2019 Volume 23 Issue 1 Pages 23-32
本研究の目的は,訪問看護事業所の看護職,訪問介護事業所のサービス提供責任者,居宅介護支援事業所の介護支援専門員を対象とし,そのチーム活動と個人特性および事業所特性,職場環境との関連を明らかにすることである.近畿圏の三事業所500か所ずつ,計1,500か所を無作為抽出し,無記名自記式質問紙を用いた横断的調査を実施した.有効回収数は781票(52.1%)であった.チーム活動と強い関連がみられた要因は,標準化係数(β)の大きい順に,「利用者との良好な関係」「上司・同僚との良好な関係」「利用者が信頼しているチームメンバー」「保険外サービスの情報」「職場外連携研修」「職場内現任研修」であった.実践度の向上には,利用者および家族との良好な関係を築き,上司・同僚との人間関係を良好に保つこと,保険外サービス情報を把握すること,事業所内に職場内現任研修と職場外連携研修を整備することが求められる.
The objective of this study was to identify the factors related to the practice degree of utilizing an inter-professional team approach among home-visit nurses, home-visit chief helpers and care managers. 500 places for each home-visit nursing agencies, home-visit care agencies and agencies preparing care service plans in the Kinki area of Japan were randomly selected. The research design was a cross-sectional mailed survey with self-administered anonymous questionnaires. 781 (52.1%) valid responses were obtained.
The following factors were found to be related to the practice degree which the capacity to carry out an inter-professional team approach: a good relationship with care recipients; favorable interpersonal relationships at work; the team member whom a user trusts; information of the services out of insurance; training systems in the agencies; and training systems for collaboration out of agencies.
In discussion, these results suggest that enhancement of the capacity to utilize an inter-professional team approach requires the following work environment factors: collect services out of insurance; provision of training programs in the agencies and out of agencies; and maintenance of a favorable relationship with one's supervisors, colleagues and care recipients.
日本の在宅療養高齢者支援は介護保険制度のもと,ケアマネジメントを用いてチームで支援する体制となっている1).この制度のもとではケア専門職のチーム活動が支援の質を左右する2).在宅療養高齢者の生活支援にかかわる居宅サービス事業所の中でも,直接的なケア業務を行うのは,訪問看護事業所の看護職と訪問介護事業所の介護職であり,その事業所間の連絡調整業務を行うのが居宅介護支援事業所の介護支援専門員である(以下,三事業所の三職種とする).これらの三事業所は介護保険制度の居宅サービスの中でも重度要介護者に利用率が高く3),軽度要介護者に対しても病状悪化の予防や病気の早期発見を行うためにチームアプローチが求められると考える.
多職種協働チームには,Multidisciplinary team, Interdisciplinary team, Trans disciplinary teamの3つのモデルがある4)と言われている.国内外において,Interdisciplinary teamに関する研究は,Interdisciplinary teamの概念分析5),学際的チームアプローチの実践評価尺度の開発6),インタープロフェッショナルチームワーク(IPW)の構成要素の抽出に関する質的研究7)などが行われている.
三事業所の三職種のチーム活動は,看護職も介護職も吸引や胃ろう注入を行う,終末期支援では看護職が介護支援専門員の役割を代替して主治医と連絡を取るなど,役割の解放があり,ケアを統合した形で療養高齢者を支援する8).上記のようなチーム活動は,協働・連携の程度が深く,役割の解放,融合を伴うことから,Trans disciplinary teamのモデルに属すると考える.ケア専門職のTrans disciplinary teamモデルのチーム活動研究は,国内外においてほとんど行われていない.国内における訪問看護と訪問介護の事業所および職員を対象としたチーム活動研究は,実践報告からチーム活動の必要性や理念を強調する論文9),10),アセスメント情報の把握が職種により異なる点から,チーム活動の必要性11)を強調した論文がある.また,訪問看護と訪問介護従事者の連携内容を抽出し12),両者の相互作用を類型化した質的研究13)などがある.しかし,三事業所の三職種を対象としたチーム活動の様相を捉えた研究やチーム活動を向上するために,チーム活動と関係する要因を探索する研究は,筆者が調べたところ見当たらず,量的調査を基にした実証的研究も行われていない.
