Nursing Journal of Kagawa University
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Consideration of Support for Local Voluntary Organizations that Work to Resolve Local Health Issues
Consideration of Support for Local Voluntary Organizations that Work to Resolve Local Health Issues
-One Year Activity Process Evaluation-
Yumiko Morinaga
Author information
RESEARCH REPORT / TECHNICAL REPORT OPEN ACCESS FULL-TEXT HTML

2020 Volume 24 Issue 1 Pages 1-10

Details
要旨

目的

保健・福祉に関連した健康課題解決に向けて活動する地域組織の自主的活動の経過(プロセス)を評価し,活動を継続的に展開していくための支援のあり方を明らかにすること.

方法

地域自主組織と共に活動しアクションリサーチで得られた質的データを分析する質的帰納的記述研究である.地域自主組織の活動を「構成員の状況」,「研究者からみた組織の動き」で整理し,プロセス評価を行い検討した.

結果

地域自主組織の活動プロセスとして1)意気の高揚期,2)一進一退期,3)能動的なチームワーク形成期,4)活動方向と組織ビジョンに基づく活動期の4段階期で示されるチームワーク構築プロセスがあった.また,地域自主組織活動を行う組織・構成員に関するあり方として,【客観的に組織の状況を見極められる支援者を得ること】,【各構成員が活動目的やその成果の方向性,役割認識を持って動ける自律性】があった.

考察

地域自主組織活動プロセスにおいて組織内に解決課題を焦点化したチームを1つ築くというチームビルディング理論を踏まえた支援と活動プロセスの段階に応じた支援を行う必要があることが示唆された.客観的に状況を見極められる支援者を得るという組織としての姿勢や各構成員が活動目的やその成果の方向性,役割認識を持って動ける自律性をもつという,組織に所属する個人の変化が組織の活動に影響するため,個人のエンパワメントを踏まえた支援が活動の継続に有効であることが示唆され,組織を客観的にみてタイミングよい支援を行うことが継続的活動に効果的であると考えられた.

結論

地域包括ケアシステムの運用において,地域自主組織の有意義な活動で役割発揮が期待できるため,地域の自立した自主組織であっても,活動段階を見極め,チームビルディング理論を用いて組織内でチームワークを構築するという視点での支援や,客観的視点での助言を行う等の支援が必要となることが示唆された.

Summary

〔Purpose〕The purpose of this study was to evaluate the process and progression of voluntary activities for local voluntary organizations that are working towards resolving health care and welfare issues. Further, we aimed to clarify the ideal way to provide external support to continuously develop these activities.

[Methods]This was a qualitative descriptive study that involved work with local voluntary organizations and analyzed qualitative data obtained through action research. We organized the activities of a local voluntary organization based on “the situation of the members” and “the movement of the organization from the viewpoint of the researcher”, then evaluated and examined the process used to resolve health issues related to health and welfare.

[Results]A team construction process was identified that included four activity stages for the local voluntary organizations: 1) a motivation increasing period, 2) a progression and withdrawal period, 3) an active teamwork period, 4) an activity direction and organizational vision period.

There were two ideal ways for assisting organization members who executed local voluntary organization activities. The first was to obtain supporters who can objectively determine the status of the organization and the second was to have autonomy so that each member was aware of the purpose of the activity, direction of the result, and role.

[Conclusion]Based on the characteristics of the stages identified for the local voluntary organization activity process and the theory of team building that focuses on solving issues within the organization according to the stage of the activity process, two recommendations were made to assist the organizations. The first was to obtain external support and the second was to ensure that each member has the autonomy to influences the activity of the organization. In addition, it was suggested that support based on individual empowerment was effective for continuation of activities and it was considered effective that provided in a timely manner with an objective view to the organization, too.

