Japan Pension Review
Online ISSN : 2189-969X
ISSN-L : 2189-969X
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Ken Sugita
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2024 Volume 23 Pages 1-27

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Abstract

 本稿はパナマにおける年金制度の現状と課題を論じるものである 。 パナマの年金制度は 、 公的年金 、 職域毎の強制加入の私的年金 、 およ び任意加入の私的年金からなる 。 公的年金は非拠出制と拠出制に分か れる 。 非拠出制の公的年金は貧困層を対象とした全額国庫負担の老齢 社会年金である 。 拠出制の公的年金は 、 2007 年までは確定給付型の賦 課方式制度であったが 、 2005 年の法改正で 2008 年から一部確定拠出 制度が導入され 、 結果として確定給付型と確定拠出型の二層構造にな っている 。 この制度の最大の問題は 、 移行時の 35 歳以上の者および受 給者を擁する旧制度への移行資金が不十分であり 、 新規加入者がいな いので拠出が減少する一方で給付は増大しつつあり 、 早ければ 2024 年 に資産が枯渇すると見込まれている点である 。 「二重の負担」を甘く見 たつけが回っていると言えよう 。 国家財政への負担増大のためパナマ に対する格付け会社の評価も低い 。 公的年金に確定拠出制度を導入し た国々の過半数が確定拠出制度を廃止・縮小したなかでパナマが確定 拠出制度を継続している理由は 、 確定拠出制度導入から時間がたって いないこと 、 確定拠出制度が公的機関によって運営されていること 、 政治のリーダーシップが弱いことが挙げられる 。  職域単位の強制加入の私的年金は統一的に監督されておらず 、 給付 水準もまちまちである 。 公務員の職域年金は 、 公的年金の上乗せとし て給与の 2% の拠出金を原資とする確定拠出制度である 。 任意の私的 年金は 、 確定拠出制度でファンド選択が可能である 。

WEB Journal『年金研究』No. 23

パナマの年金制度の現状と課題

杉田 健 

公益財団法人年金シニアプラン総合研究機構 特任研究員 

【 記 事 情 報 】

掲載誌:年金研究  No. 23 pp.1-27 ISSN 2189-969X

オンライン掲載日:2024年7月9日

掲載ホームページ: https://www.nensoken.or.jp/publication/nenkinkenkyu/

論文受理日:2024年1月25日 論文採択日:2024年3月26日

DOI:https://doi.org/10.20739/nenkinkenkyu.23.0_1

要旨

 本稿はパナマにおける年金制度の現状と課題を論じるものである。パナマの年金制度は、公的年金、職域毎の強制加入の私的年金、および任意加入の私的年金からなる。公的年金は非拠出制と拠出制に分かれる。非拠出制の公的年金は貧困層を対象とした全額国庫負担の老齢社会年金である。拠出制の公的年金は、2007年までは確定給付型の賦課方式制度であったが、2005年の法改正で2008年から一部確定拠出制度が導入され、結果として確定給付型と確定拠出型の二層構造になっている。この制度の最大の問題は、移行時の35歳以上の者および受給者を擁する旧制度への移行資金が不十分であり、新規加入者がいないので拠出が減少する一方で給付は増大しつつあり、早ければ2024年に資産が枯渇すると見込まれている点である。「二重の負担」を甘く見たつけが回っていると言えよう。国家財政への負担増大のためパナマに対する格付け会社の評価も低い。公的年金に確定拠出制度を導入した国々の過半数が確定拠出制度を廃止・縮小したなかでパナマが確定拠出制度を継続している理由は、確定拠出制度導入から時間がたっていないこと、確定拠出制度が公的機関によって運営されていること、政治のリーダーシップが弱いことが挙げられる。

職域単位の強制加入の私的年金は統一的に監督されておらず、給付水準もまちまちである。公務員の職域年金は、公的年金の上乗せとして給与の2%の拠出金を原資とする確定拠出制度である。任意の私的年金は、確定拠出制度でファンド選択が可能である。

1 はじめに

 本稿の目的は、公的年金の一部に確定拠出制度を導入したパナマの年金制度の現状と課題を報告するものである。パナマの年金制度は、公的年金、職域毎の強制加入の私的年金、および任意加入の私的年金からなる。公的年金は非拠出制と拠出制の制度がある。非拠出制の公的年金は貧困層を対象とした全額国庫負担の老齢社会年金である。拠出制の公的年金は、2007年までは確定給付型の賦課方式制度であったが、2005年の法改正で2008年から一部確定拠出制度が導入され、公的年金は確定給付型と確定拠出型の二層構造になっている。本稿ではパナマが公的年金で確定拠出制度を継続している理由も考察する。というのは、1981年から2014年の間に世界31カ国が世界銀行等の助言もあり公的年金の全部または一部に確定拠出制度を導入したが、しばらくして添付資料1に掲げるように18カ国は全面的または一部廃止し(Ortiz et al.(2018))、また確定拠出制度を続けている国でもチリのように確定給付部分を拡充させた国もあるからである(杉田(2022), pp. 216-217)。

 研究に当たっては、先行研究を踏まえて、国際機関やパナマの年金制度の監督機関のウェブサイトおよび関連法令を参照した。パナマの年金制度に関する先行研究としては、年金シニアプラン総合研究機構(2019)の中にパナマの年金制度について前記二層構造を含めた解説があり、またパナマ出身で日本の大学で教鞭をとっているロドリゲス(2020)はパナマの年金制度の経緯から初めて新型コロナウィルスの影響まで記述している。ラテンアメリカの貯蓄型年金制度を扱ったMesa-Lago et al.(2022) の中でもパナマの制度と課題について簡潔に触れており、またパナマ大学の研究者たちによるChávez et al.(2021) は制度の分析と課題を詳しく記述している。その他、ILO(2022)、IOPS(2011)、USSSA(2019) のレポートをはじめ1、公的年金を管理するパナマの社会保障基金(Caja de Seguro Social, CSS)、公務員積立年金制度(Sistema de Ahorro y Capitalización de Pensiones de los Servidores Públicos, SIACAP)および任意の私的年金を管轄する証券市場監督局(Superintendencia del Mercado de Valores de Panamá , SMV)のウェブサイトならびに法令を参照した2

 本稿の構成であるが、次の第2節で背景となる政治・経済の基本情報を述べ、第3節で年金制度の歴史を述べ、第4節で公的年金、第5節で強制加入の私的年金を、第6節で任意加入の私的年金を解説し、第7節で課題を挙げ、第8節でまとめるともに確定拠出制度を継続している理由も考察する。

