原子力災害対策特別措置法に基づく出荷制限及び摂取制限の指示または解除に関するガイドライン『食品中の放射性物質に関する「検査計画,出荷制限等の品目・区域の設定・解除の考え方」』(以降,ガイドラインとする)を策定・公表している(厚生労働省 2020a).ガイドラインには,検査対象自治体,検査対象品目,検査対象市町村等の設定,検査の頻度,検査計画の策定,検査計画の公表及び報告,検査結果に基づく措置,国が行う出荷制限・摂取制限の品目・区域の設定条件,国が行う出荷制限・摂取制限の品目・区域の解除に関して記載されている.地方自治体はこのガイドラインに基づき,放射性物質検査計画を策定し,計画に基づいた検査を実施する.暫定規制値(2012 年(平成 24)年 4 月 1 日からは基準値)を超過する品目が確認された場合は,それらの食品が市場へ流通しないよう,ガイドラインに基づき回収・廃棄されるとともに,地域的な広がりが確認された場合は出荷制限が,著しく高濃度の値が検出された場合は摂取制限がガイドランに基づき国により設定される.

ガイドラインは,2011 年(平成 23)4 月 4 日付で初版が公表され,その後は検査結果,低減対策等の知見の集積,放射性ヨウ素から放射性セシウムへの核種の移行,国民の食品摂取の実態等を踏まえた対象品目の充実,暫定規制値から基準値への移行等を踏まえ,必要な見直しが行われている.ガイドラインの変遷を表 2 に示す.

国内産農畜産物に関連する動態解析研究

農畜水産物の放射性物質による汚染は,主にフォールアウトした放射性物質が農産物表面に付着することによる表面汚染経路と,作物内部に放射性物質が取り込まれる内部汚染経路の 2 つの経路に分けられる(公益財団法人原子力環境整備促進・資金管理センター 2013a)事故直後は表面汚染の影響が多くを占めるが,環境中への放射性物質の放出が収まると表面汚染は減少し,内部汚染による影響が中心となる(信濃 2017).内部汚染経路は,根部を介して土壌中から取り込まれる経路,飼料や飲水を介して家畜や魚の体内に取り込まれる経路,さらに葉や枝の表面に付着した放射性物質が作物内部に取り込まれ,果実や新芽,子実に移行する経路も確認されている(内田 2013).

本稿では,加工・調理前後の放射性セシウムの変動を示すパラメーターとして国際原子力機関の技術報告書(IAEA 2009)に示される定義を用いる.加工・調理前後の放射性セシウム濃度の変化割合を示すパラメーターとして,加工係数(Processing factor, Pf)を用いる.加工後の放射性セシウム濃度(Bq/kg)を加工前の放射性セシウム濃度(Bq/kg)で除したものであり,加工による濃度変化比を示す.加工前の食品に含まれる放射性セシウム総量の変化割合を示すパラメーターとして,残存割合(Food processing retention factor, Fr)を用いる.加工後の食品に含まれる放射性セシウムの総量(Bq)を,加工前の食品に含まれる放射性セシウム量(Bq)で除したものである.

1.表面汚染

TEPCO-FDNPP 事故由来の放射性物質により表面汚染されたホウレンソウと野草(ヨモギ,ツクシ,フキ,ノビル,タンポポ等)の洗浄,および茹で調理に関する報告がある(公益財団法人原子力環境整備促進・資金管理センター 2013b).ノビル球茎を除いては,流水または貯水洗浄により放射性セシウム濃度は洗浄前の 0.5‐0.8 倍に低下する.一方,茹で調理の場合は調理前の 0.3‐0.4 倍に低下する(表 3).ノビル球茎を除いて,流水または貯水洗浄による放射性セシウムの除去割合は 0.2-0.5,茹で調理による除去割合は 0.6-0.7 と報告されている.表面に付着した放射性セシウムは水またはお湯により洗い流され,その低減効果は洗浄よりも茹で調理による効果が高いことがわかる.放射性物質がフォールアウトした農産物の確保は困難であったためか,表面汚染に関する加工・調理研究データは内部汚染に関するものと比べて報告例が少ない.

2.内部汚染

1)穀類

日本人の食事に含まれる炭水化物の 1 日の摂取量は,食事から 1 日に摂取するエネルギーの 50 ~ 65% が基準(成人男女)とされている(厚生労働省 2020b).穀類は炭水化物の主な供給品目であり,主食である米を含むことから,玄米,小麦,そばに関して詳細な放射性セシウムの変動解析が行われている(田上,内田 2012丹治ら 2012Kimura et al. 2012丹治ら 2013Hachinohe et al. 2015Hachinohe et al. 2018).

玄米,小麦,玄そばは,一般的に胚乳部分が可食部に相当する.玄米はとう精加工,小麦と玄そばは製粉加工により,それぞれ胚乳部分である精白米,小麦粉,そば粉へと加工される.精白米,小麦粉,そば粉の Pf は,それぞれ 0.5,0.4,0.7 であり,米ぬか,小麦ふすま,そば果皮,そば種皮が除去されることにより,原料の放射性セシウム濃度はより低下することが示されている.このことから,原料の濃度が基準値以下であることが確認されれば,加工後の精白米,小麦粉,そば粉濃度は基準値を超過することはない.