チーム活動に影響を与える要因として,専門職個人の技量に加えて,利用者や職場の人との人間関係,個人が有する経験や知識,給与や労働環境といった外部環境の影響を受ける14),15)ことが指摘されているが,三職種が所属する事業所の特性や職場環境との関連を探索した研究もみられない.そこで,本研究では三事業所の三職種を対象に,個人特性,事業所特性および職場環境の側面からチーム活動と関連する要因を明らかにすることとした.チーム活動と関連する要因を明らかにする研究を行うことで,チーム活動を促進するために必要な現任教育内容,整えるべき職務環境など,在宅療養高齢者ケアのための人材開発及び所属組織改善において取り組むべき課題が明確になり,在宅療養高齢者ケアの質向上に役立つと考える.
本研究の目的は,訪問看護事業所の看護職,訪問介護事業所のサービス提供責任者,居宅介護支援事業所の介護支援専門員が,チーム活動をどの程度実践できていると思っているのかを評価し,チーム活動の実践に関連する要因を,個人特性(チーム活動経験,介護経験,保険外サービスの情報,チームメンバーの役割と責任など),事業所特性(経営状況,研修体制),職場環境(連携時間の確保,利用者との関係,上司・同僚との関係)の側面から明らかにすることである.
本研究におけるチーム活動は,先行研究16)を参考に「三職種が在宅療養高齢者のその人らしい人生を完成させるという共通目標を達成するために協力して働くこと」と操作的に定義した.
2. 調査対象と方法調査対象者は,2010年9月時点でWELFARE AND MEDICAL SERVICE NETWORK SYSTEMに登録されている近畿圏の訪問看護事業所(1,266か所)の看護職,訪問介護事業所(6,646か所)のサービス提供責任者,居宅介護支援事業所(6,568か所)の介護支援専門員とした.各事業所500か所を無作為抽出し,各事業所1名に回答を求めた自記式質問紙を用いた郵送調査を実施した.調査方法は横断的調査法であり,調査期間は,2010年10月の約1か月間である.倫理的配慮として,データを数値化しプライバシー保護に努めること,調査の趣旨に同意が得られない場合は回答を行う必要がない旨を調査依頼書に記載した.また,本研究は,京都女子大学臨床研究倫理審査委員会の承認を得て実施した.
3. 調査項目 1) 基本属性基本属性は,性別,年齢,在宅・地域関連経験年数,雇用形態などを設定し,これらをコントロール変数とした.
2) 独立変数独立変数は,「個人特性」「事業所特性」「職場環境」に関する項目を設定した.「個人特性」では,チーム活動能力は自然に身につくものではないという主張14)があることから「チーム活動経験」「身近な人への介護経験」の2項目を設定した.チーム活動の阻害要因として,連携に関する知識の欠如18)が指摘されていることから,「介護保険制度外の社会資源,各資源の特徴(以下,保険外サービスの情報)」「医療的ケアにおける介護職の業務制限など,チームメンバーの役割と責任(以下,チームメンバーの役割と責任)」「在宅高齢者および家族が最も信頼しているチームメンバー(以下,利用者が信頼しているチームメンバー)」の3項目について,「知っている・知らない」の回答を設定した.また,チーム活動を阻むものとして職種による上下関係の存在が指摘されている18)ことから「職種による上下関係がある」と思うかを,チーム活動にはその技術を獲得する必要がある17)と述べられていることから,「連携の技術や知識を高めたい」と思うかを設定した.
事業所特性では,過重な労働負荷15)や研修体制19)との関係が示唆されていることから「事業所の種類」「経営状況」「職場内現任研修」「職場外連携研修」の4項目を設定した.
職場環境では,ケアの質に影響を与える誘因として,利用者の影響や組織の労働環境が主張されている14),15)ことから,「連携時間の確保」「利用者との良好な関係」「上司・同僚との良好な関係」「報酬への満足」に関する13項目を設定した.