2 パナマの基本情報

 パナマは中米に位置し、75,517km2であり3、北海道(83,450 km²)よりやや小さい4。人口は世界銀行によると2021年で4,351,267人である。その他の基礎的なデータは以下のとおりである。

表1 パナマの基礎データ

項目 内容
国名 パナマ共和国
首都 パナマシティー
政体 立憲共和制(大統領制)、一院制(定員71名)
人口密度 58人/km2(2021年、人口と面積から算出)
65歳以上人口の比率 全人口の9%(2021年、世界銀行)
平均寿命 76歳(2021年、世界銀行)
合計特殊出生率 2.3人(2020年、世界銀行)
乳児死亡率(1年未満) 12人(1000人中、2021年、世界銀行)
民族 混血70%、先住民7% ほか
宗教 カトリック
言語 スペイン語
通貨 バルボア(硬貨のみ)、米ドル(1バルボア=1米ドル)
国内総生産(GDP) 636億米ドル(2021年、世界銀行)
産業別GDP サービス業66%、鉱工業28%、農業3%(2021年、世界銀行)
産業別就業人口 サービス業68%、鉱工業17%、農業16%(2021年、世界銀行)
インフレ率 2.9%(年率、2022年、世界銀行)
失業率 8.8%(2022年、世界銀行)
平均月額賃金 1,279米ドル(2021年)5
貿易

輸出:36.5億ドル、輸入:152.3億ドル(2022年、パナマ会計検査院)

輸出の主要相手国:中国、日本、韓国、インド、ドイツ

輸入の主要相手国:米国、中国、メキシコ、コスタリカ、コロンビア

予算(2023年)6 歳入:25,385百万米ドル、歳出:27,579百万米ドル
外貨準備 62億米ドル(2023年3月)7

出所:特に記載していない場合は外務省ウェブサイト8

パナマの政治史は以下のとおりであり、独立後ノリエガ将軍が国軍最高司令官の時に、米国の軍事介入を招き、パナマ国防軍(las Fuerzas de Defensa de Panamá)は解体され軍事独裁政権は終了した。その後、再編されたパナマ共和国軍(Las Fuerzas Públicas de Panamá)が国防の任に当たっている。軍事独裁政権終了後、1990年代に選挙が再開されると、従来のリベラル政党と保守政党がより多様なグループに取って代わられ、連立政権の樹立がしばしば必要となった9

表2 パナマの政治略史

略史
1501年 スペイン人バスティーダ、パナマ地峡発見
1821年 大コロンビアの一州としてスペインより独立
1903年 コロンビアより分離独立
1914年 米国、パナマ運河完成
1968年 トリホス将軍、クーデターにより実権掌握
1978年 ロヨ大統領就任、民政移管
1983年 ノリエガ将軍が国軍最高司令官に就任
1989年 米国の軍事侵攻、ノリエガ将軍逮捕、エンダラ政権発足
1999年 モスコソ大統領就任、パナマ運河返還、米軍完全撤退
2004年 トリホス大統領就任(故トリホス将軍の実息)
2009年 マルティネリ大統領就任
2014年 バレーラ大統領就任
2019年 コルティソ大統領就任

出所:外務省ウェブサイトを転載10

 新型コロナウィルス感染症のパンデミックの前の10年6か月の間は、建設と投資ブームにより、実質 GDP は年間 6% 成長し、貧困は急激に減少し、所得水準は急速に先進国の水準に近づいた(IMF(2023a))。しかしながら、2020年3月9日に国内で初めて新型コロナウィルスの陽性反応が確認され、3月14日に外出禁止令が出されると、パナマの経済活動は事実上停止状態となり、労働契約の停止が認められると所得税・社会保険料の納付が減少した(ロドリゲス(2020))。具体的数値を挙げると、社会保障基金(CSS)の2020年1月から4月までの収入の減少度合いは、対予算比で1月は6%、2月は13%、3月は19%、4月は36%減となった11。しかし、その後パンデミックが終息すると経済は順調に回復し、2021 年の生産量は 15% 増加し、2022 年には 9% 増加すると予測されている。雇用は力強く回復したが、インフレ率は他国と比較して低水準のままである(IMF(2023a))。

 最近の政情は必ずしも安定していない。2023年10月20日、議会がカナダの会社ファースト・クアンタム・ミネラルズ(FQM)に露天掘り鉱山を40年間運営することを許可する法律を承認し、同日夜にコルティソ大統領が公布したことをきっかけに、環境への影響や契約締結プロセスの不透明性などを理由に、国内での異例の抗議運動が行われ、毎日数千人のパナマ人が参加し、首都や国内のいくつかの州で道路封鎖が行われ、教師、医師、労働者、運送業者、その他の組合による労働停止が行われ、授業は一週間中止された。暴力行為などにより全国で約500人の逮捕が記録されている12

3 パナマの年金制度の歴史

 パナマの社会保障は1916年の労災に関する法律に始まるが、1924年には一部の者に対して老齢年金が制度化され、徐々に適用が拡大され、1941年に年金も含む包括的な社会保障制度ができた(Valera de Chincilla, 2018)。1990年代、パナマの年金制度に関する拠出と給付の間の根本的な不均衡が報告され、2000年代初頭までに、年金資産は減少し始め、2013年までに枯渇すると予測されていた。2001年に当時のミレヤ・モスコーソ大統領が呼びかけた全国対話は、雇用主が拠出率の引き上げと受給資格の厳格化を求め、労働者が既存の福利厚生を擁護したため、変更に関する合意には至らなかった。2004 年、マルティン・トリホス大統領の新政権は、制度の数理上の不均衡に対処するために制度のパラメータの変更を策定し、2005 年 6 月に議会で可決されたものの、国民の強い反対のために、この法案は実施されなかった。トリホス大統領は市民との新たな国民対話を開始し、5か月にわたる協議プロセスを経て、確定拠出制度の一部導入を盛り込んだ改正社会保障基金基本法(2005年12月7日法律第51号、以下「法」と略する)が議会で可決され13、2008年1月1日が施行日とされた(Schipke(2007))。なお、これとは別に、2009年に非拠出制の老齢社会年金が導入された(Almanza(2019), p. 7)。

