Niigata Iryo Fukushi Gakkaishi
Online ISSN : 2435-9777
Print ISSN : 1346-8774
Reconsideration of grade point average
Yoshihiro EharaYu MaedaKaoru AbeHironori Suda
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2023 Volume 23 Issue 2 Pages 30-35

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Abstract

Grade Point Average:GPAは学士教育課程において学生の総合的な成績を表現できる数値として広く活用されている。2017年の調査では国立大学の100%、公立大学のおよそ80%、私立大学のおよそ93%がGPAを導入している。GPAはある学生のある科目の成績について4、3、2、1、0などのGrade Pointを付加し、その科目の単位数を乗じ、それらの総和を履修総単位数で除したものである。奨学金や授業料免除対象者の選定基準として活用、履修状況を把握し履修指導や学修への助言などに活用されているが、現行のGPAには大きな問題がある。ひとつはGrade Pointを付加する時点で原素点を丸めることになり、それによって学生間に成績の逆転現象を生じさせることである。二つ目はわが国で広く実施されている100点満点の試験点数をGrade Pointに置き換えることによって、数値から学生の成績が推測しにくいことである。そこで本稿では原素点を丸めることなく10で除し、単位数を乗じた総和を履修総単位数で除すdGPAを提案した。

dGPAには成績の逆転現象がないために、奨学金や授業料免除対象者の選定基準として安心して活用できる。数値自体によって成績が判断しやすいので学生や保護者にとっても身近な存在として活用されることが期待できる。さらに成績が正確に反映されているので大学運営のInstitutional Research的活用にも適している。

Translated Abstract

Grade Point Average is widely used as a numerical value that can express a student’s overall performance in a university program. According to a 2017 survey, 100% of national universities, 80% of public universities, and 93% of private universities have introduced GPA. GPA is obtained by giving grade points such as 4, 3, 2, 1, 0, to a student’s grades in a certain subject, multiplying the number of credits in that subject, and dividing the sum by the total number of credits taken. It is used as a criterion for selecting students eligible for scholarships and tuition fee exemptions and grasping the course registration status and advice for learning. Still, there are serious problems with the current GPA. One is that the original score numbers are rounded at the time of the transformation to the grade point, which causes a reversal phenomenon of grades among students. Second, it is challenging to grasp student performance from the GPA values because it replaces the 100-point test scores widely used in Japan with Grade Points. Therefore, in this paper, we proposed dGPA, in which the original scores are divided by ten without rounding, and the sum multiplied by the number of credits is divided by the total number of credits taken. Since dGPA does not cause a reversal phenomenon in grades, it can be used confidently as a criterion for selecting students eligible for scholarships and tuition fee exemption. Since it is easy to judge overall performance based on the numerical value, it can be expected to be used as a familiar presence for students and parents. Furthermore, since the dGPA accurately reflects the performance of a student, it is also suitable for institutional research use by university management.

I はじめに

Grade Point Average(以後GPA)は学士教育課程において学生の総合的な成績を表現できる数値として広く活用されている。GPAは学生の学修量を時間という概念で測定する単位制度とともに米国の大学で発達した制度であり1)、敗戦により米国型の大学教育を範とした新制大学が誕生したことが契機になってわが国にも導入された。国際基督教大学や東京神学大学、名古屋商科大学では古くから運用されてきたが、わが国で全国的に広まったのは1998年の大学審議会答申で「単位の実質化」「厳格な成績評価」「教育の質保証」が取り上げられた中で例示としてGPAが示されたのがきっかけである2)。2017年の調査では国立大学の100%、公立大学のおよそ80%、私立大学のおよそ93%がGPAを導入している3)

GPAの算定方法は以下の通りである。ある学生のある科目の成績について秀、優、良、可、不可などのLetter Grade(以下LG)にGrade Point(以下GP)を付加する(例えば、それぞれ4、3、2、1、0)。履修した各科目のGrade Point にその科目の「単位数」を乗じ、それらの総和を履修総単位数で除したものが典型的なGrade Point Averageである。一部ではGrade Pointに「単位数」を乗じることなくGrade Pointの総和を総科目数で除した数値をGrade Point Averageとする例がある。この例では履修時間の大小にかかわらず同じ重みで各科目を評価していることになる。単位数は基本的には履修に要する時間数に直接に関連しているので、「単位数」を乗じる方式では履修時間を重みとする重み付き平均値となる。また計算時の分母についても「履修した総単位数」を用いる例と、少数だが「合格した科目のみの単位数の合計」を用いる例がある。前者の例では科目を途中放棄した場合や不合格になった場合に分母にはその数が残るのでGrade Point Averageが小さく計算される。この例では不合格科目があったという情報がGrade Point Averageに反映され、学生たちに履修選択を計画的に行うように仕向けることが可能となる。本稿では前述の典型的な計算式によって計算されたGrade Point Averageを対象とする。