3) 従属変数従属変数であるチーム活動の項目作成にあたり,まず,グループインタビュー法を用いた三職種のチーム活動の事例研究から,チーム活動の行動特性を119項目抽出20),21)した.また,先行研究22),23),23),25)から看護と介護のチーム活動の行動特性を16項目追加し計135項目のアイテムプールを作成した.次に,訪問看護師とホームヘルパーの関係を形成する行動パターンの8分類13)を参考に,1分類につき数項目ずつチーム活動の項目案(41項目)を作成した.さらに,看護師,介護福祉士,社会福祉士の資格と介護支援専門員を併せ持つ研究者3名で質問内容の選定やワーディングの修正を行い項目の内容妥当性を高める作業を行った.その後,三職種の実践者にエキスパートレビュー,プリテストを行い,最終的にチーム活動25項目を作成した.
本研究ではチーム活動を三職種が協力して働くことと定義していることから,回答選択肢は回答者の実践の意識を評価することとした.具体的には,どの程度できているのかという質問文に対し,「実践できていない(1点)」「あまり実践できていない(2点)」「少し実践できている(3点)」「大体実践できている(4点)」「実践できている(5点)」の5段階選択肢を設定した.
4. 分析方法 1) 職場環境およびチーム活動を測定する尺度の信頼性と妥当性の検討職場環境13項目とチーム活動25項目のヒストグラムが正規分布に近いことを確認後,天井効果とフロア効果を検討した(表1).信頼性の検討は,G-P分析,I-T相関およびCronbachのα係数を用いた26).妥当性は,因子分析(主因子法・プロマックス回転)を行い,抽出した下位尺度毎に主成分分析を行い,下位尺度に1因子性が成り立つことを確認した.
質問項目 | 度数 | 最小値 | 最大値 | 平均値 | SD | 平均-SD | 平均+SD | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1. | チームメンバー間の情報共有の必要性について,在宅高齢者および家族の理解を得る | 781 | 1 | 5 | 3.98 | .79 | 3.18 | 4.77 |
2. | 身体的,心理的,経済的負担の軽減など高齢者の利益を優先して,ケアに必要な情報をチームメンバーから積極的に収集する | 781 | 1 | 5 | 3.91 | .77 | 3.15 | 4.68 |
3. | チーム活動によって在宅高齢者の理解を深め,他職種から専門的知識・技術を学び,自身のケアに活かす | 779 | 1 | 5 | 3.60 | .87 | 2.73 | 4.48 |
4. | 身体的,心理的,経済的負担の軽減など在宅高齢者の利益を最大にするために連携を行うようチームメンバーに働きかける | 779 | 1 | 5 | 3.69 | .88 | 2.82 | 4.57 |
5. | チームメンバーの専門性を尊重し,対等な関係を形成する | 780 | 1 | 5 | 3.77 | .90 | 2.87 | 4.67 |
6. | 必要時には情報共有のために時間をかけることの大切さを,チームメンバーに説明する | 777 | 1 | 5 | 3.38 | 1.02 | 2.36 | 4.40 |
7. | チームメンバーの教育背景や実践経験を把握し,メンバー間の役割を柔軟に捉えてチームに協力する | 780 | 1 | 5 | 3.40 | .97 | 2.43 | 4.37 |
8. | それぞれの専門職としての役割と限界を認識し,チームにどのように貢献できるかを検討し,メンバーの役割を補う | 778 | 1 | 5 | 3.41 | .94 | 2.47 | 4.35 |
9. | チームとしての信頼性を高めるために,他のチームメンバーと高齢者および家族の間に形成されている信頼関係を活用する | 778 | 1 | 5 | 3.61 | .89 | 2.72 | 4.50 |
10. | 在宅高齢者の意思表示が明瞭な時期に,意思を多角的に把握し,その思いをチームメンバーと確認する | 779 | 1 | 5 | 3.60 | .90 | 2.71 | 4.50 |
11. | チームメンバーが援助を実践する上で不安を感じた場合,不安を傾聴し,助言を行う | 781 | 1 | 5 | 3.71 | .87 | 2.85 | 4.58 |
12. | 家族関係の変化や,家族の介護への関わり方の変化を継続的に把握し,それらをチームメンバーに情報提供する | 781 | 1 | 5 | 3.88 | .77 | 3.11 | 4.65 |
13. | 家族の思いを継続的に把握し,家族間の意見がずれていることに気づいたときにはチームで共有し,家族の思いを再確認するようチームメンバーに働きかける | 781 | 1 | 5 | 3.71 | .84 | 2.87 | 4.55 |
14. | 在宅高齢者がサービスを利用することを受容する過程に合わせて,チームメンバーの役割を変化させることを提案する | 777 | 1 | 5 | 3.34 | .98 | 2.36 | 4.32 |