一方,副産物である米ぬか,小麦ふすま,そば果皮,そば種皮の Pf は,7.1,2.1,1.5,1.8 となり,原料よりも放射性セシウム濃度が高くなる.米ぬかや小麦ふすまは家畜の飼料として利用される場合があり,玄米,小麦の放射性セシウム濃度が基準値規制により食品としての安全性を担保されたとしても,それらから得られる米ぬかや小麦ふすまは飼料の暫定許容値を超過しないよう注意が必要である.そのため農林水産省は,2011 年(平成 23)9 月 13 日に「平成 23 年産麦に由来するふすま及び麦ぬかの取扱いについて」(農林水産省 2011a),2011 年(平成23)12 月 19 日に「平成23 年産米に由来する米ぬか等の取扱いについて」(農林水産省 2011b)において,Pf はふすまおよび麦ぬかで「3」,米ぬかで「8」を用いるのが適切であると通知した.

米は洗米後に炊飯器を用いて炊飯されるのが一般的である.玄米の洗米では Pf は 0.9 であるが,米ぬかを一部削った分つき米(3,5,7 分)および精白米の Pf は 0.6 と報告されている.洗米では米から水へと放射性セシウムが移行するため,放射性セシウム濃度が低下する.洗米による玄米の Fr は 0.9,分つき米および精白米の Frは 0.6 であり,米ぬかの除去は洗米による水への移行割合を高め,その結果放射性セシウムの低減効果を高める.炊飯による放射性セシウムの除去効果はないが,加水(米重量比約 1.5)による重量増加により,Pf は玄米で 0.4,分つき米および精白米で 0.3 となる.

日本酒の加工に関しても報告がある(Okuda et al. 2013).清酒醸造用の標準的な玄米を重量比 70%まで精米した精白米を用いて試験醸造を実施した場合 Pf は 0.04,酒粕は 0.2 であった.清酒醸造工程では,とう精,洗米による放射性セシウムの除去,仕込み水の添加による重量増加が放射性セシウムを低減させる.よって,玄米の放射性セシウム濃度が基準値以下であれば,清酒が基準値を超過することはない.

小麦粉およびそば粉が原料とされるうどんや中華麺,そばの茹で調理についても動態解析が報告されている( 八戸ら 2013Kimura et al. 2012, Hachinohe et al. 2018).茹で調理におけるPf は,うどん生麺(麺厚 2.5 mm,麺幅 3 mm),うどん乾麺(麺厚 1.8 mm,麺幅 3 mm)がともに 0.06,中華麺生麺(麺厚1.5 mm,麺幅 1.5 mm)が 0.3,そば生麺(麺厚 1.5 mm,麺幅 3 mm)が 0.5 である.うどんが最も放射性セシウム濃度の低減割合が大きいが,これは原料,製麺方法,茹で調理方法が異なるためと考えられる.米粉麺では麺が硬いほど麺から茹で湯への 137Cs の移行抑制が確認されており,茹で調理での茹で麺の含水比の変化割合の違いが,茹で湯への放射性セシウムの移行に影響を及ぼしている可能性が示唆されている(八戸ら 2017).

2)豆類

国内での大豆需要量(2018 年(平成 30),約 356 万 t)のうち,国内産大豆が占める割合は約 6%であり,大豆は日本型食生活には欠かせない豆腐,納豆,煮豆,味噌,醤油等の加工食品に利用されている(農林水産省 2020b).豆腐,納豆,煮豆,味噌について動態解析の報告がある(丹治・関澤 2012Hachinohe et al. 2013).

豆腐は原料大豆を浸漬後,加水して摩砕したものを搾り,おからと豆乳に分け,豆乳ににがりなどの凝固剤を加えて固めて作られる.おから,豆乳,豆腐のFr はそれぞれ 0.3,0.7,0.7 であり,豆乳から豆腐加工においては放射性セシウムの除去効果はない.製法の違いにより複数種類の豆腐が存在するが,豆腐加工での放射性セシウムの Pf は,充填豆腐と絹ごし豆腐で 0.1,木綿豆腐で 0.2 であった.さらに,湯豆腐のように湯中に浸漬した場合,豆腐に含まれる約 30%の放射性セシウムが湯中へと移行(80 ℃,50 分)することも確認されている(Yoshida et al. 2020).

納豆は浸漬大豆を蒸煮したのち,納豆菌を接種し発酵させることにより製造される.蒸煮処理時に排水中に放射性セシウムが移行し,蒸煮大豆の Fr は 0.8.発酵による放射性セシウムの除去効果はなく,納豆の Fr も 0.8 であった.原料大豆は浸漬や蒸煮により重量が増加するため,納豆加工での放射性セシウムのPf は 0.4 であった.煮豆,および味噌の Pf は,それぞれ 0.2 と 0.3 と報告さ れている.