Grade Point Averageの具体的な活用事例をあげると3)、奨学金や授業料免除対象者の選定基準として活用、履修状況を把握し履修指導や学修への助言、交換留学生の選抜基準として活用、就職等の推薦基準として活用、大学院入試の選抜基準として活用、GPAに応じた履修上限単位数を設定、進級判定の基準として活用、学生表彰制度の基準として活用、研究室配属の際の参考、などがある。またGPAと国家資格試験の点数を比較することによって合格率向上に役立たせようとするInstitutional Research的な研究にも活用されている4), 5)

このように活用が進んでいるGPAであるが本稿では2つの問題点を挙げたい。日本の多くの大学では試験は100点満点方式で測定される。これを原素点と呼ぶものとする。これを例えば90点から100点までにA評価などのLetter Grade(以下LG)を与え、さらにそのLGに4点などのGrade Point(以下GP)を付加している。このGPをGPA計算式に入力しているのである。つまり90点から100点までの原素点が4点というGPに丸められている。すると原素点が大きい学生と、それより小さい学生との間に逆転現象が生じてしまうことがある6)。GPAが奨学金や授業料免除対象者の選定基準として活用されることを考慮すると看過できない問題である。またInstitutional Research的活用を想定した場合に不正確な入力データでは大学運営に不都合を生じかねない。二つ目の問題点はGPAの数値のわかりにくさである。単に2つの数値の比較のみに使用するのであれば、その数値が正確で信頼できるものであれば問題はない。しかしGPAは学生にとっても教員にとっても教育環境の向上の目安として利用が進んでいることを考えると数値自体がもつ「わかりやすさ」は極めて重要である。著者は大学教員になって20年近くになったがようやくにして、GPAが1点台だとかなり悪い、2点台だとまあまあ普通、3点台だと良い部類に入り、4点に近い学生はほとんどいない、ことくらいは認識できるようになった。学生や保護者でこれが認識できる割合が高いとは思われない。本稿では上記二つの点を改善する方法を示し考察を加える。

II 方法

新しいGPA 計算式を提案する。原素点は100点満点であるものとする。

GP=(原素点)/10

(ただし、GP<6 は GP=0 とする。)

GPA=Σ(GP * 単位)/Σ(単位)

ただしΣは合計を表す数学記号、*は掛け算記号、/は割り算記号とする。ここでいう単位はその学生が取得した単位ではなくて、各授業のもつ単位を指す。この方式では原素点を10で割るのみで丸めは行わないのが特徴である。平均の計算法は通常のGPAと同じである。この方式だと最高点が10点であり、すれすれで合格している学生は6点に近い数字になる。このようにこのGPAは非常にわかりやすい数値になる。不合格が混じると、分母は増えるのに分子は増えないので、6点を下回ることがある。すべて不合格の学生は当然0点になる。このGPAは最高点が10点であるので、ここではDecimal GPAと呼ぶものとし以後dGPAと表記する。

III 考察

1 一般的なGPAの計算方法

例えばアメリカ合衆国で広く使われている計算方式であれば、まず、各科目の5段階評価を、以下のように換算する。

優もしくは秀・A:4、良もしくは優・B:3、可もしくは良・C:2 、準可もしくは可・D:1、不可・F:0。

上記のように0から4で示した評価点を、ここではGP点と呼ぶこととする。このGP点に各単位数を掛けて足した合計点を総単位数(履修登録単位の総数)で割って平均したのがGPAである。平たく言えば0から4までのグレードの平均値である。ただし、科目の単位数を重みとするので、単位の多い科目のグレードが高いと平均値は高くなる。例えば、グレード4と3をもつ学生が二人いた場合に、学生Aがもっているグレード4の科目の単位は2でグレードが3の科目は単位1だった場合は平均値は3.7になるが、学生Bがもっているグレード4の科目の単位は1でグレード3の科目の単位は2だった場合は平均値は3.3になる。

2 GPAがもつ優れた特徴

まずは現行のGPAのもつ優れた特徴を押さえておく。GPAのもつ根元的な考えはすべての科目は同等な価値をもつことである。ただし各科目には履修するのに必要な時間数があり、これを具体的な数値で表現したものが「単位」である。履修に必要な時間が大きいものはそれに応じて単位は大きくなる。この状態で同じ単位をもつ科目は教育目的にとって同じ価値があるものと考える。GPAでは単位を「重み」として履修した科目の平均点を計算している。すなわちどの科目を履修したかによらず学生の履修努力(履修時間の多さ)が反映された数値になっている。