15. | 在宅高齢者の生活状況の変化を予測し,チームの支援課題として捉え今後の対応方法を提案する | 779 | 1 | 5 | 3.48 | .91 | 2.57 | 4.38 |
16. | 他のチームメンバーが相談のためにいつでも来訪できるよう,事業所に立ち寄りやすいような雰囲気づくりを行う | 778 | 1 | 5 | 3.53 | .99 | 2.54 | 4.51 |
17. | チームメンバーへの報告の必要性とタイミング,さらに,報告先のチームメンバーを適切に判断する | 777 | 1 | 5 | 3.61 | .85 | 2.77 | 4.46 |
18. | 在宅高齢者の身体的,精神的,社会的な状況の変化がある場合には迅速に情報の共有を図る | 779 | 1 | 5 | 3.98 | .80 | 3.18 | 4.78 |
19. | チームメンバーに対してわかりやすい言葉と適切な文章表現で情報提供する | 780 | 1 | 5 | 3.84 | .79 | 3.06 | 4.63 |
20. | チームメンバー間で疾患に関する知識を共有するよう働きかける | 781 | 1 | 5 | 3.54 | .91 | 2.63 | 4.45 |
21. | 目的や状況によって「連絡ノート」「電話」「会議」など最も望ましい連絡手段を選択する | 777 | 1 | 5 | 4.10 | .79 | 3.31 | 4.89 |
22. | ケアの具体的内容を視覚的に把握できることや,時系列で把握するなど,ノートによる情報共有のあり方を工夫する | 775 | 1 | 5 | 3.43 | 1.07 | 2.36 | 4.50 |
23. | 緊急を要する場合など,介護職又は看護職が介護支援専門員の役割を代替して直接関係機関との連絡調整等を行う | 777 | 1 | 5 | 3.73 | 1.00 | 2.73 | 4.72 |
24. | チームという発想をもち,チームメンバーのそれぞれに割り当てられた役割を果たす | 775 | 1 | 5 | 3.75 | .88 | 2.87 | 4.63 |
25. | チームメンバーからの助言をチーム全体で受け止めて,チームの一員として課題を解決する | 776 | 1 | 5 | 3.70 | .86 | 2.84 | 4.56 |
基本属性(性別はダミー変数,年齢・経験年数は月数),個人特性と事業所特性(ダミー変数),職場環境(因子得点)を独立変数とし,チーム活動の下位尺度の因子得点を従属変数とする重回帰分析を行った.統計分析には,SPSS17.0 for Windowsを用いた.
有効回収数は781票(有効回収率52.1%)であった.調査対象者の基本属性結果は,表2に示す.
基本属性項目 | n(人数) | % | |
---|---|---|---|
性別 | 女性 | 651 | 83.8 |
男性 | 126 | 16.2 | |
年齢 | 20代 | 17 | 2.1 |
30代 | 148 | 19.1 | |
40代 | 300 | 38.2 | |
50代以上 | 310 | 40.1 | |
最終学歴 | 中学校 | 9 | 1.2 |
高校 | 185 | 23.8 | |
専門学校 | 323 | 41.6 | |
短大 | 108 | 13.9 | |
大学 | 147 | 18.9 | |
大学院 | 4 | 0.5 | |
職種 | 訪問看護事業所の看護職 | 237 | 30.3 |
サービス提供責任者(訪問介護) | 257 | 32.9 | |
介護支援専門員(居宅介護支援) | 287 | 36.7 | |
業務形態 | 専任 | 500 | 64.7 |
兼任 | 273 | 35.3 | |
職位 | 管理者 | 530 | 68.3 |
実務者 | 246 | 31.7 | |
雇用形態 | 正規職員 | 747 | 96.3 |
非正規職員 | 29 | 3.7 | |
在宅・地域関連経験年数 | 5年未満 | 133 | 17.6 |
5年以上10年未満 | 329 | 43.6 | |
10年以上15年未満 | 204 | 27.0 | |
15年以上 | 89 | 11.8 | |
専門職としての経験年数 (在宅・地域関連経験年数を除く) | 5年未満 | 122 | 18.7 |
5年以上10年未満 | 193 | 29.6 | |
10年以上15年未満 | 148 | 22.7 | |
15年以上20年未満 | 73 | 11.2 | |
20年以上 | 115 | 17.7 | |
身近な人への介護体験の有無 | あり | 458 | 58.6 |
なし | 319 | 40.8 | |
チーム活動経験の有無 | あり | 680 | 87.1 |
なし | 90 | 11.7 | |
注)項目ごとに欠損値を省いているため,n=781にならない項目がある |
職場環境は,因子負荷量が0.40に満たなかった2項目を除外して2回因子分析を行った結果,固有値1以上の因子が4因子抽出され,累積寄与率は61.8%であった.第1因子から順に『連携時間の確保』『利用者との良好な関係』『上司・同僚との良好な関係』『報酬への満足』と命名した.因子別のCronbachのα係数は0.7以上であった.