緒言

どんな健康状態となっても,できる限り住み慣れた地域で安心して生活を継続できる環境の整備として,国は地域包括ケアシステムなどの構築を推進している1).しかしながら,地方行政の限られた財源や実施体制の行政のみで地域包括ケアシステムの構築は行えないとして,行政や専門職の代替としての位置づけでなく,住民の意志に基づく住民による手立てでの積極的な互助の活用も不可欠だと提示され2),地域において自立的かつ住民互助で取り組みを行う活動への期待が高まっているといえる34)

近年,地域において保健・福祉に関連して自主的に何らかの支援や助け合いに関する活動を行っている住民主体の組織活動が複数存在している56).とりわけ保健医療福祉分野における地域組織においては行政主導型が多いが,活動を進める中で次第に地域住民が組織という活動体で目的を持ち自主的な活動の組み立てや運営ができるようになっている.34789).一方,地域の住民組織の多くは,問題意識や活動したい方向性が同じ者らによって自主的に活動をしているものの,イベント的な実施だけに止まり,本来の課題解決に至っていないことや,活動のための話し合いを進める中で,構成員間の些細な活動目的の不一致で,途中で頓挫・自然消滅していることもある.地域自主組織の活性化や持続性については重要な課題であり10)1112),この課題への対応は,地域包括ケアシステム構築における互助への一助になると考えられている3).そこで“地域において自主的な活動ができる組織”(以下,地域自主組織という)が,地域で継続的に活動を展開していくための要件が分かれば,互助を一層推進することが可能だと考えた.地域包括ケアシステムにおいて地域自主組織が有効に機能できるよう,システムに関わる行政の専門職も適宜支援する必要がある413)

地域において活動の目的意識を同じとした者同士が集まり,行政等の主導により活動していたグループで,少しずつグループのメンバーが主体的になり,グループが自立して活動ができるようになる13),いわゆる「自主化」に関しては,段階的経過をたどること,自主化に向けた支援のあり方については明らかにされている413).特に,行政が住民自主グループの活動を支援する際の役割として重要なのは,情報提供と機会の提供であると言われている14).そして自主化に向けて関わった自治体は,自主化されてもその組織との距離が近く,協働的関係であるにしても,なかなか自立しているとは言い難い場合もある151617).地域の健康課題解決に主体的に取り組むようなすでに自主化された組織がどのような活動の段階を踏み,組織を構成する構成員がどのような意識や思いをもって活動していけば持続できるのかを明らかにしたものはなく,あくまで自主的活動を原則としている地域自主組織への支援のあり方を検討できる材料は少ない.したがって地域自主組織活動の経過(プロセス)を評価し(以下,プロセス評価という),地域自主組織としての活動を継続的に展開していくための活動のプロセス及び組織・構成員のあり方を明らかにし,支援のあり方を検討する必要があると考えた.地域自主組織への支援のあり方が検討できれば,自立した自主組織が地域包括ケアシステム内において,継続的に互助としての役割を担うことが期待できる.

研究目的

本研究では,保健・福祉に関連した健康課題解決に向けて活動する地域組織の自主的活動の経過(プロセス)を評価し,活動を継続的に展開していくための支援のあり方を明らかにすることとした.

研究方法

1. 研究デザイン

本研究は,研究者が地域自主組織と共に活動し,3年間のアクションリサーチ18)において得られた質的データについて分析する質的帰納的記述研究とする.研究者は,地域の健康課題解決に向けて活動する地域自主組織の構成員としても話し合いに参加し,必要時最小限の助言は行うが,最終的には組織としての結論となるようプロセスをモニタリングする.

2. 対象

対象は,医療と介護の機能が破綻しないために,「地域で住民同士が健康づくりや介護予防,医療や介護に関する知識や技術の力をつけ合い,それを踏まえた地域での支えあいができれば,地域の介護力として担保できるのではないか」という問題意識をもち,地域の介護力強化を目的とした活動を行う地域自主組織A(以下,組織Aという)とその構成員とした.

組織Aは,「専門的な知識・技術をもって地域に居住し,かつ働いている住民」で構成されており,一般的な「地域住民」で構成された地域組織ではない.組織としての活動をイベント実施に終わらせず,いかに地域に定着かつ持続的に地域の介護力強化を目的とした活動の展開をしていくかを念頭に置いた組織である.この組織Aに構成員兼研究者として,地域組織活動支援経験のある公衆衛生看護学が専門の研究者(40歳代)が加わっている.

組織Aの構成員22名の内訳は次の通りである.年齢は,10歳代後半1名,20歳代2名,30歳代5名,40歳代3名,50歳代5名,60歳代5名,70歳代1名で年齢のばらつきのある組織である.男女比は13:9である.職種は,医師,歯科医師,ケアマネージャー,社会福祉法人理事,元行政保健師,元総合病院看護師長,栄養改善協議会会長,認知症家族の会会長,救急救命資格をもつ学生,社会福祉協議会職員,行政職員(看護師・管理栄養士),元PTA会長,ロボット開発者,介護領域の指導・教育経験等のある者等である.