GPAの数値には不合格科目の情報が反映されている。例えば就職時に提示する成績表には秀が何件、優が何件、良が何件などと合格した科目のみの情報のみ開示する場合もありうる。一方でGPAでは履修登録しながら放棄した科目や、試験を受けたのに不合格になった科目については、分母にはその件数が加算されるのに分子には加算がゼロになることによって、自動的にこれらの情報が反映されることになる。これを通じて学生に対して無計画な履修登録を抑制する働きがあり、それができない学生に対しては結果がGPAに反映されることになる。

3 現行のGPAの不都合な点

通常のGPAだと原素点の平均値と計算されたGPAの順位に食い違いが生じる場合がある。例えば2つの科目(1単位とする)でそれぞれ79点、77点を取った学生Aと、80点、70点を取った学生Bがいたとする。平均するとAは78点、Bは75点となる。しかしGPAを計算するとAは2.0、Bは2.5となり、順位が逆転する。これは、80点はグレード3となり結局89点を取ったのと同等になり、逆に78点はグレード2で70点と同じになってしまうからである。つまり素点をグレードとして「丸める」ことから不都合が生じる。素点とグレードとの関係を図1に示す。

GPAでは図1のように原素点を丸めてしまうので、その他にもいろいろ不都合が生じる。例えば、全科目を満点とった学生と、全科目が90点だった学生は両者ともGPAが4と計算される。直感的には全科目の平均が満点の学生と90点の学生では大きな隔たりがあると思われるが、両者とも同じGPAになる。同様に全科目が60点ですれすれで合格した学生と、全科目で69点をとった学生では両者ともGPAが1になってしまう。GPAは通常小数点以下2桁で表示することが多いが、順位の入れ替えが頻繁にあることを考慮すると評価点としての細かい数値の信頼性は高くないと思われる。半田らは1000名の学生を想定したシミュレーションを行ったが、その結果、順位攪乱の発生率は96.9%、順位が10ランク以上変動した学生は全体の約半数、最大で97ランクの変動例を認めた。この逆転現象に対して半田は強く警鐘をならしている6)

4 fGPAによる不都合解消法

そこでお茶の水大学ではグレードで丸めるのではなく原素点を以下のように変換してGPAを算出している。これをfunctional GPA(以後fGPA)と呼んでいる。

fGP=(原素点-55)/10

(ただし、fGP<0.5 は fGP=0 とする。)

55を引いて10で割るのは、素点を通常のグレードの数値とほぼ同じ値にしたいためと思われる。なおfGPと表記したのは、上記の値は平均値を計算する前の素点に対応するからである。平均の計算法は通常のGPAと同じである。fGPと原素点との関係を図2に示す。

fGPAでは原素点を丸めないので、原素点の成績平均とfGPAとで順位が入れ替わる不都合はおきない。しかし、まだ不都合が残っている。この方式(あるいは通常のGPAでも本質的に同じ)では最高点が4.5点であり、最低点は0点になる。そうすると例えばfGPAが2.35だとして、これがどの程度のレベルなのか、使い込んでいる方にしかわからない。しかし、図2を見れば70点台後半であることはわかるし、前ページの式を逆に使って 素点=10*fGPA+55 で計算すれば100点満点に換算して78.5点であることがわかる。この数値であれば学生がどの程度の成績なのか直感的に判断できる。これは通常私たちが10進法を使って10点満点あるいは 100点満点で成績を把握しているからである。それであれば最高点が4.5点のfGPAを使うよりも10点満点のdGPAを使うほうが好ましいというのが本稿の主張である(図3)。

5 GPA、fGPA、dGPAの関係

fGPとdGPは丸めを用いないので完全に相互変換できる。すなわち

fGP=dGP-5.5  ・・・(1)  であり、

dGP=fGP+5.5  ・・・(2)  である。

上記と同様の関係がfGPAとdGPAにも成立する。すなわち

fGPA=dGPA-5.5 ・・・(3) であり、

dGPA=fGPA+5.5 ・・・(4) である。

しかし不合格科目があると上記の関係式は成立しない。ただfGPAとdGPAは履修単位の合計と合格単位の合計がわかれば完全に相互変換できる。原素点が残っていなくても相互に変換できるが本題から外れるので詳細は割愛する。dGPAとfGPAの関係を図4に示す。

図4のグラフ中の直線部分は不合格科目がない場合のdGPAとfGPAの関係である。この場合は(3)の関係(直線の式)が成り立つ。不合格科目があると不合格科目の単位によって変わってくるので直線では表現できずおおむね図のグレーのゾーンのような関係になる。いずれにしても原素点を残しておけば、GPA、fGPA、dGPAはいつでも計算できる。