次に,チーム活動の項目は,固有値1以上の因子が3因子抽出され,累積寄与率は57.4%であった.第1因子から順に『チーム活動の具体的方法』『チームメンバー間の相互支援活動』『チームケアの基盤』と命名した(表3).因子別のCronbachのα係数は0.85以上であった.下位尺度毎に主成分分析を行った結果,それぞれ固有値1以上の主成分が1つ抽出され,成分負荷量は0.67以上であった.
職場環境とチーム活動の項目の信頼性の検討を行った結果,G-P分析において,0.1%水準で高群と低群間に有意差がみられ,I-T相関においても正の相関を有していた.したがって,職場環境とチーム活動の項目は,一定の信頼性,妥当性を有すると判断し間隔尺度として分析を進めた.
質問項目 | 因子 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 3 | ||||
チーム活動の具体的方法 | 目的や状況によって「連絡ノート」「電話」「会議」など最も望ましい連絡手段を選択する | .842 | -.276 | .147 | ||
チームメンバーからの助言をチーム全体で受け止めて,チームの一員として課題を解決する | .711 | .182 | -.061 | |||
チームという発想をもち,チームメンバーのそれぞれに割り当てられた役割を果たす | .687 | .076 | .063 | |||
ケアの具体的内容を視覚的に把握できることや,時系列で把握するなど,ノートによる情報共有のあり方を工夫する | .661 | .128 | -.159 | |||
緊急を要する場合など,介護職又は看護職が介護支援専門員の役割を代替して直接関係機関との連絡調整等を行う | .610 | .018 | -.052 | |||
チームメンバーに対してわかりやすい言葉と適切な文章表現で情報提供する | .603 | -.125 | .302 | |||
在宅高齢者の身体的,精神的,社会的な状況の変化がある場合には迅速に情報の共有を図る | .581 | -.083 | .301 | |||
他のチームメンバーが相談のためにいつでも来訪できるよう,事業所に立ち寄りやすいような雰囲気づくりを行う | .571 | .250 | -.185 | |||
チームメンバーへの報告の必要性とタイミング,さらに,報告先のチームメンバーを適切に判断する | .532 | .180 | .097 | |||
家族関係の変化や,家族の介護への関わり方の変化を継続的に把握し,それらをチームメンバーに情報提供する | .482 | .204 | .163 | |||
チームメンバー間で疾患に関する知識を共有するよう働きかける | .477 | .214 | .085 | |||
チームメンバー間の相互支援活動 | チームメンバーの教育背景や実践経験を把握し,メンバー間の役割を柔軟に捉えてチームに協力する | -.069 | .893 | -.029 | ||
必要時には 情報共有のために時間をかけることの大切さを,チームメンバーに説明する | -.114 | .804 | .095 | |||
それぞれの専門職としての役割と限界を認識し,チームにどのように貢献できるかを検討し,メンバーの役割を補う | -.032 | .761 | .112 | |||
在宅高齢者がサービスを利用することを受容する過程に合わせて,チームメンバーの役割を変化させることを提案する | .218 | .657 | -.077 | |||
チームとしての信頼性を高めるために,他のチームメンバーと高齢者および家族の間に形成されている信頼関係を活用する | .021 | .622 | .171 | |||
チームメンバーが援助を実践する上で不安を感じた場合,不安を傾聴し,助言を行う | .311 | .521 | -.044 | |||
在宅高齢者の生活状況の変化を予測し,チームの支援課題として捉え今後の対応方法を提案する | .349 | .479 | .008 | |||
チーム活動によって在宅高齢者の理解を深め,他職種から専門的知識・技術を学び,自身のケアに活かす | -.036 | .441 | .381 | |||
家族の思いを継続的に把握し,家族間の意見がずれていることに気づいたときにはチームで共有し,家族の思いを再確認するようチームメンバーに働きかける | .302 | .435 | .088 | |||
在宅高齢者の意思表示が明瞭な時期に,意思を多角的に把握し,その思いをチームメンバーと確認する | .233 | .430 | .129 | |||