3. 用語の操作的定義

地域自主組織:地域で居住かつ働いている人々によって構成され,地域で健康づくりや健康課題を解決する目的で組織されたグループ.行政主導でなく構成員自らが活動の組み立て及び運営を行う自主的・自立的な活動体とする.

4. データ収集方法

対象となる組織Aで月1回実施する活動内容の企画等のための話し合い(以下,会議という)に参加し,組織Aが地域介護力強化を目指した取り組み(以下,実践活動という)について検討する会議内容をICレコーダーで録音したもの,議事録,会議に組織Aの構成員としても参加している研究者の観察記録(会議での構成員の発言・様子,研究者の気づき等)を質的データとして収集した.研究者が作成した記録は,組織Aの構成員と共有・確認し,個人の意見による偏りがないよう注意深く作成した.データ収集期間は,平成27年4月~平成28年3月とした.

5. 分析方法

活動経過において会議場面の録音内容,議事録,観察記録等で研究者が収集した質的データを,継続的な活動とする展開のあり方を視点19)20)として逐語録及び議事録・観察記録からキーセンテンスを抽出した.また,「構成員の状況」,「研究者からみた組織Aの動き」について時系列で書き出した.次に「構成員の状況」を踏まえ「研究者からみた組織Aの動き」を活動の継続性に関連することと組織が活動を行っていくプロセスに着目して客観的に整理した.整理した内容は組織Aに提示し,表現等の意味に齟齬がないか確認しながら検討を進めた.

組織Aの構成員が実際に行った実施内容や発言・感想等を「構成員の状況」とし,この状況で意図したことやどのような状態であったかを組織Aと研究者で振り返り,プロセス評価を行った.その後,表現の修正や確認を常に組織Aと一緒に複数回行い妥当性・客観性を確認しながら分析を進めた.活動の経過(プロセス)のまとめは,すでに自立した地域自主組織の活動プロセスや状態についての先行研究が見当たらなかったため,グループが自主的な活動に向かうプロセス及び組織の成長過程39)を参考にし,地域自主組織としての状態変化の観点で質的に分析した.

6. 倫理的配慮

組織Aの構成員に,活動のプロセスや,組織の状態等に関して探索(記録,分析等)をすること,個人が特定されないこと,活動におけるプロセス評価の内容は構成員と共有することについて会議時に全員の了承を得た.まとめた内容を確認してもらい,確認後,自身の発言と思われ,撤回を希望する場合は削除ができることを口頭と文書で説明し内容の了解を得て,評価をする際には組織A代表者から承諾書を得た.

本研究は,国立保健医療科学院研究倫理委員会にて承認を得た後に実施した.(NIPH-IBRA#12127,2015年9月9日承認)

結果

13回の会議及び3回の実践活動から,構成員の状況・研究者からみた組織Aの動きを経時的にまとめ,先行文献からグループ支援におけるアセスメント及び評価項目や組織化の評価2122)を参考にプロセス評価を行った.

プロセス評価から,活動プロセスが4つの段階を経ていることがわかった(表1).

また,活動プロセスにおいて,組織Aを構成するメンバーの役割認識や組織Aとしての行動規範と考えられる項目が明らかになった.

表1 組織A活動プロセス評価表(下線太字部分は,特に結果に関係する箇所)
月日 内容/事柄 構成員の状況 研究者からみた組織Aの動き 組織Aにる振り返り・プロセス評価 活動段階期

3月

立ち上げ

構成員

打ち合わせ

10人

・医療・介護過疎の地域で,専門職の人材不足への危惧が大きい.この課題解決のために専門職及び関係者でつくったネットワークが組織として何かできることをやりたいという,問題意識からの強い意欲があった

・まずは地域の住民の力のアップを図ることを目指すとした.

・「ターゲットを絞る」「多世代が関わる」「地域の現状把握に基づいた目標とする」活動とする方向性で事業企画を進めることを立ち上げ構成員間で確認しあう

・立上げ構成員においては,介護力強化という活動の可能性を確認し合えていた.