GPA、fGPA、dGPAについて最高点はそれぞれ4点、4.5点、10点である。全ての科目をすれすれで合格すると、それぞれ1点、0.5点、6点である。不合格がない学生に対してはfGPAは0.5点から4.5点までの4点、dGPAでは6点から10点までの4点を充てるので間隔についての優劣はない。しかし、GPAでは1点から4点までの3点を充てるので、狭い範囲に学生を押し込めている。したがって必然的に小数2桁まで表示することになり、これも数値が把握しにくい原因になっている。

6 国際的な互換性

fGPAは国際的な互換性を考慮して、最高点が4.5点になる数式を採用したものと思われる。これは米国の大学の多くが最高点4点になる方式であることを根拠にしていると思われる。しかし最高点について世界的にみれば欧州やインドでは10、オーストラリアでは7、シンガポールでは5、韓国では4.5,4.3などなど(ただし上記はその国の一部)も見られ7)必ずしも最高点を4点にすれば互換性がとれるわけではない。換算が必要になるのは留学生を送り出す場合と留学生を受け入れる場合だと思われるので、相手国・相手側の大学の実情に合わせて換算式を整理しておくことが重要と思われる。

7 dGPAの有利性

原素点が100点満点の試験によって得られているのであれば簡単な数式で計算ができる。これによって得られたdGPAには通常のGPAに見られるような成績順位の逆転現象はない。dGPAの最高点は10点であり、合格点すれすれの学生の点は6点になるなど、数値のもつ意味が把握しやすい。通常のGPAでは数値の範囲が狭いためにふたつの数値を比較するために小数点以下3桁を使用することもあるが、順位の逆転現象があるので、細かい桁で順位をつけるのは避けるべきである。dGPAでは数値の範囲が広いために通常は小数点以下2桁で十分と考えられる。どうしても二人の学生間で優劣をつけなければならない用途では細かい桁で判断しても問題はない。

8 dGPA運用の留意点

本稿ではdGPAについてInstitutional Researchなど全学的な活用、奨学金や授業料免除対象者の選定基準など学部間にもまたがる比較、国際的な互換性なども論じてきた。ここでは各授業、各学科、各学部、各国が同じ評価基準で素点を提出していることが大前提になっている。ひとつの授業の中では各学生の「能力の序列」はかなりの信頼性で素点に反映されていると思われる。しかしそこから1歩でも外に出ると比較は困難であると考えられる。それを頭に入れたうえでdGPAを活用する必要がある。またルーブリックの活用が評価基準の統一化の突破口になるのかどうか、合わせて検討する課題である。逆の見方をすると評価基準の統一化を検討するツールとして素点を正確に集約するdGPAを活用するという考えも成立する。

IV おわりに

以上述べたようにdGPAは数値自体によって成績が判断しやすいので学生や保護者にとっても身近な存在として活用されることが期待できる。また成績の逆転現象がなく、成績が正確に反映されているので大学運営のInstitutional Research的活用にも適している。そしてなによりも奨学金や授業料免除対象者の選定基準として安心して活用できるなど個々の学生の学修に直結しているので早期の導入が好ましいと考えられる。多くの大学で採用されるよう新しいGPA計算方式を提案した。

利益相反

本論文には利益相反はありません。

References
  • 1)  清水一彦:単位制度とカリキュラム編成,有本章編「学部教育改革の展開」,広島大学大学教育研究センター高等教育研究叢書60:56-70,2000.
  • 2)  半田智久:GAP制度の研究,大学教育出版,4,岡山,2012.
  • 3)  株式会社 政策研究所,平成29年度文部科学省高等教育局委託事業『国内大学のGPAの算定及び活用に係る実態の把握に関する調査研究』報告書,https://www.mext.go.jp/a-menu/koutou/itaku/-jcsFiles/afieldfile/2018/11/12/1410961-1-1.pdf,2023年2月18日.
  • 4)  大見広規,村中弘美,平野治子他:学生の入試成績,メンタルヘルス調査,Grade Point Average,国家資格取得相互の関係,名寄市立大学紀要,14:1-7,2020.
  • 5)  菊池恵美子,京野良孝,吉岡剛志:授業成績(通算GPA)と国家資格試験合・否に関する分析及び合格率向上に向けた指導対策法の一提案,帝京平成大学紀要,29:1-12,2018.
  • 6)  半田智久:GAP制度の研究,大学教育出版,71,岡山,2012.
  • 7)  半田智久:GAP制度の研究,大学教育出版,142,岡山,2012.
 
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