チームケアの基盤 | チームメンバー間の情報共有の必要性について,在宅高齢者および家族の理解を得る | -.003 | -.030 | .796 | ||
身体的,心理的,経済的負担の軽減など高齢者の利益を優先して,ケアに必要な情報をチームメンバーから積極的に収集する | -.026 | .158 | .713 | |||
チームメンバーの専門性を尊重し,対等な関係を形成する | .034 | .140 | .605 | |||
身体的,心理的,経済的負担の軽減など在宅高齢者の利益を最大にするために連携を行うようチームメンバーに働きかける | -.012 | .387 | .482 | |||
因子間相関 1因子 | ― | .752 | .719 | |||
2因子 | ― | .732 | ||||
Cronbach α | .916 | .933 | .857 | |||
KMO標本妥当性0.97 |
チーム活動に関連する要因を分析した結果(表4),重回帰モデルの調整済み決定係数(R2)は,第1因子から順に「.401」「.309」「.334」であり,モデルの有効性を示す分散分析は全因子において0.1%水準で有意であった.したがって,これらの重回帰モデルは有効であると判断した.独立変数のVIF値は1.04~1.94であり,いずれも多重共線性が疑われるとされる2よりも低い値であった.
要因 | 1因子 | 2因子 | 3因子 | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
チーム活動の具体的方法 | チームメンバー間の相互支援活動 | チームケアの基盤 | |||||||||
標準化係数(β) | t値 | 有意差 | 標準化係数(β) | t値 | 有意差 | 標準化係数(β) | t値 | 有意差 | |||
基本属性 | 性別 ダミー(男性=0,女性=1) | .086 | 2.572 | * | .068 | 1.893 | .091 | 2.579 | * | ||
年齢 | -.068 | -1.951 | -.040 | -1.067 | -.025 | -.691 | |||||
在宅・地域関連経験年数 | .039 | 1.130 | .036 | .990 | .044 | 1.233 | |||||
個人特性 | 経験 | チーム活動経験 ダミー(なし=0,あり=1) | .040 | 1.156 | .022 | .589 | .054 | 1.480 | |||
身近な人への介護経験 ダミー(なし=0,あり=1) | .031 | .939 | .074 | 2.107 | * | .003 | .092 | ||||
知識 | 保険外サービスの情報 ダミー(知らない=0,知っている=1) | .130 | 3.641 | *** | .160 | 4.159 | *** | .140 | 3.716 | *** | |
チームメンバーの役割と責任 ダミー(知らない=0,知っている=1) | .089 | 2.341 | * | .015 | .381 | .054 | 1.353 | ||||
利用者が信頼しているチームメンバー ダミー(知らない=0,知っている=1) | .139 | 3.808 | *** | .110 | 2.799 | ** | .080 | 2.083 | * | ||
考え | 連携の技術や知識を高めたい ダミー(思わない=0,思う=1) | .061 | 1.796 | .081 | 2.232 | * | .117 | 3.291 | ** | ||
職種による上下関係がある ダミー(思わない=0,思う=1) | -.007 | -.205 | -.046 | -1.272 | -.068 | -1.940 | |||||
事業所特性 | 事業所 ダミー1(訪問介護=1,訪問看護と居宅=0) | .104 | 2.770 | ** | .080 | 1.971 | * | -.012 | -.305 | ||
事業所 ダミー2(訪問看護=1,訪問介護と居宅=0) | .115 | 3.062 | ** | .099 | 2.471 | ** | -.034 | -.873 | |||
経営状況 ダミー1(分岐点=1,黒字・赤字=0) | -.051 | -1.486 | -.035 | -.950 | .014 | .383 | |||||