意気の高揚期

4/17

組織A会議

(1回目)

9人

・「介護人材不足」の課題に対して,地域の人の興味を引くために「食」の事も取り入れる提案がある.

・一方で,「介護と食はどう連動させて考えていくのか」分からないという意見

・「介護」と「食」をどう連動させるのか,戸惑う構成員.

・この組織で何をしていくのかが描けていない様子と構成員間の実践活動に対する共有不足の様子あり.

・構成員全員がどこに答えがあるのかわからず,お互いに様子を伺う緊張感(ギクシャク感)があった.

一進一退期

5/27

組織A会議

(2回目)

14人

「地域介護力強化とは何かを理解・共通認識を持つ必要あり.意見交換したほうがいい」という意見.

・介護力強化を地域に根付くためにも,車座で教え・学ぶ関係をつくる“場”の必要性を確認する.

・構成員各々が,「何を」「どうするために」「この組織Aの会議で」「何を企画・調整・推進」するのかが描けていない様子.

・地域介護力とは何か,について主要構成員を始め,構成員間で共通言語では言い表せず,話し合いが停滞する.

現状と課題を言葉にして構成員間で共有できず,話し合いが沈黙,停滞した.

6/24

組織A会議

(3回目)

13人

・「教えてあげる」でなく,「学び合う」だという発言がある.

・「介護」という言葉と,「地域介護力」という言葉が捉えにくいために話し合いが進まないという意見が出る.

・一方で,知識を得て,予防行動がとれることが学びの場へ参加する人のメリットだという意見.

・構成員が「誰かに教えてあげる」という目線であったことに気づく.「教えてあげる」のでなく,「学び合う」ことだと認識できた様子.

・「介護」を前面に出さずとも,地域で学び合うことを進め,結果的に地域の介護予防力向上につながるのでは?という認識を持ち,共有化を図りつつある.

・この組織Aでは「学び合い」が介護力向上につながる活動であることを確認できたが,会議3回目なのにあまり次へ進めていない,停滞している感じがある.

7/27

組織A会議

(4回目)

13人

・この組織で行う実践活動の全体像が見えないとの声.

・「全体像が理解できないまま進んでいる」という意見.

目的と手段をきちんと分けて話し合いを進めたい

・構成員の欠席で,話し合いの進捗を共有できていない

・構成員からの問題提起が,事業のあり方の再協議となり,仕切り直しをしている.発言者が固定化している.構成員間で「また?」「今なぜ?」「必要だ」が入り混じっている

組織の活動の目的,役割を見失いがちで,その都度全体像や目的を確認・共有する必要があった.構成員間で苛立ち,不信感が生じた

8/26

組織A会議

(5回目)

14人

・活動テーマを「暮らしの中で生きる力をアップしていく」とする.構成員自身も「やってみないとわからない」という感覚で,専門職として伝えるべきことのほか,遊び心も持ち,学びやすくする.

・第4回までの会議で,組織Aの活動目的を再確認できた.

・構成員自身も各自できること(自分の強み)を生かした実践活動について考えるという入口に立った.

・3回目の会議でも確認したのに,5回目でも組織としての活動目的を確認するという,繰り返し・足踏み状態.

9/25

組織A会議

(6回目)

13人

・暮らしの中で生きる力をアップしてもらうための手段のイメージがわかないが,年末までには何か実施したい,したほうがいいという意見が出される.

話し合いの雰囲気があまり良くないと感じた構成員がいる

・学びの場を提供することで,地域住民の何がどう変わることを期待しているのか(成果)には考えが及ばず,何かに取り組むことにのみ意識をとられている.

組織の雰囲気が悪く,継続の危機を迎えている様子

研究者から実践活動をすることでの成果はなにか?と提起され,目の前の何か実践する活動を目的化していたことに気づいた.

10/28

組織A会議

(7回目)

14人

地域の中で,助け合う,支え合う,教え合う,楽しく元気に過ごせることを持続する必要があると言う.

・目指す地域の介護力は,高齢者だけでなく,若い世代から幅広い世代を巻き込む活動だと思うとの発言あり.

・研究者が欠席.組織A作成の議事録より情報収集.多様な活動のあり方については,構成員間で積極的に意見が出せた.

