Niigata Iryo Fukushi Gakkaishi
Online ISSN : 2435-9777
Print ISSN : 1346-8774
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2022 Volume 21 Issue 3 Pages 141-142

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【はじめに】

理学療法白書(2020年度版)によると、リハビリテーション(リハ)関連企業に属する会員数は2015年度の70人から2019年度は163人に増加(伸び率:132.9%)している。一方、医療施設の伸び率は19.2%に留まる。リハ関連企業における業務内容の詳細は不明であるが、当該分野への職域拡大が急速に進んでいることが示唆される。

また、2019年に厚生労働省において開催された医療従事者の需給に関する検討会「理学療法士(PT)・作業療法士(OT)需給分科会(第3回)」の報告では、特にPTで、その他の分野で働く者の増加傾向が顕著となっている。その他には、一般企業が含まれ、一部は支援機器開発等に関わっていることが推察される。

支援機器開発には、医工連携が重要であるが、教育体制は不十分である。そこで支援機器開発に関連した教育の実態を把握し、さらにはその必要性、教育への実装可能性について調査を実施した。

【方法】

PT協会ホームページにて掲載されている養成校270校(募集停止6校を除く)、およびOT協会ホームページにて掲載されている養成校208校を対象に、郵送によるアンケート調査を実施(2021年1月4日~3月31日)した。アンケート調査に際して、ワーキンググループを立ち上げアンケート内容について議論し、①工学部または工学系学科の有無、②支援機器に関する科目の状況、③支援機器に関連する領域または研究に携わる教員の有無、④医工連携に関連する科目の状況、⑤支援機器開発に関連する科目の必要性、⑥支援機器開発に関連した科目を導入する場合の望ましい単位数、⑦支援機器開発に関連する科目を導入した場合に必要な教育内容、⑧カリキュラムに支援機器開発に関連する科目の導入についての8つの質問項目を設定した。

【結果】

PT 101校(回答率37.4%)、OT 68校(同32.7%)から回答を得た。①工学部または工学系学科を有する養成校はPTが13校(12.8%)、OTが12校(17.6%)であった。

②支援機器開発に関する科目を有する養成校は、PT15校(14.9%)、OT21校(30.9%)であり、有意差(χ2(1)=5.006 p<.05)を認めた。③支援機器に関連する領域または研究に携わる教員を持つ養成校は、PT21校(20.8%)、OT25校(36.8%)であった。④医工連携に関連する科目を有する養成校はPT13校(12.9%)、OT13校(19.1%)であった。⑤支援機器開発に関連する科目の必要性は、かなり感じる、または感じるとの回答はPT67校(66.3%)、OT46校(67.6%)であった。⑥支援機器開発に関連した科目を導入する場合の望ましい単位数は他の関連科目に数コマ程度PT43校(42.6%)、OT35校(51.5%)が多かった。⑦支援機器開発に関連する科目を導入した場合に必要な教育内容は「支援機器概論」PT82校(81.2%)、OT56校(82.4%)、「利用者と支援機器」PT77校(76.2%)、OT53校(77.9%)の選択率が高かった。⑧支援機器開発に関連する科目の導入について(支援機器に関する科目のないPT84校、OT47校を対象)は「必修科目として可能」はPT・OTともに0校、「既存の関連科目に数コマなら可能」がPT 52校(61.9%)、OT28校(59.6%)であった。

【考察】

工学部または工学系学科を有する養成校は両学科ともに少なく、医工連携教育が行いにくい環境であることが推察された。また、医工連携に関連する科目を有する養成校は両学科ともに13校であり、医工連携教育が不十分であることが推察される。一方、支援機器開発に関連する科目の必要性については、両学科ともに、「かなり感じる」、「または感じる」を選択した養成校が7割近くを占め、科目の必要性については高いと捉えられていることが明らかとなった。しかし、既存のカリキュラムに支援機器開発に関連する科目を取り入れるには、専門的教員がいないことや、関連する外部講師の確保が困難であること、全体の教育時間内に科目を組み込むことは現状では困難であること、などといった意見も散見された。支援機器開発に関連した科目を導入する場合の望ましい単位数としては、PTでは1単位、または他の関連する科目に数コマ程度がともに4割近く、OTでは他の関連する科目に数コマ程度が5割強という結果であり、十分な時間数を確保することは困難な状況であることがうかがえる。したがって、カリキュラムへの導入のためには効果的な教育プログラムの開発が必要であると思われる。また、卒前教育では十分な教育が難しいと推察され、卒後教育で充実させることも必要であり、本シンポジウムで取り上げていただいたような取り組みが重要となる。

 
© Niigata Society of Health and Welfare

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