経営状況 ダミー2(赤字=1,黒字・分岐点=0) | .001 | .030 | -.023 | -.630 | -.026 | -.734 | |||||
職場内現任研修 ダミー(なし=0,あり=1) | .095 | 2.912 | ** | .076 | 2.154 | * | .099 | 2.856 | ** | ||
職場外連携研修 ダミー(なし=0,あり=1) | .050 | 1.546 | .107 | 3.052 | ** | .072 | 2.104 | * | |||
職場環境 | 連携時間の確保 (3項目のCronbach α=.91) | .051 | 1.307 | .062 | 1.478 | .024 | .569 | ||||
利用者との良好な関係 (3項目のCronbach α=.82) | .286 | 7.492 | *** | .256 | 6.246 | *** | .285 | 7.066 | *** | ||
上司・同僚との良好な関係 (3項目のCronbach α=.72) | .141 | 3.274 | ** | .086 | 1.861 | .127 | 2.784 | ** | |||
報酬への満足 (2項目のCronbach α=.70) | -.028 | -.697 | -.036 | -.826 | -.069 | -1.613 | |||||
調整済み重相関決定係数(R2) | .401 | .309 | .334 | ||||||||
F値 | F(20, 604)=21.85*** | F(20, 604)=14.98*** | F(20, 604)=16.62*** |
***:p<.001,
**:p<.01,
*:p<.05
個人特性の「保険外サービスの情報」「利用者が信頼しているチームメンバー」がチーム活動の全因子に対して正の関連を示していた.介護保険制度上のケアプランに直結せずとも,日頃から保険外情報を把握することがチーム活動に影響を与えることが示唆された.また,「利用者が信頼しているチームメンバー」を知ることがチーム活動に影響を与えていることが示唆された.利用者が信頼しているチームメンバーを知ることは,利用者の意向を最も把握している人を知ることにつながり,職種としての支援に必要な情報が得られるために,関連が見られたと考える.
「チームメンバーの役割と責任」が第1因子と正の関連を示していた.この因子は,チームとしての課題を解決するために自身の役割を果たすと同時に代替機能を果たすことを問う項目であり,役割と責任の知識を持つ人はこのようなチーム活動実践が行え,チームとして混乱が生じないよう行動していることが示唆された.
「介護経験」は,第2因子と弱い関連を示した.介護経験がある人は,チーム活動を体験的に把握でき,質向上のためにどのように行動するのかが分かるので関連がみられたと考える.一方,チーム活動経験はいずれの因子に対しても関連がなかった.Laura27)は,ソーシャルワーカーの連携の自己評価が,ポジティブな連携経験と相関していると報告しており,チーム活動経験の質を問うことが必要であったと考える.
「職種による上下関係がある」は,全因子と関連が見られなかった.「職種による上下関係がある」と思う人は,職種による上下関係を認識することで,心理的な垣根をつくり,チーム活動が抑制されるのではと考えたが,三職種は利用者利益を優先してチーム活動を行っていることが示唆された.
「連携の技術や知識を高めたい」は第2因子および第3因子との関連を示していた.在宅・地域関連経験年数がどの因子においても関連していなかったことから,チーム活動は単に経験を積むだけでは向上せず,意識してその技術を獲得するものであることが示唆された.自身の役割を明確にし,交渉する能力は自然に身につくものではなく,獲得するものであるという主張17)を裏付ける結果であった.
2. 事業所特性との関連事業所特性の「職場内現任研修」がチーム活動の全因子に対して正の関連を示していた.職場内現任研修体制の有無がチーム活動に影響を与えていることが明らかとなった.一方,「職場外連携研修」は第2因子および第3因子に対して正の関連を示していた.職場内における現任研修は,身近な事例に関する研修が企画されるため,チーム活動実践の具体的行動の向上が図れるので,このような結果になったと推察する.「職場外連携研修」は,チーム活動の具体的な行動よりは,事業所外の専門職との交流から,三職種のチーム活動の質向上の方法やチーム活動を行うために必要な行為や基盤を整えることに役立つことが示唆された.