・組織Aとしての活動のあり方として,各構成員が主体的に意見を出せる会議の場となってきている.

能動的なチームワーク形成期

11/18

組織A会議

(8回目)

18人

・今年度の実践活動内容を話し合う.地域の中で,見えない連携を感じられるようにしたいという意見がでる.

・研究者2人とも欠席.組織A作成の議事録より情報収集.地域の力を掘り起こすことに組織Aとして関わると良いと考えた.

・組織Aが地域に関わることの意義として妥当な意見が出た.

12/16

組織A会議

(9回目)

19人

・今年度実践活動(全3回)の計画案の説明と検討する

・第1回目の実線活動の目的や組み立てを議論

・計画案を話し合う過程で,企画の意図・目的の確認を求める構成員がいる.「住民にとってどう感じるのか,現状はどうなのか」と言う住民目線での議論の場となっている.

・実施ありきでなく,できるだけ目的に沿った実践活動へと考えたのは妥当だった.

12/19

【実践活動①】

(1回目/全3回)

9人

・「いざというとき,役立つ家庭の看護・介護」テーマ

・学童の子どもらと近隣高齢者対象に実施.イベント的な印象だったという意見.

・イベント的になった.構成員もこの実践活動がどのような意義をもつはずなのかを確認できていないようだった.

・目的はあったのに,実施後の期待する成果を描けていない.対象選定,実施のあり方が不十分だった.

1/14

組織A会議

(10回目)

14人

・1回目の実践活動の反省で,子どもと高齢者の参加だけでなくその間をつなぐ世代層の参加につながる仕掛けが必要とする一方,介護力強化を目指し,高齢者への働きかけを強くしたいという意見等が複数出される.

・構成員毎に,地域のつながりや,生活目線,住民目線の意見と,介護や高齢者の専門領域の重点事項としたい意見とが存在する.

・持つべき視点の整理の必要性と実践により各構成員の主体的な意見の表出と役割認識ができた

1/16

【実践活動②】

(2回目/

全3回)

12人

・既存の自主的な集まり会(地区食生活改善委員と近隣高齢者の月1回の昼食とお茶のみの会)と相乗りで企画したが,1回目と違い実施直後から,やってよかった,続けていきたいという手ごたえがあったと言う.

・既存の自主的な集まり会に,組織Aとして提供できたメニューがあったと言える.それにより,構成員は実施成果を感じた様子.

メニューの提供等という組織の方向性を見出す気づきがあり,実践活動の達成感につながった.

活動方向と組織ビジョンに基づく活動期

2/12

組織A会議

(11回目)

16人

・2回目の実践活動を振り返り,無理ないやり方で自分たちの強みを活かし,自然に行うことが大事だと感じた.

研究者から全体像・評価視点の提示で立ち戻る

・組織Aが目指していく全体像を作成したことで,実践活動だけをやるのではなく,活動成果を見る必要性について理解を深め,評価項目(アンケート項目)への関心を持った.

・一回毎の実践活動が,「何のために行っているか」に立ち戻って考えられるようになった.活動のビジョンをイメージできるようになった.

3/3

【実践活動③】

(3回目/

全3回)

13人

・構成員自ら,地域で動きを持っている人やこれから動き出せそうな人への参加を呼びかけ,実践活動を普及出来る実現可能性の手ごたえをもった.

他の地域組織の活動とは違う(差別化される)ものが,学びの場や内容のメニュー化であり,多様性だと言う.

・構成員が組織Aの活動目的を踏まえた参加者の意図的な呼びかけ(対象の絞り込み)を行っている.

・他の地域組織との違いが,メニュー化とその提供という意見に,各構成員の賛同が直ちに得られた.

・組織Aとしての役割遂行のために,各構成員が必要に応じて役割を果たす.果たす機能によって構成員の役割や働きが違っているがそれでよい

3/22

組織A会議

(12回目)

15人

実践活動を振り返り「隣近所で集まって何らかの行動を起こしてもらうために学ぶ場をこの組織Aが軸となりながらつくり,動き出せそうな人への動機付けができる」と言う.組織Aがメニューを提供できるためにどう動くかが分かってきた.