4 パナマの公的年金の内容

4.1 制度の概要

 パナマの公的年金は拠出制度と、貧困層対象の非拠出の老齢社会年金制度が存在する。拠出制度は社会保障基金が保険料を集め14、管理運営監督し、非拠出の老齢社会年金制度は社会開発省(Ministerio de Desarrollo Social, MIDES)が管理している(USSSA(2019))。

4.2 非拠出の老齢社会年金

 非拠出の老齢社会年金が導入されたのは2009年で「70歳で100バルボア」という名称の制度だったが、2014年9月1日に改正されて「65歳で120バルボア」(B./120.00 a los 65)という名称になった(Almanza(2014), p.7)。社会的リスク、脆弱性、社会的疎外、または貧困の状況にあり、退職金も年金も受けていない 65 歳以上の者に月120バルボアが支給される制度であり、費用は全額国庫負担である(改正法2条)。貧困が集中している先住民地域や農村部では加入率が高く、極度の貧困層を減らすことに貢献したと推定されている(Mesa-Lago(2022))。

4.3 拠出制制度

4.3.1 加入

 拠出制制度は、パナマ国内で働くすべての国内労働者または外国人労働者(被用者のみならず自営業者も含む)が加入する必要がある。年金制度は確定給付限定制度(Subsistema Exclusivo de Beneficio Definido、SEBD)および混合制度(Subsistema Mixto、SM)の2つからなり、以下の区分に従って加入する(ILO(2022), p. 21)。

表3  確定給付限定制度または混合制度の加入区分

対象 確定給付限定制度 混合制度
老齢、障害、遺族年金受給者  制度変更日(2008年1月1日)時点の受給者および、確定給付限定制度から発生した受給者 制度変更日(2008年1月1日)以降に混合制度から発生した受給者

社会保障基金のメンバー

(2006年1月1日現在の年齢)

35歳超の者および、2007年12月31日以前に混合制度を選択しなかった35歳以下の人々 35歳以下で、2007年12月31日より前に混合制度を選択した加入者
2006年1月1日から2007年12月31日までの間に初めて社会保障基金に加入した新規労働者 混合制度を選択しなかった者 混合制度を選択した者
2008年1月1日から初めて社会保障基金に加入する者 強制適用

出所:ILO(2022), p. 21および法151条および152条。

4.3.2 費用負担

 費用負担は、被用者は月収の9.25%および13か月目の月収の7.25%15、事業主は月収の4.25%および13か月目の月収の10.75%であり、自営業の場合は月収とみなされる額の年額の13.5%を拠出する(法153条)。混合制度の場合、月収の500バルボアまでに対する拠出金は社会保険に充当される。500バルボア超に対する拠出金13.5%(内訳:被用者分9.25%と事業主分4.25%の合計)のうち3.5%相当は連帯拠出(内訳:1%は団体保険の購入に充てられ2.5%は社会保険に充当)、残りの10%が確定拠出制度に充当される(法154条)。団体保険の保険料1%の内訳は、団体終身年金保険が0.93%、団体障害年金保険が0.07%である16。確定拠出制度の個人勘定の資金は合同運用されるので17、個人に運用の裁量権はない。確定給付限定制度の拠出金が入る社会保険と、混合制度の拠出金の一部が入る社会保険は、制度としては同一であるが、勘定は分離されている(法157条)。以上を図にすると概略以下のとおりとなる:

図1 拠出金配分の概念図

出所:法令を基に筆者が作成。

 確定給付限定制度は新規加入者を受け入れていないので、いずれ資産が枯渇する。そこで信託(fideicomiso)が設立され(法212条)、以下の金額を国庫負担することになっている(法213条)。この表4の額はGDPの0.2%~0.3%である(ILO(2022), p. 25)。社会保障基金は確定給付限定制度の収支にマイナスが生じた場合に、この信託に必要が金額を請求する(法214条)。

表4 信託への国庫負担

国庫負担額
2007,2008,2009 毎年75百万バルボア
2010,2011,2012 毎年100百万バルボア
2013~ 毎年140百万バルボア

出所:法213条を基に、筆者作成。

 もっとも、この信託は使い勝手が悪く、新型コロナウィルスによる年金財政逼迫時に役に立たなかった(ロドリゲス(2020))。というのは、この信託から資金を拠出するには、社会保障基金の会計監査を受けた財務諸表が必要とされているが、コロナ渦中で会計検査庁による監査に数か月かかると考えられており直ちに信託を利用できなかった。そこで社会保障基金関連の法改正で信託の利用要件を緩和しようにも、パナマ議会は会期延長中であり、会期延長中はあらかじめ特定された法案の審議しかできないという憲法の定めになっていた。

4.3.3 社会保険制度の給付

(1) 老齢給付

 老齢給付には老齢年金と老齢補償(一時金)があり、海外在住者でも支給される。老齢年金には普通年金、繰上げ年金、比例年金、比例繰上げ年金があり、支給開始年齢と支給要件は以下のとおりである。なお、以下の説明において、男子62歳、女子57歳を「基準年齢」と定義して記述する(法170条)。

表5 老齢給付の支給要件

給付種類 支給開始年齢 拠出要件
普通年金 基準年齢以上 240か月
繰上げ年金 男子60歳~61歳、女子55歳~56歳 240か月
比例年金 基準年齢以上 180か月~239か月
比例繰上げ年金 男子60歳~61歳、女子55歳~56歳 180か月~239か月
老齢補償 基準年齢以上 179か月以下

出所:法170条、171条およびILO(2022) をもとに筆者作成。

 拠出は男女とも70歳まで可能で、その年齢までは拠出に応じて年金額が増額される(法168条)。なお、季節農業従事者および建設労働者については240か月ではなく120か月であり、自営業者の拠出要件はない。給付額は、給付基準給与を拠出期間中の最高の10年間の平均給与月額として(法169条)、以下の表6のとおりとなる。なお、混合制度の場合は、平均を算出する対象の給与月額の上限が500バルボアである(法195条)。

表6 老齢給付の年金月額

給付種類 年金月額
普通年金 毎月の給付基準給与の60%に、拠出期間が240か月を超える場合は基準年齢以前なら給付基準給与の1.25% 、基準年齢を超える場合は給付基準給与の2%を加算して累積する
繰上げ年金 毎月の給付基準給与の60%に、拠出期間が240か月を超える場合は給付基準給与の1.25%を加えて累積し、 0.9128(61歳)または0.8342(60歳)を乗じた額
比例年金 毎月の給付基準給与の60%に実質拠出回数/240回乗じた額
比例繰上げ年金 毎月の給付基準給与の60%に繰上げ年金おび比例年金の割引を乗じた額
老齢補償 6か月の保険料拠出ごとに1か月分の保険料が一時金として支給される