「事業所ダミー1」と,「事業所ダミー2」が第1因子および第2因子に対して正の関連を示していた.居宅介護支援事業所は,介護保険の給付管理業務を行うことに加えて,チーム活動を促進する役割を担っている.訪問看護や訪問介護事業所とはチーム活動の様相が異なるためにこのような結果になった可能性が有る.
3. 職場環境との関連職場環境では,「利用者との良好な関係」が全因子に強い正の関連を示していた.「利用者との良好な関係」がとれていると認識している人とチーム活動の実践が関連していた.利用者との関係が築かれていることは,情報収集が容易に行え,チームメンバーへの情報提供が可能となること,また,利用者との信頼関係が深まり,さらに,チーム活動に活かせることからチーム活動と関連していたと考える.松井ら19)は連携の自己評価と対人援助技術との関連を示唆している.本研究においてもチーム活動と対人援助技術との関連が示唆され,松井らの研究を支持する結果であった.
「上司・同僚との良好な関係」が第1因子および第3因子に対して正の関連を示していた.職場内で相談できる人間関係があることが推測され,チーム活動を進めていくためのスーパービジョン体制が整備されている可能性がある.したがって,三職種が戸惑うことなく,他職種とのチーム活動を円滑に進めていけると考える.チーム活動を向上するには事業所内の人間関係を良好に保つ職務管理が求められる.
事業所特性の「経営状況」,職場環境の「連携時間の確保」および「報酬への満足」は,全因子と関連を示さなかった.チーム活動にこれらが影響すると考えモデルを構築したが, 三職種の職業倫理に他職種協働が規定されており24),25),26),経営状況や報酬および連携時間の確保に関わらず,専門職の役割としてチーム活動を実践していることが明らかとなった.Laura27)の研究においても,連携の自己評価と連携時間との相関がなく,本研究結果を支持していた.この結果は,三職種が利用者利益のために高い倫理観を所持しつつチーム活動を行っていることの現れであり,職業倫理教育の重要性を増すものと考える.しかし,職業倫理でチーム活動の質を維持することには限界があり,適切な労働環境を整えるための研究が必要である.
以上の結果から,三職種のチーム活動は,在宅ケアの経験を重ねるだけでは身に付かず,職場内現任研修や職場外連携研修などでその必要性に気づき,日常的に保険外サービス情報や利用者が信頼しているチームメンバーを把握すること,利用者との良好な関係を築くことと,同時に,人間関係が良好な職場環境にすることで向上すると考えられる.久保15)は,チーム活動にはコミュニケーションの側面を避けて通れないと述べているが,直接ケア同様,利用者との良好な関係がチーム活動の大きな影響要因であることが明らかとなった.チーム活動を促進するためには,三職種の基礎教育や現任研修において,利用者との良好な関係づくりの知識・技術教育が,チームアプローチ教育よりも重要であることが示唆された.
三事業所に従事する三職種のチーム活動と関連がみられた要因は,標準化係数(β)の大きい順に,「利用者との良好な関係」「上司・同僚との良好な関係」「利用者が信頼しているチームメンバー」「保険外サービスの情報」「職場外連携研修」「職場内現任研修」であった.チーム活動には,利用者および家族,上司・同僚などとの人間関係が強く関連していることが明らかとなった.また,介護保険サービスだけでなく保険外のサービス情報を把握すること,事業所内に職場内現任研修と職場外連携研修が整備されていることがチーム活動と関連していることが明らかとなった.
本研究の限界として,チーム活動の実践を意識の側面から把握しており,実践そのものを把握していないこと,職場環境においても調査対象者の認識の側面から把握していることがあげられる.また,調査対象が近畿圏にある事業所の三職種を対象としているので一般化には及んでいないこと,チーム活動の項目はある一定の信頼性,妥当性を有しているが再テスト法や基準関連妥当性の検証を行なっていないことがあげられる.今後,チーム活動の項目の精度を向上し,調査対象者を拡大していく必要がある.
なお,本研究は,大阪ガスグループ福祉財団平成21年度「調査・助成」を受けて実施した研究の一部である.