・12回の話し合いと,3回の実践活動実施で,組織Aの活動のあり方を認識できている.組織Aが持っている専門知識やノウハウの強みを活かす活動のプロセスを認識してきている

それぞれ違う専門知識や活動能力等を持つ構成員が,地域状況に応じて組織Aとして活動することで果たせる意義を見出せた

1. 活動プロセスにおける構成の状況と4つの段階

1) 意気の高揚期

構成員の状況としては,「地域の課題解決のために,何かできることをやりたい」という問題意識を持ち,強い活動意欲があった.

地域に起こっている問題だと認識して課題解決に向けた自主的な活動を組み立てつつ運営しようとし,活動の可能性や期待を持って組織Aとしての活動内容の検討に入った状態であった.医療や介護の需要と供給バランスの悪い地域において,今後,さらなる専門職の人材不足への危惧が大きく,このような健康課題への対策として地域の介護力強化を目指し,その領域の専門知識・技術等をうまく組み合わせて考えようとする意欲が高まった段階となっていた.

2) 一進一退期

構成員は「地域介護力強化とは何かを皆で共通理解し,共通認識を持つ必要がある」,「共通認識等をもつために意見交換をした方がいい」と,共通理解・共通認識を持つ必要を認知している.しかし「全体像が理解できないまま進んでいる」「目的と手段をきちんと分けて話し合いを進めたい」,「話し合いの雰囲気があまり良くないと感じる」というように,うまく構成員間での意思疎通ができず,組織全体としての停滞感が否めなかった.

組織Aの会議経過において,「地域の介護力強化とは何を意味するかが,構成員間の共通認識となっていない」として,複数回の意見交換を必要とした.しかし月に1回の会議では,欠席者がいたり,次の会議までの間延びがあったりすることにより,なかなか合意とならなかった.

「介護力向上にはまず,地域での学び合いが必要」ということは共有したが,その先の成果は予測しづらく,組織の活動目的が曖昧なまま話が進んだ.その都度組織として行うべきことの全体像の確認が必要になるなど,問題提起とその確認作業を繰り返す会議は13回中6回(6か月間)で,まさに一進一退の時期となった.構成員間に思うように進まない焦りや苛立ち・相互の不信感が生じ,会議の雰囲気が悪い状態であった.この時,客観的にみて今組織がどのような状態になっているか,「実施することが目的化していること」を指摘し,何を確認して進めると良いのかといった助言をする役割を研究者が担うことになったが,この指摘を契機に組織Aとして原点に立ち戻ろうという気づきが生まれ,一進一退期を抜けたと感じられた.

3) 能動的なチームワーク形成期

「地域の中で助け合う,支え合う,教え合う,楽しく元気に過ごせることを持続する必要がある」と,構成員同士で主体的な意見の表出ができるようになり,活動目的の再構築を行った.また,「すべての世代をつなぐ場を提供することへの仕掛けが必要」といった構成員自身で役割認識ができるようになった.地域における介護力強化という健康課題解決のために必要なこととして各構成員が「助け合う・支えあうこと」や「高齢者だけを対象とせず,世代間交流をすること」といった主体的な意見を言語化して発言していた.

組織としてどうあるべきかを具体的に表現し,成果を描くことの重要性に気づき,構成員の役割認識と自律的行動が進み,組織Aとして機能を発揮する方向へ向かった.

4) 活動方向と組織ビジョンに基づく活動期

構成員は「無理のないやり方で自分たちの強みを活かした活動が大事」,「他の地域組織の活動とは違う(差別化される)ものが自分たちの活動にはあり,多様性だと思う」と組織Aの方向性を明確にし,「組織Aとしてどう動くか,どう役割を果たせるか,分かってきた」と活動意義を確認していた.

実践活動を積み重ねる中で,自分たちの組織は地域で活動する他の組織体と違う,パターンにとらわれない活動形態をとれること,構成員が持つ各々違う専門知識や活動能力等を組み合わせることで,多様な活動意義を果たせることが強みだと認識でき,活動の方向性を定められた段階であった.

考察

1. 地域自主組織活動プロセスにおける段階の特徴

組織Aによる振り返りとプロセス評価で得た結果から,組織Aが継続的に活動し発展していくためには,地域組織として自主的に活動し始めた形がゴールではなく,取り組む課題を焦点化して組織内でチームワークを改めて構築していくことが重要であると考えられた.さらにそのチームワーク構築において,気持ち(思い)や認識,行動が変化していく過程の段階を踏むことが持続的に活動を展開するために有効だと考えられた.