出所:法170条、171条およびILO(2022) をもとに筆者作成。

 この他に家族加算があり、年金受給者に配偶者がある場合、年金受給者に一定の条件を満たした同居のパートナーがいる場合に20バルボアが加算され、子が14歳未満または18歳未満で学生である場合、または障害があり受給者に経済的に依存している場合は、子供一人当たり10バルボアが加算される(法176条)。家族加算の合計額の上限は100バルボアである。家族加算と月額の年金の合計額が、給付基準給与の100%を超えることはできない(法176条)。年金額は最低額と最高額がある(それぞれ法177条、178条)。混合制度の場合の年金の最高額は月額500バルボアである(法197条)。

 バナナ会社や独立バナナ生産者における肉体労働を伴う労務の提供は、労働者の健康にとってリスクの高い活動であると考えられており、2017年の改正でバナナ生産に携わる労働者についての優遇規定が追加された(法168条のA)。すなわち、男子58歳、女子54歳に達し、少なくとも18年間当該労務に従事し、216回以上拠出をしている場合は、給付基準給与の80%に加えて216回の拠出を超える拠出回数12回ごとに給付基準給与の2%を加算した額の年金を支給することとなっている(法170条のA)。

(2) 障害給付

 労災以外で、医療資格委員会が定める基準以上の障害の場合、以下の年齢・拠出要件のもとに障害給付が支給される(法159条)。なお、労災の場合は労災保険(Seguro de Riesgos Profesionales)で補償される(法160条1項)。

表7 障害給付の支給要件

給付種類 年齢 拠出要件
障害年金 30歳以下 36回以上の拠出、そのうち18回は申請直前の36か月以内
31歳から40歳まで 48回以上の拠出、そのうち24回は申請直前の48か月以内
41歳から基準年齢まで 60回以上の拠出、そのうち30回は申請直前の60か月以内
基準年齢未満 240回以上
障害補償 30歳以下 36回未満で、過去12か月間に少なくとも6回の支払いがある
31歳から40歳まで 48回未満で、過去16か月間に少なくとも8回の支払いがある
41歳から基準年齢まで 60回未満で、過去20か月間に少なくとも10回の支払いがある
基準年齢を超えている 老齢給付を受け取る権利がない18

出所:法159条、165条をもとに筆者作成。

 給付額は、老齢給付同様に給付基準給与を拠出期間中の最高の10年間の平均給与月額として(法169条)、以下のとおりとなる。

表8 障害給付の年金月額

給付種類 年金月額
障害年金 毎月の給付基準給与の60%に、拠出期間が240か月を超える場合は12か月ごとに給付基準給与の1.25%を加算した額
障害補償 6か月の保険料拠出ごとに1か月分が一時金として支給される

出所:法162条、164条をもとに筆者作成。

 年金額の最低額と最高額、家族手当、バナナ生産労働者の扱いは老齢給付と同じである(それぞれ法177条、178条、176条、161条のA)。

 混合制度の場合の障害年金の最高額も老齢年金と同じく月額500バルボアである(法197条)。

(3) 遺族給付

 受給者または被保険者が労災以外の原因で死亡の場合の遺族年金は以下のとおりである。

表9 遺族給付の支給要件

給付種類 年齢 拠出要件
遺族年金 孤児の場合は、18歳未満または障害を負っている場合。その他の受給者(寡婦または父母)に年齢制限はない 死亡した被保険者が少なくとも36か月の保険料を拠出しており、過去36か月間に少なくとも18か月の保険料を拠出している場合
被保険者が死亡した日において、到達した年齢にかかわらず、老齢年金の受給資格を満たす拠出回数に達していた場合
老齢年金または障害年金の受給者が死亡した場合
遺族補償 36回未満で、過去12か月間に少なくとも6回の支払いがある
葬祭料 被保険者または受給者の葬儀費用の負担が証明できること

出所:法179条~187条をもとに筆者作成。

支給額は以下のとおりである。

表10 遺族給付の支給額

給付種類 支給対象 給付額
遺族年金 寡婦 故人が受給していた老齢年金または障害年金の50%相当。支給期間は原則として個人の死亡時から5年間だが、一定の要件を満たすと終身支給される
孤児 故人が受給していた老齢年金または障害年金の20%相当(両親とも死亡の場合は50%)が18歳までまたは障害が続く限り支給される
父母 働くことができない、または60代である母親または父親の年金は、故人の年金の30%
給付種類 支給対象 給付額
遺族補償 6か月の保険料拠出に対して1か月分が一時金として支払われる
葬祭料 理事会が金額を設定(現状300バルボア)

出所:法179条~187条をもとに筆者作成。

遺族年金の合計額は、故人が受給中または受給資格を持っていた社会保険の老齢年金または障害年金の100%が上限となる。遺族年金額は経済状況に基づいて適宜調整される。

4.3.4 個人勘定制度(確定拠出制度)の給付

(1) 老齢給付

 確定拠出制度の老齢給付は老齢年金と老齢補償(一時金)からなる。老齢年金は、混合制度の社会保険部分で定められた確定給付の老齢年金の支給要件を満たしている限り、個人勘定に基づき決定した老齢年金を請求する権利を有する。なお、自営業者の場合拠出回数の要件はない(法198条)。老齢補償は老齢年金を取得するための要件を満たしていない被保険者が基準年齢に達した時点で請求できる(法201条)。支給額は以下のとおりである。

表11 老齢給付(確定拠出)の支給月額

給付種類 給付額 支給期間
老齢年金 個人勘定残高の元本と利息合計額から平均余命を考慮して年金月額を算出 終身(個人勘定残高がなくなった場合、団体保険により年金が支給される)
老齢補償 個人勘定残高 一時金

出所:法199条~201条をもとに筆者作成。

(2) 障害給付

 確定拠出制度の障害年金の支給要件は社会保険の障害年金と同じであり(法202条)、被保険者の口座残高と平均余命を反映して計算された年金月額が支給される。社会保険と確定拠出制度の障害年金を合算した額が、旧社会保険制度の下での障害年金の受給額より少ない場合は、団体保険が差額を支払う(法203条)。

