Niigata Iryo Fukushi Gakkaishi
Online ISSN : 2435-9777
Print ISSN : 1346-8774
[title in Japanese]
[in Japanese]
Author information
JOURNAL FREE ACCESS FULL-TEXT HTML

2024 Volume 23 Issue 3 Pages 63-64

Details

はじめに

2021年12月、文部科学省中央教育審議会大学分科会は、地方の活性化と地域の中核となる大学の実現についての審議をまとめ、大学が地域において果たすべき役割を明確にした。大学は人材育成、高度な研究、文化・歴史の発展、知と人材のハブとしての役割を担い、社会全体への貢献と持続可能な社会発展に寄与することが求められる。

本講演では、めがねのまちさばえ眼育(めいく)プロジェクトの事例から、地域社会と大学の連携が、学生への教育に与えた影響に焦点をあてる。

鯖江市と眼鏡産業の背景

福井県鯖江市は、眼鏡フレームの国内90%以上のシェアを誇る。豪雪に見舞われる農閑期の現金収入を得るための副業として1905年に眼鏡枠づくりが始まった。1981年に世界初のチタン製メガネフレームの開発の成功により「めがねのまちさばえ」の名が脚光を浴びることになる。街全体が眼鏡工場と言われるほどに発展した。しかし、1990年代には安価な中国製フレームの流通により生産量が減少し、地域の経済に影響を及ぼした。

地域の課題への取り組み

鯖江市は、地場産業を守り、人口流出を防ぐために様々な政策を導入した。その中で、鯖江ファン(関係人口)の獲得が重要な一環として位置づけられた。こどもの眼鏡は子どの眼(視力)を育てるという観点から、「眼育(めいく)プロジェクト」として市のシティプロモーション事業がスタートした。このプロジェクトは、新潟医療福祉大学の研究・教育力と鯖江市のニーズがマッチングされ、2019年度から連携が本格的に始まった。

連携と成果

2019年12月に、国連永久大使のアンワルル K. チャウドリー氏の来鯖に合わせ、本学学生3人が、保育園児に「見る力」を育てる自作のゲームを披露した(図1)。その活動内容がSDGs目標4「質の高い教育をみんなに」の実現、さらに女性活躍に重点を置いていることなどから、チャウドリー大使から高評価を得た。2020年3月には、新潟医療福祉大学と鯖江市は包括連携協定を締結した。その後、教育委員会、養護教諭、保育士、保健師、視能訓練士、市職員など異なるスキルと専門知識を持つ者たちが連携し、就学前視覚健診や保育現場での眼育講習などの活動を実施している。これまで延べ14名(視機能科学科11名、社会福祉学科3名)の学生が鯖江市に出向き、この取り組みに参加した。学生は異なる専門職との協働を経験し、社会的責任感を醸成し、卒業後にそれぞれの専門職として活躍している。

地域社会との連携の影響

2022年度の卒業生アンケートの結果から、地域社会交流・貢献活動に参加した学生は、社会連携活動への参加が「優れたQOLサポーター」を育て、学生生活を充実させることに有意な影響を与えたことが示された(表1)。これは、大学教育が知識伝達だけでなく、社会的な貢献と個人的な成長をサポートするプラットフォームとしての役割をもつことを示す結果である。

結論

地域社会と大学の連携は、社会的な価値観を育み、多職種協働の意識を高め、社会的責任感と共感力をもつ専門職の育成に寄与する。「めがねのまちさばえ眼育(めいく)プロジェクト」の事例から、大学が地域社会と連携し、持続可能な発展と問題解決に貢献する重要性が示された。

 
© 2024 Niigata Society of Health and Welfare

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/4.0/deed.ja
feedback
Top