地域課題への実践活動を行おうとする当初は意欲が高まっている状態(意気高揚期)であるが,この状態は続かない.具体的な組織活動の検討を始め,活動目的や役割を構成員間で確認・共有することに時間を要する中で実践に進めない苛立ちや焦りを生じ,会議の雰囲気が悪くなる状態となり,活動を阻害する感情13)が生じている.活動を阻害する感情を生じながらも活動当初の気持ち(思い)や認識に立ち戻ることで乗り越えられる(一進一退期)と考えられ,原点に立ち戻るという気づきをもたらす助言的立場の存在が必要だと示唆された.地域自主組織等の自主的活動開始時には,専門家等の支援が必要9)であるが,活動を持続的かつ定着させるためにも,専門家等のサポートが適時必要であり,活動開始時のような積極的な支援ではなく後方支援の形をとることが重要である4).本研究の結果からも,組織に行き詰まり感がある際に,客観的に状況を見極め,原点に立ち戻るような気づきを与える役割を持つ専門家あるいは支援的立場の人材の関わりが<一進一退期>を乗り越えることに効果的であった.組織内で活動目的を共有し,実践活動における各構成員の役割,期待する成果,組織Aとして果たせる機能の確認・共有ができるようになることで,チームとして機能し始める.<能動的なチームワーク形成期>の段階に入れば,組織中の新たなチームとして活動ができている.このような組織の変化は,組織に所属する個人のエンパワメントプロセスにも影響する23).個人がエンパワメントされることにより,個人は視野の広がりを見せ,活動の場が広がる23).つまり活動プロセスの段階に個人のエンパワメントプロセスも付随していくことを踏まえ,組織の活動プロセスの段階を見極め,組織への集団的支援だけでなく組織に所属する個人と合わせて支援する必要があることが示唆された.

2. 活動プロセスにおけるチームワーク構築

活動プロセスにおける段階をみると,Tuckmanのチームビルディング理論で説明することができる2425).チームビルディング理論は,小グループのチームが出来上がるプロセスについての発達段階を示している(以下,タックマンモデルという24)).タックマンモデルでは,チームが本当に機能するには,Forming(形成期),Storming(混乱期),Norming(規範,統一),Performing(機能),Adjourning(離脱,散会,終了期)の5つの発達段階を経過していく中でチーム形成がなされる必要があるとしている.本研究の組織Aにおいても,ある地域課題解決のために動くチームとして機能して活動していくプロセスがタックマンモデルの発達段階で説明でき,段階ごとの局面を経てチームワークを構築し,機能発揮につながっていると考えられた.組織Aはチームワーク構築のプロセスを経たことで,組織としての活動の強みをさらに強化し,構成員間のつながりを強固にしていたと言える.

地域自主組織の活動が,地域包括ケアシステム内で効果的に機能を発揮するためには,地域自主組織内でさらなるチームワーク構築を行うことが有効であると示唆された.そしてチームワーク構築というチームビルディング理論を活用した地域自主組織に外部からの支援があることにより,組織の継続的な活動が期待できるのである.

一方,地域における互助活動において自主的組織が多く立ち上がっては一定の活動期間の後に活動が縮小・消滅していくことがある.これはAdjourning(離脱,散会,終了期)の段階に入り,そのまま立て直せないためとも言われている25).つまり「一つの課題解決に係るチームワーク構築」による機能を発揮した後の組織活動自体が終了・解散とならないための対策が必要であり,そういった対策によって活動の継続につながることが期待できるため今後の着目すべき点,自主組織支援への課題と考える.

3. 地域組織活動を行う組織・構成員のあり方

1) 客観的に状況を見極めた支援を得ること(外部支援者の存在)

組織Aのチームワーク構築プロセスにおいて,構成員の状況をみてみると,特に<一進一退期>は,活動が頓挫し,活動を阻害する感情が生じていたため,これを乗り越え,“本来の活動目的”に立ち戻れるよう,ここでは研究者が担う形であったが,客観的に組織の状況を見極める役割をもつ人材(専門家や外部からの支援者)の存在が必要であった4)13).組織Aは支援(助言など)を得ることに柔軟であったこと,自らも前へ進まなければという思いを持ち次の段階へ進めたということがプロセスの評価から明らかになった.組織内の行き詰まった状態を抜け出すには,専門家や組織外からの客観的な意見を聞く姿勢を持つことの必要性がある.しかし行政への依存度が高くなれば自主的活動よりも行政の下請け的活動への懸念もある16).したがって自主的活動を原則としたうえで,やむを得ず組織の危機的状況時など,活動プロセスの段階に応じてタイミングよく外部支援者からの支援を組織として受け入れられるということが重要であると示唆された.