 確定拠出制度の障害補償は、障害者であると宣言され、社会保険の障害年金を受け取るための拠出金の要件を満たしていない場合に、個人勘定残高が、一時金として支給される(法204条)。

(3) 遺族給付

 未亡人またはパートナー、18歳未満または障害を持つ子、これらの者がいない場合は、母親および/または父親、または未成年の兄弟、該当者がいない場合に被保険者は1人以上のものを相続人として指定でき、指定相続人がいない場合は司法当局が相続人を決定する(法205条)。給付額は個人勘定残高を基に計算させる(法206条)。

4.3.5 資産運用

 2018年現在、社会保障基金の運用は以下の規制に従って運用されている。

表12 社会保障基金の運用規制

資産種類 資産配分上限 その他の規制
国の経済発展と社会の進歩を目的とした政府保証付き公共投資 25% プロジェクトの債務の20%以下
国の発展促進のための第二層銀行の融資19 15% 銀行または銀行グループの負債の5%以下
独自のサービスのための動産および不動産 特になし
国営銀行の定期預金 特になし
国内外の民間銀行の定期預金 25% 当該銀行の準備金の5%以下
住宅ローン担保証券 5% 発行額の20%以下
社債 15% 発行額の20%以下または債務者の総負債の5%以下
政府保証債 50%
国際金融機関債 10% 発行額の20%以下
被保険者、年金受給者および退職者に対する直接的および間接的な融資 20%
被保険者、年金受給者および退職者に対する住宅の取得または建設のための、住宅ローンおよび汚職防止保証付きの直接融資 15%

出所:CSS(2020), p. 14の表をもとに法106条~108条を参照し筆者加筆・修正。

4.3.6 統計

 2018年現在、運用資産は79億2200万バルボア、年金支給額は57億600万バルボア、加入者は1,211,234人である(Valera de Chincilla, 2018)。

5 強制加入の私的年金

 すべての職域に強制加入の私的年金があるわけではないが、公務員には公務員積立年金制度(SIACAP)があり、またパナマ共和国軍・消防士・教育者および社会開発省には別の制度がある(Mesa-Lago(2022), pp. 269-270)。特にパナマ共和国軍幹部には非拠出の高額の年金制度がある(Chávez et al.(2021), p. 27)。以下では、情報が比較的公開されている公務員積立年金制度に限定して述べる。

 公務員について、1975年3月31日の法律第16号で、給与の2%を財源として、公的年金と併せて給与の100%を年金として受け取れるように「社会給付のための補完基金」(Fondo Complementario de Prestaciones Sociales)ができた。しかし、1996 年に4,900 万バルボアの累積赤字を計上して財政的に行き詰まり、政府は公的年金と併せて給与の 100% の年金を支給することをあきらめ、給与の2%を財源とする確定拠出制度を1997 年法律第 8 号(以下、SIACAP法と呼ぶ)で導入した(IOPS(2011))20

5.1 対象範囲

公務員は 2002年1月1日以降に採用された者についてSIACAPへの加入が義務付けられている(SIACAP法1条、2条)。

5.2 拠出金

公務員は給与の 2% を拠出し、政府は0.3% を拠出する。 拠出金は各公務員の個人口座に入金される。この「給与」には勤続による恒久的な昇給の他に残業代、ボーナスも含まれる(SIACAP法2条)。

5.3 給付金

 年金の受給権は、28年勤務して男子55歳、女子52歳で発生し(SIACAP法22条)、公的年金と同じ支給開始年齢(男子62歳、女子57歳)または繰上げ年金として男子は55歳、女子は50歳から支給できる(IOPS(2011))。年金月額は、個人勘定残高、平均余命および割引率を考慮して計算した額であり、その他に残高を原資に終身年金保険を購入することや、残高を一定の年数に渡り分割して払出すことも可能である(SIACAP法5条)。年金額のスライドはない(IOPS(2011))。

 公務員が退職しても年金の受給資格を満たさない場合は、個人は取引可能加入者証(Certificado de Participación Negociable, CERPAN)をSIACAPに請求でき(2001年法律29号)、これを金融機関に買取ってもらう等の手段で換金できる21

5.4 制度の管理運営

 公務員積立年金制度の運営は、パナマ国立銀行、計画経済政策省、財務省の代表の他、公務員代表等から構成される管理評議会(Consejo de Administración)が統括する(SIACAP法7条)。管理評議会は事務局長を任命し(SIACAP法9条)、口座事務および支払い事務を行う登録支払会社(empresa registradora-pagadora)を1社、および資産運用会社(entidades administradoras de inversiones)を1社以上選定する(SIACAP法8条)。会員は 12 か月に 1 回、提携を希望する資産運用会社を選択することができる(1997年大統領令27号76条)。SIACAPのウェブサイトによると22、登録支払会社はプロフトゥーロ年金退職金基金管理会社(Profuturo – Administradora de Funds de Pensiones y Censantías SA)のみであり、資産運用会社はアリアド銀行とジュネーブ・アセットマネジメントのコンソーシアム(Consorcio Aliados: Sociedad Accidental Compuesta por Banco Aliado y Geneva Asset Management, S.A.)およびムルチ銀行とムルチ証券のコンソーシアム(Consorcio Multibank/Multi Securities)の2社である。

5.5 統計

 2023年10月31日現在で、加入者、受給者、受給待期者併せて570,948名で、このうち加入者(拠出している者)は183,313名である。2023年10月の拠出金額は6,810,065バルボアで、このうち政府拠出は769,943バルボアである。2023年10月31日現在の資産額は8億6010万バルボアで、内訳は国債に3億2640万バルボア、銀行債に3億9730バルボア、事業会社の社債に1億2630万バルボア、株式に200万バルボア投資している(SIACAP(2023))。

6 任意の私的年金

6.1 制度の概要

 任意の私的年金は、1993年4月16日公布の法律第10号により枠組みが作られた確定拠出年金制度である23。年金基金を雇用主または個人が設定することができる。監督は、証券市場監督局(SMV)である。税制優遇を受けるためには制度加入後原則として10年間は残高を引き出すことができないなど、いくつかの条件を満たす必要がある。年間総収入の最大10%まで、最高額15,000米ドルまでは拠出金が税制優遇される24。残高の引出しは一時金、計画的引出しおよび年金購入の手段があるが、2020年の統計では77,836百万バルボアの引出し額のうち、一時金が75,938百万バルボア、計画的引出しが1,898百万バルボアで、年金は皆無だった(SMV(2021))。