豆腐,納豆,煮豆,味噌加工に関しては,原料大豆の放射性セシウム濃度が基準値以下であれば,加工品が基準値を超過することはないことが確認されている.

3)肉類

牛肉(鍋師ら 2013a 鍋師ら 2013b 鍋師ら 2016Sato et al. 2019),野生獣肉(シカ,イノシシ)(Hachinohe et al. 2020)に関する報告がある.焼き調理による Pf は,牛肉(内モモ,ランプ)で 1.1,イノシシ肉(モモ)1.2,イノシシ肉(背ロース)1.3,シカ肉(モモ)1.3,となり,動物種による大きな差はないが,焼き調理により調理前よりも放射性セシウム濃度は上昇することが示された(表 5).焼き調理と同様に,揚げ調理と乾燥加工によっても放射性セシウムが上昇することが牛肉で確認されている(表 4).

一方,茹で調理と蒸し調理,煮調理では放射性セシウム濃度は調理前より低下する.牛肉の茹で調理において詳細な解析がなされており,肉厚がより薄く,茹で時間がより長いほど放射性セシウムの低減効果が高い(Sato et al. 2019)(表 4). 肉類には様々な調理方法が用いられるが,調理により放射性セシウム濃度を高めないためには,焼き調理ではなく,茹で調理や蒸し調理,煮調理を用いることが薦められる.

4)山菜・キノコ類

野生の山菜やキノコ類は,各地域で伝統的に継承されてきた伝統的な食文化との関連性が高く,食文化の保護・継承にとって重要な食材である(農林水産省 2015).しかし,栽培/飼養管理が可能な品目群(3.参照)よりも食品中の放射性物質検査において基準値超過割合が高く,これらは栽培/飼養管理が困難な品目群や原木きのこ類として,現在も全検査対象自治体(17 都県)において重点的に検査が実施されている.さらにいまだ出荷規制や摂取制限が解除されていない品目や地域もある(厚生労働省 2020a).

ワラビやゼンマイは調理前にあく抜きが必要である.重曹(0.4 % w/w)を用いたあく抜きの Pf はワラビが 0.09,ゼンマイが 0.3 であった( 鍋師ら 2016 清野, 赤間 2019)また,山菜は長期保存のため塩漬加工が用いられるが,塩漬け後水さらしにより塩抜きを行った場合の Pf はワラビとゼンマイで 0.02,コシアブラで 0.1 であった.天ぷら調理の Pf は,コシアブラが 0.6 と 0.2(137Cs のみ評価),タラの芽が 0.5 と 0.1(137Cs のみ評価)であった.山菜の天ぷら調理では揚げ油への放射性セシウムの移行はほとんどなく,衣をつけることによる全体重量増加の影響により放射性セシウム濃度が低下した.つける衣の質量によって濃度低下割合が異なると考えられる.キノコ類はシイタケに関する報告がある(鍋師ら 2013a).干しシイタケの水戻しでは,水中へ干しシイタケ中の放射性セシウムの約 50%が移行するとともに,シイタケの重量は加水によりおよそ 6 倍に増加する.このことから,干しシイタケの水戻しによる Pf は 0.08 となり,濃度が大幅に低下する.一方,焼き調理の Pf は 1.2 となり調理前より濃度が上昇する(表 4).肉類同様に,焼き調理では濃度が上昇する報告があるため注意が必要であるが,あく抜きや塩漬け,天ぷら調理は放射性セシウム濃度が低下することから,原料濃度が基準値以下であることが確認できていれば,喫食時に基準値超過することはないと考えられる.

最後に

平成 23 年 3 月の TEPCO-FDNPP 事故以降,食品中の放射性セシウム摂取量を低く抑えるための加工・調理について消費者および食品製造業者の関心は高く,事故から約 9 年の間に日本独自の加工・調理過程での放射性セシウムの動態に関して,多くの研究がなされてきた.本稿では,それら農産物の加工・調理による放射性セシウムの低減効果に関する研究成果の一部を紹介した.ここに示す内容の一部は,食品の放射性物質移行低減技術に関するパンフレットとして,広く国内外の消費者へと情報発信も行っている.消費者にとって本稿が農畜産物の放射性セシウム汚染について正しく理解するための一助となれば幸いである.

謝辞

この報告には,福島県職員の皆様など,農研機構外の機関の方々の研究成果についても引用させて頂きました.また,調査にご協力頂いた生産者の皆様に心より感謝いたします.本研究の一部は,農林水産省委託プロジェクト「高濃度汚染地域における農地土壌除染技術体系の構築・実証(果樹園・茶園の除染技術)」,「農作物に対応した放射性物質移行低減対策技術の開発(果樹・茶における放射性セシウム移行要因の解明および移行低減対策技術の開発)」,「農地等の放射性物質の除去・低減技術の開発(出荷拡大に向けた果樹生産技術の開発)」,「営農再開のための放射性物質対策技術の開発(農地への放射性セシウム流入防止技術の開発)」の助成を得て実施しました.

利益相反の有無

著者は本論文に関して開示すべき利益相反はない.

引用文献
 
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