2) 各構成員が目的共有・役割認識をもって動ける自律性

地域自主組織として皆で力を合わせて活動する際には各構成員の意見を出し合えること26)が重要であった.<能動的なチームワーク形成期>には,「地域の中で助け合う,支え合う,教え合う,楽しく元気に過ごせることを持続する必要がある」と,各構成員が組織Aの活動目的の共有,実践活動から期待したい成果を確認し,活動目的やその成果の方向性,役割認識を持って動くこと,ビジョンを持てるようになると,自律性が伴ってきたと考えられる.各構成員が,自律性をもって動くことは,構成員個々のエンパワメントにつながり27),それによって組織のチームワークが一層高まり活動の充実につながったと考えられた.したがって,自主組織であっても,この組織が地域の中で有意義に機能できるように,構成員が目的共有・役割認識が持てるように助言するなどの支援を行うことが有効であることが示唆された.

4. 地域自主組織への支援のあり方

現在,推進されている地域包括ケアシステムにおいて,地域自主組織は,地域の健康課題解決や自助・共助に関する効果的な役割を担い,自立的に実働する組織活動が期待され4),有効な担い手となり得る.地域自主組織活動プロセスにおける各期の特徴とチームワーク構築,組織・構成員のあり方から,組織内に解決課題を焦点化したチームを築くというチームビルディング理論25)を踏まえた支援,活動プロセスの段階に応じた支援を行う必要があることが示唆された.また,【客観的に状況を見極められる支援者を得ること】といった組織としての姿勢があった.自主グループ等の設立までは自治体の情報提供や場の提供の必要性があるが13)14),自主化した後の地域組織における支援としても,組織を客観的にみてタイミングよい支援を行うことが継続的活動に効果的であると考えられた.一方,【各構成員が活動目的やその成果の方向性,役割認識を持って動ける自律性】といった組織に所属する個人の変化が組織の活動に影響するため,個人のエンパワメントを踏まえた支援が活動の継続に有効であることが示唆された.

5. 研究の限界

本研究では,地域自主組織がどうあれば,持続的な活動につながるのか,またその支援に着目しており,活動による地域への成果までは見出していない.また,組織Aのみのプロセス評価であるため,地域の様々な成り立ち,組織構造,活動目的の異なる組織において発達段階及び要する時間等を当てはめることには限界がある.他の地域自主組織の事例とも照らし合わせながら,今後は組織Aの新たな課題に取り組む際のチームワーク構築の様子(次なる課題へのチームワーク構築のプロセス)を確認し,地域自主組織の持続的な活動のためのモデルを検討していくことが必要であると考える.

結語

地域自主組織の活動プロセスを評価した結果,組織が継続的に活動を展開していくには,<意気の高揚期><一進一退期><能動的なチームワーク形成期><活動方向と組織ビジョンに基づく活動期>の4つの段階があった.これらの段階を経過する地域自主組織についてチームビルディング理論を用いて理解し,行政職等の専門職は地域包括ケアシステム全体の運用に向けて,地域自主組織を継続して活動し活動効果をあげていくために,外部から支援することの有効性が示唆された.

加えて,地域自主組織は,客観的に組織の状況を見極められる支援者を得ることや各構成員が活動目的やその成果の方向性・役割認識を持って動くことが,組織活動の継続に影響すると考えられ,活動プロセスの段階に応じた支援や各構成員が活動目的等を見失わないように助言を行う等のタイミングをみた支援の必要性が示唆された.

謝辞

本研究で共に課題解決に取り組みながら,研究にご協力いただきました地域自主組織のみなさま,津田塾大学 森川美絵教授(元保健医療科学院,医療・福祉サービス研究部)に心より感謝申し上げます.

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© 2020, School of Nursing, Faculty of Medicine, Kagawa University

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