6.2 AFP

 年金基金の運営管理事務を行うのは年金基金管理会社(Administradora de Fondo de Pensiones、AFP)である。AFPは現在4社であり、プロフトゥーロ社(ProFuturo, Administradora de Fondos de Pensiones y Cesantía, S.A.、ProFuturo)、プログレソ社(Progreso AFPC,S.A.、Progreso)、クワンティア社(QUANTIA AFP, CORP、Quantia)、およびプロクレセール社(PROCRECER AFPC, S.A.、Procrecer)である。以下の統計を見ると、加入者数は合計78,020名であり、拠出制の公的年金の加入者数が100万人を超えていることを考えると、任意の私的年金に加入している者は勤労者のうち少数であることがわかる。

表13 パナマのAFP

AFP 業務開始時期

加入者数

(人)

資産額 (百万バルボア)
ProFuturo 1996年1月4日 57,055 471,953
Progreso 1998年2月18日 20,448 227,335
Quantia 2018年11月1日 494 9,248
Procrecer 2023年6月15日 23
合計 78,020 708,536

出所:証券市場監督局のウェブサイト(https://supervalores.

gob.pa/estadisticas-sector-pensiones-sp/、2024年1月5日閲覧)。加入者数と資産額は2023年11月時点のデータ。

AFPの管理するファンド毎の収益率は以下のとおりである。

表14 AFPの管理するファンド毎の収益率

会社 ファンド名 11月の収益率(年率換算、%) 過去12か月の収益率(%)
ProFuturo PROVISION 10.07 5.04
PROAHORRO 5.01 4.90
PROINVERSION 103.92 9.91
PROCAPITAL 0.00 0.00
PRORENTA 6.13 2.53
Progreso BASIC 10.07 5.53
STAR 5.01 4.66
PLUS 103.82 7.16
PROGRESO PLUS 0.00 8.77
CITI BANK 6.13 4.53
Quantia QUANTIA 1.24 3.83
Procrecer CRECER BALANCEADO 6.14 0.00
CRECER SEGURO 0.00 0.00
CRECER MAX 0.00 0.00

出所:証券市場監督局のウェブサイト(https://supervalores.gob.pa

/estadisticas-sector-pensiones-sp/、2024年1月5日閲覧)。

7 最近の論議や検討の動向・課題

7.1 確定給付限定制度の資金枯渇のおそれ

IMFの2023年3月のレポートは、公的年金のうち閉鎖された確定給付型制度の積立不足を問題にしている。混合制度は確定拠出部分が多いのであまり問題になっていない。当該確定給付制度について、現在は年金資産および政府が2004年に設立した信託によって不足を埋めているが、やがて2024年後半または2025年に枯渇すると予想されている。現在の法制では制度間の資金授受を禁じている点も積立不足の解消を困難にしている。リタイアしていない人に対する支給開始年齢を遅らせるなどのパラメータ変更や、新しい財源を見つけるなどの方策が必要であるが、政策の方向性は定まっていない(IMF(2023b))。

 ILO(2022) も警告を発しており、2024年にも確定給付限定制度が枯渇すると予想している。国が支出すべきは2030年にGDPの2.4%、2050年に2.7%、2060年に1.3%、2070年に0.4%、2080年に0%と見込んでおり、法213条に定める信託への拠出は毎年GDPの0.2~0.3%であるので、到底足りないということになる(ILO(2022), p. 119)。

 格付け会社のフィッチは2023年9月29日に、パナマの長期債発行体の格付を安定的からネガティブに修正したが、その一つの要因が年金支出による財政不均衡の拡大見通しである25

 この問題への解決策として、社会保障基金の副理事長のフランシスコ・ブスタメンテは、考えられるすべての保険数理計算を実行したのち、社会的観点から見て最もコストのかからない選択肢は、確定給付限定制度と混合制度を統合して、2005年の改革前の賦課方式の確定給付型制度に戻ることであると2020年5月に表明した26。Chávez et al.(2021) も同様に、確定拠出制度を廃して、かつての賦課方式の確定給付型制度の戻る提案している(Chávez et al.(2021), p. 43)。労働組合や様々な社会団体も同様の提案をしている(Mesa-Lago(2022), p. 49;ロドリゲス(2022))。

 しかし、反対意見もある。パナマ商工会議所(la Cámara de Comercio, Industria y Agricultura de Panamá)は、「混合制度に参加している人々の貯蓄を奪うことになり、私有財産に対する憲法上の権利を明らかに侵害するものだ」と反対している。またパナマ経営者協会(la Asociación Panameña de Ejecutivos de Empresas, APEDE)も、統合には反対している27

7.2 拠出制年金の適用率の低下傾向

 公的年金の被用者への適用率は、2011年に52%だったのが2019年には46.6%に減少している。また自営業者の適用率は2009年から2017年の間に8.8%から7.6%に減少した。一方で非拠出の老齢社会年金は、導入された2011年から2019年の間に高齢者人口の73%から81%に適用されるようになった(Mesa-Lago(2022), p. 47)。

7.3 制度間格差

 公的年金の他に、軍人、消防士、教育者などを対象とした個別の年金制度が林立しており、制度全体を規制・監督する公的機関は存在しない。公的年金以外の制度は、寛大な支給要件と給付額を享受している。例えば、軍隊や消防士では25~30年の勤務で年金支給開始が可能で、年金は最終給与と同額である。これに対して、公的年金の支給開始は年齢のみで決まり勤続年数は関係ない上、給付基準給与は10年間の平均給与である。一方で、公的年金よりも潤沢な給付を支給している制度は、財政的な補助を国から得ているとは言え、年金数理上の赤字をかかえ、公的年金以上に制度の持続可能性は不安定である(Mesa-Lago(2022), p. 48)。

7.4 その他の課題

 Mesa-Lago(2022) は、拠出金の従業員負担が事業主負担よりも多いのはILOの基準に反すると批判している。

Chávez et al. (2021) は、前記の確定給付限定制度の資金枯渇の恐れのほかに、以下の課題を挙げている(Chávez et al.(2021), pp. 25-29)。

・混合制度は以前の制度に比べて所得代替率が20%減少する。なお、ILO(2022) では、旧制度では所得代替率60%が規定されていたが、確定給付限定制度では、現状男子60%、女子50%であり、2050年には男女とも40%を下回ると見込まれている(p. 90のグラフ5.1.18)。

・所得分配率の低下により、年金水準の増加率が経済成長率よりも低くなっている。

・雇用主が保険料支払いを回避しようとする傾向がみられ、その割合は被用者の22.5%に達する。

・就業率および賃金の男女格差を反映して、年金額に男女格差が生じる。

・社会保障基金関連の不正がいろいろ報告されている。例えば1981年に社会保障基金の理事長であるアブラハム・サイードと投資家と軍事政府のメンバーのグループが「集合住宅プログラム」と呼ばれる構想を考案し、これは全国各地に公営住宅を建設予定だった。しかし住宅はほとんど建設されず、1億ドル近くの資金が、様々な名目(幽霊請負業者、保険、前払金、ボーナス、手数料)で消えた。理事会はこの事件で起訴されたが、1983年の二審で訴訟は取り下げられて、うやむやになった28。また、社会保障基金の会員カードを外国人に発行するために社会保障基金の職員が賄賂を受け取っているという不正も発覚した。賄賂はカードごとに20ドルから150ドルの水準で、これらの職員は給与とは別に月平均で最大18000ドルを稼いでいた。しかも、会員カードを発行して社会保障基金のシステムに登録しない場合もあった29

8 まとめおよび考察

 パナマの年金制度は、公的年金、職域毎の強制加入の私的年金、および任意加入の私的年金からなる。公的年金は非拠出制と拠出制に分かれる。非拠出制の公的年金は貧困層を対象とした全額国庫負担の老齢社会年金である。拠出制の公的年金は、2007年までは確定給付型の賦課方式制度であったが、2005年の法改正で2008年から一部確定拠出制度が導入され、結果として確定給付型と確定拠出型の二層構造になっている。この確定拠出部分は拠出金が集合運用され、元本と運用結果は個人勘定に按分され、加入者に資産運用に関する選択肢はない。職域毎の私的年金は林立しているが、多くは国庫からの補助を前提としている。公務員が対象の公務員年金積立制度は強制加入の確定拠出制度であり、加入者に2つある運用機関のうちから1社を選択できる。任意加入の私的年金は確定拠出型で、加入者は運用を委託する年金基金管理会社(AFP)のみならず、AFPが複数提供しているファンドを選択することができる。

 公的年金に確定拠出制度を導入した多くの国が確定拠出制度を全部または一部廃止している中で、パナマがまだ継続している理由は、Ortiz et al.(2018) に記載された確定拠出制度廃止・縮小国との比較から以下のとおりと考える。第一にパナマの確定拠出制度導入からまだ16年しか経過していないことである。このため、公的年金に確定拠出制度を導入したチリ等で発生した給付水準や給付格差の問題は顕在化していない(杉田(2022), p. 216)。すなわち確定拠出制度導入時(2008年)に加入することとされた35歳未満の者は、2024年ではまだ51歳(=35+2024-2008)未満であるからである。また、移行が2008年なので他の国(例えばポーランドやアルゼンチン)が経験したリーマンショックによる資産の棄損も経験していない。第三に確定拠出制度が公的機関によって運営されていることである。パナマの公的年金の確定拠出制度は、民間金融機関ではなく社会保障基金という公的機関が運営しているので、チリで問題になった民間金融機関の高い管理費用の問題が表面化しにくい(杉田(2022), p. 216)。第四に政治のリーダーシップの弱さである。第7.1節で述べたように確定給付限定制度の資金枯渇のおそれに対して、国際機関(IMF、ILO)や有識者(Chávez et al.(2021))から危機的状況が警告されているにもかかわらず解決策への協議が進んでいない。政治のリーダーシップの弱さは、第2節で触れたように連立政権が常態化していることも影響していよう。以上の理由から確定拠出制度を継続していると考えられるが、第7.1節で述べたように、社会保障基金関係者や労働組合などが確定拠出制度廃止を主張しており、また移行コストによる財政悪化のためパナマの長期債発行体の格付けも低下しているので、いずれパナマも確定拠出制度を廃止する可能性がある。

参考文献

杉田健(2022)「チリの年金制度」『年金と経済』41(2), pp. 216-220.

年金シニアプラン総合研究機構(2019)『ラテンアメリカの年金に関する調査研究』.

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ロドリゲス・サムディオ, ルペン(2022)「連載パナマ・レポート31  2022年11⽉分」 12月9日.

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CSS (2020) “Reglamento para la Inversión de los Fondos de Reserva de la Caja de Seguro Social”

ILO (2022) Valuación actuarial del sistema panameño de pensiones - Al 31 de diciembre de 2019.

IMF (2023a) IMF Executive Board Concludes 2022 Article IV Consultation with Panama, March 24, Press Release NO. 23/95, https://www.imf.org/en/News/Articles/2023/03/24/pr2395-imf-executive-board-concludes-2022-article-iv-consultation-with-panama, 2023年11月23日閲覧.

IMF (2023b) 2022 Article IV Consultation—Press Release; Staff Report; and Statement by the Executive Director for Panama, March, IMF Country Report No. 23/122, https://www.imf.org/-/media/Files/Publications/CR/2023/English/1PANEA2023002.ashx, 2023年11月23日閲覧.

IOPS (International Organisation of Pension Supervisors) (2011) IOPS Member country or territory pension system profile: PANAMA, December.

Mesa-Lago, C. (2022). Pensiones de capitalización individual en América Latina: efectos, reformas, impacto del COVID-19 y propuestas de política.

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Ortiz, I., Duran, F., Urban, S., Wodsak, V., & Yu, Z. (2018). Reversing pension privatization: Rebuilding public pension systems in Eastern European and Latin American countries (2000-18). ILO Available at SSRN 3275228.

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SIACAP (2023) “Información Relevante Sobre el SIACAP (Al 31 de octubre 2023) ”, https://www.siacap.gob.pa/wp-content/

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SMV (2021) “Actualidad de los sistemas de pensiones voluntarios en Panamá”,https://supervalores.gob.pa/wp-content/uploads/

2021/03/Actualidad-de-los-Sistemas-de-Pensiones-Voluntarios-en-Panama.pdf, 2023年12月28日閲覧.

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Valera de Chincilla, E (2018) Antecedentes, evolución y proyecciones del sistema de pensiones en Panamá, Ministrerio de Economía y Funanzas, Abril, https://w3.css.gob.pa/historia/, 2023年6月7日閲覧.

添付資料1 公的年金の確定拠出制度導入と廃止・縮小状況

出所:Ortiz et al. (2018), pp. 3-4およびMhango(2012), p. 270より筆者作成。

添付資料2 公務員積立年金制度(SIACAP)の法令

法律

法律 概要
1997年法律第8号 基本法
2001年法律第29号 取引可能加入者証(CERPAN)について
2001年法律第76号 取引可能加入者証(CERPAN)についての補足
2004年法律第4号 教員の除外
2010年法律第60号 取引可能加入者証(CERPAN)についての補足、運用規制、罰則

政令・大統領令

政令 概要
1997年大統領令第27号 手続などの細則
1998年政令第32号 上記の修正
1999年政令第16号 SIACAPの運用先となる国債について
2001年大統領令第138号 取引可能加入者証(CERPAN)の細則
2001年大統領令第143号 上記の修正
2003年大統領令第17号 取引可能加入者証(CERPAN)、資産運用関係
2003年大統領令第39号 公務員志望の場合の個人口座残高の処理
2007年大統領令第171号 取引可能加入者証(CERPAN)について

決議

決議 概要
2023年3月14日 違反行為への制裁手順

出所:公務員積立年金制度の法令のウェブサイト https://www.siacap.gob.pa/legislacion-y-normativa/#1591717201555-297df927-55fc、2024年1月7日閲覧。

添付資料3 任意の私的年金の法令

法律

法律 概要
1993年法律第10号 基本法

大統領府決議

決議 概要
2003年 第59号 監督権限

 

協定(Acuerdo)

協定 概要
2005年 第11号 年金基金管理会社(AFP)等について
2006年 第6号 協定2005年第11号の修正
2022年 第12号 協定2005年第11号 の修正

出所:パナマ証券市場監督局の年金法令のウェブサイト

https://supervalores.gob.pa/reglamentacion-pensiones-cesantias-y-siacap/、2024年1月7日閲覧。

添付資料4 略語表(パナマ関連)

略語 原語(スペイン語) 仮訳
AFP Administradora de Fondos de Pensiones 年金基金管理会社
CERPAN Certificado de Participación Negociable 取引可能加入者証
CSS Caja de Seguro Social 社会保障基金
MIDES Ministerio de Desarrollo Social 社会開発省
SEBD Subsistema Exclusivo de Beneficio Definido 確定給付限定制度
SIACAP Sistema de Ahorro y Capitalización de Pensiones de los Servidores Públicos 公務員積立年金制度
SM Subsistema Mixto 混合制度
SMV Superintendencia del Mercado de Valores de Panamá 証券市場監督局
Footnotes

ILO(国際労働機関)のスペイン語表記はOITであるが、本稿ではILOに統一した。IOPSは年金監督者国際機構である。USSSAは米国社会保障庁を筆者が略記した。

パナマの年金制度関連の略語は添付資料4にまとめた。

https://www.inec.gob.pa/Archivos/P28811.pdf, 2023年6月4日閲覧。

北海道の面積は、 https://www.pref.hokkaido.lg.jp/ss/tkk/

databook/2020/0102.htmlによる。2023年6月4日閲覧。

https://tradingeconomics.com/panama/wages,2023年10月14日閲覧。

https://www.panama.emb-japan.go.jp/itpr_ja/11_000001_00550.html, 2023年10月14日閲覧。

https://www.ceicdata.com/en/indicator/panama/foreign-exchange-reserves, 2023年6月8日閲覧。

https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/panama/data.html, 2023年12月17日閲覧。

https://www.britannica.com/place/Panama/Government-and-society, 2024年2月17日閲覧。

https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/panama/data.html, 2023年12月17日閲覧。

https://ensegundos.com.pa/2020/05/08/efecto-covid-19-la-css-recaudo-197-millones-menos-entre-marzo-y-abril/, 2024年1月11日閲覧。

https://www.france24.com/es/minuto-a-minuto/20231030-presidente-de-panam%C3%A1-propone-consulta-popular-sobre-mina-ante-masivas-protestas, 2023年12月30日閲覧。

この法律は、今日に至るまで多くの改正が行われたが、https://w3.css.gob.pa/wp-content/wdocs/LEY%2051%20jul%202021.pdfに2021年7月時点までの改正を反映した条文があるため、本稿では以下この条文を参照し、適宜ILO(2022)、IOPS(2011) を参照する。

社会保障基金は、年金の他に健康保険も所管しているが(サムディオ(2022))、本稿では年金に限定して解説する。

ラテンアメリカの多くの国では、12月末頃に月給と同額が13回目の給与として支給することが労働法で義務付けられており、これは「ボーナス」と呼ばれることもある(https://www.globalization-partners.com/jp/events/, 2023年12月17日閲覧)。

CSSの団体保険規程による。(https://w3.css.gob.pa/wp-content/uploads/2023/10/REGLAMENTO-DE-SEGUROS-COLECTIVOS-DEL-COMPONENTE-DE-AHORRO-PERSONAL-DEL-SUBSISTEMA-MIXTO-actualizado.pdf, 2024年1月24日閲覧)

混合制度に関するCSSのFAQの17(https://w3.css.gob.pa/wp-content/uploads/2020/12/preguntasfrecuentes.pdf, 2024年1月3日閲覧)。

条文は「老齢給付」でなく「老齢年金」となっているが、支給額の保険料拠出との関連性と、障害補償と老齢補償の併給は整合性が取れないので、「老齢給付」とした。

第二層銀行は、国民にサービスを提供する直接の事務所を持たず、第一層金融機関(銀行、協同組合、基金など)を通じて経済資源を供給する金融機関のこと。彼らは国の経済政策と連携し、公共および民間のリソースを管理する。その主な機能は、開発促進を目的として生産部門を促進および支援することである(https://www.bancoldex.com/es/banca-de-segundo-piso-motor-de-desarrollo-empresarial-1641, 2023年11月13日閲覧)。

その後の改正法令については、添付資料2参照。

買取の他に、証券取引所での売却も制度的に可能である(https://www.contraloria.gob.pa/cerpan.html, 2023年12月30日閲覧)。

https://www.siacap.gob.pa, 2024年1月1日閲覧。

関連法令は添付資料3を参照。

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https://www.fitchratings.com/research/sovereigns/fitch-revises-panama-outlook-to-negative-affirms-idr-at-bbb-29-09-2023, 2023年12月16日閲覧。

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© Ken Sugita
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